波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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配役決め

お見舞いに行った翌日。

その日の授業も普通に受けて放課後の補習が終わった。これでインターンの穴埋めの補習はおしまいになった感じだ。

補習がない皆は、寮でダンスと生演奏の配役を決めている。

爆豪くんが思うところがあったようで一悶着あったようだけど、爆豪くんがドラムをすることで落ち着いたらしい。

今はバンドやダンスに加えて演出を加えないとという話をしていたようだ。

そのタイミングで、私たち補習組も寮に帰りついた。

 

「うーす」

 

「補習今日でようやく終わりました。本格参加するよー!」

 

お茶子ちゃんたちが鼻息荒く皆に声をかけた。

それを受けて皆が状況を説明してくれた。

これで私以外の補習組も状況を飲み込めたようだった。

そして、その説明を受けたお茶子ちゃんがあっけらかんと言い放った。

 

「へ?うたは響香ちゃんじゃないの?」

 

「いや、まだ全然……」

 

お茶子ちゃんの言葉に響香ちゃんが困惑したように答える。

そしてボーカルの話になったことで一部の人達が自己主張を始めた。

 

「ボーカルならオイラがやる!モテる!」

 

「ミラーボール兼ボーカルはそう、この僕☆」

 

「オウ!楽器はできねーけど歌なら自信あんぜ!」

 

そこからは自分がボーカルをやると言う人たちによるアピールが行われ始めた。

最初の切島くんは演歌を熱唱し始めた。

うまいんだけど、当然のようにジャンルが違うということで皆から却下を食らった。

次は峰田くん。

何を言ってるのか分からないレベルで怒鳴っているだけの歌とは言えないそれは即座に却下。

最後に青山くん。

いつもの裏声を披露しただけで歌かと言われると疑問符を浮かべざるを得ない。当然却下だった。

そんな様子を見ていた透ちゃんが声を上げた。

 

「私も響香ちゃんだと思うんだよ!前に部屋で教えてくれた時、歌もすっごくカッコよかったんだから!」

 

「私も……響香ちゃんがいいと思う……歌……とっても上手だった……」

 

「ちょっと2人とも……ハードルあげないでよ。やりづらい」

 

「いいからいいから」

 

「ん……見せつけてあげて……」

 

響香ちゃんもやりづらいとは言うけど歌うこと自体に文句はなさそうだ。

やると決めたからには吹っ切れているようだった。

透ちゃんと私でマイクを準備すると普通に歌う準備を始めてくれた。

 

「オイラたちの魂の叫びをさしおいて……どんなもんだコラ……?ええコラ!?」

 

「耳郎の歌聞いてみてぇな!いっちょ頼むぜ!」

 

峰田くんの挑発や切島くんの期待を込めた声援を受けて、満を辞して響香ちゃんが歌い出した。

その瞬間、皆は時が止まったように固まった。

それだけ響香ちゃんの歌に聴き入っているということだろう。

 

「耳が幸せー!!」

 

「ハスキーセクシーボイス!!」

 

「満場一致で決定だ!!」

 

「……じゃあそれはそれで……で!!あとギター!!二本欲しい!!」

 

響香ちゃんは顔を赤くして話題を切り替えるようにギターに話を移した。

その響香ちゃんの希望を聞いた瞬間、上鳴くんと峰田くんが凄い勢いで自己主張を始める。

……峰田くん、目立てればなんでもいいのかな。節操がない感じか。

 

「やりてーー!!楽器弾けるとかカッケー!!」

 

「やらせろ!!」

 

そんな2人に対して爆豪くんがキレながら声をかける。

 

「やりてぇじゃねんだよ!殺る気あんのか!?」

 

「あるある超ある!ギターこそバンドの花だろぃ!!」

 

上鳴くんは相変わらず爆豪くんを全然怖がらない感じだ。

その横で峰田くんは涙を流していた。

身体が小さいせいでまともにギターを持てないらしい。

 

「キャラデザのせいで手が届かねぇよ!!」

 

自分の身長と体格のことをキャラデザとか訳の分からないことを言い出した。

それに思考と感情が凄まじいほどの悲しみとかの負の感情で満たされている。

流石にちょっとかわいそうかもしれない。

そんな峰田くんが駆け出した時に置いていったギターを、常闇くんが掴んだ。

常闇くんはそのままギターを構えると、切ない感じの音を鳴らし出した。

どうやらギターを弾けたらしい。

 

