波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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ミスコン

色々あったけどミスコンは問題なく始まった。

今は最初の方の順番の人達が出し物をしているところだ。

順番自体は去年のグランプリの絢爛崎さんと準グランプリのお姉ちゃん以外でくじ引きで決めた。

絢爛崎さんとお姉ちゃんは2人でくじ引きをしている。2人は最後の2人になるように調整しているみたいだった。

まあ絢爛崎さんを最初の方に持ってこられると、そのインパクトで他の参加者が印象に残らなくなる可能性があるから仕方ない措置なのかもしれない。

絢爛崎さんをトリで固定するのも……ということで準グランプリのお姉ちゃんも巻き込んで2人でくじ引きをすることにしたみたいだった。

 

くじ引きの結果決まった順番は、知らない参加者の人たち5人が最初から順番に並んでいて、その後は拳藤さん、私、絢爛崎さん、お姉ちゃんの順番だ。

お姉ちゃんがトリになったようだ。

これは本当に有終の美を飾ることになってくれそうだ。

 

準備も終わってもう本番ということで、透ちゃんや柳さん、甲矢さんを含めたサポートしてくれた人たちは全員客席の方に移動している。

裏に残ってもいいみたいだけど、皆ちゃんと出し物を見たいらしい。

 

出し物は順調に進んで、今は拳藤さんの番になっている。

会場の方からは「ケンドー!」とか「シュシュっと一吹きケンドー!!」とかいうヤジが聞こえる。

百ちゃんもライブで「ヤオヨロズー!」って言われてたけど、やっぱりCMによる知名度効果は結構大きいらしい。

拳藤さんは綺麗なドレスのスカートを裂いて人為的にスリットを作って演武を行っていた。

大量に並べられている大きな板を素手で砕いている。

手が大きくなってないから"大拳"の個性も使ってないと思うし、あれは素の武術の実力なんだろう。

素直にすごいと思った。

というか物間くん普段あんなに凄まじいチョップを食らってるのに平然としてるのか。物間くんも凄いな。

 

『華麗なドレスを裂いての演武!!強さと美しさの共存!素晴らしいパフォーマンスです!!』

 

拳藤さんのパフォーマンスは特に失敗もなく無事に終わったようだ。

これから割った板の片付けをしたら私の番だ。

 

 

 

目を閉じたままランウェイをゆっくり歩いてセンターステージに向かう。

結構な人数の観客がいて、皆の視線が私に集中している。

舞台袖でお姉ちゃんも見てるし、A組の皆も固まって見ている。

通形さんとエリちゃんもA組の近くにいるようだ。

エリちゃんがワクワクした感じで期待を滲ませている。

その様子を見るとちょっと緊張してしまう。期待に応えられるように頑張らないといけない。

あとはミルコさんのファンだと思われる生徒からの期待の思考はちらほら見られる。

まあこの人たちはミルコさんのファンであって私のファンではないから、拳藤さんのやつとはちょっと違う感じだ。

その一方で、やっぱり私に対しては嫌悪感みたいな感情を向けてくる人がいる。

ライブの時と同じだ。結局色々な影響を全部私たちのせいにしたがる人はいる。こんな不愉快な人は無視一択だけど。

とりあえず不愉快な波動の人は無視して、お姉ちゃんとエリちゃんのために頑張ろう。

 

ステージの中央に着いたところで目を開けて、深々と一礼する。

一拍置いて頭を上げる。

そのままゆっくりと火を灯すような感じで、両手に可視化した波動を纏わせていく。

観客がちょっと騒めいたのが分かる。こんなところで気にしていても仕方ないからどんどん進めていく。

波動を纏った手を動かして演武を始める。

舞うようにゆっくりと身体を動かしていく。

片足を上げる感じで構えてから、片手を上げながらもう片手を正面にかざしたりといった、尾白くんや透ちゃんと一緒に考えた手の波動の見栄えがいいほぼオリジナルの型のような動きをしてアピールする。

