第20話より、ついにクリス君の学校編が始まります。
意外なこと? にクリスは、学校へ行くことに対して、素直に応じた。
クリス自身、学校という場所に興味があったこと。
彼もまた、自分の才覚がどれほどのものか知りたかったこと。
入学から日々の授業料まで、キースが融通を聞かせてくれるため、アーサーには迷惑をかけないこと。
そうした理由がいくつも重なっていたことあり、クリスは学校へ行くことを承諾する。
事実上、保護者の立場である、アーサーへの迷惑を考えているあたり、クリスは、子供ながらにアーサーのことを思っていた。
とはいえ、今すぐに入学、ということにならず、ひとまずクリスが15歳になるまで、学校入学は延期されることとなる。
そして、クリスが15歳になった次の年の4月。
無事に「ロザライム士官学校」へ編入されることが決定した。
「まあ、こっちのことは心配するな。とりあえず、学校を楽しんでこい。たまにはメールを送れよ!」
心配の気持ちを隠し切れないアーサーをしり目に、クリスは学校のチラシを読みながら、初めての学生生活に心を躍らせるのであった。
ロザライム士官学校は、その名の通り、ロザライムの国防を将来担う、軍人を養成することが目的である。初等部、中等部、高等部と、年齢に応じて大きく3つの学舎に分けられており、ロザライム国内における、最大の教育機関である。
初等部は、基礎学習と体力づくりが中心。
中等部は、ある程度、本人の希望や推薦によって、クラス分けが行われる。
高等部からいよいよ本格的に、将来希望するコースに応じて、専門的な教育と軍事訓練が行われる。
ちなみに、必ずしも初等部から入学する必要はなく、中等部や高等部からの途中編入も可能である。
また、学校には寮が併設されており、中等部では希望者のみ対象だが、高等部からは基本的に全員が寮住まいとなる。
親元を離れ、兵士として、軍人としての自己管理能力、節制の精神、自立心を、学生に育むませるために、学校の方針として、採用されているのだ。
始業式も
フォルケ第2寮館。
ロザライム士官学校中等部・高等部へ通う学生のうち、アームドフレームのパイロットコースを希望する者が住むことになる寮だ。
その
それが、高等部の3年を過ごすための、クリスの部屋となる。
ちなみに、寮は二人一組で、一部屋を利用する形式となっていた。
そんな、部屋の前に立つクリスの前に、不意に後ろから声がかかった。
「やあ……君が、僕の
振り返ったクリスの前に、一人の男が立っていた。
声の主は、金髪でサングラスをしており、年頃も、背の高さもクリスと同じくらい。
白のシャツの上から、リーフ色のアーミージャケットを羽織っており、その恰好は妙に様になっていた。
サングラスを外しながら、はにかむ笑顔はまぶしく、妙に色気がある。
そして、その目は、
「僕はアルフレッド。このフォルケ第2寮館に、中等部のころからずっと住んでいる。君が高等部から入る、新人さんだろ? 歓迎するよ。よろしく」
そうして、右手を差し出すアルフレッド。
「俺はクリス。よろしく」
簡単に言葉を返したクリスも、笑顔を浮かべながら、手を差し出して、アルフレッドと固く握手をかわした。
後に、アルフレッドは語る。
クリスと友人になれたことは、「
「よ~しみんな聞け。長期休みも終わり、今日から、栄えあるロザライム士官学校、高等部の授業が始まる。俺は、このクラスでお前たちの担任を務めるハリー・コールだ。俺のことはハリー教官と呼んでくれ。さて、まずお前たちに伝えたいのは、もう、お前たちは立派なロザライム軍人の候補生であるということだ。昨日までの中等部では、まだまだケツの青いガキということで、優しく丁寧に大人が世話を焼いてくれただろうが、今日からはそれが違うと知れ!」
ハリー教官は、いったん一呼吸を置くと、そのまま話を続ける。
「今日から3年間、立派なロザライムの軍人、兵士となるための専門教育を、俺たち教官は、お前たちに徹底的に叩き込む! まず、俺がお前たちに教えたいのは、必要なのは戦う技術だけじゃない。もっと大切なのは、国を思う気持ちだ。ハートの部分だ。ロザライムを愛し、ロザライムのために戦い、そしてロザライムのために死ぬことを当たり前とし、誇りに思え。軍人として、兵士として、根本となる一番大切な心得、考えだ。このことを胸に刻み、絶対に忘れるな! そのうえで、お前たちにとって必要な力、技術を俺は教えていく。いいな!」
はい! という大きな掛け声とともに、ハリー教官の言葉を、真剣な面持ちで、クラスの生徒たちは聞き入る。
その中に、クリスやアルフレッドの姿もあった。
「さて、今日は初日ということで、まずはお前たちの現在での体力、技術、知識を見せてもらおうか。では、第2運動場まで全員集合! 駆け足!」
