フェノメノン   作:xtakashi

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第37話です。

敵が出ます


第37話 襲来

 

 

 

 アルファチームの輸送機が、謎の攻撃により墜落した時と同じ頃、ブラボーチームは別ルートにて、マリデ基地へと向かっていた。

 行程の、三分の二にさしかかるあたりを移動中のブラボーチームの面々は、当然ながら、アルファチームを襲った異常事態に、気づいてはいない。

 

「今頃、先に出発したアルファチームは、もうそろそろマリデ基地へ到着する頃かしら?」

「まあ、そうだろうな。……アルたちからわかったことについて、こっちへ何かしら連絡があってもいいが、いまのところ何もねえな。単純に通信不調の可能性もあるが……」

「アルファチームは、仲間ではあるが、ライバルでもありますからな!! アルフレッド氏が、情報を独り占めしようと、こちらへ連絡をよこさないという可能性も、十分ありえるのでは!?」

 

「……アルはそんな奴じゃない」

 ケネスの無神経な発言に対し、クリスは静かに反論する。

 

「ほう、クリス氏……リーダーである私の言葉に異を唱えるとは、なかなかいい度胸ですな!! だいたいそなたは……」

「おい、二人とも落ち着けって」

「ケネス、お前もやめろ。クリスも、リーダーに対して突っかかるな」

 たまらず、ジェイクとグレンが仲裁に入った。

 ケネスとクリスはそれ以上、言葉を交わさなかったが、輸送機内は、ぎすぎすした雰囲気が漂う。

 

 

「……おかしい」

 そんな折、突如として、輸送機のパイロットを務める、トム曹長が声を上げた。

 

 ケイティが、機内の空気を変える意図も抱えつつ、曹長へ声をかける。

「何かありましたか?」

「もうすでに、広域レーダーにアルファチームの位置を知らせる光点が、表示されてもおかしくない。にも拘わらず、一向に映る気配がない……」

 

 その言葉に、機内のブラボーチーム全員が、一斉にトム曹長へ顔を向ける。

 

「磁気嵐の影響の可能性は?」

「もちろん、その影響でレーダーも利きにくくなってはいるが、それにしたって全く表示されないのは異常だ! アルファチームのシグナルが完全に消失(ロスト)しているとしか思えない……!」

 

 ブラボーチーム全員の背中に、冷たいものが走った。

 

「これは、まさか……」

「何か異常事態が発生した、と見たほうがいいようね」

「そんな……」

「ええい、貴公ら慌てるでない! まずは冷静になって、このケネスの指示にしっかりと従うのだ!」

 

 

 

「曹長、自分が先行して見てまいります」

「何?」

 クリスの言葉に、その場にいる全員が目を見張る。

 

「マリデ基地といい、アルファチームといい……何か不測の事態が発生している可能性が高いと考えます。であれば、まずは誰かが、状況を確認しに行かなければなりません。それであれば、自分が行きます」

「ちょっと待て、クリス氏! リーダーは私だぞ!?」

「自分でいうのもおかしな話ですが、この中で、アームドフレームの腕前であれば、自分が多少できると考えます。であれば、万が一の状況が発生した場合、生存の確率が一番高いのが自分です。もちろん、無茶はしません。危険を感じたら、すぐに撤退します。どうか、私の出撃の許可を頂けないでしょうか」

 

 まっすぐ目を見開いて、トム曹長へ提言をするクリス。

 そんなクリスに対し、トム曹長は一度ふ~と息を吐き、口を開いた。

「……エクウェス祭は自分も観客として見ていたよ。こう見えても、ロザライム士官学校は私の母校でね。君の活躍はモニター越しだが、よく見ていた。……多少、どころの騒ぎじゃない。君の実力は、私の周りの誰よりも卓越していると感じるよ。

 わかった。クリス・エバンス、君に先行偵察の任を与える。……ただし、いくら君が凄いといっても、まだ学生だ。絶対に無茶をせず、危険を感じたら、すぐに撤退するように。わかったね」

「はっ、了解しました」

 

 トム曹長の言葉に対し、クリスはきれいな敬礼を携え、返事をした。

 

「曹長! ブラボーチームのリーダーは、この私で……!!」

「もちろん、それは承知しているが、今は不測の事態だ。今回は、私の権限で、エバンスへ先行偵察の任を与えることにする。異論は認めない」

 ぴしゃりとしたトム曹長の言に、ケネスはそれ以上、言葉をつなげることはなく、苦々しく口をふさぐ。

 

