波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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文化祭当日の朝

文化祭当日。

朝7時前。

 

あの後なかなか寝付けなかったこともあって、今日はいつもより起きるのが遅くなってしまった。

まあそれでも十分な時間に起きてはいるんだけど。

起きてからは軽く朝食を食べて、身支度を整えた。

今日の予定としては、まず備品室の方に行ってミスコンのことを色々と最終確認をする。

9時までに確認の方を終わらせて、体育館へ移動。そのまま衣装に着替えてダンスの準備。

10時にダンスをする。A組の皆はその後は盛大に散らかる氷とかの片付けをする予定だけど、私と透ちゃんは免除になっている。

私たちはそのままミスコン会場の方に移動して、ドレスに着替えてミスコンの準備だ。

着替え、メイク、参加者全員での段取りの確認にリハーサルとやることがたくさんあるのだ。

13時からミスコンが始まって、14時くらいには終わる予定。

それ以降は透ちゃんと一緒に文化祭を回る約束をしている。

結構予定がぎちぎちだ。

B組は拳藤さんがミスコンに出るらしいけど出し物の演劇の方に出ない選択をしているらしいし、予定の詰まり方を考えるとそういう方法もありだったんだろう。

 

それはそれとしてミスコンの最終確認だ。

控室に行ってからは着替えたりステージ進行の段取りの確認とかリハーサルとかがあるから、衣装とか装飾とか各々の出し物の確認は事前にやっておかないといけないのだ。

時間もあんまりないし、透ちゃんと一緒に早々に備品室に向かった。

 

「いよいよ本番当日だね!」

 

「ん……忙しいけど……がんばろ……」

 

「うん!頑張ろうね!」

 

透ちゃんの声掛けに返答すると、透ちゃんはにっこりと笑った。

そんな会話が終わる頃には備品室に着いた。

備品室には既に拳藤さんと柳さんがいた。

拳藤さんはちょうどドレスに着替え終わった所みたいだった。

ドレスは胸元から肩にかけて大きく露出している青いセクシーな感じのドレスだ。

拳藤さんにすごく似合っていた。

 

「お、波動じゃん」

 

「拳藤さん……今日はよろしく……」

 

「よろしく!そっちも今から最終確認?」

 

「ん……拳藤さんもだよね……ドレス……似合ってるね……」

 

「ありがと」

 

拳藤さんはちょっと赤面して呟くようにお礼を言ってきた。

こういうドレスを着慣れていないのと場違いだと考えているのとで色々複雑な感じみたいだ。

私の方は私の方で、百ちゃんが張り切って最終調整したドレスを昨日の夜に渡してきたのもあって、とりあえず一度試着しておかないと不安が残る。

ドレスを着てもダンスの衣装に着替えないといけないけど、そういう事情もあって試着することにした。

透ちゃんにも協力してもらって着替えが終わってカーテンで区切られたスペースから出ると、ちょうど備品室に物間くんの声が響き渡った。

 

「あっははは何だい拳藤その衣装は!!暴力に魂を売った人間とは思えないなァ!!」

 

「褒めてんのか貶してんのかどっち」

 

「ちょっと男子。ズケズケ入って来ないでよ」

 

女子がミスコンの準備をしている部屋にズケズケと入ってきて、相変わらずの煽るような発言をする物間くんに拳藤さんと柳さんが文句を言う。

内心では褒めてる感じの思考をしているのに、どうして発言する段階でそんな変な感じになってしまうのか。

 

「ほめてんのさ!!何てったってエントリーしたのはこの僕だぜ!?CM出演で人気のある拳藤なら優勝間違いなし!A組の波動をコテンパンにして優勝することによってB組はさらにプルスウルトラ!何よりその間君の手刀から僕が解放されるのさ!!」

 

「まぁ……やるとなったらてっぺん狙わせてもらいますけども」

 

拳藤さんがなんとも言えない表情を浮かべながらぼやいた。

それにしても、今物間くんが聞き捨てならないことを言った。

優勝はお姉ちゃんなんだから拳藤さんの優勝間違いなしってどういうことだ。流石にそれはあり得ない。

拳藤さんは綺麗な人だし格好いい人だとも思うけど、どうやって女神の如き美しさを持つお姉ちゃんに勝つと言うのか。

甚だ疑問である。

今ちょうどお姉ちゃんも備品室に入ってきてなんで優勝間違いなしなのか疑問に思っているし、一緒に文句を言うか。

 

