波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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少女来訪(後)

透ちゃんと備品室へ移動する。

今日はドレスの試着が出来るということで備品室にある貸出可能なドレスを見に来たのだ。

出し物で何をするかをまだ決めてないから正直ちょっと決めきれない部分はあるけど、こういうのを見てイメージを固めるのもいいかもしれない。

 

それはそれとして、なんと今の時間はお姉ちゃんも備品室にいるようだ。甲矢さんや天喰さんを含めたクラスメイトと一緒にドレスを見に来ているらしい。

いきなりミスコンに参加した利点を享受できるみたいだ。

お姉ちゃんのドレスの試着を見学もといお手伝いできるなんて最高としか言えない。

 

「あー、瑠璃ちゃん……もしかして……」

 

「流石透ちゃん……!察しがいい……!お姉ちゃんの試着を見学できるよ……!運がいいね……!」

 

「ん~」

 

透ちゃんが渋い表情をしだした。思考もなんとも言えない感じになっている。

何故だ。お姉ちゃんのドレス姿を見れるのになぜそんな思考になるんだ。

もしかして布教が足りなかったのだろうか。

透ちゃんはそのまま私に向き直ると、真剣な表情で両手を私の肩に置いてきた。

 

「ねじれ先輩のドレスを見るのもいいんだけど、瑠璃ちゃんのドレスもちゃんと選ぶんだよ?」

 

「……ん……お姉ちゃんのドレスを選んだ後でいいなら……」

 

「いやいや、エリちゃんが見に来るんでしょ?ちゃんと瑠璃ちゃんのドレスを最初から選ばないと」

 

渋々お姉ちゃんのドレスを選んだ後に自分のドレスを選ぶことを伝えたら、透ちゃんがそう諭してきた。

でもエリちゃんだってお姉ちゃんのドレス姿を見れば、それだけできっと満足できると思う。多分。きっと。

 

「……エリちゃんも……お姉ちゃんのドレス姿を見るだけできっと満足……」

 

「エリちゃんってねじれ先輩と面識あるの?」

 

「それは……ないと思う……けど……」

 

「ならちゃんと瑠璃ちゃんのドレス姿を見せてあげないと。ねじれ先輩のドレスもきっと凄く綺麗だと思うけど、エリちゃんは一緒に回りたいくらい好きなお姉さんの瑠璃ちゃんのドレスを見たいんじゃないかな?」

 

……透ちゃんの説得に、納得してしまう自分がいた。

私がエリちゃんの立場なら、懐いている人の姉妹のドレス姿を代わりに見せられてもちょっとびっくりするくらいでしかないと思う。

エリちゃんのため……でもお姉ちゃんのドレスの試着は見たい……でも自分がエリちゃんなら……

 

「…………え、エリちゃんの……ためなら……お姉ちゃんの試着を手伝うの……我慢する……」

 

散々考え込んだ結果、私は絞り出すようにそう返答した。

 

「流石瑠璃ちゃん!じゃあとびっきりのドレスを選ばないとね!ヤオモモちゃんも休憩になり次第来てくれるって言ってたし!」

 

「お姉ちゃんの試着……お姉ちゃんの……」

 

「ほらほら行くよー!」

 

私が諦めきれずにいると、透ちゃんに引きずるようにして備品室に連れていかれた。

 

 

 

備品室に入るとお姉ちゃんが胸元や太ももを惜し気もなく晒したドレスを着ていた。

流石お姉ちゃん、あの美貌にやられない人はいないだろう。

でもお姉ちゃんのかわいらしさとか可憐さをアピールする方向性ならもう少し露出を抑えた方がいいと思う。

お姉ちゃんの抜群のプロポーションにあのドレスだと、どうしてもそっちに目が行ってしまってセクシーさとかアダルティさが際立ってしまう。

お姉ちゃんの方に駆け寄って話しかける。

 

「お姉ちゃん……!」

 

「お?瑠璃ちゃんも来たんだ。もしかしてミスコン出るの?」

 

「ん……百ちゃん……職場体験でCMに出てた子が……クラスの出し物の都合で辞退して……皆に推薦された……」

 

「そっかそっかー。じゃあ一緒にミスコン出られるんだね!お互い優勝目指して頑張ろうね!」

 

「お姉ちゃんの優勝を……邪魔する気はないけど……私も頑張る……」

 

