波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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初めてのインターン

インターン先が決まった数日後。

今日はお茶子ちゃんと梅雨ちゃん、切島くんがインターンに行っている。

緑谷くんは昨日早速サー・ナイトアイの所にインターンに行って、すごくへこんで帰ってきていた。

どうやらエリちゃんという女の子を助けられなかったことやオールマイトに秘密にされている諸々のことで思い詰めているらしい。

エリちゃんの方は私からはどうしようもないけど、オールマイトの方は緑谷くんが問い詰めれば多分教えてくれるんじゃないかな。

家庭訪問の後からオールマイトの心持ちがだいぶ変わっているし。寿命に抗おうとしている感じがするのだ。

 

「授業が始まるぞ!!麗日くんと梅雨ちゃんくんがまだ来ていないが!?」

 

「公欠ですわ委員長」

 

お茶子ちゃんたちが来ていないことに気が付いた飯田くんが大声で確認して、それに対して百ちゃんがスッと答える。

それにしても今日は飯田くんの動きが一段とキレがいい。どれだけ気合を入れているんだろうか。

 

「そっちも切島いなくね?」

 

「切島も公欠だよ。インターン」

 

インターンの話題で皆が盛り上がり始めると、透ちゃんが私にも確認してきた。

 

「瑠璃ちゃんはまだ行かないの?」

 

「ん……ミルコさんからは……近くに来たら呼ぶって言われてる……」

 

「あー、事務所がないとそういう感じになるんだ」

 

「それもあると思うけど……ミルコさんの気が向いた時に……呼びたいだけだと思う……」

 

「……確かに、ミルコならそれもありそう……」

 

「俺より一歩先の話をするんじゃねぇ!!」

 

透ちゃんと話していたら前の席の爆豪くんが頭を抱えながら怒鳴ってきた。

どれだけ嫌なんだ。

 

緑谷くんの方は緑谷くんの方で、完全に上の空になっている。

さっきから峰田くんとか三奈ちゃんが話しかけているのに「んあうん」とかいう生返事しか返していない。

 

そろそろホームルームだななんて思っていたらスマホが振動した。

確認してみるとミルコさんからの電話だった。

……もう大体予想はついた。

 

『やっと出たか。今から甲府まで来い』

 

「今からですか……?甲府に今からって……2、3時間かかりますけど……」

 

『私も今協力要請受けたんだよ。ヴィランが人質取って立てこもってるってな。近くに被害なしで対処できそうなヒーローがいねぇとかで、到着まで1時間はかかる私に依頼してきた。結構人質がいるみたいでな。私一人で強引に突入しても人質の被害0に出来るかは運任せだ。こういうのは私よりもお前の方が向いてる。今更1、2時間増えてもそんなに変わらないだろ。いいから来い。甲府の駅で待ってるからな』

 

「……分かりました……急いで向かいます……」

 

『おう、なるべく早くな』

 

ミルコさんはそこで電話を切った。

隣で聞いていた透ちゃんも急な話過ぎて呆然としている。

 

「きゅ、急だね」

 

「でも必要としてくれてるって……ことだから……急がないと……」

 

「それもそうだね!頑張って来てね!瑠璃ちゃん!」

 

「ん……!行ってくる……!」

 

とりあえずコスチュームを持って大急ぎで相澤先生の方に向かわないといけない。

爆豪くんが凄まじい形相になっていたけどスルーして教室を出た。

先生はホームルームのために廊下を歩いている所だったからすぐに合流できた。

 

「今から?」

 

「はい……ついさっき電話で……今から甲府に来いって……」

 

「はぁ……分かった、公欠扱いにしておく。行ってこい」

 

「あの……青山くんの腕輪のことも……」

 

「分かってる、気にするな。いいから行け。急いでるんだろ」

 

「はい……!」

 

ミルコさんの傍若無人っぷりに呆れているけど、承認はしてくれた。

腕輪のことも最低限お願いしたしなんとかしてくれるだろう。

そう思いながら大急ぎで駅に向かった。

急いでいたらヒーローが声をかけてくれて、事情を話したら駅まで送ってくれて時間短縮が出来たりもしてすごく助かった。

 

 

 

静岡から電車を乗り継いで甲府まで移動した。

やはり電車だけで2時間ちょっとかかってしまった。

流石にこの長時間の移動を普通の電車に乗ってとなると、コスチュームを入れたアタッシュケースが重くて仕方ない。

 

「おう、やっと来たか。遅かったじゃねーか」

 

「移動開始してから3時間かからないくらい……予定通りです……」

 

「ま、そうだけどな。とりあえず現場はまだ膠着状態だ。早く着替えてこい」

 

ミルコさんにそう言われて着替えてくるように促される。

でも駅に更衣室なんてあるわけもないし、ミルコさんも思考を見る限りさっきまで現場にいて今私を迎えに来ただけって感じだ。

 

「着替えって……どこでしてくればいいですか……?」

 

「まだホテルも取ってないからな。そこに多目的トイレあるだろ。そこで着替えてこい。ヒーローがコスチューム着るために使うつったら怒るやつなんかいねえよ。リオル」

 

