とある一般聖兵の日常   作:チョコラBB

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9話

バンビエッタを落とせたのは良かった。

戦いの中でどんどん調子が上がっているが流石にネタ切れだ。

やはり地力で劣る分対応されてきたので、此処で強力なアタッカーを落とせたのは大きいハズだ。

しかし聖文字のありなしで此処まで差が出るとは・・・ズルい、ズルくない?

 

残りはキャンディス、ミニーニャ、バズビーにリルトットちゃん。

そして能力の都合上全力が出せないジゼルと妙に消極的なゴリ、ドリスコールという大男だ。

終わりが見えてきた。

大分キツイがここまで来たのだから勝ち残りたい。

まあ摸擬戦だし多少リルトットちゃんに手荒なことをしても許してくれるハズ。

キャンディス、バズビーは相変わらず直撃だけは注意して削っていく。ミニーニャはバフモリモリなら問題ないし、能力が利きにくいジゼルも同様。

ドリスコールは能力を知らないので最大限注意だな・・・。

リルトットちゃんは口が寄生獣みたいに変形してくるが、それさえ注意しとけば制圧は容易。

とりあえず要注意の3人以外を順次落としていき後の流れに任せるか!

 

「ガアアア!!」

 

「辛え・・・。」

 

「エ!?」

 

先ほどと同様炎と雷で加速して火拳もどきでドリスコールに殴り掛かったらクリーンヒット。一撃でノックアウトしてしまった。

 

(え!?一撃!?いや可笑しすぎる。何か罠、幻術か!?)

 

自分に乱装天傀を掛けて異常を直そうとするが、異常なし。

 

(異常なし。え?どういうこと!?)

 

この時ジュダスは知らなかったが、ドリスコールの能力は「O」─ 大量虐殺(ジ・オーヴァーキル)敵味方問わず殺した数だけ自身を永続的に強化する能力である。

本来倫理観さえ無視すれば殺せば殺すほど永遠に強くなり続けるRPGゲームのような能力なのだが、今現在の彼は派手に敵を殺せないし味方は論外であるためそこまで強化された居ない。

メタ的に言うなら尸魂界侵攻で100人殺すまでは下から数えた方が早い実力である。

今の状況は弱いドリスコールがジュダスに素で対応出来なかった。

ただそれだけの事であった。

 

(俺は何かの術中にハマっているのか!?)

 

しかしジュダスは混乱した。

自分が星十字騎士団をあっさり倒せるなんてオカシイ。

絶対何かの罠だ!と。

そしてそれは明確なスキになった。

 

「エイ!!」

 

元々ドリスコールの近くにいたジゼルが自身の頸動脈を切断、大量の血液がジュダスの視界を塞ぐ。

ジュダスは反射で反撃をしたが、驚くことにジゼルは自分からその攻撃に身を晒して胴体を抜き手で貫かれる。

 

「ゴボッつっかまえた~。」

 

ジゼルはそのまま抜き手を両手で捕まえて不気味に笑う。

慌てて腕を抜こうとするが、存外力が強く、更に得体のしれない何かがジュダスの身体を侵食する。

 

「死んでなくても影響位与えれるんだよ?」

 

乱装天傀により一瞬で異常を回復させるが、ドリスコール、ジゼルと続いて致命的な隙となった。

 

「覚悟です。」

 

ミニーニャの拳が顔面に突き刺さる。

 

「グエ!?」

 

想定をはるかに超える拳撃。

衝撃に吹き飛ばされながらジュダスは見ていた。

ミニーニャは拙いが確かにボクシングの動きで効率的に拳を振り、更にインパクトの瞬間、動血装を発動して威力を飛躍的に高めていたのだ。

 

何とか体勢を戻そうとするが脳が揺れたらしい。

視界が滲む。

バズビーが拳に炎を纏って猛スピードで突っ込んできたので何とか右手で防ぐ。

同時に反対側からもリルトットちゃんが滅却聖矢を乱射しながら突っ込んでくる。

口元は伸びていないのでそのまま殴るつもりなのだろうが残念ながら火力不足だ。

たとえ動血装は発動しようとも、生身ならまだしも今は静血装も発動している。

上空から静かに近づくキャンベル、バズビーの後方からやってくるミニーニャへと注意を向けると・・・また想定を超える拳撃が頭部に突き刺さり、ついに三角兜が吹き飛ぶ。

 

「私のThe Glutton ― 食いしんぼう ―はなただ食べるだけじゃない。

一部でも食べた相手の能力の概要や使い方を知ることが出来て、更に消化するまでの間なら使用も可能なんだ。」

 

「まさか・・・?」

 

ミニーニャ(・・・・)を喰った。一部だけだがな!」

 

バズビー、キャンベル、ミニーニャの追撃が突き刺さり意識が飛びかける。

 

「ア、アアアアアアア!!」

 

自分毎爆破して全員吹き飛ばす。

もう霊子もスッカラカン、再度集めなくては不味い・・・。

見聞色を解除する刹那、リルトットちゃんにまた殴られるビジョンが浮かぶ。

 

(ハア?吹き飛ばしたハズ・・・!?)