お姉ちゃんが私の頭を撫でながらそう言ってくれる。

とりあえずお姉ちゃんの優勝を確実なものにするために甲矢さんたちにドレスに関してアドバイスしないと。

そう思ってドレスを物色している甲矢さんの方に歩いて行こうとしたら、透ちゃんに腕を引っ張って止められた。

 

「瑠璃ちゃん、さっきちゃんと自分のドレス選ぶって言ったでしょ?」

 

「……でも……一言くらいアドバイスしても……」

 

「瑠璃ちゃんのドレスを選び終わったらねー」

 

透ちゃんがぐいぐい引っ張ってきて甲矢さんの方に行かせてくれない。

一言くらいいいじゃないか。

 

「あはは!葉隠さん、その調子で瑠璃ちゃんのことお願いね!瑠璃ちゃん、私がいると自分のこととか気にしなくなっちゃうから!瑠璃ちゃんも!出るからには真剣勝負だよ!」

 

「はい!任せてください!」

 

「……お、お姉ちゃんがそう言うなら……」

 

お姉ちゃんまで真剣勝負をするように言ってきた。でもお姉ちゃんがそう言うなら仕方ない……

お姉ちゃんに勝つつもりはなくても、真剣勝負と言うからにはちゃんとそれなりのものをお姉ちゃんに見せないと……

そう考えて透ちゃんとドレスを物色し始めた。

 

 

 

少ししてから来てくれた百ちゃんとも合流した。

3人であーでもないこーでもないと言い合いながらドレスを選んでいるけど、なかなか決まらなかった。

 

「うーん、やっぱり瑠璃ちゃんのスタイルは活かすべきだよね」

 

「ですがそれでは波動先輩と方向性が被ってしまうのではないですか?」

 

「甲矢さんとこの前話した時は……お姉ちゃんの可憐さとか可愛らしさ引き立たせるって言ってた……今はあんなセクシーなの着てるけど……」

 

「あくまで以前の方向性ですからね……いえ、方向性の被りなんて気にしていても仕方ないですね。波動さんに似合うドレスにしなければ……!」

 

百ちゃんが凄く張り切っているし、透ちゃんも生き生きとした感じでドレスを物色している。

私も色々見ているけど、イメージが湧いていないのもあってかピンとくるようなものは見つからなかった。

 

「波動さんはブルーやネイビーが似合うと思いますわ。そちらの系統から選ぶべきかと」

 

「瑠璃ちゃんが使う波動の色も暗めの青だもんね!確かにそのイメージが強いかも!」

 

「ん……私も……色は寒色系がいいと思う……」

 

色に関してはすぐに決まった。

コスチュームが濃い青と黒だし、波動の色が濃い青なのもあって迷うこともなかった。

問題はドレスの形状だった。

正直これに関しては出し物が決まっていないのもあって難航していた。

 

「波動さんは小柄ですから、やはりボリュームを控えたすっきりしたシルエットのドレスが映えるかと」

 

「だよね!ボディラインもアピールできるからその辺がぴったりだと思う!」

 

百ちゃんがオブラートに包んで背が低いのを補うためのドレスを提案してくる。

思うところはあるけど、私もそうした方がいいと思うし当然の意見だと思う。

 

「……はっきりと……背が低いって言っていいんだよ……?」

 

「……ですが、コンプレックスなのですよね?」

 

「ん……正直……気にはしてるけど……事実は事実……」

 

「そうですか……では、はっきりと言いますわね。波動さんの身長では、普通のドレスを着てしまうと胴長短足に見えてしまいます。ミスコンに出る女性が高身長の傾向が強いので猶更です。なので、重心が高い位置にくるドレスにするべきですわね。端的に言うと、Yシルエットのようなものをイメージしていただけばよろしいかと」

 

「そうなると……このあたりのやつかな?」

 

透ちゃんが百ちゃんのアドバイスに沿ったドレスを物色し始めた。

装飾の少なくてすらっとしたドレスを中心に探している。

私もそんな感じのドレスを探し始めた。

しばらくドレスを見繕って、とりあえずと言うことでボディラインがきっちり出て足を長く見せられるチャイナドレスを勧められた。

背に合ったものを選ぼうとすると胸がきつくなりすぎてしまうという理由で迷っていると、百ちゃんが私のスリーサイズを確認してそれにあったドレスを出してくれた。

そのまま作ってくれたドレスを受け取って、濃い青のチャイナドレスを着てしまう。

 

「おー!!瑠璃ちゃん似合ってるよ!」

 