「常闇……!?」

 

「なんて切ねぇ音出しやがる……!!」

 

「弾けるのか!?なぜ黙っていた!?」

 

「Fコードで一度手放した身ゆえ」

 

驚愕する皆に常闇くんはちょっとしょんぼりした感じの表情で答えた。

Fコードがどんなのかは知らないけど、響香ちゃんの反応を見る限り初心者が躓く最初の難関のようだった。

 

「峰田。おまえが諦めるならば、俺がおまえの分まで爪弾く」

 

「勝手にしろクソが。下らん下らん。はよ終われ文化祭。全員爪割れろ」

 

峰田くんは完全に拗ねてしまった。

まあボーカルにギターと希望したものを悉く出来なかった感じだから仕方ない部分はあるけど……

そんな峰田くんの様子を見ていたお茶子ちゃんが、三奈ちゃんの方に顔を向けた。

なるほど。それなら確かに機嫌を直して参加してくれそうだ。

むしろ嬉々として参加すると思う。

こういうのは皆で参加できた方が楽しいと思うし、それくらいならいいか。

透ちゃんの方を見ると、透ちゃんもどんな提案をするかは大体察したようだった。

透ちゃんも嫌がってなさそうだし、多分大丈夫かな。

そんなことを考えていたら、お茶子ちゃんの意図を察した三奈ちゃんがダンスに参加する可能性がある女子全員に顔を向けていった。

三奈ちゃんは皆順番に頷いたのを確認してから、峰田くんに近づいていった。

 

「峰田!ダンス峰田のハーレムパート作ったらやる!?」

 

「やるわ。はよ来いや文化祭」

 

一瞬で思考が歓喜に包まれて涙を浮かべながら参加を表明した。

相変わらず現金なブドウ頭だった。

 

 

 

その後も皆で話し合いを続けて、私はダンス隊になった。

全員の役割が決まる頃には深夜1時になっていた。

 

「全役割、決定だ!!」

 

「まだ決まってねぇよ!!」

 

飯田くんが嬉しそうに役割が決まったことを宣言したのに、ブドウ頭がそれを打ち消すように叫んだ。

ステージの役割は飯田くんの言う通りちゃんと全員決まっている。

だけどブドウ頭の思考はミスコン一色になっている。

ブドウ頭は先生に口答えしてまでミスコンの参加権を得た後、どうにか自分のクラスの女子を参加させようと躍起になっていた。

なんとか説得しようと必死で女子のところを回るブドウ頭を、正直に言って皆ドン引きしながら見ていたのだ。

 

「決まっていないとは……?」

 

「ミスコンだよ!ミスコン!!まだ決まってねぇだろ!!」

 

「まだ言ってたの?」

 

「この前も断ったと思うんだけど……」

 

ブドウ頭のその言葉を受けて、飯田くんが少しではあるけど顔を顰めた。

 

「しかし峰田くん、ミスコンはあくまで希望制だ。女性陣から希望がない以上……」

 

「でもよ!他科のストレスを発散するための一助になるんだろ!ミスコンだってストレス発散できる催しの一つだ!そこにウチのクラスから参加者を出さなくてどうするんだよ!」

 

「……確かに一理あるのか!?」

 

「そんなの……ないと思うけど……」

 

そんなものはない。飯田くんも空回りしてブドウ頭に丸め込まれそうにならないで欲しい。

そのはずなのに他の女性陣からは否定の言葉が出ない。皆なんだかんだで他科のストレスという部分を結構気にしていたらしい。

そのせいでブドウ頭の説得だけじゃなくて、この場で希望や推薦を募ることになってしまった。

どうしてこうなった。

 

「では、一応希望者を募ろう。参加希望の者は挙手を!」

 

当然のように誰も手を挙げなかった。

飯田くんも見渡してから普通に流した。この結果は予測通りだったんだろう。

 

「では次は推薦を募る。これで参加者が決まらなければ、もう諦めるということでいいな?峰田くん」

 

「おうよ!」

 

飯田くん的には女子をしつこく説得して回っているのもあまりいい印象を受けなかったんだろう。

この場で決まらなければ諦めるように厳命をしたうえで他薦を募り始めた。

他薦と言ってもそれは強制ではないからダメなら諦めろと釘を刺してくれた感じっぽい。

飯田くんのその言葉を受けて、皆が推薦する人を考え始めている。

ほとんどの人が思い浮かべているのは百ちゃんだ。

まあ百ちゃんは職場体験でCMにも出演していたりして知名度もあるし、他科の生徒から一定の支持もあるから当然の流れでもある。

 