 

果たしてリルトットちゃんは先ほど俺を殴った位置にまだいた。

鉄色に染まり、雷光を纏っている。

 

(食べたのは一人じゃなかったのか――――)

 

「能力コピーとかチートじゃない?」

 

「「「お前が言うな!!」」」

 

何故か全員から怒鳴られた。

いや俺の場合努力した結果、再現可能な奴だけだからネ?

理屈も何もなく食べただけで再現できるとかチートだろ!!

 

最後の意地でリルトットちゃんの拳に俺の拳を合わせる。

一瞬拮抗するが、俺の勝ちだ。

複数能力という条件が同じなら、地力のパワーは俺が上!

このまま押し切る!!

ジリジリ俺の拳がリルトットちゃんに押し込・・・押し込め・・・ない!?

 

「がんばれ~。」

 

血まみれのジゼルが覇気なくリルトットちゃんに声援を送る。

ティンときた。

 

マスキュリン(初代)もかああ!?」

 

「今目を覚ましてやる!!」

 

(最初から正気です。)

 

じゃあ、もう一方の手でリルトットちゃんの迎撃を・・・

腕が動かない。

チラッと視線だけ向けると、変な・・・先ほど俺を攻撃してすぐ消えた爺さんが俺の手を抑え込んでいた。

 

(打つ手が無くなった・・・。)

 

リルトットちゃんの拳がジュダスに突き刺さる。

死ぬほどの悔しさの中、ついにジュダスの身体から力が抜けた。

・・・がまだ終わらない。

倒れながら上空をふと見上げると、ドでかい炎の塊を打ち出したバズビーと雷をこちらに投げ打つキャンベルが見えた。

隣を見るとリルトットちゃんが気絶して倒れていた。

爺さんはどうでも良い。

 

(このままじゃリルトットちゃん死んじゃうじゃん。)

 

一瞬目の前が暗くなり、力を振り絞る。

 

「月牙天衝」

 

ジュダスの手刀は

雷と炎を相殺し、天を割る。

今度こそジュダスは意識を手放した。

 

 

勝者: 「V」グエナエル・リー

 

 

 

リルトットちゃん達の悲しき怪物疑惑が解消され、また気絶した者たちも意識を既に取り戻している。

其処へ摸擬戦に参加しなかったメンバーを引き連れたユーハバッハがやってきた。

ハッシュヴァルトが前に出る。

 

「全員傾注するように。」

 

「今回の摸擬戦。不甲斐ない者が多く非常に不愉快だった。」

 

恐ろしいほどの重圧が一帯を襲う。

最初に負けたベレニケ・ガブリエリやジェローム・ギズバットなど顔が真っ白で今にも死にそうだ。

 

「しかし終盤は予想を超えるものを見れた。特例として今回除名するものはなしとしよう。」

 

重圧が解除され、全員ホッとする

 

「だが来月も摸擬戦を行う。そこでも成長が見れない場合は・・・」

 

再度全員絶望する。

 

(((見れない場合は何だよ!?)))

 

「さて・・・お前たちもわかっているだろうがここに新たな星十字騎士団 ジュダスの叙任を行う。ジュダスよ。」

 

「ハッ。」

 

「お前の戦い見事であった。お前に与える聖文字は明日与える。今日のところは体を休めるがいい。」

 

「謹んでお受けいたします。」

 

此処に新たな星十字騎士団が誕生する。

後日、同格の十字騎士団員になってもリルトットの世話を焼くジュダスと

唯一ジュダスより先に敗北してタメ口でイジられるバンビちゃんの姿がよく見られることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月光に照らされ廊下を歩く二つの影。

ユーハバッハとハッシュヴァルトである。

 

「———陛下、よろしかったので?」

 

「よい。見たいものは見れた。」

 

「見たいものとは?」

 

「・・・ジュダスは孤児だ。奴は現世で一人生き残っていたところを保護され、孤児院、そして聖兵と続き現在に至る。」

 

「はい。資料で読みましたが・・・」

 

「奴は・・・石田雨竜と同じだ。」

 

「!まさか!ならば・・・!」

 

「そうだ。奴も奴の一族も混血統滅却師だった。私の聖別により生き残ったのは石田雨竜のみとしていたが、もう一人いたのだ。それがジュダスだ。」

 

「つまり・・・奴にも?」

 

「ああ。奴にも石田雨竜同様私の力を阻む何かがあると思われる。排除も考えたが、聖文字を受け入れればそれでよし。もし反逆するならば奪えばいいだけの話だ。」

 

「・・・陛下のご意志のままに。」

 

 




NG集
リルトットちゃん
「ペペの能力もコピー済みだぁ‼」

ジュダス
「な、なんだってー!」

リルトットちゃん
「ラブラブビーム‼」

ジュダス
「ぐわあああ⁉・・・犬とお呼びください♡」

リルトットちゃん
「やったぜ。」




ジュダス君の聖文字はくじで決めます。

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