「クリス、頼んだぜ」

 グレンが、改めてクリスへ口を開く。

 

「あっちには、アルがいる。気障な奴だが、リーダーとしても、パイロットとしても優秀なのは、お前も知っているだろう。大丈夫だとは思うが、とはいえ、万が一ってこともある。だから……お前に託す」

「ああ」

 言葉数は多くないが、グレンの言葉からは、友人を心配する気持ちと、クリスへの信頼がありありと伝わった。クリスは短く返事をすると、グレンと固く、握手を交わす。

 

「クリス……気を付けてね」

「危なかったらちゃんと戻って来いよ」

「ああ」

 ケイティとエイポックからも、クリスは激励を受ける。ちなみにケネスは、黙ったまま、クリスへさっさと行くように促した。

 

 そうして、クリスはアームドフレームに搭乗し、先行して、まずはアルファチームの予想地点へ、移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……!?」

 

 マリデ基地に到着したアルフレッド達は、まさしく()()()()()に見舞われていた。

 

 まず、基地の正面ゲートに到着したものの、見張りが誰もいない。

 しかも、不用心なことにゲートはあきっぱなしの状態となっていた。

 

 不審に思いながらも、アルフレッド達はアームドフレームに搭乗した状態で、慎重に基地内へと入っていく。しかし今のところ、基地から人の気配が一切ない状態であった。

 

 相変わらず通信状態が悪く、ルイジマリ駐屯地、そしてブラボーチームにも連絡がつかない。

 

「アルフレッドさん、どうされますか?」

「ひとまず、基地内を捜索して、誰か人がいないか探すしかないな……。皆、周囲の警戒は怠らないように」

「……ちっ、いったいどうなってやがる!!?」

「お……俺たち、どうなっちまうんだ……?」

「……」

 

 不安な気持ちを抱えながら、アルフレッド達は基地内の捜索を続ける。そうして、マリデ基地の一番開けた場所である、滑走路へ彼らは足を踏み入れた。

 

 

 

 

 アルフレッド達は、警戒を緩めてはいけないことは、頭ではわかっていた。

 

 しかし彼らは、()()()を目の当たりにし、しばらくの間、言葉を失ってしまった。

 

 

 そこにあったのは、()()()()()()()()()()()()であった。

 

 かろうじてアームドフレームだったことがわかる残骸、散らばった弾の薬莢、バラバラになった武器、一部が倒壊している建物、焼け焦げて色が変色したフェンス、穴だらけの滑走路。

 ……そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 学生(アルフレッド)達が初めて見る、リアルな戦場。彼らは呆然と、その場に立ち尽くしていた。

 

 

 

「……あ、あれは!?」

 ようやく思考が戻ってきたアルフレッドの言葉に、他のメンバーも反応する。アルフレッドの目線の先に、彼らにも見覚えのあるものが映っていた。

 

 

「…………アンドリュー大尉…………!」

 

 そこには、隊長機を示すエンブレムを冠した、アームドフレームの残骸があった。跪いたような体勢で動かないそれは、コックピット部分が無残にも、えぐり取られたかのように、ぐちゃぐちゃな状態となっている。

 よくみると、大量の血痕もそこには散乱していた。そこにいたはずの搭乗者が、どのような末路をたどったかは、容易に想像できた。

 

「……ち、畜生!!」

「あ……ああ……」

 思わず悪態をつくレノと、青白い顔で、言葉にならない言葉を口にするエイポック。

 

 

 

 

 

 その時

 

 

 

 

 

「……ア、アルフレッドさん!! 一歩下がって!!!!」

 コレットの悲鳴のような言葉に反応し、アルフレッドが自身のアームドフレームを、後方に引かせる。

 

 

 その瞬間、今までアルフレッドがいた場所に、どこからかの砲撃が着弾。

 大きな音ともに、爆風が立ち上った。

 

 

「……おや? 今のが外れましたか」

 

 広域回線での言葉が、戦場に響き渡る。

 場違いかのように、落ち着いた声色。そんな声の主の居所は、マリデ基地の周囲を囲う、外壁の上であった。

 

「紛れ込んだネズミは、始末しないといけませんねぇ……」

 声の主が乗った、青色を基調とし、黄色の線がいくつも入った見た目のアームドフレームが、右手を上げる。

 その合図とともに、脇から次々と、同じようなカラーリングをしたアームドフレームが現れた。

 

「くるぞ……!! 皆、戦闘態勢!!」

 

 かくして、アルフレッド達と、謎のアームドフレームとの戦端が開かれた。

 

 

 





ついに戦闘開始。
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