「他薦となると、やっぱりヤオモモちゃんかなぁ?」

 

透ちゃんがぽつりと呟いたのを皮切りに、皆が百ちゃんを推薦していった。

 

「わ、私ですか!?」

 

「CMに出て知名度もあるしな!」

 

「背も高いし、スタイルもいいもんね」

 

口々に褒められたりしながら理由を説明されて、百ちゃんがどんどん赤面していく。

だけど、百ちゃんの思考的に参加は無理そうな感じかな。

クラスの出し物を優先されると仕方ない部分もある。

 

「で、ですが私には、バンドでのキーボードの練習がありますので、流石にそれをしながらミスコンの準備となると……」

 

「そっか、そうだよね……」

 

「クラスの出し物のため……仕方ない……」

 

「そうなると、耳郎と芦戸も厳しいよな。演奏とダンス教えなきゃいけねぇし……」

 

「葉隠の素顔は凄く美人だったけど、見えないから流石にマニアックが過ぎるし……」

 

これはこのまま立ち消えになるかななんて私が思っていたら、皆の視線が私に集まっていることに気が付いた。

思考からして、私を推薦しようとしている。

正気か?

 

「……私……?……正気……?」

 

私が自分を指さして困惑しながら聞き返すと、透ちゃんが説明し始めた。

 

「でもヤオモモちゃんがダメなら瑠璃ちゃん以外いないと思うんだよ。瑠璃ちゃん小柄で可愛いし美人だし、去年準グランプリのねじれ先輩にすごく似てるし」

 

「だよな。波動先輩と似てる波動ならいい所までいけるんじゃないか?」

 

「……私、お姉ちゃんの邪魔したくないし……似てるからこそ投票者層が被って……お姉ちゃんにボロ負けすると思うけど……」

 

私が難色を示しているのが分かった途端、ブドウ頭が私の足に縋り付いてきた。

 

「頼むよ波動!オイラを助けると思って!な!?出し物とかはオイラも全面的に協力するから!なぁ!頼むよぉ!」

 

「えぇ……」

 

鼻水まで垂らしながら懇願してくるブドウ頭に正直ドン引きしてしまう。

さっきも言った通り私はお姉ちゃんの邪魔をしたくないし、少ないかもしれなくてもお姉ちゃんの票を食う可能性があるなら出たくなんてないんだけど。

緑谷くんが、知り合いがミスコンに出てたらエリちゃんが楽しめるかもなんてひっそり考えているけど、それとこれとは話が別だ。

私の態度が変わらないことを察したブドウ頭は、縋りつくのをやめて今度はひそひそと内緒話をするように話しかけてきた。

さっきのはウソ泣きか、このブドウ頭。

 

「……参加者になることで、舞台裏や練習の時の波動先輩の姿も実際に見れるんじゃないか……?」

 

「……くわしく……」

 

私がそう返すと、今度は上鳴くんが近づいてきた。

 

「峰田の言うことはまぁそのままとして、あとは参加すれば、ステージ上で波動先輩の売り込みをすることもできるんじゃないか……?」

 

「……なるほど……」

 

ブドウ頭と上鳴くんの言うことも一理ある。

なるほど。お姉ちゃんのミスコンの舞台裏を知るチャンス。

波動が見えているとは言っても、この目に焼き付ける最後のチャンス。

なるほどなるほど。それにステージ上で参加者の私がお姉ちゃんの売り込みもできる。なるほど。

 

「……分かった……いいよ……ミスコン……出る……」

 

「ほんとか波動!?」

 

「よっしゃあ!」

 

「よーし!じゃあ私が瑠璃ちゃんのサポートしちゃうよぉ!」

 

「それなら、ドレスは私も一緒に見繕いましょう!」

 

私の返答を受けて、皆がさらに盛り上がりを見せた。

男性陣は言わずもがな。女性陣は自分は立候補しなくても、出る人のサポートはしたいとかそんな感じで。

私は私で、ミスコンでどうお姉ちゃんを売り込むかを考え始めていた。

 

そんなこんなで配役にミスコンの代表者も決まる頃には深夜2時近くなっていた。

爆豪くんなんか話がミスコンのことに移った時点で早々に寝てしまっている。

区切りがつくところまで話したこともあって、皆大急ぎで自室に戻ってベッドに入った。

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