フェノメノン   作:xtakashi

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前回のあらすじ

おや、コレットさんの様子が……



今回から、段落分けを新たにしました。
少し、読みやすくなっているかと思います。


第35.5話【幕間】人の思いとは難しい

 

 

 

 エクウェス祭で、ランキング1位をとったアルフレッドは、日々を忙しくしていた。

 

 ロザライム士官学校で、ランキングの上位に位置するということは、ただ単純に実力が認められる、というだけにとどまらない。ただでさえ、上位の者は実利以外にも、大きな意味合いを持つ上に、1位ともなれば、より一層、その肩書は重いものとなる。

 広報誌への論文寄稿、広告塔としてのインタビュー取材、写真撮影、各種イベントへの出席など、通常の授業と同時並行で、たくさんの必要ごとに忙殺されることとなる。

 

 とはいえ、様々な恩恵があることも事実。

 授業料の免除や、授業外活動で発生する各種費用負担も免除。その他、数々の優遇措置が、生徒及びその保護者にまで適応されるのであった。

 とはいえ、アルフレッドの実家の財力からすれば、そうした費用的な恩恵はあまり大きな意味はない。むしろ、貴族としての名誉のほうが、ウォルコット家にとって、大変重いものであった。

 

 しかし、当のアルフレッドにとって、1位になったことについては、複雑な思いを抱えていた。なぜなら、自分よりも明らかに1位を取るに値する人物、自分の実力を明確に上回る実力者が、いつもすぐそばにいるからであった。

 

「なんだかすまないな、クリス。」

「……いったいどうしたんだ?アル。」

 

 ある日の夜、いつものように、寝る支度をして、自分のベッドに入ろうとしたクリスに対し、アルフレッドが突如として声をかけてきた。

 ちなみに、アルフレッドは1位となった特典として、個室への移動も許可されていたのだが、本人はそれを固辞した。本人の気持ち的にも、圧倒的な実力者のクリスを差し置いて、自分だけ個室に移動することが、どうしても気が引けたのだった。

 とはいえ、ランキング上位の二人が生活する部屋、ということで、今までの部屋から、ホテルのスウィートルーム並みの広さの部屋へと移ったのだが。

 

「いや……君を差し置いて、僕が今、様々な恩恵を学校で受け、持てはやされているだろう?

 ……僕は、自分の実力が低いなんて、これっぽっちも考えていないが、それでもある程度、物事を公平に見る目はあるつもりだ。やはり、君を差し置いて、僕がランク1位であることは、僕自身、いまだに心がもやもやしているんだ。」

「なんだ、そんなことか。」

クリスは少し、あきれたように返答する。

 

「アル、何度も言っているが、俺は気にしていない。それに、俺だって色々と恩恵を受けているぞ。この部屋だってそうだ。学校に入学する前からは、考えられないくらい、今は快適な生活ができている。」

「そうは言うがな……。」

「まったく、お前らしくない。とにかく、俺のことは気にするな。むしろ、面倒なことはクリスがやってくれて、俺としては助かっているんだから。」

 あっさりと話すクリス。そんなクリスに対し、アルフレッドはふっと、笑いが込み上げた。

 

「……まったく。君くらいだぞ?この学校で1位となることを、面倒だなんていうのは。」

「そうか?」

「やれやれ。」

そう言って、肩をすくめたアルフレッドは、少し、肩の荷が下りたように感じた。

 

 

 

 

「ところでだ……クリス君。」

「な……なんだいきなり。」

 急に、アルフレッドはまるで、獲物を狙うハンターかのごとく、鋭い目つきとなった。口元にも、うっすらと怪しい笑みを浮かべている。そんな、ただ事ではない様子を見せるルームメイトに、クリスは一瞬たじろいだ。

 

「わが妹と、最近、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?これは、いったいぜんたい、どういうことなのか、詳しく聞かせてもらおうじゃないか……!?」

「!……それは!?」

「ふふふ……隠しても無駄だぞ、クリス君。この僕が、気が付かないと思ったのかい?」

「……」

 思ってもみなかったアルフレッドからの強襲に対し、言葉に詰まるクリス。

 

「最近ソフィーのやつと、電話でやり取りをすると、いっつも君の話題ばかり持ち出されるんだ。……ちなみに、君と直接やり取りもしていることは、この間ようやく聞き出すことができたが……なぜか今でも、僕を通して君のことを根掘り葉掘り、聞こうとしてくる……やれ、今日は何を食べたのだの、授業の様子はどんなだの……毎度毎度聞かれる、僕の気持ちを君は想像できるか?」

「む……」

 

