波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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あの子の素顔は?

障子くんが皆に事情を打ち明けてから数日後。

今日の近代ヒーロー美術史の授業は似顔絵の授業だった。

近代ヒーロー美術史は普通の美術みたいなことも教えてくれる。

特に似顔絵とかはヴィランを目撃したけど逃げられた、みたいな時に情報提供するのにも役立つし、あって困らないスキルだ。

 

私はこういうのは結構得意だ。

雄英に入る前まで一人で出来る趣味に手を出し続けた結果、絵を描いたりもしてたってだけなんだけど。

でも趣味でイラストを描ける程度の腕にはなっているから、似顔絵もそこそこ書けるのだ。

というよりも満足のいくお姉ちゃんの似顔絵を描けるレベルまで頑張って練習したからうまい方だと思う。多分。

 

それはそれとして、似顔絵の授業だ。

2人一組で行われるそれを、ミッドナイト先生監督の下で皆でやっている所だった。

……先生の指示に従ってペアを組んだけど、本当にこれでよかったんだろうか。

私のペアは三奈ちゃんだ。私自身はこれで問題ない。

問題は透ちゃんの方だ。ペアはお茶子ちゃんなんだけど、どう似顔絵を描くつもりなんだろうか。

実際にお茶子ちゃんは『う~~~~~ん、困った……どう描けばいいのか分からん……』なんて考えている。

まあこういうペアで私と透ちゃんを固定しちゃうと経験っていう意味でもよくないのは分かるから指示には従う。

従うんだけど、初回くらいは私と透ちゃんがペアでよかったんじゃないだろうか。

 

「ほらほら波動!手が止まってるよ!どんどん描いてよ!私も描いてるから!」

 

「ん……ごめん……三奈ちゃん……」

 

三奈ちゃんに声を掛けられて、私も集中しなおす。

透ちゃんに気を取られっぱなしなのは三奈ちゃんに失礼だし、真剣に三奈ちゃんの絵を描こう。

透ちゃんの絵は、多分お茶子ちゃんがなんとかするだろう。

 

授業時間いっぱい使って描き終わった絵を三奈ちゃんに渡す。

私の方に渡された三奈ちゃんの絵は、なんていうか個性的な感じだった。

普段あんまり描かないけど、真剣に描いてくれたのが伝わってくる感じの絵といえば分かりやすいだろうか。

 

「えっ!?うわっ、うまっ!?どうなってんの波動!?うますぎでしょ!?」

 

「ん……絵は……昔いっぱい描いてたから……得意だよ……」

 

「いやそれにしてもでしょ!?」

 

「お姉ちゃんの似顔絵……納得いくまで描いてたら……こうなった……」

 

「あっ、そういうことか。なるほど、でもすごいね波動!」

 

一瞬スンッてなったけど、気を取り直した三奈ちゃんが褒めてくれる。

三奈ちゃんがべた褒めしてきてちょっと恥ずかしい。

大げさに褒めてくれるのもあって皆が集まってきて絵を見られて、さらに恥ずかしくなってしまう。

 

他の人たちは皆三奈ちゃんと似たり寄ったりの絵を描いている感じだった。

ブドウ頭だけ百ちゃんの胸をアップにした無駄にうまいデッサンを描いていたけど、梅雨ちゃんが即制裁してくれていた。

あとはお茶子ちゃんだろうか。お茶子ちゃんは結局顔は描かずに浮かぶ制服を描くことにしたらしい。

透ちゃんも先生も文句を言ってなかったし、それでよかったってことなんだろう。

でも流石に透ちゃんがかわいそうだし、次は私とペアにしてもらえるように頼んでみようかな。

 

 

 

そんな授業の後の昼休み。

私はメシ処で透ちゃんと食事をしていた。

珍しく2人で食べている感じだ。

というよりも、お茶子ちゃんたちが珍しく透ちゃんを避けた。

透ちゃんの素顔が気になる感じの思考をしていたし、今も皆で集まって何か話しているけど何を企んでいるんだろうか。

梅雨ちゃんが素直に聞きにこようとしているのも止めているし、謎だ。

 

「あれ、瑠璃ちゃんどうしたの?心ここにあらずって感じだけど」

 