「トイレ……いえ、分かりました……ちょっと待っててください……」

 

指示された通りに多目的トイレに入ってささっと着替えてしまう。

そのままミルコさんの方に戻る。

 

「行くぞ。まだ大丈夫とは言っても、人質がいることには変わりないからな」

 

「はい……急ぎましょう……」

 

ミルコさんはそう言うと足早に歩きだした。私もそれを追いかけるようについていく。

コスチュームで街を歩いていると相変わらず市民の人たちの視線を感じる。

ミルコさんはそんなの一切気にした様子もなく話し始めた。

 

「移動中に状況だけ伝えるぞ。場所はこの近くのでけぇ銀行。そこに銀行強盗がおそらく4人入り込んでいる。個性の詳細はまだはっきりしていない。人質は襲撃時にいた客と職員全員。総数もまだ不明だ。警察に対しては逃走車とその後の追跡禁止を要求してる感じだな。この状況で下手なヒーローが踏み込んでも人質を危険に晒すだけだ。犠牲者0にするには私でもリスクが残るからな。だからお前を呼んだ」

 

「私が……強盗と人質の配置を確認して……隙を見て突入指示を出せばいいですか……?」

 

「それが一番の仕事だな。だが、お前も成長したんだろ?」

 

「……はい……!前よりも……ずっと戦えるようになりました……!」

 

「ならそれを見せてみろよ……ほら、あそこだ」

 

そう言ってミルコさんが示した銀行の周りには、たくさんのパトカーが止まっていた。

警察はもちろんヒーローコスチュームを着た人も数多くいる。

 

「ヒーロー……多いですね……」

 

「ああ。だがこれだけいても人質が多くて踏み込めないのが現状だ」

 

「ミルコ!お待ちしていました!」

 

ミルコさんと近づくと警察の人が駆け寄って来た。

警察の人はミルコさんを見た後に私の方に視線を移してまじまじと見てくる。

 

「こちらが?」

 

「ああ。ほら、自己紹介」

 

「はい……ミルコさんのところでインターンをさせていただいています……雄英高校1年……ヒーロー名……リオルです……」

 

「ミルコから適任者を連れてくると聞いていました。急な招集に応じていただきありがとうございます!」

 

「いえ……全然大丈夫です……」

 

思考を見る限りこの現場の警察のトップの人だと思うんだけど、腰が低くてぺこぺこしてくる。

学生で子供の私にこんな態度を取られると凄く恐縮してしまう。

仮免とはいっても、これがヒーローに対する扱いってことなのだろうか。

 

「で、状況は変わってねぇな?」

 

「はい。ヴィランたちが焦れてきてはいますが、車の準備に時間がかかっていると誤魔化し続けています」

 

「よし、情報集約してるところがあんだろ。そこに通せ」

 

「はい!」

 

警察の人に現地の対策本部のような場所に通される。

そこには銀行の間取り図とかいろいろな道具が置かれていた。

 

「リオル」

 

「はい……」

 

ミルコさんは私に声をかけてから壁に寄りかかって完全に傍観の構えになった。私に任せるつもりみたいだ。

ミルコさんに指示された通りに銀行の中の波動を注視する。

人質は全員で33人かな。だけど、ちょっと気になる人がいる。

 

「……ヴィラン……4人で間違いないんですか……?」

 

「はい、間違いないはずですが……」

 

警察の人に確認するとそう返事が返ってくる。

確かに人質の周りを固めているのは4人だ。これをヴィランとして扱っているんだろう。

だけど、人質の中に1人悪意を感じる人がいる。

思考も襲撃のことを考えていて、恐怖や焦燥とかで思考を埋め尽くされている他の人質とは全然違う。

 

「……人質の中に……もう1人紛れ込んでいます……ヴィランは5人です……」

 

「なっ!?それは本当ですか!?」

 

「はい……人質は32人……この位置にいます……その人質たちの中に紛れ込んでいる……帽子を目深にかぶった……大柄な男から……悪意を感じます……彼は間違いなくヴィランです……」

 

人質が集められている場所を間取り図で指さしながら説明していく。

さらにヴィランが立っている場所、それぞれの思考から予測される個性とか、読み取れる情報をどんどん伝えていく。

個性に関して分かったのは人質の周りを固めている4人のうちの3人だけ。

手から火を出す、遠くを見ることができる、見た目通りの異形のクワガタだ。

遠くを見れるっていうのがどのくらいか分からないのがちょっと厄介だけど、巡回している4人は誘い出せばミルコさんなら制圧できると思う。

ちょうど車が届かないってことで焦れている状況みたいだし、車の準備が出来たって誘い出せばいいんじゃないかな。

『車の準備が出来たら早く離脱する』っていう思考がひしひしと伝わってくるし。多分保険のヴィランが人質に紛れ込んでいるから普通に出てくると思う。

移動にそんなに人質を連れて行くとは思えないし、多分人質を数人抱えてるくらいならミルコさんなら気にしないで制圧できるだろう。

 

