フェノメノン   作:xtakashi

32 / 42

第2部にて、ようやく主人公無双の回が出ました。
お好きな処刑用BGMと共に、お楽しみくださいませ。

【参考】
・三國無双6 行軍
https://www.youtube.com/watch?v=zGpXDnjWxTk

・Danger Zone Remix (AC7)
https://www.youtube.com/watch?v=xeMBJq6WgFk&list=LL&index=10


第28話 一騎当千

 

 

 

【北東方面】

 

 北東方面から、高速でクリスへと迫りくる、ケイティたちのチーム。

 

 ケイティは、バトルロワイヤルが始まって以来、常に「緑色」の光点の場所について、チェックしている。

 現在、「緑色」の光点は、「市街地エリア」に入ってすぐの付近で、静止していることが、確認されていた。

 

(市街地の奥深くにこもられ、ゲリラ戦を展開されると厄介なことになるわね……)

 ケイティは、今後の展開について、予想を巡らしていた。

 

 

 ふと……気づくと「緑色」の光点が移動を開始していた。

 ケイティたちのチーム全体に緊張が走る。

 

 しかし、その方角は、彼女の予想とはまるで逆。

 市街地の奥へ進むと思いきや、なんと、まっすぐに、ケイティたちのチームへと、光点は進んでくる。

 

(どういうこと……? なにかの作戦? それともただの無謀な突撃?)

 敵の意図がわからず、困惑するケイティ。

 しかし、向こうから標的がやってくるなら、こちらは迎え撃つのみ。

 

 

 現在、ケイティたちは、V字を上下逆にしたような編成、いわゆる魚鱗(ぎょりん)と呼ばれる陣形に近い、編成をとっていた。

 そして、その先頭は、リーダーであるケイティが位置取っている。

 

 相手が単騎であれば、自分たちは負けない! 

 全員、中等部からの顔見知りで構成された、自分たちのチーム力に、ケイティは絶対の自信を持っていた。

 

 

 

 

 間もなくして、ケイティたちの前に、クリスの機体がその全容をさらした。

 

 ケイティの合図で、5機全員が連携し、一斉にトリガーを引く! 

 統一された装備の、5機の機体が持つバズーカから、爆音とともに弾丸が発射された。

 

 ドシュウ! ドシュウ! 

 迫りくる弾丸を、クリスは、すべてブーストで回避。

 しかも、その前進のスピードを、ほとんど殺さず、自身の武装の射程圏内まで、前進する。

 

 クリス機は、回避行動をとりつつ、アサルトライフルを、ケイティの機体に向けて、発砲。

 

 ダダダン! 

 寸分たがわず、ケイティ機に命中した……と思いきや、ケイティ機の後方に控える2番機、3番機が、シールドをもって、いつの間にかケイティ機の前に立ちふさがっていた。

 クリスの放った弾丸は、2番機、3番機のシールドによってすべて、防がれてしまっていた。

 

 そうした間にも、後方の4番機、5番機は、バズーカを連射。

 けたたましい音を立てるが、そのいずれも、いまだクリスへ着弾しない。

 相互に連携し、しっかりとロックし、クリスの回避先をも潰すような射撃を行っているはずにも関わらず、当たらない。

 

 クリスの、ここまでの回避技術に、ケイティたちは驚愕を隠せなかった。

(こ……こいつ……まさか、私たち全員の2次ロックした先までも予測し、回避し、しかも同時に攻撃までおこなっているというの……!? 化け物なの、こいつは……!?)

