波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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お見舞い

文化祭のお知らせをロングホームルームでされた日の放課後。

私は死穢八斎會突入に一緒に参加した緑谷くんたちに常闇くんを加えた5人と一緒に、インターンの穴埋めの補習を受けていた。

そんな中、相澤先生がエリちゃんの話を切り出していたところだった。

 

「緑谷ちゃんに会いたがってる?」

 

「ああ。厳密には緑谷と通形を気にしている。要望を口にしたのは入院生活始まって以来、初めてのことだそうだ」

 

緑谷くんが唖然と口を開けてびっくりしたまま少しだけ嬉しそうにしている。

だけどあの子の考え方からして、おそらくお話とかお礼したいから会いたいとかじゃない。

 

「エリちゃんの考え方からして……多分謝りたいんだと思う……あの子……傷つけたことに対する……自責の念が凄いから……」

 

「……やっぱり、そうなのかな」

 

「……まあ、どんな理由であっても自分の要望を口にするのは進歩だ。そこで緑谷、明日は空いているか?」

 

先生は私の発言を否定せずに緑谷くんに確認した。

緑谷くんは気を取り直してしっかりと頷いた。

 

「はい!空いてます!エリちゃんに会いに行きたいです!」

 

「なら明日、俺が送迎するから病院に行くぞ。あとは……波動」

 

緑谷くんとの話を区切った相澤先生が私にも話を振ってきた。

思考的に、私も明日病院に行けるかの確認のようだった。

 

「……はい……空いてます……大丈夫です……」

 

「ならお前も来い。もう分かったと思うが、ナイトアイがお前に礼を言いたいそうだ」

 

「分かりました……」

 

私が返事をすると、気になっていたらしい切島くんが声を張り上げた。

 

「ナイトアイ、もう話せるくらい元気になったんですか!?」

 

「ああ。まだ動くことは難しいが、話すことが出来る程度には回復している」

 

「良かったぁ……」

 

「ええ、本当に」

 

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんも安堵の溜め息を吐いた。

特にお茶子ちゃんはナイトアイを抱えて地上まで引き上げていたこともあって、『もっとやれることがあったんじゃ』と思い悩んでいたから猶更のようだった。

 

常闇くんが蚊帳の外になってしまっていることもあって、この話自体はそんなに長く続けずに補習に戻った。

補習が終わった後に寮に戻ったら、文化祭の出し物は無事に決まったらしい。

生演奏とダンスでパリピ?空間の提供ということになったようだ。

正直他科のストレスが云々というのは私は共感できなかったけど、決定には従う。

この感じなら三奈ちゃんと響香ちゃんが大活躍な感じかな。

私は演奏もダンスもほとんどやったことがないし、どの役割になっても教えてもらう必要がありそうな感じだった。

 

 

 

翌日の日曜日。

相澤先生に連れられて緑谷くん、通形さんと一緒に病院に訪れていた。

まず最初にナイトアイの方に面会することになった。

緑谷くんたちも一緒だ。あんな状態になったナイトアイとまた面会できるようになったんだから2人も早くまた会いたかったんだろう。

ナイトアイはもう集中治療室も出ることが出来ていたらしい。案内されたのは普通の病室だった。

 

「サー!」

 

病室に到着すると同時に通形さんがナイトアイに駆け寄った。

ナイトアイは頭側を起こしたベッドに座っていた。

左腕と左足はないけど、表情や顔色自体は元気そうだった。

 

「ミリオか」

 

「良かった!本当に良かった!」

 

「心配をかけたな。すまなかった」

 

「良いんだよ!あなたが生きていてくれてよかった!ただそれだけさ!」

 

通形さんは笑顔を浮かべながら泣くなんていう器用なことをしていた。

ナイトアイも笑顔で通形さんのその突撃するような勢いに応じていた。

 

「ナイトアイ!」

 

「緑谷も、すまなかった。お前には特に、辛く当たってしまっていたからな」

 

「いえ、そんなことはいいんです」

 

緑谷くんもそこに合流していって、しばらく3人で話し込んでいた。

しばらく話して通形さんが落ち着いてきたところで、ナイトアイは私にも声をかけてきた。

 

「リオル、いや、波動。ありがとう。君には命を救われた」

 

「いえ……良かったです……私も……無理した甲斐がありました……」

 

「今はこのような状態で何もできないのが申し訳ないが、この礼は必ずさせてもらう」

 

ナイトアイはそう言って頭を下げた。

 

「その後は……大丈夫ですか……?」

 

「ああ。経過自体は順調だ。ただ、やはりヒーロー活動を続けることは難しいだろうがね」

 

「それは……」

 

ナイトアイはヒーローは続けられないと言いながらも、暗い表情はしていなかった。

むしろ、清々しいくらい明るい表情をしていた。

 

