「あんた何か面白いことしなさいよ。」
そんな芸人以外には、むしろ芸人だからこそ眉を顰めるような無茶ブリを行うパワハラ上司。
彼女こそ「E」の聖文字をユーハバッハより与えられ、星十字騎士団の中でもトップクラスの戦闘力を誇るバンビエッタ・バスターバインその人である。
なお、彼女は外見こそ美しく男性人気が高いが、内面を知る人物からすると中身がクソ過ぎて密かに嫌われている。
現在も非公式女性グループ「バンビーズ」の溜まり場にて暇を持て余し、同僚のリルトット直属の部下に勝手に命令を出している。
その様子を見て密かに不満そうな様子を見せるのはバンビエッタと同様にユーハバッハから「G」の聖文字を与えられたリルトット・ランパード。
彼女は口調こそ荒いが冷静かつ真面目、実は仲間(バンビちゃんは除く)への情も深い人格的に優れた人物だ。
今もジュダスに目で謝っている。
「面白いこと、ですか。」
さてクソ上司からパワハラを受けているリルトット付の一般聖兵
ジュダス君は頭を回転させた。
ジュダスは転生者である。
ブリーチという漫画を始め数々のジャンプ漫画を産湯として育った生粋の日本人であった。
普通?に死亡して、記憶を取り戻した時には既に聖兵だった。
此処がブリーチ世界ということはすぐ分かった。
だがどういうわけか原作に関わる記憶だけがほぼ欠けていた。
覚えているのは死神の「クロサキ イチゴ」が主人公で自分の所属する「見えざる帝国」は敵側であることだけだった。
彼には2つ目的がある。
1つ目は生き残りボンッキュッボンな奥さんを貰って生涯を全うすること。
2つ目は今は上司になった同期のリルトットが生き残ること
(主人公のイチゴと親しくなれば補正か何かで生き残れるだろ?ジャンプ漫画だし。
イチゴちゃんか・・・名は体を表すというしきっとカワイイ系かな?主人公だからきっと元気娘タイプだろう・・・しかも聞いた話では現役高校生らしいし個人的には巨乳JKだと嬉しいなあ。)
「バンビエッタ様。では血装について一つ小話でも。」
内面と外面の温度差が激しすぎて風を引きそうである。
「血装~?血装っても動血装と静血装くらいしかないじゃない。ツマンない話だったら殺すわよ?」
「!?・・・オイ!」
流石に暇つぶしのために自分の部下、最も付合いの長い同期を殺されるのは看過できない。
リルトットはそう考えバンビエッタに声をかける。
「何よリルトット。流石に冗談だってば。」
一瞬空気が凍る。
他の聖兵は怯え固まり、二人と同様に星十字騎士団員であるキャンディス・キャットニップとジゼル・ジュエルは声こそ上げないもののバンビエッタに非難の目を向ける。
尚一番新米のミニーニャ・マカロンはオドオドと右往左往している。
「まあまあ。バンビエッタ様には簡単かもしれませんが血装の仕組みを今一度説明していただいてもよろしいですか?」
そんな最悪の空気の中、当の本人はマイペースに話を進める。
「はあ?簡単よ。血装ってのは私たちの血液の中に霊子を流すことで防御力または攻撃力を強化する技術よ。霊子を精密に操作できる滅却師固有の、ね。」
「そうです。では質問ですが何故血液に霊子を流すと防御力または攻撃力を強化されるのでしょうか?」
「はあ!?そりゃあ・・そりゃあそういう物だから・・・じゃないの?」
ジュダスの言葉にバンビエッタはもちろんその場に居た全員が首を傾げる。
そういえば何でだ?
霊子を精密に操作して血液の中に通すことは、それに長けた滅却師にとっても難易度が高い。だがあくまで難しいのはそこまでで流すことさえ出来れば、後は守りたい、攻撃したいという意思に応じて勝手に動血装もしくは静血装が発動するのだ。
滅却師にとって“そういうもの”だったのだが、改めて言われてみると何故だろうか?
