太陽の門を通り一人で玉座へ向かう。
行きは人数が多かったのに帰りは寂しいものだ。
「陛下、ただいま帰還しました。」
「キルゲは逝ったか。」
「はい。」
「・・・ご苦労。奴は黒崎一護の足止めという大任を見事果たした。」
「・・・キルゲ先生の役目には意味がありましたか?」
「あった。」
「了解しました。流石に少し疲れたので休息を頂きます。」
「次の侵攻も近い。・・・期待しているぞ?」
「・・・光栄です。全力を尽くします。」
ジュダスが退室した玉座にてユーハバッハとハッシュヴァルトの両名がいた。
沈黙の中、ハッシュヴァルトが口を開く。
「・・・宜しいので陛下?ジュダスは確実に二心を抱いております。」
「構わん。奴がソレを糧に成長するならするで構わない。そもそも私が力を取り戻す時点でどうとでもなる。第一奴には既に
「失礼いたしました。すべては陛下の御心のままに」
コツコツコツ
ジュダスは玉座から退出し、長い廊下を歩く。
外からは平静そのものだが内心はグチャグチャだ。
怒り、悲しみ、安堵。
自分でもよく分からない感情である。
早くリルトットに会いたい。
怪我などしていないだろうか?
ジュダスは少し歩調を速めながら、廊下の丁度半ばで足を止める。
「誰だ?」
「失礼。驚かすつもりはなかった。」
誰かの気配を感じジュダスは足を止め問いかける。
此処には仲間しかいないので襲撃などまず無いのだが、仲間意識の希薄な星十字騎士団ならばワンチャンあり得る。
もし出てこなければ最悪殺すつもりでジュダスは身構えたが相手は普通にその姿を現した。
柱の影から姿を現したのは聖文字「X」リジェ・バロだった。
ジュダスは正直驚いた。
自分の銃を作成する際に少し話したことがある程度だったリジェ・バロが話かけてくると思わなかったからだ。
彼はキルゲ同様陛下への忠誠心が篤く、絶対の攻撃力と防御力を併せ持った最古参である。
陛下の最高傑作とマウントを取りたがる悪癖があるため他の星十字騎士団からは煙たがれているがジュダスとしては欠片も羨望の気持ちがないため普通に接している。
「キルゲが亡くなったそうだな。」
「はい。」
「彼が亡くなったのはボクとしても残念なことだ・・・。だが陛下の命を達成した結果のことだ。彼も本望だろう。」
「・・・はい、ありがとうございます。」
「ジュダス、君も師の名を汚さぬよう陛下の御為に励むことだ。」
「はい。全力を尽くします。」
「ならいい。おそらく数日後には再侵攻が行われる。英気を養うことだ。」
リジェ・バロはそう言うとジュダスの脇を通り過ぎ玉座へと歩いていく。
「ありがとうございます。」
「ああ」
ジュダスはその背に礼の言葉を投げる。
だがその顔に親しみはなく引き攣ったかのような歪な笑顔だった。
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ジュダスはしばらく微動だにせず立ち尽くしていたが、気を取り直しバンビーズ達溜まり場に向かって再び歩き出した。
バンビーズの溜まり場にしばらくぶりにジュダスが顔を出してキルゲの訃報を伝える。
その後、いつものようにイキるバンビエッタをスルーして疲れたかのように腰を下ろしたジュダスを心配してリルトットは声をかけた。
「まあ・・・なんだ。俺はキルゲの奴とそんなに仲が良かったわけじゃないが・・・ジュダス大丈夫か?」
「あー正直色々な感情で頭がいっぱいで大丈夫そうでないです・・・。そっちはどうでした?」
天井を眺めたままジュダスがリルトットにきく。
「ん?こっちは大丈夫だ。怪我も無くバンビエッタの奴が敵隊長格の卍解を奪った。」
珍しく疲れ切った顔を隠しもしないジュダスを心配するリルトット。
他のメンバーも普段と違う様子のジュダスの様子をうかがう。
リルトット越しとはいえ長い付き合いがあるため良好なのだ。
新生バンビーズは仲良しグループです。
「そうよ!ワンちゃんの顔をした隊長から奪ったの!まあ巨人が出るだけで爆撃(The Explode)に比べればショボい能力だけど!」
一人浮いているいつものバンビエッタ。
ジュダスは無言で
遮音性がある上に頑丈、更にバンビエッタ一人が入ると隙間がないくらいの大きさなので爆撃(The Explode)を使用すると確実にバンビエッタ本人が巻き込まれるという絶妙な塩梅だ。
え、滅却師は拘束できない?
