レノ「3人でジェット・ス〇リーム・アタックを仕掛けるぞ!」
クリス「見てから余裕でした」
レノ「あああああああああああ!!!!!!」
その後の、結果にについては、詳細を語るまでもないだろう。
様々な波乱はあったが、バトルロワイヤルでは見事、一位でクリスたちは突破した。
次のトーナメントについては、クリスが鬼神の如き活躍をしたことはもちろんのこと、アルフレッドをはじめとする他のメンバーも大いに奮戦する。
ピンチらしいピンチは、最初のバトルロワイヤル以外にありようもなく、クリスたちはあっさりと優勝トロフィーをかかげることとなった。
そして、長かったエクウェス祭も、閉幕の時が近づいている。
最後の演目はいよいよ、祭りのクライマックスである、「今年の生徒ランキング」の発表だ。
祭りの一般来場者、関係者は引き続き、中央エリアの講堂の、大型モニター前で、今か今かと発表を待っていた。
学校OBや来賓者は、貴賓室にて、モニターへ視線が釘付けとなっている。
クリスの後援者であるキースも、ランキング結果を楽しみに、モニターを見つめていた。
トーナメントの表彰が終わり、アルフレッド、グレン、アイビー、コレット、そしてクリスは、ひとまず同じ控室に集まり、モニターの前でランキングの発表を待っていた。
「つっても、うちらの学年の1位は、誰がなったかはもう決まったようなもんだろ! なあ、おい!」
豪快に笑いながら、グレンがバンバンとクリスの背中をたたく。
「まあ、当然といえば当然ですわ。クリスさんの実力は、誰が見ても圧倒的。同学年はおろか、上級生を含めても、現時点でクリスさんを超える技量をお持ちの方はいらっしゃらないのでは? もちろん悔しさもありますが、来年は私も負けませんわ」
優雅に微笑みながら、アイビーがグレンの言葉に同意する。
「クリスさん、本当にすごかったです!! 私、同じチームで本当に良かったです!」
感極まったように、コレットがクリスへ言葉を投げかける。
「やれやれ……まったく。リーダーである僕をさしおいて、君のほぼ独壇場だったな。とはいえ、僕たちの優勝に、一番貢献したのはクリスで間違いないから、そこは素直に祝福するよ」
アルフレッドが気障ったらしく、クリスを賞賛する。
そんなメンバーからの扱いに、当のクリス本人は、気恥ずかしそうにほほをかいた。
「皆様のご協力のもと、エクウェス祭の全プログラムは、無事に終了いたしました。では、皆様お待ちかねの、今年度のロザライム士官学校生徒ランキングにつきまして、発表します!」
画面に映る司会の言葉に、大勢の聴講者から歓声が上がった。
学年ごとの発表となるため、まずは最上級生の、高等部三年生から順番に、次々と発表される。
それを見た生徒や関係者は、喜びの声を上げるもの、落胆の声をあげるもの、さまざまであった。
そしていよいよ、クリスたち一年生の部の発表となった。
「それでは栄えある第一位の発表です」
司会の言葉に合わせ、ドラムロールが鳴り響く。
「ロザライム士官学校一年生の部、第一位…………
………………アルフレッド・フォン・ウォルコット!」
「……ん?」
「ありゃ?」
「……え?」
「えっと……?」
アルフレッド、グレン、アイビー、コレットが順に声を上げた。
クリスは何も言葉を発せず、だまってモニターを眺めていた。
司会役は何事もなかったかのように、2位以下の生徒たちを次々と発表していく。
最終的に、クリスたちのチームの順位は、アルフレッドが1位、アイビーが3位、クリスは4位、グレンは6位、コレットは7位の結果となった。
ちなみに、レノはちゃっかり9位に位置づけていた。
あの後、レノのチームはバトルロワイヤルにて、どうにかこうにか2位でトーナメントに進出していた。
レノ自身は、憔悴しきっており、とても勝ち進めるような状態ではなかったが、
この結果に納得いっていないのが、アルフレッド達である。
「……なぜだ! なぜクリスが4位なんだ!?」
「これはどういうことでしょう……私がクリスさんよりも上の順位になるなんて、あり得ませんわ!」
アルフレッドもアイビーも、自分の順位を喜ぶよりも、クリスの順位が低いことに納得がいっていなかった。
「え……てっきり、1位はあのクリスって生徒だと思ってたが……?」
「冗談でしょう!? あれだけ活躍して、1位じゃないの?」
「何かの間違いか……?」
アルフレッド達だけではない。
ランキングの発表を聞いた関係者、生徒、OBの大勢が、ざわざわと困惑の意を表していた。
貴賓室でモニターを見ていたキースも、唇をかみしめながら、じっとモニターを見つめている。
「……皆様、お静かに。それにつきましては、私が申し上げましょう」
