波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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垂れ流せ!文化祭!

開幕の1分前になって、ようやく緑谷くんがステージ裏にやってきた。

本当にギリギリだ。波動が見えている私でもハラハラしたんだから、皆なんてもっと不安だっただろう。

緑谷くんもステージに並んだことで、全員が揃った。

 

ダンス隊、バンド隊はそれぞれの衣装を着てステージに立っている。

私たちダンス隊は色は黄色で統一されているけど、男女で形が違う。

男子はタキシード風で短めのネクタイの衣装。飾りでダブルボタンが付いている感じの衣装だ。

女子はズボンをミニスカートに変えて、さらに上の丈を少し短くしてへそ出しになっている衣装だ。

飾りとかは同じ感じなんだけど、露出が増えていてちょっと恥ずかしい。

バンド隊と演出隊はすごくシンプルな感じだ。制服のズボンやスカートに、A BANDと胸元に大きくプリントされているTシャツを合わせている。

そんな統一感のある衣装を着て、ダンス隊皆で左手を上げて待機していた。

 

10時になった瞬間、ブーというブザーがなって幕が開き始めた。

それと同時に観客の人たちが俄にざわめき出した。

 

「お」

 

「始まるぞ」

 

「1年ガンバレー!」

 

「ヤオヨロズー!」

 

「どんなもんだあ!?1年ー!」

 

観客は9割は純粋に興味を持って見に来てくれた人、1割が批判ありきで見定めに来ている人だ。

正直後者の人たちは結構不愉快な感情を向けてきている。

相澤先生とパトロールを抜け出してきたマイク先生が今話している通り、最近の雄英に対する不満を全て私たちに責任転嫁して考えている人たちだ。

それによる憎悪とか怒り、恨みとかを向けられているせいもあって、すごく嫌悪感を感じる人たち。

だけど、ここに来ている人たちはマシな方ではある。

ここに来ている人たちは、まだ見定めようとする思考が見られる。

もちろん酷いものとか要求に満たないものしか見せられなかった時には完全に見限られるけど、それでもまだ改心の可能性がある人たちだ。

もっと酷いのはここにも来ないでただひたすら文句を垂れる思い込みが激しい上に捻くれた人。

少ないながらもそういう人もいる。敷地内で不愉快な波動を垂れ流しているから近寄りたくもない醜悪な人って感じでしかないけど。

まあそれはそれとして、とりあえずここに来ている人は不愉快な人もいるけど、不愉快な人でも改心の可能性がある思考をしているのだ。

出来る限りのパフォーマンスを見せる価値はある。

 

 

 

「いくぞコラァアア!!」

 

爆豪くんのその怒鳴り声と、同時に背後で巻き起こされた大爆発によってバンド隊の演奏が始まった。

度肝を抜くような爆音の直後に、ステージから重く響くような演奏が続く。

批判的な目で見てた人の思考も驚愕に包まれている。掴みはバッチリだ。

 

「よろしくおねがいしまぁす!!!」

 

音楽が始まるのに合わせてダンス隊はステップを始めている。

響香ちゃんが『Hero too』という英語の歌詞の曲を流暢に歌い始める。

サビに入ったあたりでジャンプも織り交ぜたダンスになる。

そのまま少し踊ったところでミラーボール青山くんと運搬係緑谷くんの見せ場だ。

他の皆で2人の方に視線を集めるように腕を向ける。

ステージの中央に集まった2人は、2人並んでダンスを始めた。

 

「息ピッタリ!緑谷とレーザーだ!」

 

「見せ場!!」

 

「行くよ!」

 

「ウィ☆」

 

観客もこれから何が起こるのかと期待しながら2人を見ている。

青山くんと緑谷くんは、お互いに声を掛け合ってから息を合わせて動き出した。

青山くんを掴んだ緑谷くんが、青山くんを空中に思いっきりぶん投げる。

その頂点に到達した辺りで青山くんは回転しながら"ネビルビュッフェレーザー"を放った。

暗闇の中で四方八方に放たれる小刻みなレーザーはさながら花火のような輝きで空中を灯した。

 

「レーザーだ!」

 

「人間花火かよ!」

 

そのまま落下してきた青山くんを尾白くんが回収して、青山くんと緑谷くんは舞台袖に引っ込んだ。

 

次は峰田くん待望のハーレムパートだ。

青山くんが空中にいて観客の視線が空に釘付けになっている間にステージ中央あたりに集まっておいたダンス隊女子陣は縦一列に並んだ。

正面から見て手が重ならないよう同時に手を広げて、サッと左右に分散して5人で峰田くんを囲む。

そのまま峰田くんを崇めるように下から上に手を上げていって、峰田くんに視線を集める。

その段階で峰田くんが振り向いて、凄まじいニヤけたドヤ顔を披露した。

うん、峰田くん、楽しそうだ。

こんなことでご機嫌になって嬉しそうにしてるならそれはそれでいいか。お祭りだし。

まあ峰田くんのドヤ顔が披露された瞬間に観客からは凄まじいブーイングが響き渡ったんだけど。

 

そのまま2番のサビに入ったところで、轟くんが空中に氷の道を張り巡らせた。

同時に百ちゃんがキーボードを弾きながら空中に大量のクラッカーを発射している。

緑谷くんは青山くんが行き渡るように天井近くの鉄骨の上を走り回っていた。

 

私たち女子も峰田くんの周りを回りながら踊っていたハーレムパートを締める。

そこで女子は再び分かれて行動を始めた。

ステージ右の道の方に梅雨ちゃんとお茶子ちゃん、左の道に私と透ちゃん、ステージ中央に三奈ちゃんが残る感じだ。

 

