フェノメノン   作:xtakashi

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主人公無双その2
やはり、主人公が活躍すると、爽快ですよね。


第16話 決着

 

 

 

 サラ・カーティスには、身寄りがなかった。

 

 サラの両親は、サルデニア国内で、聖職者の地位にあったとされるが、詳細は分かっていない。

 サラの物心がつく前に、両親ともに他界してしまった。

 その後、紆余曲折の後、サラが3歳になるころ、遠い縁戚であった、大商人である、ボールドウィン家の娘として、預けられる。

 そして、ボールドウィン家は、サラの以前の実家に関するものすべてを、棄却(ききゃく)してしまった。

 

 ボールドウィン家は、サラを受け入れはしたが、それは彼らが決して望んでいたことではなかった。

 家庭内で、暴力を伴う虐待などはされなかったが、他の兄弟たちと比較し、ボールドウィン家の両親からは、一つ壁を作られた態度、対応をサラはとられた。

 どちらかというと、両親はサラに対して、基本無関心、無頓着だったという表現が近い。

 そのためサラは、幼少期は基本的に一人で、寂しい気持ちを抱えながら、過ごしていた。

 

 サラが6歳のころ、大きな事業の商談があり、たまたまボールドウィン家に連れられて、王宮へと足を運んだことがあった。

 

 そこで、当時同じ年のころであったアレイナと、運命の出会いを果たし、互いに友情を育むきっかけとなる。

 ボールドウィン家も、王家の娘に、サラが気に入られることは、今後のビジネスをするうえで、メリットが大きいと考えた。

 そのため、その後もボールドウィン家が王宮へと赴くときには、ちょくちょくサラも連れ立っていくこととなった。

 

 

 その4年後、サラの些細な失敗から、ボールドウィン家の怒りを買い、サラは勘当を言い渡される。

 

 唯一の身寄りを失い、失意の底にあったサラに、救いの手を差し伸べたのはアレイナであった。

 

 今まで、まったくと言っていいほど、わがままを言ってこなかったアレイナが、サラを助けることに関しては、頑として譲らなかった。

 娘の熱意に根負けしたライナス国王は、サラを住み込みで、王宮で働く何かしらの職業従事者として受け入れるのなら、かまわないとした。

 

 

 周りの人間は、サラはてっきりアレイナのメイドとして、働くものと思っていたが、サラが選んだのは「騎士」として、国に、王家に仕えることであった。

 

 サラがボールドウィン家で、鬱屈した気持ちを抱えながら過ごす中、唯一彼女を慰めたのが「本」であった。

 ボールドウィン家は、サルデニア国内でも有数な、豊富な蔵書を抱えていた。サラは、無関心な家族から逃げるようにして、一日の大半を蔵書部屋で過ごすことが多かった。

 

 

 彼女は本の中でも、英雄譚を好んでいた。その中でも、サルデニア王国に伝わる、勇者の物語が大好きであった。

 

 孤独で、無気力で、うじうじとした自分とは違う。

 物語の勇者はいずれも、勇ましく、逞しく、力があって、多くの人々に囲まれ、そしてその人々を守る英雄であった。

 

 サラは、自分が持ち合わせていないもの、すべて持っている勇者に対し、大きな憧れを持つようになる。

 

 

 だからこそ、サラは騎士を目指した。

 

 

 身寄りのない自分を助けてくれて、そして病気の自分を心配してくれる、大切な友人を守れるような、強い勇者になりたかった。

 

 ひ弱で、孤独で、無気力な自分ではない、誰もが認め、誰もがうらやむ、立派な勇者になりたかった。

 

 その決意として、ボールドウィン家から勘当され、姓を失ったときに、おとぎ話にあった「カーティス」という家名を、新たに自分でつけた。

 

 

 幸運にも、サラには才能があった。

 

 アーマーフレームの「適正あり」と判断され、実績をつみ、ついにはクレイモア騎士団の誉れある団長にまで上り詰めた。

 

