第23話の内容は、一言で言うと、
「全選手入場ッッッ!!!!」
クリスたちはまず、改めて自分たちの実力や、得意なアームドフレームの戦闘スタイルついて共有した。
まず、クリス・エバンス。
基礎的な操縦技術は、この中でクリスが圧倒的であることは、全員の共通認識だった。
あの、伝説の実技テストから、幾日も経過しているが、彼の基礎技術を疑うものは、このメンバーの中で誰もいない。
クリスを目の敵にする、あのレノでさえも、クリスの技術そのものは認めざるを得ないのだ(本人は否定しているつもりだが)。
とはいえ、実際の戦闘経験がないため、大会でどの程度実力を発揮できるかは、未知数であることもまた事実。
テレビゲームでいえば、クリスは
加えて、クリスはいまだ、自分がどんな戦闘スタイルに向いているのか、固まり切れていなかった。
間違いなくチームのエースと言えるのだが、現状、彼の本当の実力は、やってみないとわからない、というのが正直なところだ。
また、いくら基礎技術が高いとはいえ、クリスは性格的に内にこもるタイプで、口数も多くない。
そのため、「経験不足かつ、実力が未知数なところ」、そして「味方との連携」の部分で課題がある、というのが結論だ。
次に、アルフレッド・フォン・ウォルコット。
由緒正しきウォルコット家の長男であるアルフレッド。
クリスの寮生活において、同部屋のパートナーでもある。
彼の得意な戦闘スタイルは、オーソドックスな中量2脚型。
ライフル、近接ブレード、ミサイル、カノン砲等々、様々な状況に対応できる装備を一通り備えている。
接近戦でも、遠距離戦でも、どんな状況においても安定した戦闘力を発揮する、万能型だ。
基礎技術も、クリスほど圧倒的ではないが、非常に優秀な部類。
アームドフレームに関するあるとあらゆる知識、技能で、アルフレッドは学年全体でも、トップ10以内の成績を修めている。
幼少期から英才教育を受けてきた、という本人の言葉は伊達ではないのだ。
性格面では、仕切りたがりで、貴族特有のプライドを持ち合わせる。
とはいえ、平民に対し、あからさまに見下すようなことはせず、実力に関しては公平に評価する。
また、エース候補ながら、社交的でないクリスとも、物おじせずにコミュニケーションがとれており、まさしくリーダーとしてうってつけだ。
自信家で、若干空気が読めないところもあるが、決して口先だけの男ではない。
リーダーシップがあり、どんな状況においても、平均以上の成果をあげられる、確かな実行力がある。
そのため、自然とチームの「リーダー・司令塔」になることは、いつの間にか決定していた。
とはいえ、得意な戦闘スタイル及び、本人技能共に、「若干器用貧乏」とも言い換えられる。
そのため、特化型のアームドフレームと戦闘になった時は、押し込まれないように、注意が必要である。
続いて、グレン・ヴァン・フォード。
貴族であるフォード家の長男であり、アルフレッドとは小さいころから顔なじみである。
フォード家は、グレンの祖父の代に、ロザライムへの功績を認められ、特別に爵位を賜ったいわゆる「新興の貴族」だ。
両親の教育方針もあり、グレンも正直、自分が貴族出身であるという自覚はあまりない。
そのため、そうした貴族的立場を、笠に着るような態度を日常的にとることも、ほぼない。
ただ、一部の古くからの貴族からは、そうした態度は貴族らしくないとして、侮蔑や白い目で見られることも多い。
とはいえ、基本的に貴族、平民のどちらにも、分け隔てなく接する、さっぱりとした男である。
彼の得意とする戦闘スタイルは、重量2脚型。
スピードは、通常のアームドフレームよりも落ちるが、それを補う「圧倒的な攻撃力」と、「安定した防御力」が持ち味だ。
特に、遠距離戦を得意とし、両肩に備える大型の火砲による瞬間的な火力は、メンバー随一。
また、最低限の近接戦闘もこなすこともでき、比較的万能型の戦闘スタイルが持ち味である。
ちなみにグレンの、操縦の基礎技術は中の上。
ただ、彼の戦闘スタイルと相まって、唯一「回避機動」だけは、苦手としている。
戦況を見極める、冷静な思考も兼ね備え、味方との協同は問題ないうえに、基本的に攻めでも、守りでも働ける万能性がある。
ただし、携行する弾薬は豊富ではなく、「継戦能力に難がある」こと、そして「機動力(スピード)の無さ・回避機動の腕が悪いこと」を突かれると弱いので、そこに留意した立ち回りが求められる。
そして、アイビー・セント・チェノウェス。
300年の長い歴史を誇る、チェノウェス家の次女として生まれたアイビー。
「ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)」を方針として強く掲げる、チェノウェス家の娘として、彼女は貴族としての誇りや、立ち振る舞いに対する、強いこだわりを持つ。
そのこだわりは、新興貴族のグレンはおろか、アルフレッドよりも頑固で、融通が利かない部分もあるほど。
特に、貴族の意識に欠けるグレンに対しては、その言動や振る舞いに対し、目くじらをたてることも多い。
しかし、貴族だからこそ、「優秀で」「正しく」「慈悲深く」「弱気を助け」「公平であるべき」というのが、彼女の強い信条であり、それを体現するための日々の努力も、怠らない性分である。