「透ちゃん……!」

 

「うん!全力で光っちゃうよ!」

 

私は身体強化を掛けつつ透ちゃんを背負って目を閉じる。

足に波動を可視化するように纏わせて、氷の上を走り出した。

透ちゃんは私の背中に乗って盛大に虹色に光っているはずだ。

サバイバル訓練でゲーミング葉隠って言われていた珍妙な技だ。

変ではあるけど目を引く光り方ではあるから、こういう時には役に立つ。

 

「楽しみたい方ぁあ!!ハイタッチー!!」

 

反対側の道では梅雨ちゃんが無重力になったお茶子ちゃんを舌で持って氷を駆け上っている。

お茶子ちゃんは空中を浮かんで観客の人達に次々とタッチして空に飛ばし始めた。

それを見た障子くんが、ステージ中央に残っていた尾白くんや三奈ちゃんたちを中央の空中に出来上がっている氷の足場に向けて放り投げた。

三奈ちゃんたちは足場に着地すると速やかに動き出して、そのままテープで空中に浮かんでいる観客の安全確保をし始めた。

 

次は私と透ちゃんの見せ場だ。

ちょうど対岸に梅雨ちゃんが来ていることを確認する。

それを確認したら背負っていた透ちゃんを下ろして、空中に浮かんでいるお茶子ちゃんに狙いを定める。

 

「行くよ……!」

 

「うん!!」

 

私は透ちゃんの手を掴んで一回転して勢いをつけたら、身体強化で無理矢理上げた腕力に任せて透ちゃんをお茶子ちゃんに向けて放り投げた。

ちょうど体育館の中央辺りで、透ちゃんとお茶子ちゃんがハイタッチした。

その瞬間、透ちゃんはステージ中央に浮かんだ状態になった。

そのまま一際強い凄まじい虹色の輝きを透ちゃんが放った。

暗かった体育館を虹色の輝きが塗りつぶす。

 

「なんだよこの虹色の光!」

 

「すげぇな目がいてぇ!」

 

透ちゃんの発光によるゲーミングライトの評判はばっちりだ。

わざわざこのためにスカートの裏地を光を反射する素材にしてもらった甲斐がある。

それを聞きながら私は手に波動を纏わせつつ、四肢にも波動を圧縮していく。

圧縮が終わったところで目を閉じたまま透ちゃんの方に跳ね上がった。

 

「透ちゃん……!」

 

「瑠璃ちゃん!」

 

空中でお互いに手を伸ばして透ちゃんをキャッチしてそのまま肩に掴まっておいてもらう。

それを確認次第落下する前に手の波動を噴出することで中央の大きな氷の足場に向かって跳び上がる。

氷のステージに着地して、先に飛ばされてきている三奈ちゃんに置いておいてもらったテープで透ちゃんが飛んで行かないようにしてしまう。

それを確認したところで透ちゃんは再び虹色に輝き出した。

 

その後は中央ステージに残ってロボットダンスをし続けていた飯田くん以外のダンス班全員で、氷のステージの上でダンスを続けた。

それから少ししてダンスの終了と同時に演奏も終わった。

それに合わせて、観客からは割れんばかりの歓声が響いた。

もう不愉快な感情を向けてきている人は体育館の中にはいなかった。

エリちゃんも興奮していて弾ける笑顔を浮かべていた。

通形さんなんかその様子を見て嬉し涙を滲ませていた。

 

それからしばらく拍手と歓声は鳴りやまなかった。

ステージは大成功だった。

 

 

 

閉幕と同時に、A組の皆は大急ぎで片付けを始めた。

次のステージがB組の演劇だから、散らかしたものを綺麗さっぱり片付けないといけないのだ。

散らかしたものは正直考えたくもない程の量と種類がある。

楽器とかは当然のことながら、空中に作り出した氷の道やステージ、演出でばら撒いたテープや紙吹雪、とにかくすごい量だった。

これを10時開演の演劇の準備の邪魔にならないように片付けなければいけないのだ。

時間のこともあるし、氷が溶けるとさらに面倒くさいことになる。とにかく大急ぎでやらなければ間に合わない。

そんな状況だから、皆はそのために散り散りになって急ピッチで片付けを行っているのだ。

 

一方で、私と透ちゃんは片付けには参加しないで移動の準備をしていた。

ミスコンの段取りの確認とリハーサルの時間が迫っているのだ。

着替えのことも考えるともうあんまり余裕はない。

 

「皆!ごめんね!」

 

「じゃあ……ミスコンの方に行ってくるから……!」

 

「気にすんな!」

 

「本番は見に行くからなー!」

 

「頑張ってきてねー!」

 

走りながら皆に声をかけると、皆は朗らかに声援を送ってくれた。

皆の声援を背に、走ってミスコンの控室に向かい始める。

頑張りはするけど、お姉ちゃんがいる以上勝ち目がないのがなんとも言えないところではあるけど。

皆も私が優勝する気がないのは分かった上で応援してくれているから、まあそれはいい。

実際布教にステージを利用したいという思いがまだあるのも事実ではある。

だけどエリちゃんがワクワクしながらステージを楽しみにしている思考も読めてしまっているし、お姉ちゃんから真剣勝負と言われてもいる。

だからエリちゃんが楽しめるような出し物が出来るように、ミスコンの出し物では全力でやる。

布教はステージが終わるまで我慢だ。

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