翌日になって、私は普通に登校していた。
昨日は帰った後に透ちゃんを筆頭にした皆に質問攻めにあって大変だった。
お茶子ちゃんたちも今日はインターンはないみたいで、ちゃんと登校してきている。
3人とも昨日は事件解決に関わったみたいで結構遅い時間に帰ってきていた。
今日は常闇くんが公欠になっている感じだ。
そして朝になって昨日の事件のゴシップ的な部分がニュースになり始めたのか、皆スマホを持って騒ぎ始めていた。
「切島コラァ!!!お前名前!!ネットニュースにヒーロー名載ってるぞスゲェ!!!新米サイドキック
疲れでボケーっとしていた切島くんが目をパッと開いて上鳴くんのスマホを覗き込む。
そんな切島くんに対して爆豪くんが凄まじい怒気を放っていた。悔しいのは分かるけどなんでそう捻じ曲がった感じになるのか。
そしてそれに続くように三奈ちゃんと透ちゃんが女子で集まっていたところでスマホを掲げ出した。
「梅雨ちゃん麗日ぁ!すごいよー名前出てる!えっとリューキュウ事務所に新たなサイドキック!インターンシップで所属した2人!」
「瑠璃ちゃんも載ってるよ!ほらここ!ミルコにまさかのサイドキック!?ミルコが認めるその実力は!?だってぇ!!」
昨日記者の人たちに散々写真を撮られたから、ニュースに載ってるのは納得ではある。
むしろあれだけ写真を撮って使わなかったら何のために撮ったのかと聞きたくなってしまうし。
だけど透ちゃんが見せてくれたそのページには、ミルコさんに荒々しく頭を撫でられている私の写真が大きく映っていた。
「マジじゃん。ルックスもキュート、お手柄、大事件を瞬時に制圧。実力は本物。ベタ褒めだね」
「うへぇー嬉しいなぁほんとだ……!」
「どこから撮ってたのかしら」
「……この写真……いつの間に……後から散々撮った癖に……なんでこれを……」
「すごいねぇ~!もうMt.レディみたいにファンついてるかもねぇ~!」
「うらやまー!!」
お茶子ちゃんたちはすごく嬉しそうにしているし、三奈ちゃんたちは興奮気味に捲し立てる勢いだった。
私も記事自体は嬉しいけど、写真が少し恥ずかしい。子供みたいにガシガシ頭撫でられてるし。
……でもミルコさんと撮った写真なんて持ってないし、この記事を印刷して写真の所だけ切り取ってコルクボードに貼っておこうかな。
この記事書いたところに連絡したら写真もらえたりしないかな。
「瑠璃ちゃんすごいね!ミルコって一匹狼の印象が強かったんだけど、この写真見たら一気にイメージ変わっちゃった!」
「……少し……恥ずかしいんだけど……」
「でもそれだけ可愛がられてるってことでしょ?ほら、この記事にもわざわざサイドキックの到着を2時間近く待ってたって書いてあるし!」
「そうかな……?」
「そうでしょ!可愛がってなきゃプライベートの電話番号なんて渡さないし、わざわざ指名したりしないと思うよ!それに、ミルコがこんな風に誰かの頭撫でてるのなんて見たことないし!」
指名は私がお願いしてそういう体にしてもらっているだけなんだけど、電話番号をくれたのも頭を撫でられたのも事実だ。
ミルコさんに気に入られているということならそれは嬉しいことだけど、サイドキックとして騒がれてミルコさんのイメージが変わってしまうのは迷惑が掛かっているんじゃないかって心配になってしまう。
とりあえず迷惑をかけた分、いい働きをしてミルコさんにお返しをしていこう。
「仮免といえど街へ出れば同じヒーロー……素晴らしい活躍だ……!だが学業は学生の本分!!居眠りはダメだよ!」
飯田くんが褒めてくれた後に注意を促してくる。相変わらずのクソ真面目だ。
「おうよ飯田!覚悟の上だ!」
「うん!」
「ん……当然……」
私たちもその意見に対して特に反論もない。
同意の返事を飯田くんに返していると、ちょうど予鈴がなった。
サッと席に座ってそのまま先生が来るのを待った。
「あっ!そういえば瑠璃ちゃん!昨日からランチラッシュのメシ処に期間限定メニューが増えたんだよ!瑠璃ちゃんが好きそうなやつ!」
昼休みになった途端、透ちゃんにそんな話を振られた。
透ちゃんがこう言うってことは甘い物関連だろうか。
「……つまり……甘い物……?」
「そういえば、ねじれ先輩がそんなこと言うとったなぁ」
「絶対に瑠璃ちゃんが食べると思うって言ってたわね」
昨日お姉ちゃんとインターンに行っていたお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが、お姉ちゃんがなんて言っていたかまで教えてくれる。
「つまり……!お姉ちゃん一押し……!」
「ねじれ先輩本人は食べたことないって言うとったけどね」
「確か……タピオカミルク丼だったかしら」
タピオカミルク丼……名前を聞いただけだと一切味が想像できないけど、絶対に甘い感じのやつだ。
しかも丼ってことはそれでご飯になるということ。