そのため、多くの人間からは基本的に好ましい人物、とみなされている。
さて、肝心のアームドフレームにおける、彼女の得意とするスタイルは、軽量2脚による近距離特化の高機動戦闘である。
「貴族たるもの、有事の際は真っ先に敵に立ち向かう剣となるべし」といった、彼女の思想を反映したかのような戦闘スタイルだ。
両腕に大型のソードを装備し、機動力を生かし、敵に急速接近。
一瞬のうちに、敵を粉砕するのが、彼女の得意とする戦法である。
ちなみに、アイビーの操縦技術は、全体的にアルフレッドに迫るほど優秀だが、特に「近接戦闘」の技術に関して言えば、学年随一だ。
しかしそのかわり、射撃に関しては、かなりの苦手分野。
そのため武装も、遠距離戦闘については、ほとんど捨てている構成だ。
唯一の射撃武器は、肩に背負った近距離用の散弾(スラッグガン)のみ。
防御面も、必要最低限の装甲にとどまっている。
若干、発想が脳筋よりかつ、突出癖があるが、最低限味方と共同することについては、問題ない。
ただ、「遠距離戦闘が無理」かつ、「装甲が薄く、防御面は心もとない」点は、注意を払わなければならない。
最後に、コレット・レイノルズ。
レイノルズ家はもともと貴族であったが、彼女の祖父の代に没落。
現在、コレット自身は、平民の地位に属している。
そのこと対し、彼女自身は負い目を感じており、もともとの引っ込み思案な性格も相まって、卑屈ともいえる印象を、見る者に与える。
本来、争いを好まない、穏やかな性格であるが、親や周囲からの勧めに従い、士官学校へ入学するに至った。
ちなみに、クリスと同じく、高等部からの編入組。
とはいえ、アームドフレームの操縦については、シミュレーターを含んでではあるが、4年以上操縦経験がある。
コレットの得意な戦闘スタイルは、士官学校では珍しい、逆関節2脚による、遠距離射撃戦である。
素早い空中機動から、スナイパーライフルなどの遠距離射撃武器で、敵をハチの巣にすることを、彼女は得意としている。
また、彼女の慎重な性格を反映するかの如く、弾薬を豊富に搭載し、高い継戦能力を有している。
加えて、装甲も厚く、機動力もそこそこで、防御面にも秀でている。
ちなみに、コレットの基本操縦技術は、全体的に中くらいであるが、「射撃能力」については、学年でもトップクラスである。
また、近年研究が進む、ナノマシン適正についても高い成績を収めており、戦闘時における「
とはいえ、アイビーと今度は反対に、コレットは近接戦闘が壊滅的に苦手である。
弾切れ用の護身ブレードもあるにはあるが、接近戦の腕前に関しては、まったく期待できない。
また、慎重かつ堅実な戦闘スタイルだが、その分決め手に欠け、勢いのある相手の攻めに、あっという間に崩されることもしばしばあった。
コレットは、自分から率先して動くタイプではなく、誰かのサポートに回ることで、大きな力を発揮する。
そのため、チーム戦はむしろ彼女にとって願ってもない形式だ。
ただし、「接近戦が苦手(というか無理)」な点、「慎重すぎて決め手に欠ける性質」については、留意する必要がある。
一通り、メンバー全員の状況や、得意分野、苦手分野を整理したのち、リーダーのアルフレッドが口を開いた。
「……さてこれで、メンバーの大体の状況を、みんな把握してくれたと思う。では、具体的に、まずは最初のバトルロワイヤルをどう立ち回るかだけど……みんな、何か意見や情報はあるかい?」
アルフレッドの呼びかけに、まずはグレンが口を開く
「そうだな、上級生からの情報によると、この最初のバトルロワイヤルでは、一番の有力候補とされるチームが、集中的に狙われるのが通例らしいぜ。トーナメントでぶつかってしまう前に、厄介なチームをあらかじめここで落としておこうって寸法だ。
なので、本来であれば、この模擬試合の前までは、あまり目立たず、騒がず、集中砲火をうけないように、立ち回っておくことが肝要だが……。最高に目立つことをこの間やらかしたやつが、うちにはいるからな……」
そういったグレンは、ため息をつきながらクリスに視線を向けた。
それにつられた、クリス以外のメンバーからの視線が、クリスへ一斉に集中する。
「……もしかしたら俺のこと?」
当のクリスは、きょとんとした顔で、その場のみんなを見渡す。
いまいち自覚の欠けるクリスに対し、チームメンバーは呆れ顔だ。
「う~ん……うちの場合、まずクリスが派手にやらかしているから、最初に狙われる候補に間違いなく入るだろうね。……ま、それ以外にも、学年有数の成績を持つ、僕もいることだしね!」
「それだけ、エバンスさん並びに、アルフレッドさんや私たちの実力が、他の皆様から見て脅威だということ。逆に考えれば、これは名誉なことだと、言えなくもありませんわ」
アイビーの言葉に対し、コレットが自らの不安そうに口を開く。
「……で、でも……これって冷静に考えるとやばくないですか……? バトルロワイヤルで、他チームから集中的に狙われたら、いくら私以外の皆様が優秀でも、ひとたまりもないのでは……?」
「もちろん、大変な状態とは思います。……なので提案ですが、ひとまず私が先陣を切って、単騎駆けで戦場をかき回す作戦はいかがでしょうか?