徐々に速度上げつつ、尾白くん指導のもと磨いた動きをさらに意識してキレを良くしていく。

その段階に入ったところで、手を突き出すタイミングに合わせて発勁を繰り出して可視化された波動を纏った衝撃波を見せつける。

ここからはどんどん動く範囲を広げていく。

足に波動を圧縮して即座に噴出して軽く跳び上がる。

手からも圧縮、噴出させてステージの上を移動する。

それを繰り返しながら発勁、真空波で可視化した波動の衝撃波を織り交ぜて、魅せることを意識しながら動き続ける。

少しずつ跳ね上がる高さを上げながら縦横無尽にステージを跳び回って型を披露していく。

結構集中していることもあって、周囲の雑音は聞こえなくなってきていた。

分かることは、エリちゃんがキラキラした笑顔でこっちを見てくれていることとか、A組の皆やお姉ちゃんが楽しそうに見てくれていることくらいだ。

 

そんな感じで演武を続けてそろそろクライマックスだ。

ステージの中央から少しランウェイ寄りの位置に着地したところで、今日一番の量の波動を足に圧縮していく。

そのまま足に可視化した波動を纏わせながら、一際高く跳び上がった。

散々練習した波動蹴のルーチンをして、頂点の辺りで回転をかける。

そのままつま先から波動を噴出して、足を振り下ろしつつ落下に加速をかけた。

地面に近づいてきたところで足に纏わせている波動を意図的に増やして、見えている波動をさらに大きくする。

落下の勢いに沿って凄まじい速さで揺らめく波動が地面に接触する直前で、踵から波動を噴出した。

 

「……波動蹴っ……!!」

 

足に纏わせていた波動は噴出の衝撃波と落下の勢いで、爆発するように広がりながら霧散した。

そのまま姿勢を直立に戻して、ゆっくりと両手を合わせる。

そのタイミングで手に纏わせていた波動を、内側から波動が散るように霧散させて一礼した。

 

それと同時に、観客から歓声と拍手が沸き上がった。

 

『またもや強さと美しさを共存させた演武!!荒々しくも美しい揺らめき!!こちらも素晴らしいパフォーマンスでした!』

 

司会の人が言い終わるのに合わせて頭を上げる。

エリちゃんが笑顔でこっちを見ていた。もうすっかり自然な笑顔を浮かべることが出来ている。

私の演技でエリちゃんが笑顔になっていることに確かな満足感を感じつつ、ランウェイを歩いて舞台を後にした。

 

 

 

舞台裏に入ると、ニコニコしたお姉ちゃんが待っていてくれた。

私の演武をしっかり全部見てくれていたようだった。

 

「お疲れ様。すごくよかったよ」

 

「ありがと……」

 

「私も負けてられないね。よーし、頑張っちゃうよー!」

 

「ん……お姉ちゃんの出し物……私も楽しみ……頑張ってね……」

 

「うん!ありがとー!」

 

お姉ちゃんに褒められた。すごく嬉しい。

もう後はお姉ちゃんの出し物を見るだけだ。

私もお姉ちゃんの集中の邪魔をしないように、話すのもそこそこにステージが見えるところへ移動した。

 

出し物はすぐに次に移ってるんだけど、待機している絢爛崎さんから『地味!!何も分かっていないようですね!!その程度でこの私と張り合おうなんて!!』なんていう思考が伝わってきた。

確かに絢爛崎さんに比べると地味ではあるけど、そこまで地味だとは私は思わないんだけど。

結構派手になるように波動を纏わせて頑張っていたし。

……でも確かにあの顔面装甲車に比べると地味か。何も言い返せなかった。

 

「絢爛豪華こそが美の終着点!!」

 

『3年サポート科ミスコン女王!!高い技術で顔面力をアピール!!圧巻のパフォーマンス!!』

 

絢爛崎さんの装甲車を見た観客は、どよめきと衝撃に包まれていた。

エリちゃんなんてかわいそうなことに『これは何する出しもの?』なんて困惑してしまっている。

なんてことをしてくれるのか。

しかも装甲車が変形までしてさらに困惑させちゃってるし。

絢爛崎さんの出し物自体はそんなに長くなくて、すぐに装甲車ごと引っ込んでいった。

 

 

 

出し物は最後のお姉ちゃんの順番になった。

大丈夫。お姉ちゃんの可愛らしさを引き立ててくれるあのドレスで練習していた出し物をするなら、絢爛崎さんの豪華絢爛さなんかには負けない。

そう確信しながら、お姉ちゃんを見守る。

 

お姉ちゃんはステージの中央まで進むと、ゆっくりと飛び上がった。

私みたいな勢いに任せたジャンプじゃない。優雅に、穏やかに、浮かび上がった。

お姉ちゃんはそのまま空を舞いながらゆっくりと飛び回った。

 

