波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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突撃3年生寮

お姉ちゃんに連れられて3年A組の寮に着いた。

寮の中は本格的にインターンをしている3年生なせいもあってか、私たちのクラス以上に人は疎らだった。

いるのは天喰さんと男女合わせて5人くらいの知らない人たち、あとはお姉ちゃんとよく一緒にいる甲矢(はや)さんだった。

通形さんはB組だからこの寮にはいない。

 

「ただいまー」

 

「おかえりねじれ……と、妹さん?なんで?」

 

お姉ちゃんのその言葉に甲矢さんが反応する。

私の方を見ながらの疑問には、お姉ちゃんが何気ない様子で答えた。

 

「ちょっと色々あってねー。今日は私の部屋にお泊りだよ」

 

「ねじれの部屋に……お泊りですって……!?」

 

甲矢さんが固まった。

甲矢さんは相変わらずお姉ちゃんの良さを分かっている。

お姉ちゃんのことをおとめ座銀河団一かわいいと思っている甲矢さんは、分かっていると頷かざるを得ない。

今固まったのは私がお姉ちゃんの部屋にお泊りする羨ましさから固まった感じらしい。

クラスメイトなんだから自分から提案してお泊りすればいいのになんて思うけど、なぜしないのだろうか。

 

「……波動さんの妹、大丈夫?顔色悪いけど……」

 

天喰さんが顔を伏せながら聞いてくる。

相変わらずの人見知りというか、引っ込み思案だ。

それでもちゃんと聞いてくれるあたり人の好さは伝わってくるけど。

 

「大丈夫じゃないから私の部屋にお泊りさせるんだよー。というわけで今日はよろしくね!」

 

「……よろしくお願いします……」

 

お姉ちゃんが皆にお願いするのに合わせて、私も頭を下げた。

お姉ちゃんのクラスメイトだし、悪い人がいないのは分かっているけど他のクラスの寮というのは少し居心地が悪い。

 

「なるほどね。好きに寛いでいきなよ」

 

「ねじれから色々話は聞いてるよ~」

 

「波動さんの妹さん、ヒーロー科に入ったとは聞いていたけど……」

 

天喰さんは何が原因でこうなったのかは想像がついたみたいだけど、他の人たちは分からないにも関わらず普通に歓迎してくれた。

それはそれとして今気になることを言った人がいる。

 

「そこの……お姉ちゃんから色々聞いてるって言った人……何を聞いたのか……詳しく……教えて欲しいです……!」

 

お姉ちゃんから聞いた私の話と言うのがだいぶ気になる。たとえ気分が悪くて体調が芳しくなくても聞いておきたい。

そう思って私がお願いすると、その人は快く応じてくれた。

 

 

 

私が共有スペースのソファで先輩たちに囲まれながら話を聞いていると、再起動した甲矢さんが私の隣に座って一緒に話を聞いていたお姉ちゃんに話しかけた。

 

「ねじれ、ジャスミンティーあるけど飲む?」

 

「飲むー!瑠璃ちゃんも飲むよね?」

 

「……じゃあ……良ければ……貰います……」

 

「はいはい。ちょっと待っててね」

 

そう言って甲矢さんがキッチンの方に消えていった。

それにしても、お姉ちゃんのクラスメイトの人たちは皆いい人だ。

お姉ちゃんの周囲の人の抜き打ちチェックも兼ねて全員の思考を深く読んでみたけど、特に嫌な感じの思考や感情は感じなかった。

強いて言うなら天喰さんが相変わらずすぎる感じだっただけだ。

なんで私の頭を未だにじゃがいもに見立てているんだ。いい加減慣れて欲しい。

私の顔のパーツなんてお姉ちゃんに似てるんだから猶更慣れやすいだろうに。

 

「瑠璃ちゃんと有弓(ゆうゆ)、気が合うと思うんだよね。なんだか雰囲気似てるし。この後お話ししてみたら?」

 

「ん……そうかな……まぁ……甲矢さんには言いたいこと……あるから……」

 

「え?甲矢と瑠璃ちゃん似てるか……?性格なんてほぼ真逆な気が……」

 

