フェノメノン   作:xtakashi

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物語が進みます。

皆さんお待ちかね、ようやく女性キャラクターが出ます。


第22話 エクウェス祭

 

 

 

 あの、歴史的な日の後、クリスを取り巻く環境は、一変した。

 クリスを見る周りの目、そして周囲の人々の振る舞いが、まったく違うものとなった。

 

 あるものは尊敬の念を持ち、あるものは憧れのまなざしを、クリスに向けた。

 特に、平民出身の人間は、クリスのことをまさに「英雄」として、見る傾向が強まった。

 

 

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 あるものは羨望の気持ちを抱き、あるものは嫉妬の炎で身を焦がし、あるものは憎しみの感情も持つにいたるのであった。

 

 そんな渦中のさなかにあるクリスに対し、以前と変わらない態度で接するものは少数派であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、クリス。ここにいたか。……校内はあいかわらず、君の噂が、色々と独り歩きしているようだな。まったく、栄えあるロザライム士官学校の生徒とあろうものが、根も葉もない噂に振り回されるなど、嘆かわしい限りだよ」

 

 とある平日の昼休み。

 食堂で一人、休憩していたクリスの前に、アルフレッドが近づいてきた。

 両手には、飲み物のホルダーをそれぞれ抱えている。

 

 あの日からすでにひと月以上経過し、多少は周囲の動揺も一時期よりは収まってきている。

 とはいえ、相変わらず多くのクラスメートから、クリスは遠巻きに接せられていた。

 

 クラスメートであっても、気軽にクリスへ声をかけるものも少ない。

 そうした中、若干上から目線な気もしなくないが、アルフレッドは気にせず声掛けをする、数少ない一人であった。

 

 二人は、ひとしきり談笑したのち、おもむろにアルフレッドが口を開いた。

 

「ところでクリス、再来月に行う合同演習大会だけど、これについて、君はちゃんと内容を把握しているかい?」

「いや、全然。説明冊子もまだ読んでない」

「やっぱりね……まったく君ってやつは……。もう少し、学校行事とかそういうのにも、興味関心を持った方がいいと、僕は思うんだけどね」

 やれやれと、ため息をつくアルフレッド。

 

 アルフレッドは一つ、咳ばらいをしたあとに、言葉を続けた。

「再来月に行われる合同演習大会……通称、エクウェス祭は、クラス混合で行われる、アームドフレームの技術大会のようなものさ。毎年盛り上がる、うちの士官学校におけるビッグイベントの一つなんだよ。

 特に、最後に行われるチーム対抗の模擬戦は、学校関係者にも広く公開されていて、毎回白熱した戦いになること請け合いさ。そこでの成績に応じて、上位者はランク付けもされるから、そこで、同じ学年での実力がはっきりと明らかになってしまうのさ」

 

 意気揚々と説明をするアルフレッド。

 そんな彼に、クリスは適当に相槌を打ちながら聞いていた。

 

 

 

 

 

「……おい、平民」

 と、そこで、クリスを一方的に呼びかける声が聞こえる。

 

 アルフレッドとクリスが、声の方を見ると、そこに立っていたのは、口をへの字に曲げ、クリスを見下ろすレノと、その取り巻きたち。

 

 仁王立ちするレノは、腕を組み、まるで「不機嫌が服を着ている」といったような有様であった。

 対照的に、取り巻きの3人はおどおどした態度をとり、小声で「ちょっとレノさん」「やめときましょうよ」などと、レノに対してささやいていた。

 

 そんな取り巻きたちの声をしり目に、レノは口を開く。

「いいか、確かにこの間の試験の時、お前は凄かった。……確かにすごかった。それは認めよう。でも、勘違いするな! あれは、あくまで()()()()()()()()()()()()()()()()!! 

