波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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突入直前

翌日、私は突入直前の会議の前にミルコさんと一緒にナイトアイに呼び出されていた。

正直ミルコさんの怒気が怖い。

部屋に入って早々に、ナイトアイが深々と頭を下げてきた。

 

「すまなかった」

 

「それは何に対する謝罪だ?」

 

「私の浅慮、侮り、油断……それによって学生であるリオルに、多大な負担を、心労をかけたことに対しての謝罪だ」

 

青筋を浮かべながら問いただすミルコさんに、ナイトアイは頭を下げたまま答えた。

 

「正直に言って、私は治崎の個性も、残虐性も、異常さも、何もかも侮り、見誤っていた。リオルの個性すらも、侮っていた。それによって、リオルの精神的負担が計り知れない物になってしまった。本当に申し訳ないことをしたと思っている」

 

ナイトアイの発言に嘘はなかった。

治崎の個性が死者蘇生まで成し遂げるほどの常軌を逸した個性だったことや、そのために少女を殺し続けることすら厭わない異常さ、それに加えて私の個性の過小評価。それらに思い至らなかった浅慮。それによって私に発狂しかねないほどの光景を感知させてしまったことを、心の底から悔やんでいた。

 

「……頭を上げてください……ナイトアイ……」

 

「しかし……」

 

「いいので……上げてください……私はミルコさんに言って感知をやめて逃げることもできました……でも、感知し続けたのは……エリちゃんのためなんです……あんな状況に……あの子を置いておきたくない……そのために……できる限りの情報を……感知したんです……」

 

私がそこまで言うと、ゆっくりとナイトアイは頭を上げた。

表情がすごく暗いし、内心も自責の念で満たされたままではあるけど……

 

「可能な限りのアフターフォローをさせてもらう。後日改めて謝罪と今後の対応に関する相談をさせて欲しい」

 

「それは……はい……分かりました……」

 

突入前に会議をすると言う話もあったし、それを考えるともうあまり時間がない。

そう思っていたんだけど、ナイトアイはさらに話を続けた。

 

「それともう一つ……突入前の会議には、申し訳ないが参加してもらいたい。しかし突入には参加しなくても大丈夫だ」

 

「……どういう……ことですか……?」

 

「これ以上、君の負担を大きくしたくない。君は十分すぎるほどの情報をもたらしてくれた。感謝してもしきれない。感知をしていた時の状況も、ミルコから聞いている。ゆっくりと精神を休めながら、吉報を待っていて欲しい」

 

ナイトアイのその言葉に、ついにミルコさんの堪忍袋の尾が切れた。

 

「おい」

 

「……なにか?」

 

「なにかじゃねーよ。それこそあり得ねぇ。こいつは、その少女を助けたくて潰れそうになりながら感知を続けたんだぞ。こいつの目を見て分かんねぇのか?こいつは、もう覚悟を決めてそいつを助けようとしてんだよ。邪魔すんな」

 

「……本当にいいのか?」

 

ミルコさんの言葉に、ナイトアイが確認するように私の方を見てくる。

 

「はい……!私も参加させてください……!放って置けないんです……!」

 

「……分かった。可及的速やかに、少女を保護しよう。力を貸して欲しい」

 

「はい……!」

 

それで、会議前の話し合いは終わった。

その後は速やかに会議の部屋に移動して、会議が始まった。

 

 

 

「本拠地にいるぅ!!?」

 

「本拠地っちゅうことは……」

 

「八斎會のトップ……組長の屋敷」

 

突入直前の会議には以前の協議に参加したヒーローは全員集まっていた。

昨日集まれる人たちで協議をしていたようだけど、今日は地方に散って調査していた人員も戻ってきている。

ほぼ1からの説明になっていた。

 

「なんだよ、俺たちの調査は無駄だったわけか」

 

「どうやって確信に?リオルいう子の読心か?」

 

ファットガムがナイトアイに確認する。

ナイトアイは深刻な表情で頷いた。

 

「はい。リオルが行った感知、読心により、多くの情報を得ることが出来ました。少女がいるかどうかだけでなく、どこに少女の私室があるか、弾丸を作るために傷つけられていた部屋はどこか、さらには、少女に行われていた拷問の内容まで……」

 

「……拷問って……」

 

緑谷くんたち4人は、私の顔色からある程度予測していたのか顔色を悪くしている。

 