 最近のアルフレッドの疲労は、ランク1位の諸々ではなく、妹からの電話攻撃のほうが割合として大きかった。ここ数か月、アルフレッドに対し、やけに頻繁に、取るに足らない要件で、ソフィアは電話をかけてきていた。そして、要件が終わると、必ず、クリスの様子を聞いてくるのがお決まりとなっており、アルフレッドは正直、うんざりしていたのだ。

 

「す……すまん。結果として、アルの負担になっていたようだな。」

「別に、君のことを攻めているわけでもないし、謝ってほしいわけでもない……とにかく、僕としては、今一度君に確認したいのは、ずばり、君はソフィーのことをどう思っているか、ということだ!」

「…!」

 

「……ちなみに、クリスにはソフィーと呼ぶことを許可しているようだね。まったく、家族以外でソフィーと呼ぶことを許可するなんて、ちょっと前まで考えられなかったぞ。

 ……で、どうなんだ?君は、ソフィー個人をどう思っているんだ?」

「……」

 

 アルフレッドからの質問に対し、クリスは一瞬考える。

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

「……わからない。」

 

 

 

「わからない……?」

「……自分でもわからないんだ。」

 

「おい、これ以上、ふざけたことを言うと、いくら僕でも怒るぞ!」

「すまん、本当にわからないんだ。

 ……アルの誕生日会に出席したとき、ソフィーとは初めてあった。そのあと、色々と話して、なんとなくもっと話したいな、とそう思った。だから、連絡先を渡した。そして、すぐにソフィーからも連絡先を教えてもらえて、その後、折を見て、色々とやり取りをしている。ただ、自分があらためて、彼女に対してどう思っているのか、本当に自分でもよくわからないんだ。逆に、これってどういうことなんだ?むしろ教えてほしい。」

 

 クリスにしては、珍しく焦った様子を感じ取ったアルフレッド。

「……いや、聞いているのはこちらのほうなんだが……と、とにかく、君は何か不埒な考えや、下心があって、妹とやり取りしているわけではないってことか?」

「不埒な考えって何だ……?」

 心底、わからないという表情をするクリス。その様子に対し、アルフレッドは大きなため息を付く。

 

「……う~む……まあ、とにかく、ソフィーとのやり取りは、君自身、純粋に楽しんでいるってことだな?」

「ああ、ソフィーとのやり取りは、楽しいと思っている。」

「ぬ……」

「とはいえ、家族であるアルフレッドに、しっかりと報告をしていなかったことは、よくなかったかもしれない。それによって、アルの負担が増えることは、俺の本意ではなかった。そういった一般常識が、俺はたまに抜けていることがあるからな、そこについては申し訳なく思っているので、謝罪させてほしい。」

 

深々と、クリスはアルフレッドに対して頭を下げた。

想定とは違う反応を示されたことで、アルフレッドは内心焦りだす。

 

「い……いや、そういうことでないが……。」

「とりあえず、ソフィーとの電話の音声は、すべて録音し、後日、アルに聞いてもらう形にしたほうがよいかな?」

「そ、そこまでしてもらわなくていい!むしろ、そんなことをしていると、妹にばれたら、僕がソフィーに口をきいてもらえなくなってしまう!」

「そうなのか……?」

 

 いまいち、ずれているクリスに対し、アルフレッドはどうにも調子がくるってきた。

(アームドフレームの腕前は天才的で、座学についても普通に問題ないくせに、こういうところがよくわからない奴だな……。)

 

 混乱を抱きながら、アルフレッドは口を開く。

「話をまとめるとしよう。……とにかく、君は変な考えを抜きにして、純粋にソフィーとのやり取りを楽しんでいる。おそらくだが、君は、彼女のことを好ましいと考えていると思うんだが、違うのか?」

「おお、さすがはアル!確かに俺は、ソフィーを好ましいと考えているように思う。」

「……なんだか、頭が痛くなってきたが、まあいい。とりあえず、ソフィーも君とのやり取りを楽しんでいるようだし、幸せそうなので、ひとまずこのままやり取りを続けてやっていくということで。別に、君もそれについて、異論はないんだろ?」

「ああ、わかった、問題ない。ありがとう。」

「そのかわり、何かあったら、すぐに僕へ報告しろよ。」

「もちろんだ。ホウレンソウが重要であることは、授業でも習ったしな。」

 

 これ以上話しても、埒はあかない。

 アルフレッドは、面倒くさくなってきたので、ひとまずこの話を打ち切りにすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼らも、もうすぐ高等部の2年生になろうとしていた。

 






今回は取り急ぎ、幕間的な話です。

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