波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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文化祭前夜

月日は過ぎ去ってとうとう明日が文化祭の本番。

ミスコンの出し物自体は、あれから透ちゃんや三奈ちゃん、尾白くんたちと相談して演武の動きや構成に少し調整を掛けたくらいだ。

構成がほぼ決まってからは尾白くんに演武指導を入れてもらいつつ練習して少しずつ磨きをかけていった感じで、皆と練習できる時間はダンスの方を主に練習していた。

ドレスも百ちゃんと相談して、スリットを深くしつつドレス自体の模様とかにもこだわってみたりと調整している。

それに加えてスリットを深くした影響でスカート部分が1枚の布のようになってしまったのもあって、布が暴れすぎたり足にまとわりついたりしないように煌びやかな飾り紐をスリットの上の方に緩く付ける感じになった。

結構悩んだのもあって、良い感じのドレスが完成した。

さっき模様とかを最終調整したものだって言われて渡された辺り、百ちゃんはギリギリまで考えていてくれたようだった。

ミスコンの準備はばっちりと言ってもいい。

クラスの出し物であるダンスの方は一応三奈ちゃんの要求レベルには達した、はず。

私がミスコンとの二足の草鞋になったこともあって、三奈ちゃんが集中的に指導してくれたりもしたのだ。

これだけ苦労を掛けたんだから、本番で不甲斐ない所は見せられない。

今はそんな意気込みを込めて体育館のステージで皆で練習していたところだった。

 

「もう閉まっちまう!最終確認通しで行くぞ!」

 

切島くんの掛け声で通し練習を始める。

ダンス隊の方は三奈ちゃん主導で通し練習を始めていた。

 

「ツートントン!ツートントン!パッ!で、青山中央、緑谷ハケる」

 

「ウィ☆」

 

「ラジャ!」

 

最初の山場の青山くんミラーボール化の流れを進めていく。

私は透ちゃんの隣で一緒にステップをしている感じだ。特にここで私の見せ場はないし。

 

「緑谷!!動きまだヌルいから!!グッ!!グッ!!意識!!波動も!!動きのキレが悪い!!疲れてるのは分かるけど、それじゃあ悪目立ちするよ!!」

 

「ん……!ごめん……!」

 

三奈ちゃんが凄い熱量の熱血指導をしていて、ダンス隊は皆集中して練習に望んでいた。

 

「そんで緑谷はソデからすぐ天井行って、そんで青山セットして、ロープで吊り上げる!そんでその後はステージに氷が展開されるから、麗日と梅雨ちゃん、波動と葉隠の2組で―――」

 

そんな感じの三奈ちゃんの指示の下行われる通しでの段取りの確認は時間ギリギリまで行われた。

そして一通り確認が済むというタイミングで、体育館のドアをガァン!!と鳴らすような凄い勢いで興奮状態のハウンドドック先生が飛び込んできた。

 

「モウガルルル9時ダロ!?生徒はァア゛ア゛ア゛!!9時まデダロォ!!」

 

「やっべ、帰りまーす!!」

 

流石にハウンドドック先生が来ているのにこっそり延長なんてこともできるはずもなく、そのまま大慌てで寮に戻った。

 

 

 

寮に戻ってからは普通に夕食を食べて、入浴してと慌ただしい感じでやるべきことを済ませていった。

その後は各々思い思いに過ごしていた。

百ちゃん筆頭に半分くらいの人はもう部屋に戻って寝てしまっている。

もう11時30分過ぎだし、今共有スペースにいるのは私と透ちゃんを含めた夜更かし組11人だけだった。

 

「寝れねー!!」

 

「静かに!寝てる人もいるから!」

 

「三奈ちゃんの言う通り……部屋に戻ってる人は……もうほとんど寝てる……起こさないようにしないと……」

 

上鳴くんと峰田くんが「わー」なんて騒ぎながら走り回っている。

楽しみで興奮するのは分かるけど、子供かと言いたくなってしまう。

その行動は小学生レベルではないだろうか。流石に幼稚だと思わざるを得ない。

私がそんなことを考えていたら、ソファに座っている飯田くんが不安そうに口を開いた。

 

「皆盛り上がってくれるだろうか」

 

「そういうのはもう考えない方がいいよ。恥ずかしがったりおっかなびっくりやんのが、一番よくない。舞台に上がったらもう後は楽しむ!」

 

「おまえめっちゃ照れ照れだったじゃねえか!」

 

「あれはまた違う話でしょ」

 

響香ちゃんが飯田くんに的確なアドバイスをしていた。

それにしても飯田くんがこの時間まで起きているのは凄く珍しい。

いつも早々に部屋に戻って早くに寝てしまうのに。

思考を見る限りさっき発言していたみたいな不安と、あとは少しの期待が混ざってて若干の興奮状態と言う感じだ。

つまり、飯田くんもなんだかんだで上鳴くんたちと同じように眠れないからここにいるってことだろう。

でも上鳴くんが響香ちゃんを弄ったあたりで飯田くんもニコニコと笑顔を浮かべていたし、多分大丈夫だとは思う。

上鳴くんも上鳴くんで若干ズレた弄り方をしていたけど、わざとやったわけじゃないっぽい。偶然かな。

 

「耳郎さんの話、色んなことに通じるね」

 

「ウィ☆誰が為を考えると、結局己が為に行きつくのさ」

 

「なるほど」

 

道具の点検をしていた緑谷くんと青山くんもこちらの話を聞いていたらしい。

仲良く話している2人を微笑ましく思いながら見ていると、緑谷くんが何かに気が付いたようだった。

 

「これ、ロープがほつれてる」

 

「ワオ☆ずっと練習で酷使してたもんね。僕らの友情の証じゃないか!!☆」

 

