波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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全員出動

エンデヴァーが辛勝した翌日、教室ではその話題で持ちきりになっていた。

 

「最後は、勝利とガッツのスタンディング……!くぅう、男だぜ……!」

 

「流石ナンバーワンだよね!」

 

「ホークスもすごかったよ!」

 

「イケメンだし!」

 

「早すぎる男の異名は伊達じゃねぇよなあ!」

 

皆エンデヴァーとホークスを褒めたたえている。

まあ実際それだけ凄いことをしてくれている。新ナンバーワンとして相応の姿を見せてくれた。

後は過去のことを隠し通してくれることを期待するだけか。

それにしても、透ちゃんはあの2人の姿を見た感想がそれなのか。

相変わらずだなぁと思って苦笑いしていると、教室の扉が開いて轟くんが入って来た。

緑谷くんがすぐに声をかけに行く。

 

「轟くん、エンデヴァーの容態は……?」

 

「ああ、命に別状はないそうだ」

 

「自慢の父ちゃんだな!轟!」

 

峰田くんのその言葉は轟くんの複雑な心境にクリティカルヒットしている。

一応憎悪とかの感情は今はないけど、複雑なのは変わらないみたいだ。

 

「ああ。そうだな」

 

轟くんは静かにそう呟くと、自分の席に向かい出した。

そんな轟くんがちょっと心配になって、声をかける。

 

「……大丈夫……?」

 

「……ああ。問題ない」

 

「……そっか……」

 

轟くんは少し詰まったけど素っ気ない返答を返してきた。

嘘は吐いてなさそうだし、本人がいいならいいか。

そう思っていたら、相澤先生が教室に近づいてきた。すぐさま席についてしまう。

それから1分も経たずに相澤先生が扉を開けて入って来た。

もう皆席に座って待っている状態だ。

 

「おい!チャイムはとっくに……よし。いつまでも浮かれてないで、少しは自覚しろ。仮免許とはいえ、お前らはもう公にヒーロー活動が出来る資格と責任を与えられている。そのことを忘れるな。とはいえ2名程、仮免講習を補習中のものもいるが。今後授業もギアを一段上げていくから、そのつもりでいろ。さて、今日のホームルームは……」

 

先生がそこまで話したところで、教室に謎の警報が鳴り響いた。

……こんなシステムあったのかこの教室。

警報は出動要請とか言っているけど、仮免をもってない生徒もいるクラス単位に出るような指示ではない。まあでも訓練だしそんなものなんだろうか。

 

「ヒーロー科1年A組、出動だ!」

 

すぐに意図を読み取った飯田くんが、皆に指示を出した。

皆も特に拒否することなく大急ぎで移動を開始した。

 

 

 

「グラウンド・βにヴィランが侵入。現在判明している情報はそれだけだ。訓練であろうとも、俺たちは全力でこの任務にあたり、遂行する」

 

「まずは状況の把握からですわ。偵察班の皆さん、お願いします!」

 

飯田くんと百ちゃんの声掛けに、私と口田くん、障子くん、響香ちゃんが前に出た。

私がいきなり全てを言うと他の人の訓練にならないから、他の3人に先に情報を言ってもらう。

 

「被害を受けた場所を、偵察するのです」

 

「北東、約900m。断続的な破壊音」

 

「イヤホンジャックの報告地点に爆炎を確認。ビルが川に向かって倒壊。火災が発生している。周辺にヴィランは視認できない」

 

「……倒壊したビル周辺にヴィランはいない……その先の川に……流されている要救助者1名……」

 

『分かりましたわ』

 

私たちの情報を聞いて、すぐに百ちゃんの指示で皆が行動開始した。

消火活動と人命救助にほとんど人員が行って、ヴィランの捜索、対応に爆豪くん、上鳴くん、切島くんが勝手に向かっていった。

人命救助とか消火活動は皆が素早く対応してくれているから、こちらからの指示はほぼ必要ない。

隠れているお姉ちゃんたちヴィラン役が動き始めたところで伝えればいいだろうか。

 

……問題は私がいるとこの3人の感知の訓練にならない事なんだよね。

どうしよう。

 

「……私が感知しちゃうと……3人の訓練にならないよね……?どうする……?」

 

「まあ、確かにそうではあるんだが……」

 

「でも波動が何もしないのもそれはそれで訓練にならないよね?」

 

「このままならあとはヴィランの捜索だけだけど、それだと波動さんは一瞬で分かっちゃうもんね……」

 

皆どうすればいいか分からなくなってしまう程度には困っていた。

私がどうすればいいか相澤先生に確認しておくべきだったか。

今回の内容だと魔獣の森とかの時と違って、明らかに私と分業できる内容じゃないし。

 

「……じゃあ……ちょっと試したいことが……あるから……皆が感知した情報……通信で伝えたりしないで……私に教えてもらっていい……?」

 

