フェノメノン   作:xtakashi

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前回のあらすじ

日常


第34話 海のようにきれいな青い色

 

 

 

 アルフレッドの誕生日会当日。

 クリスとコレットは、事前に待ち合わせをして、二人で会場へと向かっていた。

 

 ちなみにコレットが両親に、アルフレッドの誕生日会へ招待されたことを、話したところ、

「優しいけれど、いつも自信なさげにオドオドしていたあのコレットちゃんが……エクウェス祭で7位に入るだけでなく、ついには、名門ウォルコット家にまで招待される日が来るなんて……!」

「コレットちゃんはなんて親孝行な子なんだ……それにくらべて、パパとママはなんと情けないことか……! 私たちが不甲斐ないばかりに、娘に負担をかけることになって……!」

 と、さめざめと両親は泣き出してしまった。

 

 そして、

「没落したとはいえ、元貴族としての最低限の意地もあります! 服装については、ママに任せなさい!」

「そうだ、同級生のクリス君と、せっかくだから当日は、一緒に彼と行きなさい。移動手段については、パパに任せてくれ!」

 ということで、かなり気合の入った服装、そしてハイヤーの手配まで、コレットの両親が対応してくれたのだった。

 

 そして、誕生日会当日。

 コレットの実家が、清水の舞台から飛び降りる心境で、奮発したことで、移動手段のハイヤーはかなり豪華となった。

 

 ハイヤーの中で、運転手を除いて二人っきりとなった、クリスとコレット。

 男性と、密室で二人きりになった経験など、もちろんコレットにはない。

 

 また、二人ともあまり口数の多いタイプではない。

 出発してしばらくたったが、お互い特に何もしゃべらず、車内は沈黙の状態が続いており、コレットは気まずさを抱えていた。

 

(……ど……どうしましょう。こういうときは、いったいどんな話題を振れば……)

 

 ちなみに、父親からは「もし二人っきりの時に、変なことをされたら、真っ先に運転手、そしてパパへ言うんだぞ! そいつを、地獄の果てまで追いつめてやるからな!」と念押しをされていた。

(まったく……! パパったら変なことを言って。クリスさんはそんな人じゃないんですから!)

 

 

「なあ、コレットさん」

「……ひゃ、ひゃい!!!」

 

 突然、クリスから話しかけられたことで、変な声が出てしまったコレット。

 

「……ええと、すまない、急に話しかけてしまって」

「い、いえいえいえ! 私のほうこそ、変な声を上げてしまってすみません……!」

「あらためて確認したいんだけど……俺の恰好って、問題ないかな?」

 

 そういうと、クリスは改めて、自身の来ている服をコレットへ見せた。

 

 

 

 

 友人の、しかも貴族の家に招かれること自体が、クリスにとって初めての経験である。

 そのためクリスも、当日の格好について大いに悩んだ。

 

 当人であるアルフレッドに聞いてみても、「大丈夫だよ、クリス! 服装とかは気にしない会なんだから、気にせず好きな服で、来てくれればいいよ」と、答えるばかりで参考にならない。

 

 悩んだ挙句、クリスはアイビーやコレットに、相談することにした。

 ちなみに、グレンは洋服にまったく頓着がなく、誕生日当日も、準備された洋服をただ着ていくだけ、という有様なので、アルフレッド以上に参考にならなさそうなので、除外した。

 

「わかりましたわ! クリスさんのために、色々とお勧めの服を、私から紹介して差し上げましょう!」

 アイビーは張り切って、クリスへ男性物でお勧めの服装、装飾品について、後日紹介してくれた。

 

 とはいえアイビーは、発想が完全に貴族であったため、クリスへ紹介した服や装飾品はどれも、超が付くほどの高級(貴族視点ではカジュアル)で、クリスの手元資金では、とても手を出すことができなかった。

 

 そのため今回は、かなりコレットのアドバイスが、クリスにとってありがたい形となる。

 実家が元貴族で、今は没落しているコレットは、クリスの懐事情に合わせて、センスがありかつ、お手頃な服や装飾品を、色々と紹介してくれたのだった。

 

 自然と、一緒にいる時間も増えて、アルフレッドの誕生日会までの間、二人で話す時間も、他のメンバーと比較して多くなった。

 

 現在、クリスの服装は、コレットからのアドバイスをふんだんに取り入れたものとなっている。

 

 まず、一番上に、紺色のジャケットを羽織り、その下の襟付きシャツは、薄青色をしていた。

 シャツにつけているネクタイはストライプ柄で、色はシルバー、そこにアクセントとして、ネクタイピンもつけてある。

 カジュアルすぎず、さりとて硬すぎない、クリスの黒い髪の毛とのコントラストもよい、センスの良い仕立てとなっていた。

 

 