「うん……いや、危ない。ごめん気付かなくて……」

 

青山くんがだいぶ嬉しそうに反応を返している。友情の証を感じることができたことが心底嬉しかったらしい。

そんな2人の話を聞いた上鳴くんが口を挟んだ。

思考的に何を言おうとしているかは分かる。

部屋に戻ってる人はもう寝てるってさっき言ったのに、それは無いんじゃないだろうか。

それを考えると頼めるのは明日の朝だ。

 

「八百万に作ってもらえば?」

 

「ヤオモモもう寝てるよ!便利道具扱いしないの!」

 

「ん……頼むにしても……起きてくるのを待たないと……」

 

正論を言ったと思うんだけど、上鳴くん的には気に障る部分があったらしい。

不満そうな顔で文句を言い始めた。

 

「俺のことは充電器扱いするじゃん!」

 

「これが男性蔑視」

 

少なくとも私と三奈ちゃんは上鳴くんを充電器扱いしてないと思うんだけど。

それに上鳴くんが寝てる時に充電器扱いで起こしてる人なんてクラスにもいないし。峰田くんの発言も的外れだ。

 

「僕、明日朝イチで買ってくるよ。朝練もあるし、ついでに買いたい物あるし」

 

「いやいや、俺ら10時からだぞ。店って大体9時からじゃん」

 

「雄英から15分くらいのとこにあるホームセンター、あそこなら8時からやってるんだよ」

 

「けっこーぎりじゃん」

 

緑谷くんはリンゴアメが文化祭で売ってなさそうなことにプログラムを見ていて気が付いたらしい。

エリちゃんにサプライズをするために自作するつもりみたいだった。

ついでに買いたい物っていうのはその材料みたいだ。

 

「緑谷くん……」

 

「どうしたの、波動さん?」

 

「リンゴアメ……飴の材料とか食紅とか……私と砂藤くんで大体の材料は……揃うから……リンゴだけ買ってきて……」

 

「ほんと!?ありがとう!助かるよ!」

 

緑谷くんは嬉しそうにお礼を言ってくれた。

それにしても砂糖を食紅を入れて煮詰めるだけとは言っても、普段料理とかお菓子作りをしていない緑谷くんだけだと心配だし手伝おうかな。

 

「ん……明日作るの……手伝おうか……?」

 

「ううん、大丈夫。波動さんはミスコンとかもあって大変だと思うから……その、コツとかだけは明日聞くかもしれないけど」

 

「そっか……聞いてくれれば教えるから……なんでも聞いてね……」

 

「うん。ありがとう」

 

緑谷くんは穏やかに頷いた。

とりあえずいつ質問されてもいいように、スマホの通知は頻繁に確認しておくようにしておこう。

ミスコン中とかに作ったりはしないと思うから、流石にそれで大丈夫だろう。

それにしても、緑谷くんはこういうところは本当に気が利く。

人助けに狂った精神を持っているだけあって、お人好しが服を着て歩いているみたいな人だ。

そんな私と緑谷くんのやり取りを聞いて不思議に思ったのか、透ちゃんが私に質問してきた。

 

「なんでリンゴアメ?」

 

「リンゴ……エリちゃんの好物だから……通形さんがリンゴアメあるかもって……エリちゃんに言ってたけど……プログラム見る限りだと……ないみたいだし……サプライズみたい……」

 

「あぁ!なるほどね。エリちゃん、リンゴが好きなんだ」

 

「ん……この前のお見舞いの時に言ってたから……間違いない……緑谷くん……気が利いてる……」

 

「そうだね、流石だね!」

 

説明したら透ちゃんもすぐに納得してくれた。

透ちゃんの中でも緑谷くんはそういう認識だったらしい。

 

 

 

「そろそろガチで寝なきゃ」

 

その後もミスコンの出来とか不安はないかとか、リンゴアメの作り方とかエリちゃんのこととか色々皆で話していたけど、0時を回りそうになった頃に三奈ちゃんがそう切り出した。

明日も朝は早いし、もういい時間だ。そろそろ寝ないといけない。

そう思って私もソファから立ち上がったタイミングで、切島くんが意気揚々と夜更かし組皆に声をかけた。

 

「そんじゃ……!また明日やると思うけど……夜更かし組!!一足お先に……」

 

切島くんがそう切り出した途端、皆何をしたいのかはすぐに察して切島くんの周りに集まった。

 

「絶対成功させるぞ!!」

 

「「「おーーー!!」」」

 

片手を上げて私も声を出しておく。

轟くんなんかは声を出したり腕を上げたりということはしてなかったけど、しっかり周りには集まっていた。

青山くんも以前では考えられないほど意気揚々と腕を振り上げていた。思考も一切暗い思考はない。

皆心から文化祭を楽しもうとしていた。

私もそうだ。

こういうのは今までやったことがなかったからちょっとワクワクしてしまう。

文化祭だってそう。中学時代は出席日数の為に通学はして文化祭中も人目につかないところで隠れて過ごしていたから、準備も含めて何もかも参加したことはなかった。

お姉ちゃんが楽しそうにしているのは去年と一昨年で見ていたけど、自分がその輪の中に入るのは初めてだ。

透ちゃんと一緒に回る約束もしてるし、他のクラスの出し物とか屋台とかとにかく色々見て回りたい物もある。

ミスコンも当初の目的とは変わっちゃったけど、お姉ちゃんと一緒に出られると思えばそれはそれで楽しみだった。

何もかもが凄く楽しみだし、私自身さっきの上鳴くんたちのことを悪く言えないくらい興奮気味なのが自覚出来てしまう。

明日のために早く寝なきゃいけないのは分かっているけど、すぐには寝付けそうにないなと思った。

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