「ねぇねぇ待って。なんで間違いなしなの?まだ分かんないよ」

 

「ん……優勝はお姉ちゃんなんだから……拳藤さんの優勝間違いなしはおかしい……」

 

「波動ねじれ先輩に波動!?」

 

お姉ちゃんはなぜまだ分かんないなんてぼかすのか。

優勝はお姉ちゃん確定なんだからもっと勝ち誇ればいいのに。

……他の人にも可能性を残っている感じをアピールして、楽しめるようにしてあげてるのかな。流石お姉ちゃんである。菩薩のような優しさだ。

 

「瑠璃ちゃん、まだ分かんないって言ってるでしょ。瑠璃ちゃんもちゃんと優勝目指して全力でやるんだよ」

 

「……勝てるわけないと思うけど……全力ではやるから……」

 

「それならよし!拳藤さんもよろしくね!」

 

お姉ちゃんは私にちゃんと全力を出すように釘を刺してから、拳藤さんにも挨拶し始めた。

拳藤さんも恐縮したような感じで笑顔で応じている。

流石お姉ちゃん。人望もばっちりだ。

そう思いながら頷いていたら、絢爛崎さんの波動が近づいてきた。

 

「おやおや私を差し置いて、優勝のお話を!?有終の美を飾るのはこの私!!」

 

絢爛崎さんはあろうことかその長すぎる睫毛をお姉ちゃんに当てながら登場した。

物間くんがビックリしたのか先輩の名前を叫んでいる。

お姉ちゃんの身体に少しでも傷がつかないように間に身体を滑り込ませる。

 

「そんなことない……!!有終の美を飾るのはお姉ちゃんなんだから……!!」

 

「あら、威勢のいい。こちらはねじれさんの妹さん?」

 

「うん、そうだよー。今年は瑠璃ちゃんも出るからよろしくね!」

 

「あらそうなの。よろしくお願いしますね、瑠璃さん」

 

「……お願いします……」

 

気に入らない相手だし威嚇は続けるけど、挨拶を返さないのは流石に失礼だと思って返事だけはしておく。

そんな私たちの様子を見て、泡瀬くんが「女の闘いだ……!」なんて呟いていた。

 

 

 

それからは時間がないこともあって私は他の人から離れて衣装とか装飾、それに出し物の流れを透ちゃんと一緒に再確認した。

確認自体はそんなに時間がかからずに終わったけど、ダンスの衣装に着替え直す頃には8時50分になっていた。

急いで体育館に向かっていたけど、その途中で範囲内に凄まじい速度で飛び込んできた2つの波動と、それを追うように飛び込んできた緑谷くんの波動に気が付いた。

 

「……緑谷くん……なにしてるの……」

 

「え?緑谷くんがどうかしたの?」

 

「ん……ちょっとね……電話するからちょっと待ってもらってもいい……?」

 

「それは全然いいけど……」

 

最初に飛び込んできた男の思考からして、雄英に侵入しようとしていたらしい。

見栄、ヒーローへの憧れと諦め、歴史に名を残すための浅ましい行動。

色々読み取れるし、悪意もごろつきレベルの物は感じる。

つまるところ、個性が厄介そうではあるけど世間に自分の存在を刻み込みたい見栄の塊のヴィランによるくだらない犯罪行為ということか。

タイムアタックとかふざけたことを考えているのもイラっとするけど、それ以上に困るのはタイミングだ。

世間に警鐘を鳴らすみたいな大層なお題目を掲げているみたいだけど、目的はさっきのくだらない物。

そんなことの為に文化祭を中止にされるようなことになるのだけは許容できない。

私だって初めて普通に参加できる文化祭で凄く楽しみにしていたのに、台無しにされたくない。

そう考えて出来ることを考える。

正直私がその場に向かうよりも、警備の先生に向かってもらうのが1番だ。

ほとんどの先生たちが警備に回ってくれているけど、近くにいるのはハウンドドック先生。

あとはハウンドドック先生から少し離れた所に分身のエクトプラズム先生が数人。

本体は出店とかの所で通信機で色々連絡を取っている。

……報告をして理性的な対応をしてくれるのはエクトプラズム先生か。

 