「ええ……ばっちりですよ、クリスさん。問題ないです!」

「そ、そうか。それならいいんだけど……」

 いつもと異なり、緊張した面持ちで、ぎこちない反応を示すクリス。

 

「ふふっ……」

 そんなクリスの様子に、コレットは思わず笑みがこぼれた。

 

 クリスは、ひとたびアームドフレームに乗れば、その圧倒的な実力で、自分をはじめとする同級生よりも、はるか高みにいる存在である。

 その時の、圧倒的な覇気、いっそカリスマ性すら感じるその姿とはまるで異なり、今、自分の目の前にいるクリスは、がちがちに緊張し、そんなオーラは見る影もなくなっているのだ。

 そのギャップに対して、コレットはどうにもおかしさを感じずにはいられなかった。

 

「……ん? どうかしたか?」

「い、いえ……! 何でもないです!」

 不思議そうな顔をするクリスに対し、あわててごまかすコレットであった。

 

「……えっと、すみません。……ちなみになのですが……私の今日の服装はど、どうですか……?」

 意を決してコレットは、自身の気になっていたことについて、クリスへと尋ねる。

 

 それに対し、クリスはあっさりと回答した。

「ああ、とても似合っているよ。……俺は、ファッションにはあまり詳しくないけど、特に、この髪飾りがひときわオシャレだと思う」

 

 その言葉に対し、コレットは思わず声が大きくなる。

「えっ……わかりますか! これは、私も結構お気に入りなんですよ!?」

「ええと、何だろう……このモチーフは……バラの花、かな?」

「そ、そう! そうなんです! これ、実は私の誕生月の花なんです。凄くかわいくて、パーティではよくつけているんです」

 

 その後二人は、会場までの移動中、他愛のない会話を続けたのだった。

 

 

 

 

 そうこうしているうちに、二人を乗せたハイヤーは、今回の誕生日会の会場へと到着した。

 運転手と分かれると、クリスとコレットは受付を済ませ、早速会場へと足を踏み入れる。

 

 会場は小さめなホールを一つ、貸し切りにしたぐらいの広さで、会場のいたるところに、華やかな飾り付けがされていた。

 会場の隅では、楽団が流麗な音楽を奏でており、色とりどりの食事と、飲み物が、いたるところに用意されている。

 

 そうした中、会場の奥、中央で、複数の友人に囲まれ、話をする、アルフレッドの姿が見て取れた。

 

「……やあ! 二人とも。今日は来てくれてありがとう! 歓迎するよ」

 クリスたちの姿を確認するが否や、友人たちと別れ、アルフレッドは二人に近づき、声をかけた。

 

「ようこそ。今日は、結構ラフな会なので、基本的に二人とも、自由にふるまってくれて問題ないよ。ああ、ちなみにこの後、乾杯の音頭を取る予定だけど、二人とも、飲み物はすでに取ったかい?」

「ありがとう。この後、取りに行くよ。……この規模のパーティーを、昨日と一昨日と今日、計3日間も行っているなんて、貴族は凄いんだな」

「ちなみに、昨日までのパーティは、もっと会場も大きく、人も大勢で、豪華だったよ? ……まあ、自分でいうのもなんだけど、ロザライムにおいてウォルコット家は名門だからね。一応、ウォルコット家の嫡男である僕の誕生日ということで、それなりの品格・品位というものが、求められるのさ」

「ほ……本当に凄いです。……う、うちなんて、没落して、貴族でなくなってしまってからは、あんまりお金もなくなって、お付き合いのあった貴族からも声がかからなくなって、こうしたパーティーに参加する機会も、めっきり少なくなってしまいましたし……」

 どんよりと、暗い雰囲気となるコレット。

 なんとも言えない表情を、アルフレッドとクリスは浮かべた。

 

 そんな暗い空気を変えるべく、アルフレッドは話題を変える。

「そ……そうだ! この機会に、うちの妹を紹介しよう。来年から、ロザライム士官学校の高等部へ来る予定ということもあって、今日のこの機会に挨拶したい、と本人も申していてね」

 

 そういうや否や、そそくさとクリスとコレットの元を離れるアルフレッド。

 

「アルフレッドさんの妹さんですか……私もあったことがありませんが、いったいどんな人なんでしょうね?」

「どうだろう。アルのように、おしゃべり好きな奴かもしれないな」

「ふふ……そうですね」

 

 まもなく、アルフレッドが、妹の手を弾いて戻ってくる。

 

 

 

 果たして、その出会いは、クリスにとって幸福だったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はじめまして。兄より話は聞いております。私は、ソニア・フォン・ウォルコットと申します」

 

 ソニアと名乗るその少女。

 兄と同じように、その目は、()()()()()()()()()()()()をしていた。

 

 

 






青春っていいよね。

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