「……口にするのも憚られる所業です。麻酔なしで切開して血肉を採取し、四肢を捥ぎ取り、最終的には、殺害するまで素材として少女の肉体を削り続けたと」

 

「さ、殺害!?」

 

「四肢を捥ぎ取るって……」

 

「じゃあ、エリちゃんはもう!?」

 

周囲のヒーローや学生は皆顔面を蒼白にして愕然としている。

少女が殺されているという言葉。

さらには少女の肉体を素材にしていると言っても、そこまで外道なことをしているとは思っていなかったのだろう。

ナイトアイはさらに話を続けた。

 

「いえ、少女は生きています。八斎會の若頭、治崎の個性"オーバーホール"は、我々の想像をはるかに超えていました。対象の"分解"、"修復"といえば簡単に聞こえますが、その効果は想像を絶するものだった。少女は、死ぬまで素材として肉体を削られた直後、治崎の個性によって"修復"されたのです。つまり、死者の蘇生を成し遂げることが出来るほどの個性だった、ということです。それによって少女は、死ぬまで肉体を削られ、死ねば蘇生され、また肉体を削られるという拷問を行われていたのです」

 

「な、んだよ……それ……」

 

「人間の所業じゃないわ……」

 

「だが死者の蘇生って、俄かには信じられないな……」

 

多くのヒーローがその所業に愕然とするなか、名前を知らないヒーローがそう呟いた。

理解しがたいことなのは分かるけど、それが事実だ。

 

「……でも……それが事実です……私は……少女の……エリちゃんの断末魔の叫びも……死に向かって薄れゆく思考も……彼女の心臓が止まるのも……感知しました……治崎……オーバーホールが蘇生し……エリちゃんの千切られた手足が……元に戻るのも……心臓がまた動き出すのも……何度も……何度も……」

 

「っ……」

 

私があの光景を思い出して震えながら感知したものを伝えると、多くの人たちは息を呑み、怒りに震えた。

ミルコさんが私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくるし、お姉ちゃんまで背中を摩ってくる。

気遣ってくれるのは嬉しいし、ミルコさんは無理するなって言いたいみたいだけど、これを伝えないと理解してくれない人もいるんだから仕方ない。

緑谷くんと通形さんの自責の念が、さらに酷いことになっていっている。

 

言葉を発することすら許されないような空気の中、ナイトアイはプロジェクターに私が書いた地図をデジタル化して綺麗にしたものを映しながら話を続けた。

 

「リオルからの情報はこれだけではありません。屋敷から地下への入口の位置、地下の構造を詳細に記した地図、八斎會幹部数人の個性の詳細など、多くの情報を齎してくれました」

 

「すごい……」

 

「本当に。これだけの情報を、よくこの短期間で……」

 

「それに加えて―――」

 

ナイトアイが眼鏡を光らせるかのように顔を伏せる。

 

「ヴィラン連合所属のヴィラン、トゥワイス。さらに、トガヒミコの存在を感知したと報告がありました」

 

「ヴィラン連合って……!?」

 

「協力関係にないって話じゃなかったのかよ!?」

 

ナイトアイの言葉に、周囲がさらにざわついた。

 

「治崎の思考内容から、ヴィラン連合と八斎會との間で何らかの取引があった物と思われます。しかしリオルの感知から、治崎の手によってヴィラン連合のヴィラン、マグネが殺害されていたことが発覚しました。トゥワイスとトガはそのことに対して激怒しており、さらに死柄木から碌な指示も受けておらず内心で従おうとする意思が一切見られないと。これらから面従腹背ではないかというのがリオルの推測です。いつ裏切っても、おかしくないほどであると」

 

「……今、俺の方にも塚内からヴィラン連合に大きな動きがあったと連絡があった。それと碌な指示を受けてねぇってのを合わせて考えると、その2人は今回はヴィラン連合とは独立して動いていると考えていいんじゃねぇか?」

 

グラントリノがスマホを弄りながらそう言った。

ナイトアイもそれには同意見なようで頷いている。

 

「報告が齎された後にすぐ集まれるもので協議しましたが、そちらでもそのような推測になりました。何らかの取引が成立した時点で、ヴィラン連合の目的は達成している。あるいは、潜り込み、復讐をすること自体が目的なのではないかと。最大限の警戒はしますが、目的は少女の保護であることに変わりはありません」

 