騒がしい聴衆前に、理事長であるリチャードが、壇上へ上がった。
「お、おい、理事長自ら出てきたぞ!」
「え、嘘でしょう!?」
先ほどまで騒がしかった聴衆も、リチャードがマイクを受け取ると、シンと静まり返る。
「……さて、今回のランキングに関して、納得のできない方もいらっしゃることは、当方も想定しておりました。具体的には、皆様、このようにお考えであることでしょう。『なぜ、あれだけ活躍したクリス・エバンスが、1位ではないのか?』と」
リチャードの言葉に、そうだ、その通りだと、聴講者は同意を示す。
「それについては、今ここで、改めて説明しましょう。……確かに、祭りを通して、クリスくんの活躍は大変目を見張るものがありました。彼のアームドフレームの操縦技量に、卓越したものがあることについては、疑いようがありません。
……しかし、皆様、あらためて「エクウェス祭で付けるランキングの基準」ついて、お伝えさせていただきますが、これは個人の技量はもちろんのこと、あらゆる観点から総合的に判断し、順位付けを行っております。現代のアームドフレーム乗りにとって必要な、様々な要素に基づき、公平・公正に毎年ジャッジしているのです
……ちなみに、昨今のアームドフレーム乗りに必要な要素とは、皆様なんだと思いますか? もちろん、個人の技量は大切です。しかし、それ以上に、現代で重要なのは、作戦遂行力、規律性や、味方との共同性、チームワーク力なのです」
朗々と話すリチャード理事長に、聴衆は皆、聞き入っていた。
そんな中、レイモンド国防副長官は、ソファーに深々と座り、口元に大きな笑みを浮かべながら、リチャードの話に、しきりとうなづいている。
「クリスくんの技量は大変素晴らしかった。実際、多くの敵を撃墜しています。
……しかし、彼の成果はすべて、
……逆に考えると、クリスくんの戦果も、アルフレッドくんの采配、作戦がベースにあったからこそ、上手く機能したといえるのではないでしょうか? 仮に、クリスくんが他のチームにいたとして、同じような戦果を上げることができたでしょうか?」
リチャード理事長の言葉に、聴衆の反応はさまざまであった。
「う──ん……確かに」
「いやでもよう……」
「理事長のおっしゃる通りですね!」
先ほどまでは、どちらかというと、クリスへ同情的な空気で会場が満たされていたが、理事長自らの言葉によって、形勢が傾きつつあった。
「……確かに理事長のいうことは、一理あるかもしれない。しかし、クリスの実力は、そんな小さな枠組みに囚われるようなもんじゃあ、断じてない! それは、リーダーである僕が一番身近で感じている!」
「アル……」
アルフレッドの言葉に対し、クリスが戸惑いながらも声を発した。
「さて……ここまでの話で、納得できた方と、いまいち納得できなかった方と、いるようですね。
……しかたありません。生徒の名誉のため、発表を控えておこうと思っておりましたが……皆様、こちらをご覧ください」
そういうと、リチャードは上着のポケットから取り出したものを、左手で高くかざした。
複数のコードと、何か回路のようなものが合わさったそれは、何らかの機械部品のように見える。
「理事長……それは一体?」
司会役からの問いに対し、リチャードは落ち着いた声で答える。
「ええ……こちらですが、トーナメント終了後に、クリスくんの機体を整備していた整備士から、こんなものがクリスくんの機体に取り付けられていた、と報告がありまして。その取り付けられていた部品の実物がこれです。
……まだ、解析途中の段階ではありますが、今回のエクウェス祭で規定している機体レギュレーションから、明らかに逸脱した機器であることが、判明しました」
リチャード理事長の言葉に、ざわっ、と聴衆の声は一段と騒がしくなる。
司会役の人から、再度リチャードへ問いかけがあった。
「つまり、クリス・エバンス氏は、レギュレーション違反の機体で、大会に出場した疑惑がある……ということですか!?」
「はい……大変残念ながら、その通りです」
おお……! そんなまさか……! そんな言葉が、聴衆から漏れ出し、群衆の騒ぎはさらに拡大する。
「ばかな……!!?」
今まで、黙ってモニター前で話を聞いていたキースは、いてもたってもいられなくなり、壇上前まで駆け出していた。
「リチャード理事長! 突然、話に割り込んで申し訳ない。……今の話だが、にわかには信じがたい! その部品そのものが、クリスを陥れようとする、何者かの罠である可能性はないのか!?」
突然割り込んできたキースの言葉に対し、リチャードは落ち着き払った言葉を返す。
「ええ、キース・S・リンドレー少佐。おっしゃることは、もっともです。そうした可能性も、もちろんあるでしょう。しかし、