「ん……なんでもない……気にしないで……」

 

「そう?」

 

透ちゃんが私が感知に集中しているのを疑問に思って質問してきたけど、私の返答を聞いて食べるのに集中することにしたらしい。

 

 

 

そんな謎の昼休みも終わりに近づいて廊下を歩いていると、お茶子ちゃんが近づいてきた。

 

「瑠璃ちゃん、透ちゃん!1枚写真撮らせて!」

 

「え?いいけど、急にどうしたの?」

 

「……迷走中……なるほど……」

 

私に直接聞いてこないってことは、これは皆で透ちゃんの素顔を解き明かす過程も楽しんでいるとかそう言う感じだろうか。

今もわざわざ発目さんに相談して謎のカメラを作ってもらってきたみたいだし。

透明人間を撮りたいという要望で乗り気になった発目さんも発目さんだけど、お茶子ちゃんたちも迷走しすぎな気がする。

 

『な……何コレ!?』

 

しかも撮れた写真は心霊写真のようになっていたらしい。

これで透ちゃんの写真が撮れるならそのカメラを貰いたかったけど、失敗か。

透ちゃんの顔がちゃんと写ってる状態で一緒に撮った写真が欲しかったんだけど、失敗だったら仕方ない。

発目さんに頼めばさらに改良してくれたりするんだろうか。

 

 

 

寮に帰ってからも皆の謎の行動は続いた。

寮に帰るなり三奈ちゃんたち女子一同が近づいてくる。

 

「葉隠ー!みんなで家族写真見せあいっこしようよー!」

 

「うちの家族?普通だよ?瑠璃ちゃんも会ったことあるし」

 

「ん……普通だった……」

 

確かに普通の透明人間でそれ以外は完全に普通の人だった。

とりあえず見せること自体には了承したらしい透ちゃんが両親が写っている写真を持ってきた。

提案は皆で見せあいっこだったし、私もとりあえず持ってきておく。

 

透ちゃんが皆に見せた写真は、案の定浮かぶ制服と浮かぶスーツの透明人間家族が写っているだけだった。

 

「昔のだからちょっと恥ずかしい!」

 

「見えないけどね……写真だし……」

 

「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ!」

 

「瑠璃ちゃんの言ってた普通って、普通の透明人間ってことだったのね」

 

「ん……勉強会を……透ちゃんの家でした時に会ったから……知ってた……」

 

『両親も!?』なんて皆が考えている。

この素顔を暴く作戦、いつまで続くんだろうか。

皆楽しそうだから放置するけど。

 

 

 

そして寝る前、また三奈ちゃんが顔パックを持って透ちゃんに話しかけた。

 

「葉隠ー、これあげるよ。お肌もちもちになるよ」

 

「えっ、いいの?これ使ってみたかったんだ!」

 

「波動も使う?」

 

「私は……いい……」

 

透ちゃんは結構髪の毛のお手入れを頑張っていたり美容に気を遣っているから、これは喜ぶだろう。

ただ、これだと素顔は絶対に見えないだろうけど。

皆も分かっていたけど一応試してもらった感じらしい。

本当に何がしたいのか分からない。なんで素顔が知りたいのに私に聞きに来ないのか。

自分から言うようなことでもないし相変わらず楽しそうだから放置一択だけど、本当に謎すぎる。

 

 

 

次の日もあの手この手で皆が透ちゃんの素顔を探ってきていた。

そして放課後。ついに万策尽きたらしい皆が透ちゃんに直接聞きに来た。

 

「もう単刀直入に聞くね!!透ちゃんってどんな顔してるの!?」

 

「スリーサイズは!?」

 

どさくさに紛れてブドウ頭が世迷言を宣った。

とりあえず黙らせるために頭を思いっきり叩いて制裁しておく。

 

「えっ、私の顔?昨日の授業の後から皆変だと思ったら、そんなことが知りたかったのね!しいて言えば、楊貴妃と……」

 

『えっ、凄い美人!?』

 

「ザビエルを足して2で割ったような顔かな!」

 

『どんな……!?』

 

