フェノメノン   作:xtakashi

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ひっそりと更新


第29話 反抗作戦

【南東方面】

 

「うおらぁぁ!!」

 掛け声とともにグレンは、機体の両肩に装備した、自慢の大型カノン砲を発射させる。

 

 携行する弾薬が潤沢ではないため、ジョシュのチームとの一戦では、グレンは温存する形で、攻撃を控えていた。

 しかし、この追い詰められた状況では、後先など構っていられない。

 早く、目の前の敵を打ち倒し、一刻も早く、クリスの救援に向かわなければならないからだ。

 グレンは、今までのうっ憤を晴らすかの如く、弾丸の大盤振る舞いを、敵機へと注ぎ込んでいた。

 

 ドォン!! ドォン!! という爆音と共に、直撃すればただでは済まない銃弾の雨が、フォスター(チームリーダー)のチームへと降り注がれる。

 

 戦闘開始直後から、アルフレッドとグレンは、敵をうまく市街地まで誘導。

 特にグレンは、市街地の遮蔽物をうまく利用し、弱点である機動性の無さをカバーしている。

 

 建物の合間などに、うまく機体を位置取り、相手からの攻撃を防ぎつつ、攻撃をし続けるグレン。

 

「くそったれ……! 物陰からこそこそと……!」

「そこだっ!! くらえ!!」

 フォスターのチームも、グレンの苛烈な攻撃を何とかかいくぐり、グレンへ接近攻撃を仕掛けようとする者もいた。

 しかし……

 

 

 

「やらせはしないよ!」

「ちい!!」

 そのたびに、敵機と、グレンの間に、割り込むようにアルフレッドが滑り込む。

 フォスターのチームの一人が振りかざしたブレード攻撃は、ガチィイン!! という音共に、アルフレッドに見事に防がれてしまった。

 先ほどから、何度か見られる、一連の攻防である。

 

 当初5対2と、数の上では圧倒的に不利なアルフレッドとグレンだったが、二人の卓越した操縦技術と、息の合ったコンビネーション、そして地の利などが功を奏し、互角以上の戦いを繰り広げていた。

 

 既に、グレンの砲撃によって、敵機を1機撃墜。

 また、アルフレッドの近接ブレードでも、1機を撃墜している。

 

 数の上では、いまだ3対2と不利な状況だが、彼らの思った以上の奮戦に、フォスターのチームはいら立ちを隠せない。

 とはいえ、アルフレッドとグレンも、まったく無傷とはいかず、かなり消耗をさせられている。

 

 

 

 ビルの瓦礫へ、一時的に身を隠したアルフレッドとグレンは、状況確認のために、通信を行う。

 

「グレン、残りの弾数の状況はどうだい?」

「ああ、全然問題ない……と言いたいとこだが、ちっとばかり、心もとない状況だぜ」

 

 戦闘開始からグレンは、スピード勝負でカノン砲を撃ちまくり、かなりの弾数を消費させられていた。

 また、アルフレッドとグレンの機体の損傷具合も、無視できるほど軽いものではない。

 数で上回る敵を相手に、二人も、余裕綽々といった状態とは程遠い。

 

 加えて、アルフレッドは、リーダーとしての責任感と焦りから、その操縦も本調子とは程遠かった。

(……何をやっているんだ、僕は……他のみんなは無事か? もたもたしているうちに、クリスがどうなっているか……僕は判断を間違ってしまったのか……?)

 

 ちなみにフォスターのチームが、対峙早々、ジャミング(妨害電波)を発動させたため、通信障害が発生。

 遠方の、アイビーとコレットのペア、そしてクリスが、現在どのような状態にあるか、アルフレッド達は把握できない状態にあった。

 

 それが余計、にアルフレッドの焦燥感を掻き立てる。

 

 アルフレッドがいくら優秀で、リーダーの素質を備えているとはいえ、まだまだ10代半ばの若者である。

 早く決着をつけ、仲間の支援に行きたい気持ちが、どうしても操縦桿を握る手に、余計な力を加えてしまうのだった。

 

 

「おいアル、焦るなよ。もう少しリラックスしろ」

「……グレン」

 そんな、精細さを欠くアルフレッドに対し、グレンが落ち着いた声色で、話しかける。

 

「お前は俺たちのリーダーなんだから、どーんと構えていればそれでいいんだ。お前の判断は間違っていねえ……クリス、アイビー、コレットなら大丈夫だ。あいつらなら、頑張って粘って、耐えてくれるはずだ。仲間を信じて、まずはリーダーのお前が、落ち着くことが重要だぜ。お前は、いつものように、ふてぶてしく、偉そうにしていればいいんだよ」

 

 アルフレッドを気遣うグレンの言葉に対し、ハッとするアルフレッド。

「……ふー。すまない、グレン。どうも先ほどから、僕らしくなかったな。そうだな。悔やむ前に、まずは目の前のことに集中して、先のことは後で考えることにするよ」

「ああ、その意気だぜ」

 

 気持ちを切り替えたアルフレッドは、今一度、決意を新たにする。

 

「よし! クリス待っていてくれ、もう間もなく「読んだか? 」」

 

 

 いつの間にか、クリスの機体が、アルフレッドとグレンのすぐ傍まで、来ていた。

 

 

「…………」

 

 あまりの状況に人は遭遇すると、言葉をなくしてしまうらしい。

 突然の目の前の状況に対し、アルフレッドとグレンは、思考をフリーズさせる。

 

 とうのクリスは、操縦席の中で、きょとんとした表情を浮かべていた。

 

