ゲーマー兄妹はVRMMORPGを始めたそうです。   作:EDFストーム1

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読者 「ストーム1!失踪したんじゃ?!」
作者 「残念だったなぁ、トリックだよ」


それでは第二十九話です、どうぞ!


再会

「ずいぶんあの三本ヅノ男さんは怒ってらっしゃいますわね。

 でも強化って失敗することだってあるんですからあんなに怒らなくてもいいとおもいますわ」

 

「さすがステフだな。頭お花畑かお前は」

 

「ちょっ!?どういうことですのよ空!確かに失敗したのはあの鍛冶屋さんが悪いかもしれませんがまた素材を貯めて挑戦すれば....」

 

 ステフは強化が失敗したせいで激怒している三本ヅノ男に怒鳴られまくって困り顔をしている鍛冶屋に対してかわいそうと思っているようだがここにいる野次馬たちが思っていることはむしろその逆が多い。

 

「頭がお花畑のステフにわかりやすいように説明してやる。

 まずこのゲームのシステムには強化試行挑戦回数ってシステムがあってだな、あの剣の見た目からして多分アニールブレードだろうからあの剣の強化試行挑戦回数は8回だ。

 しかもあの剣は強化する前は+4だったってことはもう4回強化済み。そんで+0になったんだ、さすがに頭お花畑のステフでもここまで説明すれば今の状況理解できるだろ」

 

「で、でも確率は確率ですし鍛冶屋さんが怒鳴られるのは納得いきますんわ」

 

「お前なぁ、俺たちとずっといたせいで感覚麻痺してるだろ。普通の一般人の思考で考えてみろ、そんじょそこらのやつは100%中90%もあればほとんどその90%になると思ってるんだぞ。しかも今回の強化なんて+4から+5にするだけなら確かに70%の確率だがが4連続失敗だ。4連続強化失敗する確率なんて1%すらないレベルだ。俺たちに会ったばかりのお前だってお前が仕掛けてきたゲームに何連敗も負けまくって怒ってたじゃねぇか。それと同じ状況だ」

 

「まぁ俺も空の意見には同感だな。俺もあの三本ヅノ男の立場だったらああなってそうだし」

 

 確かに普通の一般人からしてみれば90%は高い。だがゲーマーからしては10%ははずれる危険があると思う奴もいるのだ。

 5%ですらめちゃくちゃ神!とか思ってしまうゲーマー達にとっては確率なんて所詮は飾りで成功するか失敗するか五分五分と心ではあの騎士もわかっているだろうがこのソードアート・オンラインはゲームオーバー=死なのだ。

 そんな環境の中で三本ヅノ男は1%未満の確率を引き寄せてしまった。もちろんそれがレアドロップとかだったら発狂したかのように喜ぶだろう。しかし今回は悪い方、悪い意味での1%未満である。

 

 それがどんな意味をするかはこのゲームの参加者達が一番よくわかっている。

 

 

「・・・・なんなのこの騒ぎ」

 

 不意にそんな囁き声が俺たちの右隣で発生しキリトはびくっとそちらを向いた。

立っていたのは、華奢な体つきの見覚えのある細剣使いだった。

 見た目こそ変装っぽいものをしているが声からしておそらくは”彼女”であることは間違えない。

「それがかくかくしかじかで.....」

 

「ふ〜ん....そういうことだったの」

 

 そんな中で空は彼女の質問に対していままでのあらすじを話していく。

 彼女も空説明に状況が理解できてきたようでふむふむと頷いている。

 

「お前ら一応俺たち変装とかしてるのにそんな気軽にしゃべっちゃったりしてて大丈夫かよ....」

 

「正直こんな変装あったことあるやつならすぐわかるし相手が相手だし別にいいだろ。

 それになキリト、こういう場合逆に女性に変な対応すると痛い目にあうんだぜ....」

 

「ふふっ、よくわかってるわね空は。それともキリトくんだったら違う対応してたのかな?

 そうだったら君の右足にカカト落としが炸裂してたわよ」

 

 と、とても美しい笑顔でとても恐ろしい言葉が一層のボス攻略で一緒にパーティを組んでいたこの世界で数少ない友人と呼べる相手から返事が返ってきた。

 

 

 

「や....やぁアスナ。久しぶり.....うん、本当久しぶりな気がするよ....」

「久しぶり...ってまだわかれてから数日しかたってないわよ。まぁいいわ。こんにちはキリト君」

 

 アスナにとっては数日かもしれないが俺たちはエクストラスキル習得のために数日間も山籠りしていたんだ。久しぶりと思っても仕方ないだろう。

 

「で、アスナはこの騒動どう思う?」

 

「私から言わせてもらうと失敗の可能性はあることは頼む方も承知してるはずでしょ。あの鍛冶屋さん、お店に武器の種類ごとの強化成功率一覧はりだしているじゃない。しかも、失敗した時は強化用素材アイテムぶんの実費だけで手数料は取らないって話よ。そこまで鍛冶屋さんが責められることはないと思うわ」

