フェノメノン   作:xtakashi

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お待たせしました!
ついにバトルロワイヤル開幕です。


第26話 電光石火

 

 

 

開始の合図と同時に、クリスたちのチームはさっそく行動を開始する。

 

まずはアルフレッドの指示のもと、彼らはクリスを先頭に「市街地エリア」へ向かって、早急に移動することにした。

 

これは、自分たちのチームが、他チームから狙われやすいことを鑑み、遮蔽物の少ないエリアにいることは危険であると、アルフレッドが判断したことに起因する。

クリスたちが現在いる、「荒野エリア」は、見通しはよいが、障害物が何もない。

360度の方向から、敵に狙われる恐れがある。

 

隣接する「市街地エリア」であれば、見通しは悪くなるが、仮に集中攻撃を受けた場合でも、敵からの攻撃から身を守りやすくなる。

 

「市街地エリア」に敵がいる場合は、もちろん戦闘となってしまうが、ここは先手必勝で叩き潰す!

クリスたちはそんな決意を胸に、「市街地エリア」へと突き進む。

 

 

「……レーダーに反応ありました!市街地エリアに敵影5を確認!」

メンバーの中で、一番の広域レーダーを装備する、コレットから他のメンバーへ通信が入る。

 

「ぐずぐずしていると、他チームからも襲撃を受ける恐れがあるな。」

「迷っている暇はありませんわ。ここは迅速に叩き潰しましょう!」

感想を漏らすグレンに対し、アイビーが威勢よく返答した。

 

「よし、当初の作戦通りいくぞ!クリス、さっそくだけど、先行して、君の腕を存分に、相手へ見せつけてやってくれ!」

「了解」

アルフレッドの指示に対し、クリスは短く返答する。

その返答は簡素ではあったが、力のこもった響きがあった。

 

 

 

 

 

 

市街地エリアが、スタート視点として割り当てられたチームのリーダー、ジョシュ・I・コナーズは、北西の方角より迫る敵を、レーダーで確認していた。

 

今回、生徒たちが標準的に装備する、各種アームドフレーム用のレーダー。

実は、クリスのチーム以外の、生徒たちのものには、とある「細工」が施されていた。

 

それは、クリスの位置だけは、「常に」レーダー上、どこにいるかがわかる、といったもの。

 

アームドフレームのレーダーは通常、「青色」の光点は味方を、「赤色」の光点は敵を表している。

しかし、そのどちらとも異なる、通常では存在しない、「緑色」の光点が彼らのレーダーには表示されていた。

 

この「緑色」の光点が、まさしく彼らのターゲットたる「獲物(クリス)」であった。

この光点が、たとえフィールド内のどこに移動したとしても、レノたちのレーダー上で、その方角と距離が常にわかるようになっているのだ。

 

そんな、最優先ターゲットを示す「緑色」の光点が、自分たちの方向へと、まっすぐに進んでくる。

こちらから赴く手間が省けたと、ジョシュは思わず口元がにやけるのを感じていた。

 

「よし!向こうからやってくるなら好都合だ!おい、全員、あの緑色の光点を、集中的に攻撃しろ!」

ジョシュは、チームメンバーに対し檄を飛ばす。

 

 

ジョシュのチームメンバーが持つ、スナイパーライフルの射程に、ついにクリスが到達した。

ターゲットの表示が赤(ロックオン)に変わった瞬間、彼らはライフルの引き金を引く。

 

クリスからの距離はまだ遠く、かつ自分たちは市街地の間に身を隠している。

こちらからの射撃に、クリスが気付くことはまずありえないし、また万が一気づけたところで、弾速の早いスナイパーライフルの弾丸を避ける術は、ほぼないに等しい。

ジョシュは、こちらからの攻撃は、100%命中すると確信していた。

 

……だが。

 

チュイン、チュイン、チュイン!

彼らが放った弾丸は、ターゲットを捕らえることなく、無情にもただ、地面をえぐっただけであった。

 

「な……なに…!?」

ジョシュは思わず、驚愕の表情を浮かべた。

 

これは、「()()()()()()()()()」を感じたコレットが、あらかじめクリスに、スナイパーライフルによる攻撃の可能性について、伝えていたことが幸いした。

 

クリスは、攻撃を受ける寸前で、相手からのおおよその射線を特定。

弾丸に対し、直角の移動となるよう、補助ブースト(左右への急速移動を可能とするブースト)を使用して、彼らの攻撃を見事、すべて回避したのであった。

ちなみにこれは、言葉にすれば簡単だが、誰でもできるような技術かと言えば、断じて違うものである。

 

ブースターの音を響かせながら、クリスは敵機を、自身の装備するライフルの射程内まで、急速接近する。

 

ドシュウ、ドシュウ!