保険として潜り込んでいるだろうヴィランは私が対処すればいいかな。

自分が一味の1人だと気が付かれていないと余裕の思考をしているし、虚を突けば私でも制圧できると思う。

ミルコさんが制圧を開始するのと同時に、近くの窓を叩き割って侵入すればいいと思う。発勁なら簡単に割れるだろうし。

 

「ミルコさん……ミルコさんなら……車に乗るために出て来た4人……人質が1人2人いても制圧できますよね……」

 

「ああ。そのくらいなら余裕だな」

 

「中のヴィランは……私が対処するので……ミルコさんには……4人の方をお願いしてもいいですか……?ミルコさんが動き出したタイミングで……私も動き出します……」

 

「よし。じゃあさっさと行くぞ。警察も、やることは分かってるな?」

 

「はい!今から車の準備が出来たことを伝え、誘き出します!」

 

警察の人が慌ただしく動き出すのを尻目に、私たちは対策本部を離れた。

 

 

 

ミルコさんは隣の建物の屋根に跳躍で登って銀行の屋根に飛び移った。

どうやらそこで待機するつもりらしい。

私もヴィランたちの視界に入らないようにしながら突入予定の窓の近くに待機する。

警察が囮に使うつもりらしい車を正面玄関近くの道路に止めている。

そろそろか。

 

手と足に波動を圧縮し始める。

ゆっくりと片手で波動弾を作っておいて、時間をかけて少しでも両手で作ったものと同じ大きさになるようにどんどん波動を練り上げていく。

その状態になってから2分くらい経った頃、中のヴィランたちが動き出した。

 

4人は手近な人質を1人連れて出口に向かっていく。

そしてヴィランたちが正面玄関から出た瞬間、ミルコさんが屋根から飛び降りた。

それに合わせて私は左手で窓ガラスに発勁を放って叩き割る。

それと同時に片足から波動を噴出して銀行の中に飛び込む。

人質の人たちが驚愕してこっちを見ているのが分かる。

非常事態が起きたことを理解したらしい人質の中に紛れている男が、手近な人質を掴もうとしている。

その手に向けて、勢いよく波動弾を射出した。

 

「波動弾……!!」

 

波動弾は狙い通りヴィランの手に当たって、ヴィランを大きく怯ませた。

他の人質たちは今悲鳴を上げて散り散りになっていった。

残ったもう片足から波動を噴出して、空いたスペースを吹き飛んで一気にヴィランとの距離を詰める。

 

右手に波動の圧縮を始めているけど、発勁と真空波どちらをするにもまだ圧縮が足りない。

だから、左手に波動を集めて左手側の身体強化をしておいた。

突撃の勢いを利用して左手でそのままヴィランの顔を殴る。

 

「発勁……!!」

 

さらに怯んだ隙を利用して、圧縮が終わった右腕で腹部に発勁を叩き込んだ。

意識は失っていないけど悶えているヴィランをそのまま地面に叩き込んで拘束してしまう。

 

「これで……このヴィランは大丈夫……ミルコさんは……」

 

すぐにミルコさんの方にも意識を向ける。

だけどその必要はなかった。

ミルコさんは既に人質を救出しつつ4人をダウンさせていた。

流石すぎる。

 

そして警察も銀行の中になだれ込んで来た。

すぐに私が拘束していたヴィランを拘束具を使って拘束している。

ミルコさんの方のヴィランも同じように拘束されていっていた。

 

完全に解決した雰囲気が漂い少しの間沈黙が辺りを支配した後に、歓声が響き渡った。

人質の人たちも手を取り合って喜び合っている。

怪我人もいないみたいだし、本当に良かった。

 

私が安心していたらミルコさんが近づいてきて乱暴に頭を撫でられた。

 

「上出来だ。本当に戦えるようになってるじゃねえか」

 

「ありがとうございます……!ミルコさんも……流石です……!」

 

「このくらい朝飯前だよ。お前もいい動きだった」

 

「ミルコさんのアドバイスの……おかげです……!発剄も波動弾も……!ミルコさんのアドバイスのおかげで……出来るようになったものなので……!」

 

ヒーローとしてミルコさんの役に立てたことが嬉しかった。

ミルコさんとそんな風に話していると人質だった人たちや野次馬だった人たち、さらには報道の為に来ていた記者まで周囲に集まり出した。

ヒーロー名を聞かれたり揉みくちゃにされたりお礼を言われたり、照れ臭かったけど自分が仮免とは言えヒーローになったことを実感出来た。

写真も沢山取られたりしたけど、ミルコさんはよかったんだろうか。記者の人たち、完全に私のことをミルコさんのサイドキックとして認識してたけど。

ミルコさんは一切記者のことは気にせずに一般の人たちにファンサービスをしていた。

 

それからしばらく一般人や記者の対応をしてから現場を離れた。

ミルコさんはそのまま近くにホテルを取るみたいだ。

また呼びたいときに呼ぶってはっきり言われた。とりあえず明日は呼ぶつもりはないらしい。

私はミルコさんの誘いで一緒に食事をしてから雄英に戻った。

寮に着くころには外は真っ暗になっていた。

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