ナイトアイのその言葉に、"連合にまで目的が及ぶ場合はそこまでだ"と先生に言われていた学生側は安堵のため息を吐いていた。

その後もナイトアイの話は続いた。

私が感知したトゥワイスとトガの個性、万が一自己複製をされた場合に起こり得る可能性に、真実吐き(まことつき)という個性の存在。それにトガのミスディレクションの共有など、多くの情報の共有が行われた。

 

「リオルの感知では地下への入口の開き方は分かりませんでしたが、そこはこちらで情報を掴みました。八斎會の構成員が先日近くのデパートにて、女児向け玩具を購入していました」

 

「はぁ!?」

 

「なんじゃそらぁ……!」

 

「まさかそれを使って開くとか言うんじゃないやろなぁ!!意味分からんでナイトアイ!!」

 

「いえ……これは接触のために利用しただけです。その構成員は、少女のためにこれを購入しようとしていた。そのような趣味を持つ人間ならば確実に言わないセリフを吐いていたので。なので、それを利用して見せてもらいました」

 

ナイトアイはそう言って予知で見た内容を話し始めた。

女児向け玩具のことを教える体で構成員の身体に触れ、その男が地下に入る瞬間を確認したらしい。

 

「予知使うのかよ!」

 

「確信を得た時、駄目押しで使うと先日も言ったハズ。これで地下の入り口の開け方も分かりました」

 

「とにかくこれでようやっと決まりっちゅうワケやな」

 

「やつが家にいる時間帯は張り込みによりバッチリでございます」

 

「警察との連携で令状も出ています後は―――「踏み込むだけやな!」台詞取られた!!?」

 

良い感じのポーズを決めて締めの言葉を言おうとしたバブルガールが、ファットガムに台詞を倒られて愕然としていた。

この空気でそのノリが出来るのはある意味尊敬してしまう。

 

 

 

それから警察署の前で警察と合流した。

警察からは八斎會構成員の分かる範囲の登録個性をまとめたリストが配られ、隠蔽の時間を与えないためにも可能な限り迅速に全構成員の確認、補足を行うことが確認された。

 

「決まったら早いスね!」

 

「君朝から元気だな……」

 

「あれ、デクくん、その赤いのってこの前までなかったよね?」

 

「……うん、フルガントレットっていうサポートアイテムなんだ。今回は、全力で挑みたかったから」

 

「……そっか、頑張ろうね、デクくん!」

 

皆もエリちゃん救出のためにも気合を入れ直していた。

私も気合を入れ直しながら八斎會の地下にエリちゃんが今もいることを確認しておく。

 

「……よし……頑張らないと……」

 

「瑠璃ちゃん、もう無理だと思ったらすぐにミルコに言うんだよ」

 

「ん……そうする……ありがと……」

 

お姉ちゃんが心配した表情のまま話しかけてくる。

私がそんなお姉ちゃんにお礼を言っていると、相澤先生が近づいてきた。

 

「おい、波動」

 

「はーい?なんですか?」

 

「……なんですか……?」

 

「……すまん、妹の方だ。波動、オールマイトから波動がどういう状態かだけは聞いている。情報収集に関しても、無理をした理由は理解した。だが何度でも言うぞ。無理だけはするな。ここには多数のプロがいるんだ。潰れるまで頑張る、なんていうのは間違ってるからな」

 

「はい……気を付けます……」

 

相澤先生はわざわざこれを言いに来ていたみたいで、そのまま緑谷くんの方に歩いて行った。

 

そして、準備が出来たのか警察の人が話し始めた。

 

「ヒーロー、多少手荒になっても仕方ない。少しでも怪しい素振りや反抗の意思が見えたら、すぐ対応を頼むよ!」

 

そんな風に警察の人が話しているのを尻目に、今まで黙って私が注意されるのを見ていたミルコさんが話しかけてきた。

 

「おい、リオル」

 

「なんですか……?」

 

「私は無理をするなとは言わねぇ。助けたいんだろ?」

 

「はいっ!」

 

「珍しくいい覇気だ。あとは全力で助けてやるだけだ……やれるな」

 

「やれますっ……!そのために……無理してでも感知し続けたんですから……!」

 

私の返答に、ミルコさんはニヤリと笑ってから頷いた。

 

「相手は仮にも今日まで生き残って来た極道者。くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うしてほしい!出動!」

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