 王女の後ろ盾があったのだろうと、陰口をたたく連中もいたが、サラは実力で黙らせた。

 

 団長の地位は、サラが自らの手でつかんだ、誇り高き力の象徴でもあった。

 そして、騎士団のメンバーも、彼女にとって、出自や、性別で差別することもなく、対等に接してくれる、大切な仲間だった。

 

 

 

 

 ある時、アレイナは、国を守るために「勇者」を異世界から召喚すると言った。

 それを聞いたサラは、ひどく()()()()

 

 まるで、自分が無意味だ、無力だと言われているような気がして、サラは愕然とした。

 

 もちろん、アレイナがそんな意味でいったのではなく、この国を守るため、あらゆる手立てを考えたうえでの選択であることを、頭ではサラも理解していた。

 

 それでも、サラの心に、しばらくは黒い感情が渦巻いていた。

 

 ただ、それでも、その勇者が本当に素晴らしい人物であれば、諦めもつく。

 自分が昔あこがれていたような、勇ましく、覇気があって、魅力あふれる英雄であれば、自分も今抱える黒い感情を、すっぱりと忘れられるだろう。

 

 そうサラは考えていた。

 

 

 しかし、実際は違った。

 現れた勇者は、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 その目をみていると、サラは、どうしても自分の中の苛立ち、もどかしさが抑えられず、思わず厳しく当たり散らしてしまう。

 その勇者を目の前にすると、サラは、自身のほの暗い、心の隅っこの部分が、なぜか刺激されてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「……フフ……ハハハハ!! いいぞ! そうだ、そう来なくては面白くない!!」

 ロレントは、未知の強敵に対し、高ぶる気持ちが抑えられないでいた。強い敵と相まみえ、心が高揚するのは、戦人としての性か。

 

 自身を喪失しかかっていたドミニクは、頼もしい将軍の姿を目にし、改めて敬意の念を強くする

 

「ドミニク!! 貴様はやつの左から回れ、俺は右だ!! ……おい、貴様と貴様も、我らの攻撃と併せ、支援射撃を行え!」

 ロレントは、矢継ぎ早に指示をだすと、エメラルド・ケイオスの推進装置を勢いよく、作動させる。

 あわててドミニクも、ロレントに合わせて行動を開始した。

 

 まずい! と、見ていた騎士団の団員達は目を覆った。

 いくらあの味方が強くとも、しょせんは汎用型フレーム。ランカー二人からの挟み撃ちにまで対応できるとは、とても考えられなかった。

 

「……いい気になるなよ貴様! 大方、機体も汎用型フレームに見せかけた、オリジナルフレームだろう! だが、いくら強いとはいえ、私とロレント将軍の同時攻撃に、対応できるはずもない!!」

 威勢を取り戻したドミニクが、未知の機体に対して吠える。

 

 そうこうしているうちに、未知の機体が支援攻撃をかいくぐり、ドミニクの方向へ急接近を仕掛けてきた。

 機体は剣を携え、ドミニクに向かって、振りかぶるそぶりをしている。

 

(ふん、どっからでも斬り付けてこい! 剣を受け止めてしまえばこっちのもの! そのすきに将軍が背後から、奴を攻撃できる! そうなれば、いくら奴とて敗北は免れん!!)

 

 ドミニクは、過去一番の集中力をもって、敵の剣の動きを見定めようとしていた。

 

 今の自分なら、奴がどこからどう斬り付けてこようが、一度であれば確実に受け止められる。

 そうなれば、ロレント将軍であれば、確実に致命の一撃を奴に入れることができる。そうなれば、こちらの勝ちだ。

 ドミニクは、そう考えていた。

 

 

 

 

 

 だが……。

 

 

 

 

 

  

「なっ………………蹴りだとおぉぉ!!?」

 未知の機体は、斬りつけてこなかった。

 