 

 

 

 通常、アームドフレームのFCS(火器管制システム)によるロックオンは、2パターン存在する。

 まずは1次ロックオン。

 これは、あくまでロックオンした弾丸が、狙った場所へ飛んでいくだけである。

 そのため、相手が高速で移動している場合、基本的に当たらない。

 

 次に2次ロックオン。

 1次ロックオンから一定時間経過し、さらに、ロックオンが深まると、2次ロックオンへ移行する。

 これは、標的が移動する方向、距離を、CPU(コンピュータ)が自動計算し、移動した先を見越した場所に、弾丸が飛んでいく……いわゆる「偏差射撃」が可能なロックオンである。

 

 通常、相手から2次ロックされた際、単純に、攻撃を回避することは、困難を極める。

 そのような場合、とれる選択肢は大まかに5つ。

 1.瞬間的なスピードを生かして、ロックオン範囲外まで逃れる

 2.回避に集中し、ジグザグ移動やフェイントを織り交ぜて、何とか計算予測を狂わせる

 3.遮蔽物などに身を隠し、やり過ごす

 4.チャフやフレアなどの、ロックオンを阻害させる装備を使用する

 5.回避をあきらめ、ダメージを最小限にする方法をとる(シールド等)

 上記の内、いずれかである。

 

 しかし、今クリスがとっている方法は、そのいずれでもない。

 あえて言えば、2に近いかもしれないが、回避に集中するでもなく、無軌道な回避移動を繰り返しているわけでもない。

 

 敵の機体構成、武装から、FCSの演算能力と、射撃性能をある程度予想。

 そして最終的に射線、射角、体制、目線から、2次ロックオンの、偏差予測先までも予測し、攻撃を回避。

 

 それも、5機からの攻撃すべてに、同時に対応。

 なおかつ、自身の攻撃も、正確に相手へ命中させているのだ。

 

 ここまでくると、もはや人間業ではない所業。

 ケイティが思わず、化け物と思ったのも、無理はなかった。

 

 ちなみに、クリスは自身の機体における、FCSのロックオンは、手動とオートを適宜、切り替えて使用している。

 ときたまFCSのロック反応が遅い、または偏差予想がずれていることもあるので、状況次第では自分で狙った方がいい、というのがクリスの感想である。

 

 こうした使い方は、過去にエースと呼ばれたアームドフレーム乗りの中では、普及している方法ではある。

 ……が、アームドフレームに乗り出して、わずか数か月の学生が行うやり方では、断じてないことを、ここに明記しておく。

 

 

 

 

 一方、クリスは先ほどから、敵対するケイティのチームに対し、別の驚きを感じていた。

 

 統一された機体による、一糸乱れぬ編隊行動。

 5機がまるで、一つの大きな兵器のように、有機的に連動し、互いが互いをフォローしあう。

 そのチームワークは、攻守に渡って素晴らしく、隙がない。

 

 授業で習った内容、そしてアルフレッドが、アームドフレームの編隊行動の重要性について熱く語っていたことを、クリスは思い出していた。

 なるほど、こういうことなのか、確かにこれは凄いものだ、とクリスは素直に感心していた。

 

 しかし……凄いことは凄いが、完璧ではない。

 自分ならば、対応することはできる。

 

 クリスは、自分と敵の能力を比較し、冷静にそう判断していた。

 

 

 

 ケイティは、先ほどからの攻防に、苛立ちを隠せなかった。

 

 対エースのために編み出した、必勝の策。

 実力があることは十分に承知していたからこそ、準備に準備を重ねてきた。

 にもかかわらず、眼前の敵はいまだ、まったくの健在なのだ。

 

 ただ、いたずらにこちらは弾薬を消費しているだけに対し、向こうは的確な射撃によって、こちらをじわりじわりと削っている。

 

 最初は、シールドによって、うまく防がれていたものが、徐々に、シールドの隙間を縫うようにして、クリスの攻撃が着弾するようになっていたのだ。

 

 純粋な、アームドフレームの操縦技術では、「天と地」「恐竜とアリ」ほどの差があることを、ケイティたちは、否が応でも思い知らされる。

 敵として対峙してさえいなければ、今すぐ万雷の拍手を送りたい衝動に、ケイティたちは駆られていた。

 

 ……と、そこで、クリス機の挙動に変化が生じた。

 左右、上下の動きから一変し、ケイティたちの陣形の真っただ中に、突っ込んでくる! 