お姉ちゃんの言葉に男子の先輩がそう呟いている。

確かに私と甲矢さんが似ているかは甚だ疑問が残るけど、お姉ちゃんがそう言うんだからきっと間違ってないんだろう。

 

それから少しして甲矢さんが戻って来た。

甲矢さんが配ってくれるジャスミンティーにお礼を言いながら口を付ける。

……おいしい、おいしいんだけど、香りが薄目だしちょっと癖が強い。

これは多分市販の茶葉を使ってるな。

まあお姉ちゃんがいつでもジャスミンティーを飲めるようにするためっていうならこれはこれでいいんだろうけど、お姉ちゃんにはもっとこだわったのを飲んで欲しいと思ってしまう。

そう思いながらも、甲矢さんに聞きたいことを聞いてしまわないとと考えて口を開いた。

 

「甲矢さん……」

 

「ん?なに?」

 

「去年のミスコン……お姉ちゃんのサポートしたの……甲矢さんですよね……?」

 

「そうだけど……」

 

甲矢さんはちょっと暗い雰囲気になりながら、それがどうかしたのかと言わんばかりに聞いてくる。

だけど、やっぱり甲矢さんがサポートしてたのか。

つまり、あの準グランプリは、宇宙一可愛いはずのお姉ちゃんの敗北は、この人のせいと言うことだ。

なぜお姉ちゃんに豪華な路線で着飾らせて、あのインパクトの人に豪華さで争わせたのか。

お姉ちゃんは妖精や天使のような可憐さを持っているのだから、そこで攻めるべきだったのだ。

このことを、ずっとずっと文句を言いたかったのだ。

 

「なんで……お姉ちゃんに豪華さで競わせたんですか……!!お姉ちゃんは……妖精や天使のような可憐さ、かわいらしさ、天真爛漫さを持ってるんだから……そっちの方向性で着飾るべきだったんです!!あれは……お姉ちゃんの良さを殺してました……!!」

 

「っ!!?」

 

私の言葉を受けて、甲矢さんが衝撃を受けたように固まった。

周囲の天喰さんを除いたお姉ちゃんのクラスメイトの人たちが、『あっ……そういうこと……』って思考で固まっている。

どうやらクラスメイトの人たちも、これでお姉ちゃんの敗因に思い至ったようだ。

 

「ごめんなさい妹ちゃん!確かに、あの敗北は私のせい……!ねじれの魅力があったのに、準グランプリ止まりになっちゃうなんて……!でも安心して!私も今年はその方向性でねじれの良さを生かすつもりだったから!」

 

「分かってるなら……いいんです……」

 

「うん!私が絢爛崎さんの豪華絢爛さに惑わされたのがいけなかったんだよ。それをねじれに合うかどうかも考えずに強硬するなんて……だからもし今年もねじれが出てくれるなら、ねじれの良さを生かすんだって決めてたから!」

 

「それならもうお姉ちゃんの優勝は決まったようなものです……!期待してます……!」

 

私がこの話を振った瞬間に、甲矢さんの思考はお姉ちゃんにつけなくていい傷をつけてしまったという感じになっていた。

まあお姉ちゃんの魅力をもってして敗北してしまったならサポートした人のせいだから、自分を責めるのは分からない事でもない。実際私も負けたのは甲矢さんのせいだと思ってるし。

その後は甲矢さんとミスコンの審査員の目がいかに腐っていたかとか、お姉ちゃんのかわいらしさについて語り合った。

甲矢さんがお姉ちゃんのことを銀河一可愛いとか、お姉ちゃんの美しい髪がとか、いろいろと何度も頷いてしまうようなことを言ってくれて私も共感しっぱなしだった。

お姉ちゃんといつも一緒にいるだけのことはある。ちゃんと分かってるな。

あとはとりあえずこのジャスミンティーに注文を付けとかないと。茶葉の香り付けの方法とか教えてあげようかな。

お姉ちゃんにはいつでも最高のものを飲んで欲しいし。甲矢さんに教えておけば多分頻繁に作ってくれると思う。

 