「似合ってますわ波動さん!出し物を何にするにしても、チャイナドレスならスリットで動きやすさの調節もできますし、最適かもしれませんわね!」

 

「ぴっちりしてて……ちょっと恥ずかしいけど……」

 

褒められるのは悪い気分じゃないけど、ウエストもぴっちりしていて胸と腰が強調されて凄く恥ずかしい。

私が少し頬を紅潮させていると、備品室にエリちゃんが入って来た。

 

 

 

「去年の準グランプリ!波動ねじれさんだよね!!」

 

通形さんは私がいることは分かりきっているから、他にもいるであろうお姉ちゃんのことを説明していたらしい。

エリちゃんが入って来たのに気が付いたお姉ちゃんは、飛んだままエリちゃんに近づいて行った。

 

「ねぇねぇ何でエリちゃんいるの?フシギ!なんでなんで!?楽しいねー!」

 

エリちゃんが飛んできたお姉ちゃんを不思議そうな目で見ている。

 

「……おっきいルリさん……?」

 

「そっちは……私のお姉ちゃん……待ってたよ……エリちゃん……」

 

「あ……」

 

エリちゃんがビックリしたように私の方を向いた。

ドレス姿を上から下に確認するようにじっくり見られる。

エリちゃんのその視線に不埒なものは全くないから恥ずかしさとか嫌な感じとかは一切ない。

 

「無理して感想とか……言わなくてもいいよ……今は……いろんなものを見るだけでいいから……」

 

私がそう言うとエリちゃんは小さく頷いてから、お姉ちゃんと私を交互に見ていた。

そんな私とエリちゃんを尻目に、緑谷くんが挙動不審になりながらもお姉ちゃんに問いかけていた。

 

「"個性"も派手だしその……お顔も……ププププロポプロ……」

 

「プロポーション」

 

お姉ちゃんの魅力の前には仕方のないことだけど、相変わらずすぎる。

 

「そんな先輩でも準なんですね」

 

「そー聞いて!!聞いてる!?毎年ねぇ勝てないんだよー。すごい子がいるの!」

 

「ミスコンの覇者!!三年G組サポート科、絢爛崎美々美さん!」

 

通形さんが絢爛崎さんのことを説明していた。

でもあれは実際に見ないと理解しきれないだろう。

それに私は未だにインパクトと豪華さだけでお姉ちゃんに勝ったあの人を認められていない。

美人ではあるけど、派手さとかを除いた時にお姉ちゃんに勝てるとは思えないし。

話すと文句が出ちゃいそうだし、エリちゃんの前でもある。黙っておこう。

 

「今年はCM出演で隠れファンが急増しつつある拳藤さんもでるし、波動さんとそっくりの妹さんも出るんだ。波動さんも気合が入ってる……大衆の面前でパフォーマンスなんて……考えただけで……いたた……お腹いたくなってきた……」

 

天喰さんは相変わらずの人見知りだ。

膝をついてお腹を押さえだしてしまった。

そんな天喰さんの様子を気にしないお姉ちゃんは話を続けた。

 

「最初は有弓に言われるまま出てみただけなんだけど……なんだかんだ楽しいし悔しいよ。だから今年は絶対優勝するの!最後だもん!」

 

「ん……!お姉ちゃんなら優勝間違いなし……!有終の美を飾るのはお姉ちゃんなんだから……!!」

 

「……ルリさん……?」

 

「瑠璃ちゃんも優勝を目指すの!真剣勝負って言ったでしょ!」

 

お姉ちゃんが念を押してくる。

でも本気でやっても私がお姉ちゃんに勝てるとは思えないから、これはもう仕方ないのだ。

実際緑谷くんもお姉ちゃんの魅力にやられて私なんて眼中になかったみたいだし。今ようやく私の方を見て挙動不審になっているのがいい証拠だ。

男の子目線でもお姉ちゃんの魅力が私なんかよりもよっぽどすごい証拠である。

流石お姉ちゃん。罪な女だ。

 

その後はエリちゃんと少しお話して、まだ他の所も回るっていうエリちゃんたち一行は文化祭準備の見学に戻っていった。

エリちゃんは別れるまでずっと私とお姉ちゃんを見つめていた。

エリちゃん的にも色々と思うところはあったみたいだ。

この調子でゆっくりと情緒を育んでいつか笑えるようになってくれると嬉しい。

そう思いながら私は、まだドレスを物色して試行錯誤を続けている透ちゃんと百ちゃんの方に戻っていった。

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