「? とりあえず、見たところ、まだ無事のようで何より。弾はまだ残っているか?」

「あ、ああ……とりあえず、今すぐなくなるというような状況ではない……って! いやいやその前に!!」

 先ほどまで、かっこいいことを、アルフレッドに言っていたグレンであったが、思わず声が上ずってしまう。

 

「クリス! 君が無事なのは何よりだが、北東からの敵はどうなったんだ!?」

「無事に撃退した。ただ、2機は撃墜したが、3機は北東方面へ逃げていってしまった。みんなの援護を優先するために、そいつらは放っておいて、こっちに来た」

「……まじか、本当にたった一人で5機を退けたのかよ……」

 何でもないように話すクリスに対し、アルフレッドもグレンも、どんな顔をすればいいのかわからない。

 

 そんなアルフレッド達に、クリスが提案する。

 

アル、どうする? 残りの3機、俺が倒すか? 

 

 

 

 アルフレッドとグレンは、その言葉に、一瞬止まった。

 そして……

 

「……おいおい、アルさんよ。ここまでコケにされて、いいのかね?」

「その通りだな、グレン。ふふふふ……その通りだ」

 何やら、剣呑な雰囲気で、通信機越しにブツクサとつぶやく二人。

 クリスは理解ができず、頭にはてなマークを浮かべる。

 

「ああ……すまないクリス。君は何も悪くない。何も悪くはないんだ。悪いのは、ぐずぐずしている僕たちの方だ。方や、チームメンバーの一人は、たった一人で5機を相手に、ほとんど無傷で撃退することができているにもかかわらず、僕たちは二人がかりで、未だにだらだらと膠着状態。しかもそんな、助けに行こうとした相手に、逆に助けようかと言われる始末。そんな、あまりにもカッコ悪く、情けない現状に、ちょっとだけ、ああ、()()()()()()()()()()イライラしただけさ。……いや、君は素晴らしいんだ。うん、本当にすごい。ただ単純に、己の未熟っぷりに、己の無能ぶりに、吐き気すら感じているだけさ。たしかに、君の言う通り、冷静に考えれば、ここでクリスの手を借りるのは、間違いなく良策だ。うん、間違いない。しかし、僕としても、ここで情けなく、君に助力を乞うなんて……アイビーほどではないが、一応、僕も貴族としての誇りもあるわけで。それ以上に、リーダーとして、君の先輩として、なにより()()()()()()()()()()()()()()()。何、くだらないプライドだと思って笑ってくれ。でも、やはり気持ちがね、どうしても拒否しているんだ」

「?? ……つまり?」

「ここは大丈夫だから、さっさとアイビーとコレットを助けに行ってやってくれ。アルはそう言いたいんだとよ。ちなみに俺も同意見だ」

「なるほど。わかった。じゃあ行ってくる」

 

 即断即決。

 グレンの言葉を受けるや否や、クリスは、さっさとアイビーとコレットのいる、西の方角へと移動を開始した。

 

 クリスがいなくなり、静かになった戦場で、アルフレッドはグレンに声をかける。

 

グレン、僕たちだけで、あいつらだけは、絶対に倒すぞ。

言われなくとも。

 

 見る人が見れば、彼ら二人の背後には、ただならぬオーラが纏っているように見えただろう。

 某奇妙な冒険の漫画であれば、「ドドドド」と、環境音がなっていたかもしれない。

 

 助けようとした新人のチームメイトが大活躍し、敵を撃退してくれた。

 あまつさえ、自分たちを助けようとしてくれている。

 

 彼ら二人の心に真っ先に浮かんだ思いは、「なめんな!!」という反骨精神。

 そして、「これ以上、情けない姿を見せられるか!!」という、男の子としての矜持であった。

 繰り返し言うが、彼らは10代半ばの若者なのである。

 

 

 

 フォスターは、なぜか急に、相手の動きがなくなったことを訝しみ、ひとまず、相手の出方をうかがっていた。

 ここまで、すでに2名のメンバーを失い、自分を含めた残りの3名も消耗している。

 

 ここは、ひとまず撤退して、他の連中をうまいこと争わせ、漁夫の利を狙う作戦にしようか。

 フォスターがそんなことを考えていたその矢先……

 

 敵2機が猛然と、遮蔽物より躍り出てきた。

 すかさず、フォスターたちも攻撃を開始し、再び戦闘状態へ突入する。

 

 先ほどまでの、遮蔽物に身を隠しながらの攻撃と比較すると、ずいぶん積極的な攻撃である。

 だが……

(なんだ……? 心なしか、先ほどよりも、動きの切れや、攻撃の正確さが……)

 

 フォスターは、うまく表現できなかった。

 とにかく、先ほどまでの攻防と比べると、明らかに敵の動きがよくなっているのだ。

 

 

 

 北東の敵はもはやなく、チーム最強のエースは、残りの西方面へ、手助けに行った。

 アルフレッド達を悩ました、心配事や懸念はもはやない。

 

 重荷から解き放たれた二人は、今やのびのびと操縦していた。

 それは、攻撃、防御、回避と、アームドフレームのすべての動作に、少しずつだが如実に反映されていく。

 

(ま……まずい、このままでは……!?)

 3対2と、数で優っているはずが、じりじりとプレッシャーに押されるような雰囲気を、フォスターは感じていた。

 

「さあさあ、ここからが本番だ。君たちには悪いが、さっさと倒されてくれるとありがたいね!」

 若干八つ当たりの要素もあるような気がしなくもないが、ようやく本来の調子を取り戻したアルフレッド達は、逆襲に転ずるのであった。






男には、譲れない時があるらしいです。
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