波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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寮への帰還

学校に着くころには夜になっていた。

私が寮に着くと、先に帰ってきていたはずの緑谷くんたち4人もちょうど寮に入ろうとしている所だった。

なんでも色々と調査や手続き、あと相澤先生との面談とかで立て込んでこんな時間になったらしい。

寮の中では皆が私たちの帰りを今か今かと待っていて、待ち伏せのような状態になっている。

爆豪くんすらも1階で待っているみたいだった。

この後の展開の予想がついてちょっと身構えていると、そんなものは気にしていない緑谷くんたちがササっとドアを開いた。

 

「帰ってきたぁあああ!!奴らが帰ってきたぁ!!!大丈夫だったかよぉ!!?」

 

峰田くんのその声を皮切りに、心配した表情の皆が駆け寄ってきた。

 

「ニュースみたぞおい!!」

 

「大変だったな!」

 

「皆心配してましたのよ」

 

「まぁとにかくガトーショコラ食えよ」

 

「お騒がせさんたち☆」

 

「おまえら毎度凄ぇことになって帰ってくる!怖いよいい加減!」

 

「無事でなにより」

 

「ブジかなぁ……無事……うん」

 

ガトーショコラ!砂藤くんが凄く美味しそうなガトーショコラを持っている!

ここ数日まともなご飯を食べていなかったせいか、今は凄くお腹が空いていた。

正直あの拷問の光景はまだ頭にちらつくけど、それでもエリちゃんはもうあんな目にあっていない。

そう思うだけで多少マシな気分だったし、食欲も戻ってきていた。

 

「ガトーショコラ……ちょうだい……!」

 

「おう!たんまり焼いといたからな!好きなだけ食ってくれ!」

 

「ん……!ありがと……!」

 

砂藤くんが渡してくれたガトーショコラに、空腹に任せて噛り付く。

口の中に広がる甘い味に蕩けそうになっていると、透ちゃんに飛びつかれた。

 

「瑠璃ちゃん~!!」

 

飛びつかれた衝撃で危うくガトーショコラを落としそうになるけどなんとか持ちこたえる。

一度食べるのを中断して透ちゃんに向き直る。

 

「ただいま……透ちゃん……」

 

「おかえり!!元気になったみたいでよかったよぉ~!!」

 

さらにぎゅうっと抱きしめられて動けなくなってしまう。

だいぶ心配をかけてしまったみたいだった。

お姉ちゃんに連れられてお泊りに行ってから碌に会ってもいなかったんだから、当然ではあるんだけど。

 

皆が私たちの無事を喜んでくれている中、飯田くんが声を張り上げた。

 

「皆!心配だったのは分かるが!!落ち着こう!!報道で見たろう!あれだけのことがあったんだ!級友であるなら彼らの心を労わり、静かに休ませてあげるべきだ!身体だけでなく……心も擦り減ってしまっただろうから……」

 

緑谷くんが急に泣き出した様子や私が明らかに精神的な不調をきたしていた様子を見ていただけあって、真面目な飯田くんはそう進言してくれた。

そんな飯田くんに対して、緑谷くんが声をかけた。

 

「飯田くん、飯田くん」

 

「ム」

 

「ありがとう。でも……大丈夫」

 

緑谷くんは通形さんの個性が無くなってしまったことや、ナイトアイに庇われて重傷を負わせてしまったことを思い出しているみたいだった。

多分最後に個性の譲渡を提案した時に色々言われたんだろう。

飯田くんは緑谷くんのその返答に目を点にしながら話し始めた。

 

「じゃあいいかい。とっっっっっっっても心配だったんだぞもう!!俺はもう!!君たちがもう!!」

 

「飯田くん……凄い勢い……」

 

飯田くんの勢いにちょっと困りながらガトーショコラを食べ続ける。

砂藤くんは次のターゲットを緑谷くんに定めたみたいで、緑谷くんの口にガトーショコラをそのまま1本ねじ込もうとしていた。

なんて贅沢な食べ方。流石にお行儀が悪いし真似できない。

 

「ラベンダーのハーブティーをお淹れしますわ!心が安らぎますの!」

 

百ちゃんがそう言いながらキッチンの方にぷりぷりしながら走っていった。

それにしても今日の百ちゃんの恰好、凄く大人っぽい。

髪の毛を下ろして落ち着いた感じの恰好をしているからだろうか。

 

そんなことを考えていたら、青山くんが近づいてきた。

 

「波動さん、無事でよかった」

 

「青山くんも……心配かけてごめんね……」

 

「大丈夫ならいいんだ。ここ数日の波動さんは、あまりにも酷い状態だったから」

 