 けたたましいブースター音を響かせ、クリスの機体は勢いよく、ケイティたちの方へ迫っているのだ。

 

(なんだ……!? 自ら突っ込んでくるなんて……?)

 

 クリス機の移動方向は、ちょうどケイティ機と2番機の間。

 そこをめがけて、凄まじいスピードで、一直線に向かっていた。

 そして、ついにケイティ機と2番機の間に、クリス機が至った瞬間、ほんのわずかだがクリス機のスピードが緩む。

 

(しめた!! ブースターのエネルギー切れだ!)

 ケイティは、すぐさまバズーカ砲を発射するが……

 

(な……えっ!?)

 ケイティが、バズーカを発射した瞬間に、クリス機は補助ブースターを起動。

 弾丸は空を切り、そのまままっすぐ進んだ弾丸は、なんとその先にいる2番機に直撃してしまった。

 

 クリスは、相手の同士討ちを誘うため、わざとブースターのエネルギーが切れたように、見せかけたのだ。

 

 また、クリスはその瞬間、補助ブースターを操り、急速旋回。

 爆音と共に、一瞬にして2番機の後ろ側に回り、すれ違いざまにブレードで敵を切り裂く! 

 

 ズザン! という音とともに、ブレードが2番機に命中。

 その瞬間、2番機の耐久値メーターは0と表示され、撃墜判定となった。

 

 攻撃はまだ終わらない。

 クリスは左腕のブレードで、2番機を攻撃した勢いそのまま、機体を旋回させると、右腕のアサルトライフルでの射撃も敢行! 

 

 ダダダダン!! 

 その射撃の瞬間、クリス機は、ほとんど射線の先を見ていなかった。

 にもかかわらず、動揺し、シールドの構えが間に合わなかった3番機の頭部へ、弾丸をすべて正確に命中させていた。

 

 2番機に引き続き、3番機も、立て続けに撃墜判定が下された。

 瞬きするほどの一瞬で、ケイティのチームは、2機ものアームドフレームの戦力を、失ってしまったのだ。

 

 

 一方、会場モニターで観戦する観客は、一連のクリスの超絶技巧に、ボルテージは最高潮となっていた。

 観客たちは拍手喝采し、口々に、クリスの腕前に対する称賛の声をあげる。

 

 キースは、口元のにやけを抑えられず、素直に拍手を送っていた。

 レイモンドは、鼻息荒く、顔をゆがませながら、画面をにらみつけていた。

 リチャードは、明後日の方向を見ながら、形だけ手を叩いていた。

 

 

 もうここまでくると、ケイティも乾いた笑いを浮かべるしかない。

(はは……ははは……なんなのよ、こいつは? 私は悪い夢でも見ているとでもいうの?)

 

 油断はしていなかった、準備も怠っていなかった。

 事前の取引に、心から納得はしていなかったが、それでも、腹を決めて、戦ったはずだった。

 

 にもかかわらず、自分たちの磨き上げた技術、作戦が、たった一人の新人にまるで通じない。

 

 ケイティたちは、まだ数の上では勝っていた。

 しかしもう、ケイティたちは戦闘の意欲は完全に失っていた。

 このままでは、たった一人の新人によって、自分たちが全滅させられることが、火を見るよりも明らかであるためだ。

 

 それでも、次のトーナメントに出場する可能性を、何とか少しでも確保したい。

 そんな、彼女が選んだ選択肢は「逃走」。

 

 ケイティの合図とともに、残ったメンバー全員がまとまって、北東方面へと全速力で撤退する。

 

 撤退行動に移行した、ケイティたちの編隊移動は、2機を欠いてながらも、大変整然としていた。

 彼女たちは皮肉にも、その時、この日一番の、美しい編隊移動を見せたのであった。

 

 

 クリスは、このまま追撃してもよかったが、味方への支援を優先し、深追いはしなかった。

 

 ここに、北東方面の戦闘は、決着を見せるのである。

 






29話に続きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。