「私の以前からそれが疑問でした。そこで私はその仕組みについて我が師キルゲとディスカッションを行い一つの仮説を立てました。」
「簡単に言えば我々滅却師固有の機能です。根拠としては滅却師以外に使い手がいないこと、そして血装発動時に現れる紋様です。」
「紋様?どーいうこと?」
「まず一つ目ですが確かに難易度は高いですが、今までの長い歴史の中で死神にも一人も血装やそれの類似技術すらありません。それは鬼道など霊子、霊力を扱う技術があるのに、です。」
「じれったいわねえ。それは最初にワタシが言っていたように、血装を起動出来るレベルで霊子を精密に操作できるのが滅却師しかいないからじゃないの?」
「その可能性はもちろんあります。でもいくらなんでも一人もいないのは不思議ではないですか?千年前に滅却師を滅ぼした際にそういう物があるって知っているのに。」
「次に紋様についてですが、もし血液に霊子を流して現れるとしたら不思議じゃありませんか?もし血液、血管なら人体模型みたいにグニャグニャした紋様が浮き出るはずなんです。でも現れるのは回路みたいなオサレな紋様です。
つまり血液に霊子を流すのは血装という機能を起動するスイッチであって、機能そのものは血液もしくは血管とは別の器官によって発動しているのでは?と思ったんです。」
「確かにアンタの言っていることは理屈が通ってる気がするけど・・・アンタいつもそんな小難しいこと考えてるの?」
「いつもではないですけど・・・割と?リルトット様はよく聞いてくれますよ?」
ヤレヤレというリアクションを行うジュダス。
微妙にイラっとするバンビエッタ。
「話を進めます。最後に根拠になったのは先日陛下が反抗勢力を処刑するのに使用した“外殻静脈血装”です。アレ血液が噴出し続けてるわけでもないのにバリアみたいになるでしょう?アレを見て私は考えました。我々滅却師の身体には血装を発動するための器官がある。だから体外でも出来るのでは?と。」
ジュダスはおもむろに上着を脱いで一段高い場所に立ち全員を視界に入れるように振り向く。垣間見える胸元や腕の筋肉は細く鍛え抜かれ、野生の肉食動物を連想させる。
「っ。」
ジュダスの意外といい肉体を見てつばを飲み込むキャンディス。
かーっ!見てみんねえ!卑しか女ばい!
「その仮説を前提に俺は鍛錬を積みました。その過程で私たち滅却師には疑似的な神経回路があることに気付いたんです。それを意識して霊子を色々な方法で流してみて会得したのがコレです。ハッ!」
駆け声と共にジュダスは鍛錬により新たに会得した血装を発動する。
身体の右側が赤く、左側が青く輝いた。
「「「キモい!?」」」
キモかった。
「あれだけ前話を振ってコレ?キモいんだけど?」
「ア〇ラ男爵か?」
「リルトットアレはどちらかと言うと超〇神だろ、シンメトリカルドッキングしたんじゃないか?」
「すみませーん!ジジが笑いすぎて痙攣してますー!?」
「解せぬ。」
「いや前半は確かに興味深かったけど最後にソレはちょっと・・・動血装と静血装を同時に行ってるのは凄いけど絵面が酷すぎるわ。」
「ちなみに普通の動血装と静血装をそれぞれ筋力100%、防御力100%とするならばコレはそれぞれ50%づつの強化です。
コレを更に発展させるとこうなります。【静動轟一】」
超竜〇なジュダスに紫色の紋様が浮かび強大な霊圧が部屋内を蹂躙し、
その場全員が重圧に押しつぶされる。
尚霊圧の大きさは1アイゼン位である。
「な、なによこの霊圧!あんた何なのよ!?」
この男は自分をいつでも殺せる。
その事実に気付いたバンビエッタは怯えた。
まさにバンビ(小鹿)のような有様で、それを見たゲラ気味な某男の娘は這いつくばりながら興奮した。
「ちなみにこの状態はすごく強いんですけど、あと10秒くらい続けると割れた水風船みたくなるんですよね、俺が。」
「ちょっと止めてよ!?私は面白いモノが見たいんであってグロ画像が見たいわけじゃないのよ!?」
「了解しました。解除。」
静動轟一の解除と共に圧力は霧散し全員がほうっと息をつく。
バンビエッタはまさか部下にパワハラ(無自覚)しただけでスプラッタ映画な展開になるとは思わなかった。
リハクもびっくりだ。
「・・・・」
だが一息つき冷静になると徐々にバンビエッタの内心は羞恥と怒り、そして恐怖で満たされる。
聖文字を与えられ自分を害することが出来る存在はほとんどいなくなった。
それは他の星十字騎士団を含めてもだ。
なのに今こうして自分の目の前に聖文字を持っていないにも関わらず自分を害する存在がいる。
目の前で床に正座させられてリルトットに説教されているジュダスというナニカ。
これから先このまま成長したらコイツはワタシより強くなる!
そしたら少しイジッただけのワタシを逆恨みしてきっと復讐しに来る!
(怖い。殺さなきゃ!今ならまだ殺せる!)
元来臆病なバンビエッタは恐怖にかられて爆撃(The Explode)を発動した。
バンビエッタからモノを爆弾に変える霊子が放たれる一瞬前、ジュダスは霊子の流れからバンビエッタの能力の発動を予見した。
同時にバンビエッタが正気ではないこと、このままではリルトットが巻き込まれることを理解した。
ジュダスは周囲には隠していた周囲の霊子の隷属の域まで達している制御能力を発動させてバンビエッタの霊子そのものを分解・吸収し、正座の姿勢のまま飛廉脚の応用で部屋から逃走した。
その際、自身の能力を無効化され呆然とするバンビエッタを跳ね飛ばすが、この時点でジュダスはリルトットごと爆破しようとしたバンビエッタのバスターをバインバインすることを決意する。
その後何故かバンビーズの面々と共にグランドマスターのハッシュヴァルトに説教された。
1年後に一護を見て絶望する主人公