波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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少女引っ越しとビルボードチャート

文化祭も終わって少し経ち、11月も下旬に差し掛かったころ。

ついにエリちゃんが教師寮にやってきた。

それに合わせて緑谷くん、切島くん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃん、私の5人は教師寮に呼ばれている。エリちゃんとの顔合わせが目的なのは明白だ。

先生に指定された時間に教師寮に向かうと、教師寮の中にはお姉ちゃんたちビッグスリーとエリちゃん、相澤先生が待っているようだった。

 

「先生なんの用事やろうな?」

 

「この5人ってことは、インターン関連かしら」

 

「……教師寮に入れば……すぐに分かるよ……」

 

用事を気にしている感じだった皆も、私がそう伝えたら悪い内容ではないということを察したようだった。

それからすぐに教師寮にもついて、緑谷くんが寮のドアを開ける。

その先にはソファーに座ったエリちゃんの髪を結ってあげているお姉ちゃんの姿があった。

流石お姉ちゃん。溢れんばかりの優しさと母性が滲み出ていて、その姿はさながら地母神のようだ。

 

「雄英で預かることになった」

 

「近いうちにまた会えるどころか!!」

 

先生の端的な説明に、緑谷くんが驚愕の声を上げた。

 

「どういった経緯で……!?」

 

「いつまでも病院ってわけにはいかないからな」

 

「わーエリちゃんやったー」

 

「私妹を思い出しちゃうわ。よろしくね」

 

「待ってたよ……よろしくね……」

 

「よろしくお願いします」

 

先生が緑谷くんの疑問に答える一方で、私たち女子3人はエリちゃんと挨拶を交わしていた。

それからしばらくの間話していたけど、相澤先生と通形さんが入口の方でちょいちょいし出した。

どうやらエリちゃんのことを説明するつもりらしい。

 

「先生……話は分かったので……終わるまでこっちにいていいですか……?」

 

「……好きにしろ」

 

私の確認に先生は目を伏せながら了承してくれた。

緑谷くんたちは先生の誘導に従って一度外に出て行った。

まあ話の内容は、エリちゃんが親に捨てられたこと、組長が意識不明のままで寄る辺がないこと、個性の放出口の角が少しずつ伸びてきていること、それもあって引き取り先が相澤先生がいる雄英になったこととかだ。

寮の部屋を整えたり、それ以外の手続きも含めた諸々の準備をしていた相澤先生の今までの思考から読めていた既知の情報しかなかった。

どうやら私たち1年生にはお客様が来るとかで、この後寮に戻るように指示されるみたいだけど、それまでお姉ちゃんも交えてエリちゃんとお話ししておきたかったのだ。

 

「おねえさんは、ルリさんのおねえさん?」

 

「うん、そうだよー」

 

「ん……私の自慢のお姉ちゃん……」

 

「そうなんだ」

 

思考的に、多分姉妹とかが羨ましい感じだろうか。

 

「さっきエリちゃんにしてあげたみたいに、瑠璃ちゃんの髪も結ってあげたりしてたんだよ?」

 

「そうなの?」

 

「ん……だけど……私は髪……そんなに長くないから……エリちゃん程弄れないけど……」

 

「エリちゃんは髪長いからいっぱいアレンジできるよね。もうちょっと弄ってみよっか」

 

話の流れがヘアアレンジのことになっちゃったせいもあるけど、お姉ちゃんはまたエリちゃんの髪を弄り出した。

エリちゃんは嬉しそうな顔でされるがままになっている。

……これは、髪を弄られて嬉しいというよりも、私が昔してもらっていたことを自分にもしてもらえていることが嬉しいとか、そういう感じっぽい。

まあでもなんだかんだでエリちゃんは笑っているし、ちゃんと笑顔を浮かべてくれるようになってくれていて嬉しくなった。

お姉ちゃんはなんていうか、エリちゃんを昔の私に少し重ねているなっていうのは分かった。接し方が小さい頃の私に対してのものほぼそのまんまだったし。

しばらくエリちゃんとお姉ちゃんと3人で話していたけど、緑谷くんたちがエリちゃんに挨拶しに戻って来てお開きとなった。

来客があるってことだし、私も緑谷くんたちと一緒に寮に戻った。

 

 

 

「へっちょい!!」

 

