波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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少女来訪(前)

配役決めも終わった土曜日。

土曜日だから今日は半休だ。

爆豪くんと轟くんの仮免補講も今週はないらしく、今日半日と明日1日皆で練習に打ち込むことになった。

 

「緑谷違ーう!もっとこうムキッと!!ロックダンスのロックはLOCKだよ!」

 

練習している寮の前の広場には、指導している三奈ちゃんの声が響き渡っていた。

ちょっと指導の仕方が感覚的で分かりにくい部分もあるけど、指導している内容自体は的確だ。

 

私たちダンス班の女性陣は、三奈ちゃんの指導する声を聞きながらダンスの練習をしていた。

練習と言ってもハーレムパートの内容をブドウ頭指導の下ちょっと詰めていただけだけど。

ハーレムパートには同意はしているし、やるからには本人の要望も必要になってくるから仕方ないのだ。

 

「もっとこう、オイラを崇めてくれ!」

 

「こう?」

 

「崇めるようにって、具体的にはどうすればいいの?」

 

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが試したりしながら聞いてあげている。

正直私にも分からない。崇めるようにって具体的にどうすればいいんだ。

 

「オイラに媚を売るように、オイラに全てを捧げるようにだな……」

 

「……意味不明……」

 

「もうははーって感じで手を振っておけばいいかな?」

 

透ちゃんが手を上げてブドウ頭に向けて上下にひらひらしたり、左右に身体を振ったりしている。

なんだその手を上げる振り付け。ちょっと理解できないけどブドウ頭が止めてないから真似してみる。

結局透ちゃん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃんと一緒にブドウ頭を囲んで4人でこれをやっているけど、本当に何を表現しているのかが分からなかった。

ブドウ頭の周りをウェーブでもするのだろうか。

さらに言うとブドウ頭が満更でもない顔で偉そうにしているのがちょっとイラッとした。

少しの間それをしていたけど、ブドウ頭が急に呟いた。

 

「やっぱりなんか違うな……没だ!オイラももっといいの考えるから、女子でも良い感じのハーレムパート考えといてくれ!」

 

「ええー!?」

 

「……は?」

 

「瑠璃ちゃんどうどう。ハーレムパート自体には瑠璃ちゃんも同意したんでしょ?これくらい我慢しないと」

 

「……月夜ばかりと思うなよ……」

 

しかもやらせるだけやらせて完全に没にされた。何だったんだ今の時間。完全に無駄だったのか。

 

 

 

もういいや。とりあえずミスコンの出し物も考えないといけないし、三奈ちゃん指示の全体練習以外はそれを考えてよう。

ミスコンの出し物、何にしようか。

去年の優勝者である絢爛崎さんはサポート科らしく自分で作ったド派手な舞台装置みたいなのに乗ってステージを闊歩していた。

お姉ちゃんもそれに対抗するように空を飛びながら派手目の特大ビームを空に放っていた。

他には普通にバレエのようなダンスをしている人もいたし、武術の型のようなものを披露している人もいた。

優勝する気はないけど、無様なものを見せるのもちょっと嫌だ。

あまりにも酷いとそれはそれで負の感情を向けられたりしそうだし。

そんな感じで考え込んでいたら、透ちゃんが話しかけてきた。

 

「瑠璃ちゃん何考えてるの?」

 

「ん……ミスコンの出し物……何しようかなって思って……」

 

「ミスコンかー。何かいいの思いついた?」

 

「まだ……何も思いついてない……」

 

私がそう返すと透ちゃんも一緒に考えこみ始めた。

去年と同じ感じのステージだとお姉ちゃんみたいに空を飛べない私が使える範囲はそんなに広くないのもある。

波動弾とかを使おうにもお姉ちゃんみたいな見栄えするビームにはならないし、正直魅せるための演技というのがなかなか思いつかなかった。

ある程度のところで切り上げてお姉ちゃんの売り込みをするつもりだからそんなに長くなくても良いんだけど、それでもなかなか良い案は浮かばなかった。

 

「うーん、出し物かぁ……」

 

「私……武術とかも出来ないし……見栄えがするようなダンスも踊れない……何をすればいいか迷っちゃって……」

 

「瑠璃ちゃんが出来る出し物となると……」

 

「そこは持ってる武器を活かすべきだろ!」

 

透ちゃんと2人で頭を捻りながら考えていると、ブドウ頭が近づいてきた。

協力するとか言っていたからある程度口を出してくるのは予想していたけど、その思考は割りと最低なことを考えている。全く参考になる気がしない。

可能性は0じゃないから一応話は聞くけど、本当に最低な思考をしている。

思考通り私の胸をガン見しているし。

 

「持ってる武器?」

 

「考えてる内容からして……期待はしてないけど……一応言ってみて……」

 

私と透ちゃんの質問に、ブドウ頭がドヤ顔をし出した。

思考と合わせて無性に腹が立つ顔である。これで思考通りの内容を言ってきたら制裁待ったなしだ。

 

「波動の武器と言えばもちろん、その身長に見合わないオッパイだろ!!バランスだけで見れば波動先輩に全く見劣りしねぇその身体を今活かさないでいつ活かすんだよ!!エロい衣装着て誘惑するようなエロいポーズ決めればへぶっ!!?」

 

練習をしながら話を聞いていた梅雨ちゃんの舌が飛んでくるのと、私と透ちゃんが拳を振りかぶるのはほぼ同時だった。

最低すぎる妄言を宣うブドウ頭の顔面に、私と透ちゃんの拳と梅雨ちゃんの舌が突き刺さった。

 

「最低……」

 

「何考えてるの峰田くん!?」

 