透ちゃんのふざけた返答に皆がげんなりしてしまった。

だけどこれは聞く方も悪いだろう。透ちゃんは自分の素顔を知らないんだから。

 

「透ちゃん……正直に言えばいいのに……自分の素顔……知らないって……」

 

「え?いやぁでも、それを言っちゃうとお茶子ちゃんたち気にしちゃいそうじゃない?」

 

「でも……知らないものは知らないんだから……仕方ないよね……」

 

私たちが話していると、どうして透ちゃんがふざけた答えを返してきたか理解できたらしい。

 

「えっ、そうなの!?ごめんね!?」

 

私と透ちゃん以外の女子も、ちょいちょい参加していた男子も、皆口々に透ちゃんに謝罪し始めている。

それにしても、本当になんで私に聞いてこないんだ。

思考を見る限り、心から知りたそうな感じだったのに。

 

「ねぇ……」

 

「なに?波動?」

 

「なんで私に聞かないの……?」

 

「え、どういうこと?」

 

皆の頭に疑問符が浮いている。

私は透ちゃんのこと見えてるって前からずっと言ってたと思うんだけど……

 

「透ちゃんのこと……見えてるって私言ったよね……?顔も……見えてるよ……?」

 

「えっ!!?」

 

「うっそぉ!?」

 

「マジ!?」

 

皆から驚愕したような反応が返ってきた。

もしかして忘れてただけなのだろうか。

私がどういうことなのか確認するように皆を見渡すと、響香ちゃんが説明してくれた。

 

「いや、エキスポの時に眼鏡で見た波動じゃ形しか分からなかったから、顔が見えてるとか思ってなかったんだけど……」

 

……なるほど。あの眼鏡を参考にして考えていたらそういう考えにもなるか。

私も本人以外には透ちゃんが見えるとしか言ってなかったはずだし。

 

「ちょっと待ってて……」

 

透ちゃんがずっと自分の顔を知らないのもかわいそうだし、いい機会だから一度部屋に戻って絵を描くことにした。

制服の透ちゃんがいつものにっこりダブルピースをしてる感じのやつとコスチュームで格好よく決めてる感じのでいいかな。

 

1時間くらいかけて、制服とコスチュームの透ちゃんの絵が描けた。

うん、ちゃんといつも通りのかわいい透ちゃんが描けてると思う。

 

 

 

1階に戻ると、皆は共有スペースの所にいた。

 

「おまたせ……」

 

私が声をかけると皆が振り向いた。

そんな中透ちゃんが声をかけてきてくれる。

 

「瑠璃ちゃん、待っててって言ってしばらく戻ってこないからどうしたのかと思ったよ」

 

「ん……絵……描いてたから……はい……透ちゃん……」

 

透ちゃんに絵を手渡す。

その絵を見た瞬間、透ちゃんが固まった。

 

「えっ……これ、もしかして私?」

 

「ん……透ちゃんの……制服でのいつもの笑顔と……コスチューム姿……」

 

「わぁ……これ、貰っていいの……!?」

 

「ん……そのために描いたし……」

 

透ちゃんが花が咲いたようなにこやかな笑顔を浮かべた。

喜んでもらえたなら良かった。

ちょうど昨日私が描いた三奈ちゃんの絵も見てるから、どのくらいの物なのかは分かってくれているだろうし。

 

「見せて見せてー!」

 

「えっ!?うわ、すごい美人やん!?」

 

皆も私が描いた絵を覗き込んで透ちゃんの可愛さを褒め始めた。

珍しく透ちゃんが本当に恥ずかしそうな顔をしている。貴重な表情だ。

本当に描いてよかった。これからも透ちゃんの絵を定期的に描いて透ちゃんにあげようかな。

そんなことを考えていたら、邪な思考を感じ取った。

 

「マジか!?マジか葉隠!?ガチで超美人じゃねーか!?これであのオッパイだろ!?こんなの犯罪きゅっ!!?」

 

即制裁した。

……余計なことをしたかもしれない。これで透ちゃんが余計にブドウ頭の標的になってしまうのではないだろうか。

でも透ちゃんは喜んでるし……とりあえずブドウ頭の毒牙から透ちゃんを守るために頑張らないといけないと心に誓った。

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