先生たちに知らせるのは即中止になるリスクはあるかもしれない。

でも、ハウンドドック先生が近くにいるならどのみちすぐに見つかってしまう。

後は今も緑谷くんと戦う中で悪意が少しずつ萎んでいっているこのヴィラン次第か。

本当にくだらないと思うし、こんなことで中止にされたくないけど、エクトプラズム先生に既に戦闘になっていることをぼかして電話で報告するのが最良だろう。

先生はスマホの表示で私の名前を確認したらすぐに電話を取ってくれた。

 

『ドウシタ、何カアッタカ?』

 

「先生……揉め事が起きています……緑谷くんが巻き込まれているみたいで……」

 

『何ダト?確カナノカ?場所ハ?』

 

「……ポイントが割り振られてますよね……思い浮かべてもらってもいいですか……?」

 

エクトプラズム先生はすぐに分身体に各々がいるポイントの割り振りを思い浮かべさせ始めた。

 

「ポイントE-4です……対応をお願いしてもいいですか……?」

 

『アア。全テコチラニ任セルヨウニ』

 

先生の思考が『敵意ヲ確認デキ次第、文化祭中止、生徒避難ノ旨通達スル』というものになっているのが怖いけど、実際エクトプラズム先生の分身が向かい始めるころにはハウンドドック先生が動き出していた。

私が連絡してもしなくても結果は変わらなかっただろう。

 

「緑谷くん大丈夫なの?」

 

「ん……多少怪我してるけど……エクトプラズム先生と……ハウンドドック先生が向かってるから……もう大丈夫だと思う……」

 

「大丈夫ならいいんだけど……」

 

透ちゃんは心配そうに呟いている。

私も心配だけど、とりあえず体育館に移動しながら感知を続けた。

 

先生たちが近づいた時には、そのヴィランの思考に残っていたのは一緒にいる女性のことだけだった。

『この戦いはなかったことに、少しでも、罪を軽く』なんて考えている。

緑谷くんを見えない所まで吹き飛ばして何もなかったことにしつつ、自分が自首してその女性の罪も含めて全て被るつもりらしい。

もう彼から悪意は感じなくなっていた。

緑谷くんとの戦闘で、思うところがあったんだろう。

緑谷くんもそれを察して誤魔化して報告してくれた。

エクトプラズム先生もハウンドドック先生も、当然"ちょっと揉めた"なんてものじゃなくて明確な戦闘行為があったことも察している。

それでもヴィランが無抵抗であることと、緑谷くんの想いを汲んだのが合わさって、目を瞑ってくれていた。

 

 

 

私たちが体育館に着くころには9時20分になっていた。

 

「おまたせ……」

 

「ごめんね!遅くなっちゃった!」

 

「ミスコン組は来たか!ったく、緑谷あいつ何してんだ!?」

 

「なぁ波動!緑谷どこにいるか分かるか!?あいつ電話にも出ねぇんだ!」

 

緑谷くんがまだ来ていないことに、皆だいぶ気を揉んでいるようだった。

軽いブーイングすら起きている。

ちょうど先生にも飯田くんから事情を説明されていたようで、「は?緑谷が?」とか結構怖い表情で呟いていた。

エリちゃんも緑谷くんが来ないことに対して不安になってしまっている。

 

「皆……緑谷くんは……ちょっと揉め事に巻き込まれて遅れてるけど……もう解決してこっちに向かってるから……エクトプラズム先生の分身も一緒……ちゃんと間に合う……大丈夫だから……安心して……」

 

私がそう言うと、皆不安そうな顔はしつつも怒りや不満は少し引っ込んだようだった。

不安だし文句を言いたいとは思っているようではあるけど。

 

それからしばらくして緑谷くんも雄英の敷地内に戻って来た。

擦り傷とか土埃で汚れているのもあって、エクトプラズム先生の勧めもあってリカバリーガールの所に寄ってからこっちに来ることにしたらしい。

……保健室に行って、ダッシュで体育館にきて、着替える。

一応間に合うとは思うけど、これは時間ギリギリかな。

皆にもそのことは伝えてスタンバイした状態で待っているように伝えた。

爆豪くんが言葉には出さなくても内心で凄まじいキレ具合なのが怖かったけど、あとで緑谷くん自身でどうにかして欲しい。

流石にあんな罵倒塗れの思考で憤怒に染まった爆豪くんに自分から話しかけたくない。

そう思いながら、皆で緞帳が閉じたままのステージで配置についた。

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