「ん……もう大丈夫だと……思うから……」

 

少しの間引きずる気はするけど、それでも食欲が戻っているのは改善に向かっている証だと思う。

あまりにも睡眠に影響が出続けるようだったらお姉ちゃんや先生に相談した方がいいだろうけど、もうそこまでのことにはならないと信じたい。

そう思って私が青山くんに返答すると、青山くんがいつもの気取ったようなポーズを決めた。

 

「そっか☆でも、何かあったら相談して欲しい。それに、僕は周囲の顔色を伺うのは得意なんだ。あまりにも抱え込んでいるようだったら、今度は僕が波動さんを助けるから」

 

「ん……ありがと……」

 

青山くんはそう言って笑顔を浮かべた。

私もそんな青山くんに対して笑顔でお礼を言った。

それを確認した青山くんは、普段からあまり関わっていないのに急に関わるのも変だと考えたのかササっと離れていった。

そんな青山くんの様子に、透ちゃんがちょっと不思議そうにしている。

 

「珍しいね、青山くん。今度はって言ってたってことは、瑠璃ちゃんと何かあったの?」

 

「ん……ちょっとね……色々あった……」

 

「……そっか!」

 

その説明であまり人に言えることではないのを理解してくれたらしい透ちゃんは笑顔を浮かべて流してくれた。

若干不穏な思考をしていた気がするけど、流してくれるならそれはそれで余計なボロが出なくていい。

 

そんな感じで話していたら、切島くんに話しかけていた三奈ちゃんが結ちゃんを抱えながら近づいてきた。

 

「あっ!結ちゃん!」

 

「口田から借りたの!梅雨ちゃんも抱いてみる?」

 

「ケロッ」

 

「次私ね!」

 

女子で結ちゃんを順番に抱っこし始める。

私はガトーショコラを食べているから参加しないけど、結ちゃんは相変わらず素直で可愛い。

今も『おかえり』って考えたり、私たちの顔を見ながら『ウララカ』『ツユちゃん』『ハドウ』って感じで順番に名前を思い浮かべている。

完全に個体識別をするという驚異の知能を見せつけてきていた。

 

「結ちゃんも……おかえりって……考えてるよ……私たちの名前も……ちゃんと分かってる……」

 

「相変わらず賢いねー結ちゃん!」

 

「カワイイー!」

 

女子が結ちゃんに夢中になって抱っこして撫でていると、上鳴くんに煽られた爆豪くんが立ち上がった。

 

「寝る」

 

「えー早くね!?老人かよ!!」

 

爆豪くんは相変わらずみたいだ。さっきまでふてくされてはいたけど、一応は安堵していた癖にこの態度だ。

すぐに爆発する爆豪くんにここまで気安くじゃれつける上鳴くんも凄いと思うけど。

それに上鳴くんの反応はそんなに間違ってない。

今はまだ8時30分くらいのはず。

爆豪くんがいつも寝ている時間から考えても全然早い。

 

「一言くらいかけたら?」

 

「てめーらと違ってヒマじゃねんだ」

 

そう吐き捨てながら爆豪くんは部屋に戻っていった。

それに続くように外に出ていた轟くんが戻ってきて声をかけてきた。

 

「緑谷、麗日、切島、蛙吹、波動。わりぃが俺も」

 

「えー早くね!?老人かよ!!」

 

上鳴くんのツッコミにもそんなに反応せずに、轟くんは部屋に戻っていった。

轟くんの思考はエンデヴァーへの嫌悪感がちらついていた。

さっき外に出たのは多分エンデヴァーから何らかの連絡があったんだろう。

 

「……爆豪ちゃんはともかく、轟ちゃんまでどうしたのかしら……」

 

「あいつら明日仮免の講習なんだ。にしても早いけど」

 

梅雨ちゃんや響香ちゃんも不思議そうにしているけど、轟くんのこれはもう仕方ないだろう。

エンデヴァー関連は彼にとって完全に地雷なのだ。

体育祭とかで読み取った虐待行為や彼のエンデヴァーへの憎悪の思考からして、これは他人が簡単に口を出していい問題じゃない。

轟くん自身が乗り越えるのを待つしかないだろう。

 

 

 

その後は飯田くんたち皆の計らいで、私たちインターン組も早めに部屋に戻った。

緑谷くんも、お茶子ちゃんも、切島くんも、梅雨ちゃんも、皆思うところはあったようで、各々考え込んでいた。

私も今回のインターンは色々と考えさせられることが多かったのもあって、色々と考え込んでしまっていた。

そのまましばらく考え込んでいたけど、波動の枯渇による脱力感が残っていたのもあって少ししたら私は寝入ってしまっていた。

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