ハリー教官からの合図を受け、生徒たちは慌てて支度をして、教室を出た。
「なあ、クリス。君は、アームドフレームの操縦経験はどのくらいなんだい?」
運動場までの道すがら、アルフレッドがクリスに対し、話しかけてきた。
「……実は、作業用のフレームしか乗った経験はない。それも、操縦し始めてから、大体2年くらいかな」
「へえ~……そうなのかい?」
クリスの答えに対しアルフレッドは、意外そうな顔で、クリスを見る。
「そういうアルフレッドは、どのくらい乗ったことがあるんだ?」
「
ふふ……聞いて驚け。僕の父上はあの、ロザライム史上、最年少で左官にまで上り詰めた、英雄であるキース少佐……その直属の部下でもある! そして僕自身、幼いころから将来を期待され、父上から直々に英才教育を賜ってきたんだ」
ふふん、と自慢そうに、胸を張りながら話すアルフレッド。
「ちなみに、今からアームドフレームの操縦テストも多分すると思うけど……まあ、2年程度、作業用フレームの操縦経験しかないのであれば、結果は厳しいかもしれないね。とはいえ、クリスは見た感じ、伸びしろはあると思うから、これから頑張ればいいと思うよ。ちなみに、分からないことがあれば、先輩かつ貴族である僕に、遠慮なく聞いてくれたまえ」
上から目線なのか、親切なのか、いまいちつかみどころのないルームメイトに対して、ハイハイと返事をするクリス。
そうこうしているうちに、クリスとアルフレッドを含む、総勢30名の生徒が、第2運動場に到着した。
「よう、アルフレッド! お前は相変わらず、そんな
運動場で指示を待つアルフレッドとクリスに対し、茶髪の、ひときわ大柄な男が話しかけてきた。
アルフレッドは、声をかけてきた男の顔を見るなり、眉をしかめる。
「……レノ、また君か。この士官学校において、平民、貴族の身分さはあれど、それよりも実力がものをいう世界だよ。君のそうした態度は、ここではあまり歓迎されないものだと、僕は思うけどね」
「はっ、実力がすべてだなんだっつーのは、そんなものは
ポケットに手を入れ、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべ、粗野な雰囲気を醸し出すその男の名はレノ。
よく見ると、レノは取り巻きらしい連中を3人引きつれていた。
いずれも、クリスに対して、汚いものでも見るような、見下した目線でじろじろと見ている。
「貴族と平民では、確かにいろいろと違いはあるかもね。でも、同じロザライムの国民であることに変わりはないし、貴族と平民が仲良くしてはならない、などといった法律もなかったはずだけど?」
きっぱりと言い放つアルフレッドに対し、レノは面白くなさそうに、ちっと舌打ちを打った。
「けっ……相変わらず、お優しいことで。……おい平民、この学校では、自分の立場ってもんをわきまえた方が身のためだ。せいぜい、俺たち貴族に迷惑をかけることだけは、すんじゃねえぞ」
一方的に言いたいことを言ったレノは、取り巻きを引き連れて、アルフレッドとクリスのそばを離れていった。
「すまないな、クリス。あいつ……本名はレノ・パトリック・ニールセンというんだが、僕の初等部からの顔なじみだ。実家の権威を笠に、ああやって、いつも平民を見下している。実際、確かに家柄はいいし、成績も悪くないし、アームドフレームの操縦も、そこそこうまいんだ。まあ、僕ほどじゃあないけどね!」
さりげなく、自分自慢も忘れないアルフレッドはそう言うと、クリスの耳元に顔を近づけ、声を落とした。
「……まあ、ここだけの話なんだが、あいつの親が学校の理事長と仲が良くってね。この学校の教師でさえも、あいつには、あんまり強く出ることはできない、なんてもっぱらの噂さ」
「へ~そうなのかい?」
「へ~って……クリスはあいつのことは気にならないのかい?」
「ああ、別に気にしていないよ」
心配するアルフレッドをよそに、クリスは表情も変えず、どこ吹く風、といった調子である。
「ふぅ~ん……君は結構、図太い性格をしているんだな?」
褒めているんだか、けなしているんだか、よくわからない感想を言うアルフレッドであった。
「ようし小僧ども。これより、お前たちの現段階での実力を図るために、各種テストを行う! まずは体力テスト、実技テスト、最後にフレームの操縦テストだ。とはいえ、あくまでこれは現段階で、お前たちの実力を、我々が把握するためのものだ。結果が悪かったとしても、別に暗くなる必要はない。これから励めばいい! では、番号順に整列!」
ハリー教官の掛け声とともに、30名の生徒が整列する。
こうして、クリスにとって、士官学校での最初の課題が始まった。
新キャラクターが登場。
そして第21話では、ようやく主人公無双の一端が見れまする。