この間にも、ジョシュのチームはスナイパーライフルによる攻撃を絶えず続けていたが、そのすべてが、クリスのブースト移動によって回避されていた。

 

「畜生……!?一体全体どうなってやがる!」

当たるはずの攻撃が、ことごとく回避されている状態に、ジョシュとそのメンバーたちは、動揺を隠せなかった。

とはいえ、まだ勝敗が決したわけではない。

 

ひとまず、クリスを市街地の奥地まで誘い込むため、後退しながらの、遅滞射撃に切り替えるよう、ジョシュはチームメンバーに指示を出した。

 

「野郎なめやがって……!」

「おいバカ、やめろ!!」

……と、ジョシュのチームメンバーの一人が、苛立ちを抑えられず、クリスへ突撃を敢行する。

リーダーの静止の言葉を無視し、彼は、近接ブレードによる攻撃を仕掛けたのであった。

 

ブォン!という鈍い音共に、敵機のかざすブレードが、クリスへと迫る。

しかし、ブレードの間合いを完全に見切ったクリスが、それをぎりぎりで回避した。

 

そしてクリスは、空振りをした敵機に対し、すぐさまカウンターで、ブレード攻撃を仕掛ける!

クリスのブレードが、まるで吸い込まれるかのように、すんなりと敵機へと到達。

ザンッ!!という音を周囲に響かせた。

 

大会の会場のサブモニターではその瞬間、ジョシュのチーム員の一人の耐久値を表すメーターが0と表示された。

クリスの先ほどの攻撃で、撃墜判定がでた、ということである。

 

クリスの驚異的な回避技術と、見事なカウンターによる一撃に対し、講堂は大勢の観客による、拍手、歓声によって、大盛り上がりであった。

 

一般の生徒、観客とは別に、貴賓席では、学校関係者一堂、専用のモニターで大会を観戦していた。

この、バトルロワイヤルの「最初の撃墜(ハイライト)」に対し、関係者の反応は多種多様である。

 

キースは、表情こそ変えなかったが、人に見えないよう、机の下でガッツポーズをしていた。

レイモンドは、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

リチャードは、一見涼しい顔をしていたが、よく見ると額に、わずかにしわが寄っていた。

 

 

早々に、味方から犠牲がでたことで、ジョシュは焦りを隠せない。

「いいかお前ら!奴に対しては、絶対に深追いするな!あいつの二の舞になるぞ!何とか俺が、奴を引き付けて……」

「あら、彼だけに気を取られて、よろしいのですか?」

 

いつの間にか、アイビーの機体が、ジョシュのすぐ目の前へと接近していた。

ただ、そこは腐ってもチームリーダー。

ジュシュはすぐさま反転し、近接ブレードをアイビーの機体へと向けようとしたが……

 

「……!?ぬあっ!?」

 

その瞬間、ジョシュは鈍い振動を感じ、思わず機体がふらついてしまう。

遠距離からコレットが、ジョシュの機体の脚部を正確に狙撃し、体勢を崩したのだった。

 

ズザンッッ!!という音とともに、アイビーの機体は、ジョシュの機体を、近接ソードで十字に切り裂く!

会場のサブモニターでは、瞬く間に、ジョシュの機体の耐久値メーターが0にまで減少した。

 

「素晴らしいアシストでございました。コレットさん」

アイビーからの言葉に、「えへへ……」と照れるコレット。

 

「お、おい、ジョシュまでやられちまったぞ!」

「どど、どうすりゃ『ドウ!ドウ!ドウ!』ぐおぁぁ!!!」

 

と、3発の銃声が鳴り響いたのと同時に、ジョシュのチームメンバーの機体がまた1機、無残にも崩れ落ちた。

 

「いやぁ、すまない。あまりにも隙だらけだったものでね。思わず撃ってしまったよ。」

少し離れた場所に立つ、アルフレッドの機体が構えるライフルの銃口からは、白い煙が立ち上っている。

2発は頭部パーツ、一発は胴体パーツを撃ちぬいた、見事な射撃であった。

 

リーダーのジョシュを含む、計3名のチームメンバーが、一瞬のうちに退場してしまった。

残された2名は完全に、茫然自失の状態であり、彼らの頭にはもはや、「戦闘の継続」という選択肢は一切ない。

 

とにかく、生き残るために、一刻も早く、この場から離れなければ!

追い詰められた草食動物のように、彼らはわき目も降らず、逃走しようとするが……

当然のことながら、この絶好の機会を、ハンター(クリス)たちは逃すつもりはない。

 

「おや、逃れられると思うかい?……皆、最後まで油断せず、残敵掃討といこうか?」

アルフレッドの言葉を合図に、クリス以下メンバーは、残された哀れな獲物に襲い掛かる。

 

指揮系統を失い、数の利も消失し、戦う意思をも失ったジョシュのチームは、まもなく全滅の憂き目にあうのであった。

 

 





グレン「あれ、俺の出番は……?」
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