「君のおかげで、ミリオの未来をこの目で見ることが出来る。抗うと決めたオールマイトの姿も見ることが出来る。それだけで、本当に感謝してもしきれないくらいだ」

 

「それなら……良かったです……」

 

ナイトアイは心の底からそう言っていた。

これからは義手や義足を使用した生活になるだろうし、内臓をやられているから食事とかでも気を付けなければいけないことが多いだろう。

それなのに、ナイトアイはそんなことは一切気にしないで笑顔でそう言ってのけていた。

 

「君も、素晴らしいことをしたのだから笑顔で胸を張っていて欲しい。色々と私の内心を気にしているようだが、そんなことは気にしないでいいんだ」

 

「はい……ありがとうございます……」

 

ナイトアイは私が手足のことや後遺症のこと、それによるナイトアイの内心とかを気にかけていることが分かったようで、笑顔でそう言ってくれた。

私も少し笑顔を浮かべてナイトアイの声掛けに答えた。

 

それからしばらく私も交えて話し込んで、ナイトアイの病室を後にした。

まだ入院して療養している必要があるナイトアイの体力に気を遣ったのもあるし、この後エリちゃんとも会わないといけないと言うのもあったからある程度の所で切り上げた感じではあったけど。

ナイトアイは後日必ずしっかりとした礼をするなんて重ねて言ってきて、私もちょっと恐縮してしまうくらいだった。

 

 

 

エリちゃんの病室は、病院の奥まったところにある個室だった。

多分、個性が暴走した時のことを考えているんだと思う。

私はエリちゃんのことを一方的に知っているだけで面識はないから声を掛けたりしないで、相澤先生と一緒に緑谷くんと通形さんが話しているのを遠目に眺めている形になった。

 

「会いに来れなくてゴメンね」

 

「フルーツの盛り合わせ!よかったら食べて!好きなフルーツある!?俺当てていい!?ももでしょ!?ピーチっぽいもんね!」

 

通形さんが冗談めかして話を振る。

エリちゃんの性格的に、通形さんみたいに冗談を交えつつ優しく話しかけてくれる人は相性がいいと思う。

好物は桃じゃなくてリンゴっぽいけど。

 

「リンゴ」

 

「だと思ったよね!!」

 

とりあえず盛り合わせで置いておいても仕方ないし、看護師さんに包丁を貸してもらってエリちゃんが好きだと言っていたリンゴを切ってしまう。

小さい子だし、うさぎみたいな感じで切っておけばいいだろうか。

とりあえずエリちゃんの話を邪魔しないように切ったリンゴを近くに置いておいてあげた。

 

「ずっとね、熱でてたときもね、考えていたの。救けてくれた時のこと……でも、お名前がわからなかったの。ルミリオンさんしかわからなくて、知りたかったの」

 

「緑谷出久だよ。ヒーロー名はデク!えっと……デクの方が短くて覚えやすいかな……デクで!デクです!」

 

名前が分からなかったと言われたところで緑谷くんが凄まじい衝撃を受けたような顔をしていた。

むしろ自己紹介をしていないことに気が付いていなかったのかとしか思わないんだけど。

 

「ひーろめい?」

 

「アダ名みたいなものだよ」

 

「デクさん……ルミリオンさん、デクさん、あと……メガネをしていたあの人……皆……私のせいでひどいケガを……私のせいで……苦しい思いさせてごめんなさい……私の、私のせいでルミリオンさんは力を失くして……」

 

そこまで言うとエリちゃんは泣き出してしまった。

エリちゃんに刻まれた治崎の呪詛は相当根が深いようだった。

あれだけの拷問を行われて、あれだけ散々罵られて、精神が歪まない方がおかしいから仕方ないことではあるんだけど……

そんなエリちゃんを励ますように、通形さんが話しかけた。

 

「エリちゃん!苦しい思いしたなんて思ってる人いない。皆こう思ってる!"エリちゃんが無事で良かった"って!存在しない人に謝っても仕方ない!!気楽にいこう!皆君の笑顔が見たくて戦ったんだよ!」

 

通形さんのその言葉を聞いたエリちゃんは、少し呆然とした後に無理矢理表情を変えようとし始めた。

……何をやろうとしているのかなんて、思考を見なくても分かる。

私も今でこそマシになってるけど、小さい頃に無関心の仮面を被り続けていたらどうやって笑ったらいいか分からなくなったことがあるから、その気持ちは痛いほど分かってしまった。

 

「ごめんなさい……笑顔ってどうやればいいのか」

 

緑谷くんと通形さんは、エリちゃんのその言葉に何も言えなくなってしまっていた。

悲しそうにそう呟いて涙を浮かべるエリちゃんに、私はもう耐えられなくなってしまった。

エリちゃんに近づいて、頭を撫でてあげながら声をかける。

 