「お姉ちゃん……きれい……」

 

その姿は神々しさすらあって、妖精や天使、女神と言っても過言ではなかった。

言葉では表現しきれない程幻想的で、優雅で、キラキラ輝いているお姉ちゃんの姿に、感動してただ見ていることしか出来なかった。

こんなに輝いている人はお姉ちゃん以外この世にいないと思えるほど、美しい空の舞だった。

お姉ちゃんが舞を終えてステージに降り立つと、周囲からは私や絢爛崎さんなんか比じゃないくらいの喝采と歓声が響き渡った。

これが私のお姉ちゃん。こんなに綺麗で、可愛くて、人々の称賛を一身に受ける素晴らしい人が、私のお姉ちゃん。

その事実がただただ誇らしかった。

 

『幻想的な空の舞!引き込まれました!』

 

 

 

お姉ちゃんの出し物が終わって、全員の出し物が終わった。

今は『投票はこちらへ!!結果発表は夕方5時!!締めのイベントです!!』なんてアナウンスがされている。

……さて、そろそろやるか。

そう思って私が動き出そうとした時、嫌な波動を感じた。

物間くんだ。

 

「B組拳藤!拳藤B組に清き複数票を!!」

 

なんてことだ。出遅れてしまった。

お姉ちゃんから真剣勝負と言われていたからミスコンのプログラム中はやらなかったのが仇になったか。

私も早くやらないといけない。

そう思ってステージの中央まで走り出した。

物間くんの隣まで来た私はさっそく行動を始めた。

 

「物間くん静かにしてて……!」

 

「なんだい波動!?まさかB組の勝利を邪魔するつもりか!?」

 

「邪魔なんてしない……!優勝するのはお姉ちゃんなんだから……!!皆さん……!!お姉ちゃんに清き一票を……!!可愛くて可憐で無邪気で、妖精、いや天使、いや女神のようなお姉ちゃんこそ雄英一の美女なんです……!!」

 

透ちゃんがあちゃーって顔をしているけど、なんでそんな顔をしているのかが謎だ。

それに物間くんに出し抜かれるなんて不覚も不覚。

可能な限りお姉ちゃんの布教をしなければいけないのだ。

 

「なんだ波動!!やっぱり邪魔するつもりなんじゃないか!!このっ……!!B組拳藤!!B組拳藤に清き複数票を!!」

 

「お姉ちゃん!!3年A組波動ねじれに清き一票を!!お姉ちゃんはそれはもう無邪気で可愛くて―――」

 

私はお姉ちゃんの魅力や良いところをとにかく熱弁し続けた。

でも、お姉ちゃんの魅力を語る時間はそう長く続かなかった。

 

「何やってんだ」

 

「瑠璃ちゃんストップ!!」

 

拳藤さんが物間くんの首にチョップするのと、透ちゃんが私の口を塞ぐのはほぼ同時だった。

こんなところに伏兵がいたとは。

お姉ちゃんが舞台裏で甲矢さんと話している隙を突いたのに、まさか透ちゃんに裏切られるなんて。

私が抗議するようにもがいていると、透ちゃんが諭すように話しかけてきた。

 

「ねじれ先輩の空の舞、すごく良かったでしょ?きっと大丈夫だから、ね?」

 

ここでようやく透ちゃんは私の口から手を離してくれた。

 

「……優勝間違いなしだけど……念には念を入れておかないと……」

 

「大丈夫だから。それにこんなことしてると、優勝出来てもいちゃもん付けられるかもしれないよ?」

 

……透ちゃんの言うことにも一理あるか。

確かにお姉ちゃんの優勝に反論の余地を残さないためにもここでこれ以上の布教は慎むべきか。

私が大人しくし始めたのを見て察したらしい透ちゃんも解放してくれた。

だけど代わりに腕を掴まれて、一緒にステージの下に連れて行かれた。

物間くんは拳藤さんに引きずられていっている。

 

まあ透ちゃんの言う通り、お姉ちゃんの演技は素晴らしかったから私が余計なことをしなくてもお姉ちゃんは優勝するだろう。

そう思って今回の布教はここまでにしておくことにした。

これから透ちゃんと一緒に文化祭も回らないといけないし。あとは文化祭を楽しむことに集中しよう。

 

それにしてもなんで通形さんはエリちゃんの目と耳を塞いでいるんだろう。謎だ。

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