寮に戻ってのんびりしていると、唐突に常闇くんがくしゃみをした。

 

「風邪?大丈夫?」

 

「いや……!息災!我が粘膜が仕事をしたまで」

 

「なにそれ」

 

「まぁ……間違ってはいないけど……」

 

粘膜が仕事をしたって、間違ってはいないけどなんでそんな分かりづらい言い方をするんだろうか。

私がそんな風に考えていると、上鳴くんが茶化すように常闇くんに声をかけた。

 

「噂されてんじゃね!?ファン出来たんじゃね!?ヤオヨロズ―!みたいな」

 

「茶化さないでくださいまし。有難いことです!」

 

巻き込まれた百ちゃんが恥ずかしそうに抗議した。

……それにしても透ちゃんはさっきから走り回って何をしているんだろう。

三奈ちゃんと鬼ごっこでもしているんだろうか。謎だ。

まあそれはそれとして、上鳴くんの茶化すような指摘を受けてお茶子ちゃんが口を開いた。

 

「常闇くんにはとっくにおるんやない?だってあの"ホークス"のとこインターン行っとったんやし」

 

「いいや、ないだろうな。あそこは早すぎるから」

 

常闇くんがなんとも言えない表情で否定した。

そんな常闇くんを見ながら、さっきまで走り回っていた透ちゃんが一転して口を挟んできた。

……あれで聞いてたんだ、会話。

 

「ファンと言えば、瑠璃ちゃんもファンとか出来てそうじゃない?なんて言ってもあの"ミルコ"の所でインターンしてたんだし」

 

「……一応……サインを求められたりしたけど……あれは私のファンじゃなくて……ミルコさんのファン……ミルコさんのサイドキックのサインが……欲しいだけ……」

 

私が答えると、透ちゃんがちょっと残念そうな顔をして口を開こうとしたけど、そのタイミングで寮の扉が開いた。

 

「あ!!来たぞ皆!お出迎えだ!!」

 

飯田くんが扉が開いたことに反応して声を張り上げる。

その扉からは、見覚えのある4つの波動が飛び込んできた。

 

「煌めく眼でロックオン!」

 

「猫の手手助けやってくる!」

 

「どこからともなくやってくる」

 

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ」」」」

 

例のポーズを私服でビシッと決めたワイプシの4人が現れた。

虎さんはお土産のお饅頭まで持っている。

三奈ちゃんが早々に受け取っている。

 

「あん時ぁ守り切ってやれずすまなんだ」

 

「ほじくり返すんじゃねぇ」

 

「ウチら大丈夫っすよ。ね」

 

謝罪する虎さんに、響香ちゃんが皆にも確認してくる。

でも響香ちゃんが振り返った先の女子は今肉球まんじゅうに夢中だ。多分もう話を聞いてない。

 

「にくきゅーまんじゅー」

 

「にくきゅーまんじゅー!」

 

三奈ちゃん、お茶子ちゃんが肉球まんじゅうに手を上げて喜び、透ちゃんまで同じような感じになっている。

まさかの透ちゃんまであっち側である。

その後は洸汰くんのこととかに話題が移っていて、お茶子ちゃんたちがソファとか机の準備をし始めた。

なら私は今キッチンの方に向かった砂藤くんと一緒に紅茶を淹れるか。

そう思って私もキッチンの方に移動する。

 

「私も……手伝う……」

 

「おう、ありがとな」

 

もうお湯自体は沸かし始めていたようで、カップを温めたりするのをササッと手伝ってしまう。

紅茶自体はすぐに淹れ終わって、共有スペースの方に戻る。

その頃には洸汰くんとの話も一段落していたようで、砂藤くんもワイプシに声をかけた。

 

「しかしまた何で雄英に?」

 

「復帰のご挨拶に来たのよ」

 

「復帰!!?おめでとうございます!!」

 

復帰の挨拶。

AFOが個性を返すとは思えないし、仮に返すつもりがあってもタルタロスにいる状況で個性は使えないから返せない。

つまり、ラグドールの個性なしで復帰するのか。

 

「ラグドール戻ったんですか!?"個性"を奪われての活動見合わせだったんじゃ……」

 

「……緑谷くん……ラグドールさん……個性戻ってない……タルタロスにいるヴィランから……個性を使った個性返却なんて……してもらえるわけない……」

 