そんな風に私と甲矢さんが盛り上がっていたら、お姉ちゃんのクラスメイトの人たちは一歩引いた位置で苦笑いしていた。

なぜなのか。お姉ちゃんと同じクラスなんだから甲矢さんのようにちゃんとお姉ちゃんの魅力を理解して欲しい。

お姉ちゃんは話を半分も聞かずにケラケラ笑いながら「おいしー!」って言ってジャスミンティーを飲んでいた。お姉ちゃん可愛い。

 

 

 

その後はお姉ちゃんと一緒に夕食を食べて一緒にお風呂に入って、一緒にお姉ちゃんの部屋に向かった。

お姉ちゃんのクラスメイトの人たちは本当に良い人ばかりだった。

私が眠れていないのを分かっていたお姉ちゃんは、いつもよりも全然早い時間に私と一緒にベッドに入ってくれた。

ベッドの中で向かい合いながら横になっていると、お姉ちゃんが話しかけてきた。

 

「それで、何があったの?全部話して」

 

「それは……」

 

私が言葉に詰まっていると、お姉ちゃんがじっと私の目を真剣な表情で見つめてきた。

お姉ちゃんの思考も、私への心配一色になっている。

そんなお姉ちゃんに根負けして、私はぽつぽつと話し始めた。

昨日ミルコさんと一緒に死穢八斎會の調査に行ったこと。

本部である組長の屋敷にエリちゃんはいたこと。

そこで行われていたエリちゃんへの拷問。それを行っていた治崎の目的。

治崎の個性によって蘇生されて繰り返される拷問。

そんな拷問の中にあっても、助けを求めているのに他人を気遣って逃げることすらできなくなってしまったエリちゃんの内心。

一度話し出したらもう止まらなくなってしまって、全てが話し終わる頃には私はお姉ちゃんに縋り付きながら震えてしまっていた。

 

「それで……エリちゃんの死に際の思考と……断末魔の悲鳴と……苦痛と恐怖に歪んだ顔が……頭を離れなくて……寝ると……思い出しちゃって……」

 

「……そっか」

 

お姉ちゃんは静かにそう呟くと、私を抱きしめてくれた。

 

「つらかったね」

 

「……つらいのは……私じゃないから……」

 

「そうかな。瑠璃ちゃんは優しい子だから、その子に共感したんだよね。だからそんなになるまで頑張って見続けたんじゃないの?」

 

「……それは……そうだけど……」

 

「そういうことなの。だからそれだけ怖い所を見ても、助けてあげたいって思えるんだよ」

 

「……うん……」

 

「それに、もう怖い所を見るのも終わったんだから。あとは頑張って助けてあげるだけだもんね」

 

「うん……」

 

「それにしても、瑠璃ちゃんは本当に優しくていい子だねー。私も誇らしいよ」

 

「ん……」

 

抱きしめられたまま動けない私の頭を、お姉ちゃんがゆっくりと撫でてくれる。

お姉ちゃんは撫でながら私に優しい言葉をかけ続けてくれて、その心地よさにいつの間にか眠りに落ちていた。

 

 

 

お姉ちゃんのぬくもりに包まれて眠っていたはずなのに、少しの寒さで目を覚ました。

目を開けるとお姉ちゃんが私を起こさないようにベッドを抜け出していたところだった。

……どこに行くのかは分かった。私も一緒に行かないと。

そう思って私はお姉ちゃんの背中に抱き着いた。

 

「あれ?瑠璃ちゃん起きちゃったの?」

 

「ん……私も行く……」

 

「そっか。じゃあ一緒に行こっか」

 

お姉ちゃんは1階で天喰さんと合流してから外に出た。

外には通形さんがいる。通形さんたちも決行日のメールが来たらしい。

通形さんと合流すると、天喰さんが声をかけた。

 

「ミリオ……」

 

通形さんは、凄く真剣で怖い表情をしている。

それだけ覚悟を決めているということなんだろう。

お姉ちゃんはそんな通形さんに欠伸をしてから話しかけた。

 

「がんばりましょう」

 

お姉ちゃんはエリちゃんのことを通形さんや天喰さんに言ったりせずに、ただそれだけを伝えた。

私も眠くてふにゃふにゃしながらお姉ちゃんに抱き着いたままだったけど、お姉ちゃんのその言葉に心を引き締める。

あとは明日、エリちゃん救出のための突入に全力を尽くすだけだ。

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