「無理して笑わなくても……いいんだよ……」

 

「お姉さんは……?」

 

「私は……波動瑠璃……瑠璃って呼んで……」

 

「ルリさん……?」

 

「ん……私も……エリちゃんを救けたくて……色々頑張ったの……」

 

「そう、なんだ……」

 

エリちゃんは涙目のまま、また暗い表情を浮かべた。

 

「笑顔はね……楽しかったり……嬉しかったりしたら……自然と浮かべられるようになるから……今は……無理しなくてもいいんだよ……無理して笑顔を浮かべても……辛いだけだから……」

 

「そう……なの……?」

 

「ん……私もね……色々あって……どうやって笑ったらいいのか……分からなくなったことがあったんだ……でもね……楽しい事……嬉しい事……いろんなことを教えてくれた人がいて……また笑顔を浮かべられるようになったの……だから……今は無理しなくても……いいんだよ……エリちゃんも……いろんなことを経験すれば……そのうち笑えるようになるから……急がなくても……大丈夫……」

 

「でも、皆……私の笑顔が見たいって……」

 

「皆優しい人だから……無理矢理浮かべた笑顔なんて……喜ばないよ……私だってそう……エリちゃんが笑いたくなった時に……自然に笑ってくれたら嬉しいなとは……思うけど……」

 

「そうなんだ……」

 

エリちゃんは無理して笑顔を浮かべようとするのを完全にやめて、考え込み始めた。

この子が今笑顔を浮かべるのは、多分無理だろう。

私だって他の人に排斥され始めたばかりの頃は泣いてばっかりで、お姉ちゃん相手にも笑顔を浮かべることすらできなくなっていた。

お姉ちゃんすらも信用しきれなくて、無表情で様子を伺っていたことすらあった。

でもお姉ちゃんが私に根気よくいろんなことを教えてくれて、一緒に遊んでくれて、また楽しいって思えるようになって、笑顔を浮かべられるようになったのだ。

エリちゃんも、同じように優しい人に、いろんなことを教えてもらえば、きっと……

 

私がそんな風に考えながらエリちゃんとお話ししていたら、緑谷くんが相澤先生に声をかけ始めた。

 

「相澤先生、エリちゃん1日だけでも外出できないですか……?」

 

「無理ではないハズだが、というかこの子の引き取り先は今「じゃあ!」

 

相澤先生の思考的に、エリちゃんの引き取り先は雄英の教師寮になるのが最有力のようだ。

まあ個性が暴走した時に抹消で止められる相澤先生がすぐ近くで見守るということなんだろう。

 

「文化祭!エリちゃんも来れませんか……!!?」

 

「……なるほど」

 

緑谷くんのその提案を聞いて、通形さんも閃いたらしい。

通形さんは個性が無くなった影響で今は休学中だし、通形さんに任せればエリちゃんは多分大丈夫かな。

 

「ぶんかさい……?」

 

「エリちゃん!これは名案だよ!文化祭っていうのはね!俺たちの通う学校で行うお祭りさ!学校中の人が学校中の人に楽しんでもらえるよう、出し物をしたり食べ物を出したり……あ!リンゴ!リンゴアメとか出るかも!」

 

「リンゴアメ……?」

 

「リンゴをあろうことかさらに甘くしちゃったスイーツさ!」

 

「さらに……」

 

通形さんの言葉を聞いたエリちゃんは、涎を垂らしながらリンゴアメに思いを馳せていた。

小さい子はこういう素直な思考が凄くかわいい。

 

「校長に掛け合ってみよう」

 

「……それじゃあ……!エリちゃん……どうかな!?」

 

「……私、考えてたの。救けてくれた時の……救けてくれた人のこと……ルミリオンさんたちのこと、もっと知りたいなって考えてたの」

 

エリちゃんは期待でちょっと頬を赤く染めながらそう言った。

その反応に、通形さんと緑谷くんのやる気に火が付いたらしい。

 

「嫌ってほど教えるよ!!!」

 

「校長に良い返事がもらえるよう俺たちも働きかけよう!……俺休学中だからエリちゃんとつきっきりデートできるよね!」

 

「でぇと?」

 

通形さんのその言葉に、エリちゃんは不思議そうに聞き返した。

6歳の子に何言ってるんだ通形さん。

 

「蜜月な男女の行楽さ!」

 

「みつげつなだんじょのこうらく?」

 

「先輩何言ってんですか」

 

「通形さん……ロリコン……」

 

「ろりこん?」

 

「あはは!何も言い返せないよね!」

 

「波動さんまで何言ってんの!?」

 

そんな感じで話していたらいつの間にか面会時間終了の時間になっていた。

今日はエリちゃんは笑えなかったけど、文化祭で笑えるようにいい出し物が出来るように頑張ろうと思えた。

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