「本当に最低ね峰田ちゃん」

 

「ミスコンをなんや思とるんや峰田くん」

 

お茶子ちゃんも制裁まではしていないけど凄く冷めた目でブドウ頭を見ている。

女子に対してあんなデリカシーのない発言をして、ドン引きされたり気持ち悪がられたりするって理解できないんだろうか。

ダンスの練習をしていた他の男子たちはブドウ頭を凄い目で見ているし、緑谷くんたちに指導していた三奈ちゃんすらもブドウ頭にゴミを見るような目を向けていた。

 

「峰田ぁ!あんたお世辞にもダンス仕上がってるなんて言えないでしょ!今からみっちり扱いてあげるからこっち来て!」

 

「な、なんだよ!?オイラ別に間違ったことは言ってねぇだろ!!」

 

「十分すぎるほどに最低だから!あんまりにも酷いとハーレムパート消すよ!!波動たちの邪魔だから、いいから早くこっちに来なさい!!」

 

「ひっ!?ご、ごめん!悪かったって!謝るからそれだけは勘弁してくれ~!!」

 

三奈ちゃんの憤怒の表情での脅しに、ブドウ頭はそそくさと指示に従った。

それにしても本当に一切参考にならなかった。

なんであんなにデリカシーのない最低なことを言えるんだあのブドウ頭。

 

 

 

そんなことをしていると、相澤先生と通形さんとエリちゃんの波動が近づいてきた。

とりあえずくだらないギャグをしようとしている通形さんを無視だ。

ブドウ頭に害された気分を癒すためにエリちゃんに近づいていく。

 

「どうれ……登場一発ギャグで一笑いかっさらって……」

 

「あ!通形先輩!」

 

「いらっしゃい……エリちゃん……」

 

「デクさん……ルリさん……」

 

通形さんが「桃が生ってるよ!」とかいう意味の分からないギャグをしていたり、お茶子ちゃんたちがエリちゃんが来たことに驚いているけど、とりあえずスルーしてエリちゃんの頭を撫でておく。

 

「え!!?何なに先輩の子供……!?」

 

尾白くんが意味の分からないことを言っている。エリちゃんくらいの子が通形さんの子供だとして、通形さんが何歳の時に出来た子供だと思ってるんだ。

流石にありえないだろうに。

 

「髪の毛……前よりも綺麗になったね……」

 

「わぁ~可愛いねぇ!この子がエリちゃん?」

 

「ステキなおべべね」

 

「かっかっ可愛~!」

 

透ちゃんも駆け寄ってきてしゃがんでエリちゃんの目線に顔を合わせた。

エリちゃんには何も見えてないから少し困惑しているけど。

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんもエリちゃんを褒めている。お茶子ちゃんなんて腕を振り上げるというポーズ付きだ。

それもそのはず。エリちゃんは可愛らしい子供服に身を包んで、可愛いポシェットも下げている。

本人の髪の毛がサラサラになっていたりするのもあって、とっても可愛らしくなっていた。

 

「校長から許可が下りた。びっくりしてパニックを起こさないよう、一度来て慣れておこうってことだ」

 

相澤先生も出てきてなんでエリちゃんが来ているのかも説明してくれた。

 

「エリちゃん……インターンの子か!俺は飯田!よろしく!」

 

「10年後が楽しみだ。オイラミネタ」

 

とりあえず変なことを言う懲りないブドウ頭を引きずってエリちゃんから遠ざけておく。

ブドウ頭は小さな子の教育上よろしくない。

悪影響を与えたらどうしてくれるつもりだ。とにかく引き離しておくべきだ。

そんなことをしている間にエリちゃんは通形さんの後ろに隠れてしまった。

 

「照れ屋さんなんだよね」

 

「照れ屋さんか」

 

「というわけでこれから俺、エリちゃんと雄英内を回ろうと思ってるんだけど、緑谷くんと波動さんもどうだい!?」

 

通形さんがそう提案してくれる。

その提案は凄く嬉しいし特に何もなければ行きたかったけど、私もこの後用事があるから行けないのが非常に残念だ。

この後はミスコンの準備でちょっと備品室の方に行かなくてはいけないのだ。

私のサポート役は透ちゃんがしてくれることになっているから、透ちゃんも一緒だ。

 

「ん……ごめんなさい……私はこの後……用事があるから……」

 

「僕は……」

 

私が断るとエリちゃんがちょっと残念そうな表情をした。本当に可愛くて一緒に回ってあげたいんだけど、行けないものは仕方ない。

緑谷くんも悩んでいたら、察したらしい三奈ちゃんがダンス班に声をかけてくれた。

 

「じゃーちょっと休憩挟もうかぁ!ティータイム!波動と葉隠はミスコンの準備の方行っていいからね!」

 

「ん……ありがと……三奈ちゃん……」

 

「ありがとー!じゃあちょっと行ってくるね!」

 

とりあえず三奈ちゃんの方に断って移動を始める。

それに合わせてエリちゃんにも声をかけておいた。

 

「一緒に行けなくて……ごめんね……やることがあるから……通形さんなら……どこにいるか分かると思うから……後で会いに来て欲しいな……」

 

「……はい」

 

「波動さんはミスコンの準備だよね。備品室?」

 

「はい……そうです……」

 

「じゃあ後でエリちゃんと顔出すね!」

 

「はい……待ってますね……」

 

そこまで話してエリちゃんに手を振ってから別れた。

エリちゃんも小さく手を振り返してくれた。やっぱり小さい子は素直で可愛い。

こっちもちょっと名残惜しいけどエリちゃんたちを置いて備品室に向かった。

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