「そ、戻ってないよ!アチキは事務仕事で3人をサポートしていくの!ОLキャッツ!」

 

「波動さんが言ってくれた通りよ。タルタロスから報告は頂いてる。返したいのは山々だけど、"個性"を使わなきゃいけない。それでも良ければすぐにでもなんて言ってるらしい。どんな、どれだけの"個性"を内に秘めているか未だ追及している状況。現状何もさせない事が奴を抑える唯一の方法らしくてね」

 

ラグドールさんとピクシーボブさんがそう説明してくれる。

タルタロス側としても、それを受けようとするヒーロー側としても、AFOの個性使用は許容できない。

返してもらえないのも、仕方ないか。

ラグドールさんにはもっと感知のこととか教えてもらいたかったんだけど……

 

「……ではなぜこのタイミングで復帰を?」

 

「今度発表されるんだけど、ヒーロービルボードチャートJP下半期、私たち411位だったんだ」

 

「前回は32位でした」

 

「なるほど、急落したからか!!ファイトっす!!」

 

「違うにゃん!!全く活動してなかったにも拘わらず3桁ってどゆ事ってこと!!」

 

確かにその通りだ。下半期活動休止していて一切事件解決や山岳救助をしていないワイプシが、3桁順位がつくのがそもそもおかしい。

つまり、支持率が高かったって事なんだろう。

 

「支持率の項目が我々突出していた」

 

「待ってくれてる人がいる」

 

「立ち止まってなんかいられにゃい!!」

 

「そういうことかよ!!漢だ、ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」

 

やっぱりそういうことみたいだ。

切島くんなんてその返答を聞いて泣き叫んでいた。

 

その後は少しの間話したりしたけど、B組の方にも行くと言ってワイプシはそんなに長居せずに去っていった。

ラグドールさんとも少し話せたけど、あそこまで感知についてしっかりと教えてもらえたのは初めてだったからやっぱり残念な気がしてしまう。

多分コツとか自体は聞けば教えてくれるだろうけど、指導となると個性を奪われたままだと難しいだろう。

私が少ししょんぼりしていたらラグドールさんは「気にしないの!」なんて言って流していたけど、むしろ一切気にしないような素振りを見せているラグドールさんが凄いと思う。

個性を奪われて事務でしかサポートできないこと、少し気にしているみたいだったのに。

 

 

 

その翌日、ヒーロービルボードチャートJP下半期の結果が発表された。

皆でテレビを見ていたけど、結構盛り上がった。

トップ10のヒーローたちが意気込みを語っていたけど、私たちと関わりがあるヒーローは結構多い。

A組と関わりがあったトップランクヒーローは、10位のリューキュウ、5位のミルコさん、3位のベストジーニスト、2位のホークス、1位のエンデヴァーって感じだろうか。

こう考えるとトップ10の内半分のヒーローの所に職場体験やインターンで誰かしらがお世話になっている感じだ。結構凄いことだと思う。

一言コメントもリューキュウは無難、ミルコさんはいつも通り、ベストジーニストはそもそも欠席、ホークスはミルコさん以上に生意気な感じだった。

ミルコさんが「いいぞ、生意気だ!」なんて私に言っていたのと全く同じことを言っていたくらいだし。

エンデヴァーは一応、「俺を見ていてくれ」なんて言って観客はその雰囲気に息を呑んでいた。

 

まあそれはいい。実際皆もかっこいいね!なんて反応を示していたくらいだ。

一方で轟くんはと言うと、小さく呟くように同意は示してそれ以上の反応はしていなかった。

ただ、轟くんの思考から内情を察している私としては不安しかない。

今のテレビの感じのまま、全てを隠しきってくれるならいいだろうけど、もし仮にエンデヴァーの醜悪な内面が知れ渡ったら面倒なことになりそうだ。

タブー視されている個性婚、それに傾倒した結果の特訓と言う名の虐待。

轟くんの以前の思考から家事はお姉さんがしているみたいだけど、母親は結構前から入院しているような思考をしていることもあったし、それと合わせるとネグレクトすら追加される可能性もある。

これらが明るみに出た時の騒動なんて考えたくもない。

今は轟くんに過干渉なくらいで虐待とかはしてないみたいだし、これ以上余計なことをせずに隠し続けてくれることを祈ることしかできなかった。

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