 機体はとっさに跳躍し、勢いそのまま、文字通り、ドミニクに対して「蹴り」を繰り出してきたのである。

 剣の動きばかりに気を取られていたドミニクにとって、完全に意識外からの一撃。

 

 ドミニクはその蹴りを、防ぐことも、避けることもかなわなかった。

 そのまま、バウンダー・グリーンの頭部へ、飛び蹴りがクリーンヒットする。

 

 しかも、それで終わらなかった。

 未知の機体は、蹴りを放った反動をそのまま利用し、今度は、背後から近づくロレントの方へ、方向転換をしたのだ。

 勢いそのまま、未知の機体は、今度こそ本当に剣を振りかざす。

 

「ぬうううああああああああ!!!!!」

 完全に不意を突かれた形となったロレントは、それでも未知の機体へ、気迫と共に戦斧を振り下ろす。

 

 

 

 だが、一歩遅かった。

 

 

 

 その場で、まるで閃光が走ったような感覚を、見ている人間が感じていると、ザシュウッッ!! という大きな音がなった。

 

 未知の機体が、ふわりと地面に着地をする。

 そして、遅れて、ゴトッという鈍い音が、あたりに響いた。

 

 

 

 周囲の人間の誰もが、目を見開いた。

 

 

 

 その音の正体は、跳ね飛ばされた、()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 

 そして、その直後、残された首から下のアーマーフレームも、地面にうつぶせで倒れこみ、そして炎上する。

 

 

 敵味方、誰もがあっけにとられたように、惚けていた。

 

 目の前で起こった事実を、誰もしっかりと受け止められていない。

 

 続いて、未知の機体から、よく通り、響く声で、次の言葉が述べられた。

 それは、騎士団たちにとって、ここ数日一緒に過ごしてきた、例の、黒髪の男の声だった。

 

 

「敵総大将の首はとった。これより()()()()()()()()。動けるものは俺に続け」

 

 

 状況をようやく理解したクレイモア騎士団のメンバーから、この日一番の歓声が上がった。 

 

 

 

 

 

 

「おおおおおお!!!! バカなバカなバカなバカバカなバカなバカな!!!! こんなことがっっっ!!! こんなことが起こるはずがないっっ!!!! 何かの間違いだっ!!! そうに決まっている!!!!」

 

 ドミニクが、周囲を顧みず、我を忘れて慟哭する。

 自分の目標だった人、尊敬する人が、見ず知らずの敵にあっさりと敗北したことが、ドミニクはどうしても認められなかった。

 

「ドミニク副将!! ここはいったん退却するべきです! ロレント将軍が倒れた今、我々は負けたのです! これ以上兵を消耗させるのは、得策ではありません!!」

 

 部下から必死の呼びかけに対しても、ドミニクは悲嘆にくれるばかりで耳も貸さない。

 

 それならばと、2機のアーマーフレームが、バウンダー・グリーンの両脇を抱えるようにして持ち上げ、移動を開始した。

「離せえええぇぇぇぇ!!! 私は、仇を、ロレント将軍の仇を、とらなければ!!! 何をしているか貴様ら!! 離さんかああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 上官の言葉を無視し、部下たちはドミニクを引きずるような格好で、退却を開始した。

 

 それに対しクリスは、これ以上の深追いをしようとしなかった。

 

 

 

 ウラテアは、サルデニア侵攻のために、80機もの汎用型アーマーフレーム、2機のオリジナルフレームを用意した。

 そんな大軍を用意しておきながら、結果として、総大将(ランカー)1名の死亡、オリジナルフレーム1機を喪失。汎用型フレームも、60機以上失うという、歴史的な大敗北を期することとなる。

 

 

 

 こうして、第一次サルデニア・ウラテア戦役は、サルデニアの歴史的勝利で幕を閉じたのだった。

 

 

 




ひとまず、第一次の戦争は終了です!
次回でいよいよ、第1部の最終回となります。
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