……そのため、現段階ではあくまで疑惑、という位置づけです。とはいえ、疑惑であったとしても、そうした生徒に対して、伝統あるロザライム士官学校のエクウェス祭で、1位の栄光を与えることは難しい。
……また100歩譲って、クリスくんが仮に完全な無実であるならば、大会前にしっかりと機体チェックを行っていれば、こうした事態は回避できたでしょう。もちろん、誰かは分かりませんが、不正を働こうとした人間が一番に悪いのですが、クリスくんにそうした、
リチャードの言葉に対し、ぐっ……と押し黙るキース。
控室で経緯を見守るアルフレッド達も、心中穏やかではいられなかった。
「……そんなはずはない! 出場前の機体チェックは万全だったはずだ!」
「もちろんそのはずですが……では、100%完璧に抜け漏れがなかった、とそれを証明することは難しいですわね……」
「くそがっ!! いったい誰がこんなことを!」
「悔しいです! こんなことで、クリスさんが1位になれないなんて……」
アルフレッド達は、誰も、クリスが不正を行ったという可能性については考えていない。
クリスの人間性、そしてアームドフレームの腕前の両方から、「するはずがない」という確かな信頼がそこにはあった。
当のクリスは、沈黙を保ったままだった。
「これは明らかに
「私も同感ですわ。チェノウェス家からも、抗議を入れさせていただきますわ!」
憤慨した面持ちで、気炎を吐く、アルフレッドとアイビー。
「いや、ちょっと待ってほしい」
そんな二人に対し、当の本人であるクリスから、ストップがかかる。
「俺は貴族のことに関して、あまり詳しくはないけど、家の名前を用いて、学校に抗議なんてしたら、後々、色々と面倒なことになるんじゃないか? 二人の学校での立場だって、下手をしたら今まで通りってことにならないかもしれないし」
「そうはいうがな、クリス……」
「いいんだよ、アル」
そういったクリスの顔は、実に晴れ晴れとしていた。
「俺は、今回のエクウェス祭で、皆と同じチームでやれて、本当に楽しかった。チームとしても優勝することができたし、こういっちゃなんだけど、俺個人の成績はあまり興味はないんだ。そんなことより、皆と頑張れたこと自体が、俺にとっては重要なんだ」
「クリス……」
クリスの言葉を黙って聞き入る、アルフレッド、グレン、アイビー、コレット。
「それに、1位になったりしたら、目立って色々と面倒だろ? 俺は正直、そういうのは向いていないって自覚はあるし。だったら、そういうのが得意なアルに担ってもらったほうがいい。
……むしろ、俺としては、アルに面倒ごとを押し付けてしまって、すまないって気持ちもあるくらいだ」
アルフレッドは、ふぅと息を吐くと、言葉を口にする。
「しかし……いいのかい? 現状、君が不正をしたかもしれない、という疑惑が、君自身に降りかかっているわけだが……」
「まあ、そこは今後の調査ではっきりするじゃないのか? そもそも、俺には、そんなことをする理由がない」
「……確かに、お前の実力なら、そもそもそんなレギュレーション違反なんてする必要性がないくらい、実力が圧倒的だしな」
「たかがパーツ一つ、レギュレーションを違反したところで、これだけの戦果をあげることができましたら、そんな楽なことはありませんわ。いったい、どこの下賤な輩がやったのやら」
「そ……そうです! クリスさんがそんなことをする人間じゃないって、私たちは分かってます。それでも難癖言ってくる人は、ほうっておけばいいんですよ!」
クリスを擁護するチームメンバーに、恥ずかしくなったクリスは、ほほをかいていた。
そんなクリスの様子を見たメンバーは、暖かい目を向ける。
「……まあ、とりあえず、君自身がそれでいいということなら、今の段階では抗議を控えておくとしよう。でも、この件でもし、今後何かあったら、この僕に言ってくれよ。貴族の誇りにかけて、君の力になろう」
「私も同じですわ。チェノウェス家の家名にかけて、私も力になりますわ。
……そういえば、すっかり忘れておりましたが、私、3位を頂いていたのでした。とはいえ、クリスさんより上の順位であることを、素直に喜べないのですが……。次回は胸を張って、実力でクリスさんの順位を上回れるように、精進いたしますわ!」
「わ、私も、次回はもっと頑張ります!」
「おう! 来年はどうなるかわからねえが、もし同じメンバーだったら、気持ちよく、ランキング上位を独占してやろうぜ!」
彼らは、今回の祭りを通して、ランキング以上に得るものが確かにあったのだ。
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