レイノルズさんは、他の皆様の後ろから、援護に徹していただければ問題ありませんわ!」
胸を張り、握りこぶしにぐっと力を入れて、アイビーは主張した。
「おいおい……そんな作戦とも言えない、勢い任せの方法で、どうにかするのは無理だろ」
「とはいえ、綿密な作戦を練って、かつそれを浸透させる時間が果たしてあるのか、というのは微妙なところではあるね。あとは、こうしたチーム戦の定石では、ばらばらの機体ではなく、統一した仕様、性能の機体を使った方がいいのだけれど……」
グレンの意見に対し、アルフレッドは、腕を組んで考えながら言葉を続ける。
「俺が囮になるよ」
今まで、ほとんど発言をしなかったクリスが、突如、口を開いた。
「もう大会まで、そんなに猶予もない。そうなると、緻密な作戦を立てて、それを遂行するのも難しい。その上、メンバーの得意分野もてんでバラバラ。だったら、ならば、メンバーの強みを活かせる普段の機体をそのまま使用して、作戦もあえてざっくりとした方がいいんじゃないかな?」
クリスからの提案に対し、他のメンバーは思わず目を見張った。
「ふむ、なるほど……面白い観点かもしれないな」
ややあって、感心したようにアルフレッドがうなずく。
「しかしその話と、クリスが囮になるというのが、どうつながってくるんだい?」
「どうやら俺は、今回の注目の的みたいだから、あえて自由に動き回って敵を引き付ける。俺を狙おうとしている敵を、みんなが隙を狙って、各個撃破すればいい」
「確かにそれなら……作戦として、シンプルでわかりやすくもあります。しかし、囮であれば、私が引き受けた方がよいのではないかしら?」
「いや、チェノウェスさんは、俺よりも経験が豊富で、味方との協同もできるだろう。もともと俺は、他人と協同して、編隊行動をする経験が、圧倒的に不足している。加えて、性格的にもおそらく、そうしたものにあまり向いていないだろう。それを、この短期間で埋めようと思っても難しいと思う。
……であるならば、今回の大会で目立っているのが俺なら、あえてそれを逆手にとって、自由に動き、敵を引き付ける囮役を俺がやる。そして、他のみんなが俺に引き付けられた敵を打ち倒すのが、一番いいと思う」
「さしずめ、エバンスは逃げながら戦う。俺たちは追いながら戦う。敵さんにとっては、挟み撃ちの格好になるってところか。あんがい、いいかもしれねぇな」
グレンはクリスの提案に対し、前向きな感想をもらす。
「え、でもそれでは、エバンスさんに攻撃が集中することになります……多分、孤立していることを好機として、対戦チームはこぞって、エバンスさんを狙ってくるんじゃないでしょうか? かなり危険では……?」
「……まあ、そこは、クリスに頑張ってもらうしかないな。たしかに、クリスの言うように、僕はともかく、ここまでメンバーの得意、不得意の分野が違うと、同じ機体で、統一された編隊行動をとるのが厳しいのは間違いない。当然、難しい作戦は取れないし、そもそも作戦をすり合わせる、準備期間もあまりない。そうなると、少し博打要素はあるけれど、この、
コレットが不安を口にしたが、アルフレッドが、センスのない作戦名称と共に、楽観的な意見を述べる。
「……本来であれば、このような危険で重要な役割を、平民のエバンスさんに担っていただくのは、私としては不本意でございますが……しかし、状況や適性を見る限り、エバンスさんが一番の適任であることもまた事実。今回は、エバンスさんに囮をお願いするしかなさそうですわね」
「ま、そういうことだな」
アイビーも、方針に対し同意し、グレンも続いてそれにうなずいた。
「ありがとう。チェノウェスさん」
「
「であれば、俺も
「俺のことも、気軽に
「あ、あの……私も、
「もちろん、僕のことも
ひとまず彼らの、大会に向けての方針が固まったと同時に、仲間としての絆も、深まった瞬間であった。
青春してます。