 

「アスナさん!あなただけが私の見方ですわ!」

 

「え、ほんと?そりゃ良心的だな....」

 

 

 その話を聞いた後だとあの三本ヅノ男への同情が少しはに落ちざるを得ない。だがアニールブレードはこれ以上強化できず、またあの剣を入手し直さなければならなくなってしまったのだがら三本ヅノ男に対する同情はなくなりはしない。

 

 

 

 そうこう話しているうちに剣士の仲間が二人ほど駆けつけてきて両側から肩に手を置き、懸命になだめている。

 

「....ほら大丈夫だってリュフィオール。また今日からアニブレのクエ手伝ってやるから」

 

「一週間頑張りゃ取れるんだからさ、今度こそ+8にしようぜ」

 

 

 あんた、その友達大事にしなよ。あと次は無茶な強化ギャンブルなんかするなよ。

 というしんみりした感慨を抱きつつ見守っている。

 

「みなさい空、白。友情はあんなにも素晴らしいものなんですわよ」

 

「「友達なんて少しでいい。作りすぎても人間強度が下がる」」

 

「ほんとあなた達は....」

 

 などと呆れるステフといつも通りの顔をしている空と白だった。

 

 

 

 

 

 仲間がなだめたおかげでどうやら三本ヅノ改めリュフィオールようやく落ち着きを取り戻したようで、がくりと肩を落としつつも広場から歩き出そうとしていた。

 その背中に、今までずっと黙ったままで痛罵に耐えていた鍛冶屋がおずおずと声を掛けた。

 

「あの....、ほんとに、すいませんでした。次は、ほんとに、ほんとに頑張りますんで....あ、もう、ウチに依頼するのはいやかもしれませんけど....」

 

 足を止めたリュフィオールは、鍛冶屋を見ると、打って変わって力ない声で言った。

 

「あんたのせいじゃねーよ。 ......色々言いまくって悪かったな」

 

「いえ.....それも、僕の仕事の内ですから.....

 あの、こんなことじゃお詫びにはならないと思うんですが....その、ウチの不手際で+0エンドしちゃったアニールブレード、もしよかったらですけど、八千コルで買い取らせてもらえないかと....」

 

 ざわ....と周囲の野次馬がどよめき俺やアスナも「おお」と声が漏れ、ステフは鍛冶屋の責任感に感動している。

 だが空と白、テトはやっぱりといったような顔をしている。

 現在もアニールブレードの市価はおよそ一万六千コルというところだ。それに対して鍛冶屋が買い取ると言った八千コルはその半額だ。しかも、これ以上強化できなくなってしまったエンドのアニールブレードなど市価ではおそらく四千コルすればいいほうだろう。要はお詫びにしては破格すぎる提案なのだ。

 リュフィオールとその仲間二人もしばし呆然としていたが、やがて顔を見合わせ、三人同時にゆっくり頷いた。

 

 

 

 

 

 一連の出来事が終幕し、三人組も、野次馬たちの姿も消えた広場に、カン、カンというリズミカルな槌音が響き始めた。先ほどの鍛冶屋も鉄床の上で、武器の製造を始めたのだ。

 空たち6人は円形広場のベンチに並んで腰を下ろし、キリトはなんとなくその響きに聞き入っていたが、空と白はなにか考えてるようで二人でブツブツ話し込んでいた。

 

「.....で?」

 

 不意に隣でそんな声が響き、俺はぼんやり視線を向けた。

 

「へ?なに?」

 

「.......何じゃまいわよ。あなた達がここに座らせたんじゃない」

 

 アスナがジロリと俺たちを睨む。

 

「え、あ、そ、そうだっけ。ごめんちょっと考え事してて....」

 

「考え事って.....キリト君も、あの鍛冶屋さんに強化頼みに来たんじゃないの?」

 

「え、いや、違うけど.....アスナは強化頼みに来たのか?」

 

「え、違うの?私はマロメの村でウルバスの東広場に、なかなか腕のいいプレイヤー鍛冶屋が出現したって噂を聞いたから来たの。

 キリト君のことだから東の岩山エリアでレッド・スポテッド。ビードル狩りでもして片手剣用の強化素材集めでもしてると思ってたわ。」

 

「お....おお」

 

「.....何、その反応?」

 

 へー、マロメではそんな噂がながれていたのかー、単純にその情報は知らなかったので驚いていた。山奥に籠もりっぱなしだったから知らないのは当たり前か.....と言うよりだ。

 

「いや....ほんの数日前まで、パーティーメンバーの名前表示すら見つけられなかった人のお言葉とは思えなくて.....あ、ひ、皮肉じゃないよ。マジで感心したんだ」

 

「..........」

 

 本心からそう言ってることを理解してくれたのだろう、アスナは微妙な表情ながらもやや語調を和らげ、

 

「最近いろいろ勉強してるから」

 

と呟いた。俺はなぜか嬉しくなり、繰り返し頷いた。

 

「で、今、噂を知ったようだけどどうするキリト君?あの鍛冶屋さんに強化頼んでみる?」

 

「いや、俺はまだ強化しないかな。その噂を信じてないわけじゃないけどあの光景を見た後じゃどうも強化してみるきになれない..... 