ランチラッシュ先生作の料理だし、その辺の奇を衒ったゲテモノとは訳が違うと思う。
味は保証されているような物だし、これは試さなければいけないだろう。
「そうそう!甘いんだろうけど味が想像できない感じのやつ!瑠璃ちゃんなら絶対試すだろうって思ってたんだよ!」
「ん……今日早速頼む……行くよ……透ちゃん……!」
「ちょっ、待って、行く、行くから!引っ張らないで〜!」
透ちゃんの手を引っ張ってメシ処に向かった。
透ちゃんがあわあわしていたけど、タピオカミルク丼が万が一売り切れたりしたら悲しくなってしまう。急がなければ。
メシ処では通形さんもタピオカミルク丼を頼んでいるようだった。通形さんはにこやかに食べてるし、きっと当たりだったんだろう。
お姉ちゃんが興味深そうな顔でその様子を見ている。お姉ちゃんは食べないんだろうか。
注文が終わってテーブルにタピオカミルク丼を持って行っても、透ちゃんは相変わらず「味が想像つかない」なんて言って渋い顔をしていた。
これはチョコおもちと同じ感じで透ちゃんは食べないやつだな。
食わず嫌いは損をするということをどうにか教えてあげられないだろうか。
頼んだタピオカミルク丼はつぶつぶの甘いお茶漬けって感じで普通に美味しかった。流石ランチラッシュ先生。
メニューにある間は定期的に頼もう。
あと定期的に透ちゃんにプッシュしてみよう。透ちゃんは今日もラーメンを食べていたし、たまには気分転換してもいいと思う。
それにしても、なんでこんなにおいしいのに食べたいと思わないんだろう。おいしいよってことも教えてるのに。謎だ。
そしてその日の夜。
通常通り学校が終わって夕食もお風呂も全て済ませた頃。
部屋でのんびりしていたらミルコさんから電話がかかってきた。
「どうしました……?今から呼び出しですか……?それとも……次のインターンの日……決まりました……?」
『呼び出しじゃねぇな。インターンの日取りの方だ。まあ決まったっちゃ決まったんだが……』
いつもハキハキズバズバ言いたいことを言っていく強気なバニーのミルコさんにしては珍しく、すごく歯切れが悪かった。
「歯切れ……悪いですね……珍しい……」
『正直気が向かないっつうか……予想通りだった場合だいぶ気に食わねぇことされてるからな』
その言い方はつまりミルコさんがどこかからの要請を受けて、その内容が気に食わないということだろうか。
これだけだとよく分からない。近くにいれば何が気に食わないのかなんてすぐに分かるんだけど……
「えっと……つまり……何かの要請を受けて……それが気に食わないって……ことですか……?」
『まあそうだよ。単刀直入に言うと、サー・ナイトアイからの協力要請だ』
「サー・ナイトアイ……ですか……?私のクラスの生徒が一人……そこにインターンに行っています……思考を見ている限り……数日前に少女の保護を失敗して……だいぶ落ち込んでいましたけど……それ関連ですか……?」
『多分それだろうな。情報漏洩を防ぐためなのか、私にすら最低限しか話さないせいで朧げにしか分かんねぇけど』
情報漏洩を防ぐためっているのは分かるけど、ミルコさんにすらちゃんと詳細を話さないって言うのは変な気もするけど……
「……じゃあ……何が気に食わないんですか……?まだ……あんまり分からないんですよね……?」
『……ま、私の勘だよ。この要請、私に対してのものじゃなくてお前に対してのものじゃねぇかって疑ってるだけだ。名目上は雇用主の私に要請が来てるけどな』
「……公安絡みってことですか……?」
『まだ分からん。内容次第だろ。んで、そのナイトアイからの要請で情報共有のための呼び出しがあった。その日にお前も参加しろ』
……確かに、インターンの学生目当てで協力要請なんてされてたら気に障りもするか。
ミルコさんがそれを確かめる前に私も呼ぶってことは、私の読心も含めて情報を収集しておかしいと感じたら教えろってことだろうか。
「私が読心で……変だと感じたら……教えればいいですか……?」
『そこまでは求めてねぇよ。要請を受けるかどうか、方針をどうするかは私が決める。筋が通ってなかったり気に食わなかったら拒否するだけだ。お前自身のことが関わってるかもしれねぇから、お前も参加しとけってことだ』
「それは……大丈夫ですけど……」
『ま、理不尽な要求だったり後ろ暗い要求だったら私が跳ねのけてやるから、お前はそんなに気張んなくても大丈夫だよ』
「ありがとうございます……」
『よし。じゃあ3日後、ナイトアイの事務所でミーティングがあるからそこに来い。時間は10時開始予定だったはずだ。遅刻すんなよ』
「分かりました……」
そこまで話してミルコさんは電話を切った。
それにしてもサー・ナイトアイとのチームアップか。まだ分からないけど、要請を受けるとしたら緑谷くんや通形さんとも動くことになるんだろうか。
緑谷くんも呼ばれているのか今度聞いてみようかな。