 実際のアームドフレームの戦闘ではそうはいかない! あんな綺麗な、型通りの動きなんて、実戦では存在しねぇ! だいたい、練習でうまくできていても、本番ではビビッてうまくできない、なんてのもよくある話だ! 俺は絶対に、お前を認めない! 今度のエクウェス祭、お前のいるチームとあたるみたいだが、必ず、化けの皮を剥いでやる! 調子に乗った平民がどうなるか、俺が思い知らせてやるからな! 覚悟しろ!」

 

 認めているのか、いないのか。

 クリスのことを指さし、息も荒く、矛盾した言葉を発しながら、一方的に宣言をするレノ。

 

 そして、レノはそのまま鼻息荒く、踵を返し、ずんずんと離れていってしまった。

 その後ろに、慌てて取り巻きたちも続く。

 

 

 

 

 

「…………」

 突然の出来事にあっけにとられ、言葉をなくしてしまったアルフレッドとクリス。

 

「………………ええっと、どこまで話したかな? ああ、そうそう。そのチーム対抗戦のチームも、今日の朝から発表されていたな」

 そういったアルフレッドは、手元の端末を取り出して、最新情報にアクセスした。

 

 ロザライム士官学校では、中等部から全員に、この小型端末が支給される。

 日々の授業の電子テキスト閲覧、自身のスケジュール管理、お知らせの確認など、これ一台で大概のことができる優れモノだ。

 

「ほら、ここを見なよ。……1チームあたり大体5~6名に分けられている。幸いと言っちゃあなんだけど、僕とクリスは同じチームだね。対戦の形式は、まずは予選のバトルロワイヤル。これは、5チーム入り乱れての乱戦で、チームを入れ替えて例年、計4回ほど行われる。制限時間内に生き残ったメンバーが多い、上位2チームが、次のトーナメントへ続くんだ。もちろん、下位3チームのメンバー全員がやられた場合、制限時間内であっても、その時点で上位2チームのトーナメント進出が決まる。で、確かにレノのチームとは、最初のバトルロワイヤルで、我々とかち合うみたいだ」

 ふんふん、といった様子でクリスは耳を傾ける。

 

「さすがはアル。物知りなんだな」

「ふふ、まあね。前も言ったかもしれないが、僕は初等部からいるからね。学校のことなら、何でも聞いてくれてかまわないよ。

 ……とりあえず、僕たちがやるべきことは、他のメンバーとの作戦会議だな。エクウェス祭で求められるのは、単なる個人技量だけじゃあない。作戦の立案能力と、遂行力、仲間とのチームワークなんかも、上位に進むためには重要だし、最終的なランキングに影響するからね。……放課後に、さっそく僕たちのチームメンバーと、顔合わせと行こうか」

 

 

 

 

 ロザライム士官学校は、国内最大の士官学校であり、その施設面積は広大である。

 クリスの入学した高等部では、大きく5つのエリアに分かれている。

 

 1つ目は、各種事務所、教員室、イベントを行う講堂などが存在する「中央エリア」

 2つ目は、教室、実験室、図書館、資料館などのある「文化エリア」

 3つ目は、運動場、武道場、ジム、プールなどのある「トレーニングエリア」

 4つ目は、兵器・武器格納庫、整備場、演習場、射撃場などのある「ミリタリーエリア」

 5つ目は、生徒の寮、食堂、談話室などのある「学生エリア」

 である。

 

 平日は、基本的に17時頃にカリキュラムは終了し、その後は放課後。

 

 放課後に、学生が何をするかは、基本的に学生の自主性に任されている。

 自主練に励む者、スポーツを行う者、勉強する者、休息をとる者など、さまざまだ。

 平日の学生の外出は許可制。休日、祝日においての学生の外出は、特に制限はない。

 

 ロザライム士官学校の数ある施設の中で、生徒に隠れた人気を誇るのが、「学生エリア」にある談話室だ。

 

 広々としたスペースに、観葉植物や風景画がいくつも飾られ、適度に落ち着いた雰囲気が、部屋全体を覆っている。

 学校敷地内ではあまり見られない、ソファー席もいくつか用意されており、生徒がゆったりとくつろげる空間だ。

 

「文化エリア」では図書館もあるが、そちらは飲食、私語が禁止とされている。

 その点、談話室は飲食の持ち込みも可能で、私語も禁止されておらず、ある程度騒がしくしても問題ない(もちろん、あまりにも騒がしい場合は注意されるが)。

 学生は、そこで思い思いに勉強をし、語り合い、昼寝をする……そんな、ロザライム士官学校の、学生の憩いの場となっているのが、この談話室なのだ。

 