 それにもっと信頼できる情報が俺にはあるし、なぁ空」

 

 先ほどから白とぶつぶつ話し込んでいる空にキリトが話しかける。

 

「あ、どうした?ちょいと只今取り込み中なんだが」

 

「いやぁ、武器強化の話だよ。ほら前に俺に言ってたやつ」

 

 その話を聞いて空の目つきが少し鋭くなりキリトとアスナに向ける。

 

 

「なんだ、もしかしてお前らさっきに鍛冶屋に武器強化頼もうとしてるのか?」

 

「えぇ、ほんとは空達も武器強化目的だと思ってたからこの後にでも強化成功率上げるために6人で素材集めにでも行こうかと考えてたけど」

 

 アスナが武器強化目当てなら素材集めにでも誘うかとは考えてたが大方予想通りか。

 まぁどうせお目当はドロップ率8%のニードル・オブ・ウインドワスプってところだろ

 

「素材収集なら俺たちも少し素材が必要だから全然OKだ。だけどあの鍛冶屋は少し待ってた方がいいぞ。俺や白の目から見てどうもあの鍛冶屋は怪しい気がする。なんつーか、あの目、すげー動揺と言うか後悔と言うか.....とにかくあいつはやめとくんだな。

 それにキリト、おめーにはとっておきの情報教えたじゃねーか」

 

 

 その情報を知らないアスナだけは?マークを浮かべている。

 

「この際だ、アスナにも教えてやる。もし、あの鍛冶屋で武器強化を見送ってくれるなら俺が必ずお前の持ってるウインドフルーレの残りの強化試行回数全て成功させてやる」

 

「なっ!?」

 

 空のとんでも宣言にさすがのアスナも目を大きく見開いているようだ。その気持ちよくわかるぞアスナ、俺も聞いたときは何言ってんだこいつって思ったから。

 

「ほ、ほんとにそんなことできるの?ていうかどうやってそんな確率を操作するようなこと....」

 

「あぁ、必ず成功出来る。やり方は企業秘密ってことで....」

 

「アスナさん、空の言ってることは本当ですわ。違うゲームでしたけど私は確かに見ましたの」

 

 あちらの世界、獣人種とのバーチャルゲーム、神霊種との双六ゲームで確かに空達は確実にNPCや賽の目を計算し、私達を圧倒してきた。あちらの世界の魔法もないような世界のゲームくらい空と白に掛かればその程度造作もないことだろうと彼女は思っている。

 

 

「ほんとに、ほーーんとに絶対なのよね」

 

「あぁ絶対だ。なんなら失敗したら俺の全所有アイテム賭けてもいい」

 

「........」

 

 そこまで言われたら引くしかないじゃないとため息をつきながら、

 

「わかったわ。キリト君も信用してるみたいだし。それに、同じパーティー組んだ仲だしこっちの方がよっぽど信頼できるわ。その代わり、ちゃんと素材集め手伝って貰らうわよ」

 

 

「それ位なら全然苦じゃねぇよ。たかだか8%。さっさと集めきってやるさ」

 

 

 (これでアスナはあの鍛冶屋には関わらねーな、後は白と夜にでも話し合うとするか....)

 

 

 あちらの世界に居すぎたせいかはわからない。

 ただ、その程度のイカサマじゃ到底あちらの世界のイカサマにはかなわないなと思う空であった。

 

 

 




やっと帰ってまえりました。ストーム1です (^^:

なんでまた更新ここまで遅れたかって?
最初に受かった大学以外全落ちしてそれどころじゃなかったんだよ!!!(血涙)
今回の確率んところとかまさにだよ。
受験生のみんな!A判定でも落ちることなんてザラなんだぜ!(三校A判で落ちた)
だからしっかり夏休み前から死ぬ気でやんないとまわりの奴らめちゃ伸びてって置いてかれるぞ!
高校の先生たちも同じようなこと言ってるけどガチだから.....


まぁこんな暗い話は置いといて、本当に読者の皆さんお久しぶりですm(_ _)m
前書きであんなおふざけ書いたけどぶっちゃけみんなそんな気持ちなんだろうなぁと思って....
そのお詫び的なものもこめて今回はかなり長めに書いてます。

まぁあれですね。俺みたいに落ち込んで数ヶ月たっても更新しないようなやつでも気長に待ってれば最新話くる可能性もあるってことだね。
更新してない間の感想とかも案外励ましになったりしてうれしかったです♪


それではまた次回でお会いしましょう!

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