ジュダスにとって好感度低い相手は味方判定じゃないから。
「ジュダス!?それ!?」
「ジュダス君それは!?」
リルトットとミニーニャは驚愕した。
キルゲの能力を模倣したことについては今更なのでどうでも良いが、能力だけは間違いなくトップクラスのバンビエッタを封殺する檻を一瞬で作成するその制御力、隠密力は明らかに少し前のジュダスでは考えられないほどの成長だからだ。
「・・・リルトットちゃん。うまく説明できないけどキルゲ先生が亡くなって意外なくらい動揺してる。でもなんか安心した自分もいるんだ。」
「安心ってのはよく分からないが・・・まあお前は情が深いからな。仲間意識なんかほぼ無い星十字騎士団の中じゃ俺たちバンビーズだって結構異質なんだぜ?足の引っ張り合いなんて日常茶飯事だしな。そういう意味じゃお前は異端なんだぜ?」
「・・・・そうかな?・・・・・・星十字騎士団クソ過ぎじゃない?」
「「・・・・」」
誰もが苦笑いで沈黙である。
客観的に見て同じく殺し合い上等でも陰湿さがない分十刃のほうがマシという
最悪な労働環境である。
「・・・・・」
「・・・ああ~仕様がねえなあ!オイ!ジュダスこっちへ来い!!」
どうにも覇気のないジュダスに業を煮やしたのか、リルトットが乱暴にジュダスを引っ張る。
トサ
「ええ!?」
そのままジュダスは薄、・・空気抵抗の少なそうなリルトットの胸に頭を抱えられて動きを止めた。
「しばらくこうしておいてやるからぼーっとしとけ!良いな!!」
リルトットの男前な優しさの前にジュダスは一度停止し、そのまま彼女の胸の中で身体を震わせた。
そんな二人を見てニヨニヨするミニーニャ、キャンディス、ジジの三人。
バンビエッタは檻の角度的に見えず、置いてけぼりだった。
時は少し経過して、ジュダスが現れて30分ほど経過した
バンビーズの溜まり場は地獄絵図に変貌していた
「ああ~心がピョンピョンするんじゃあああ。」
「しょうがねえなジュダスは。まあしばらくこうしておいてやるからな?」
恩師が亡くなりジュダスがヘコみ、それをリルトットが慰める。
それも良いだろう。
その手段として抱きしめて慰める、ニヨニヨ出来るのでそれもまた良し。むしろそれが良いまである。
「ばぶう」
「ふふふふ。」
だが目の前で二人して新しく性癖を開拓するのは違わない?
良い年した細マッチョな男が(見た目)幼い少女の胸に顔を埋めて甘えて奇声を上げているのだ。
「こ、これが『バブみ』と『オギャる』ってやつか!?」
キャンディスが戦々恐々と声を上げる
普段しっかりしているジュダスが弱り切っているのはキャンディスとしてもソソるものがあったが、此処までブッ壊れるとは思わなかった。
大の男が年下の少女に母性を感じて甘える様は・・・こう、なんというか・・・キツイ。
序でに付き合いの長かった同僚が、どういわけかエス・ノトのようなハイライトの無い目に恍惚とした表情でジュダスの髪を優しく撫でている。
端的に、凄い怖い。
ジジは目を輝かせ、熱の篭った視線をバンビエッタに送る。
ミニーニャと檻から解放されたバンビエッタは二人を見て素直にドン引いている。
「あ~」
「こんなに屈強になったのに、俺にこんなに甘えて・・・仕様がない奴だなあ。」
キャンディスはこの時心の底から思った。
「早く戦争がしたい」と。
リジェ・バロさんは善意100%です。
ただジュダス君の神経を全力で逆なでしています。
私の脳内でバンビエッタちゃんが黒髪のアクア様になっています。