 そんな談話室の一角で、5人の男女が同じテーブルで話し合いを行っていた。

 いずれも高等部の1年生であり、話題の中心は、再来月に行われるエクウェス祭についてである。

 

 先ほどから、話の進行を担い、集団の中心として熱弁をふるっている金髪の青年が、アルフレッド・フォン・ウォルコットだ。

 一方、その横に座り、口数少なく、ドリンクのストローに口をつける黒髪の青年は、クリスである。

 

「……と、まあ以上が、簡単ではあるが、我らがロザライム士官学校の誇る、年に一度のエクウェス祭の輝かしき歴史、というわけさ」

「おいおい、アル。俺たちはそんな話をしに、集まったわけじゃあないだろが」

 意気揚々と語るアルフレッドに対し、呆れたように口をはさむ青年が一人。

 

「いいじゃないか、グレン。色々と知識の足りない編入組に対し、歴史も含めた様々な学校のことを、しっかりと伝えていくことも、我ら初等部組の役割だろ?」

「……まったく、お前のその、『お節介』で『語りたがり』な性格は、昔からかわんないのな」

 

 グレンと呼ばれたその青年。

 フルネームは、グレン・ヴァン・フォード。

 短く、シンプルにセットされた茶色の髪を持ち、がっしりとした肩幅と、制服越しにも伝わる力強い体格の持ち主である。

 背が高く、目や、鼻といった顔のパーツの彫りは深く、はっきりとした顔立ちだ。まだ10代にも関わらず、ずいぶんと大人びた印象を周囲に抱かせる。

 ちなみに彼は、アルフレッドと同じく、初等部から士官学校に通っている。

 

「とにかく、ありがたい歴史の授業はそのくらいにして、いい加減、本題に入ろうぜ。大会は、もう再来月に迫っているんだしな……なあ、アイビー」

 

 

「グレンさん、今の言葉遣いは、貴族としてどうかと思いますけど、それは脇に置いておいて、わたくしもそう思いますわ」

 アイビーと呼ばれた女性が、凛とした声とともに、グレンの提案に追従する。

 

「エバンスさんと、レイノルズさん……高等部からの編入組のお二人にご配慮なさる、アルフレッドさんの御心は素晴らしいと思います。……しかし今は、喫緊の、大会に向けての計画を練る方が、優先順位が高いと、わたくしは考えますわ」

 

 ダークブロンドの髪を、ミディアムショートにまとめ、スレンダーな体系をしたその女性。

 フルネームは、アイビー・セント・チェノウェス。

 背筋は、まるで一本の棒で支えられているように直立し、彼女の太ももの上で重ねられた手の指先まで、整然としている。

 顔は、目鼻立ちのきりっとした印象を受け、非常に上品な美貌を携えている。

 ちょっとしたパーティで、彼女がドレス姿をしていたら、さぞかし多くの男性から注目を浴びることだろう。

 ちなみに彼女は、中等部からの編入組である。

 

「……す、すみません。私なんかのために、気を使ってもらったみたいで……」

 

 自信なさげに言葉を発した女性の名は、コレット・レイノルズ。

 アイビーの言う通り、彼女はクリスと同じく、高等部からの編入組である。

 身長はこの中でも一番小さく、華奢な体格から、実年齢よりもかなり若い印象を見るものに与える。

 ブラウン色の髪を、ボブカットにそろえており、その外見は、一見すると、中等部の生徒と言っても、通じてしまいそうである。

 顔立ちは決して悪くはないのだが、その外見と、おどおどした態度から、影が薄い印象を受ける。

 

「まあ、確かにグレンやアイビーの言うように、そろそろ、大会に向けての具体的な話をしていこうか」

 

 アルフレッドの言葉を受け、他の4人は改めて、佇まいを正した。

 

 





ようやっと、女性キャラクターが登場しましたね。
第二部以降、気づけばここまで男ばっかりでした……。
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