「試したいこと?」

 

私がそう伝えると、響香ちゃんが不思議そうな感じで聞き返してきた。

障子くんと口田くんも疑問符を浮かべている。

まあ試したいことと言うのは昨日のテレパスでしかないんだけど。

昨日の夜お姉ちゃんに電話をして許可をもらったうえで、遠距離の人に対して同じことが出来るのかを試させてもらったりしていたのだ。

結果は上々。電話を切っても私の読心とテレパスで会話をすることができた。

まあテレパスの方はちょっと伝えるのが遅くなっちゃったり、ノイズや騒音混じりになったりすることがあるみたいではあったんだけど。

 

『これ……』

 

「っ!?え、ちょっ、今のなに!?波動今喋ってないよね!?」

 

「なんだ、どうした耳郎」

 

「ど、どうしたの!?耳郎さん!?」

 

響香ちゃんが凄く慌てた様子でキョロキョロした後に私を凝視してきた。

とりあえず何があったか分かっていない障子くんと口田くんにも同じ感じのテレパスをしておく。

 

「私の波動と……それぞれの波動を……馴染ませる……というよりも……同じ形、質に……共鳴させると……私の思ってること……伝えられるみたいで……練習したいなって……」

 

「つ、つまり、テレパスってことだよね?」

 

「……なんというか、波動の出来ることが異常な速度で増えていくな。活力の回復と聞いて驚いたばかりだったはずなんだが……」

 

口田くんが障子くんに同意するように激しく顔を縦に振っている。

正直私もどんどん出来ることが増えてびっくりしているくらいだ。

散々使っている私ですらまだ理解しきれていない。それだけ波動が凄いものだってことなんだけど。

 

「……分かった。波動がそれを使いこなせれば100人力だもんね。練習、付き合うよ」

 

響香ちゃんが同意してくれたのを皮切りに、障子くんと口田くんも同意してくれた。

とりあえず私は素早く共鳴させられるように頑張らないといけない。

万が一戦闘中に頭に騒音を響かせたらそれが致命的な隙になりかねないし。

 

それから響香ちゃんたちは感知に集中し始めた。

 

「火災は収まったようだな」

 

「良かったぁ」

 

「しっ、静かに!嫌な、音がする……波動!」

 

「ん……!」

 

響香ちゃんが感知したのはお姉ちゃんが動き出した音だろう。

響香ちゃんが感知出来たことだし、その情報なら私から出してしまおう。

私がいるのに不透明な情報が出てきたら、それはそれで事情を知らないあっち側は混乱するだろうし。

 

『緑谷くん……正面20m先……上空10m……ヴィラン接近……早急に対処を……』

 

『うんっ!任せて!』

 

テレパスをしたら、平然と通信で返事が返って来た。

これは、通信機からの音だと勘違いされた感じか。

まあそれだけ普通に伝えられたってことなんだろうけど。

 

「……緑谷、普通に通信機で返答してきたね」

 

「ん……思考も普通だったから……多分テレパスだって……気付いてない……」

 

「それはそれでどうなんだ……?」

 

「まあ……それはいいんだけど……ヴィラン役……お姉ちゃんと……天喰さんだけなんだよね……要救助者役も……通形さんだけ……」

 

私があとは何をすればいいか分からないということも含めて伝えると、障子くんたちも考え込み始めた。

 

「うちらもヴィラン対応に行く?」

 

「うーん……」

 

「……俺はここに残るべきだと思う。波動の感知でここから半径1km周囲にヴィランがいないことが分かっても、高速で移動できるヴィランが範囲外にいる可能性もある。他のヒーローのみで対応できている現状で、警戒を疎かにしてまで救援にいくべきではないと考える」

 

「……確かに……障子くんの言う通りかも……」

 

障子くんは何も間違ったことは言っていなかった。

ヴィラン連合の黒霧のような転移系の個性や、飯田くんのような高速移動系の個性がいたら範囲外からでも一気に急襲できる。

それらの警戒も含めて任された偵察班として、その職務を放棄してまで救援に行くような状況ではないか。

響香ちゃんと口田くんもその考えには同意していて、その後は特に何も起こらずに訓練は終わった。

 

 

 

訓練が終わって制服に着替えた。

透ちゃんと一緒に教室に戻ったところで、席に座っている緑谷くんに声をかける。

思考的に大丈夫だったんだとは思うんだけど、ノイズや騒音被害が発生していないかを確認しておきたかったのだ。

 

「緑谷くん……ちょっといい……」

 

「波動さん?どうしたの?」

 

「さっきの訓練中……私がヴィランの情報伝えたの……変な感じしなかった……?ノイズとか……騒音とか……」

 

「え?特になんともなかったけど……」

 

緑谷くんは平然とそう答えてきた。

やっぱり普通に通信機からの声だと思われてるなこれ。

そう思っていたら、不思議そうな顔で透ちゃんが会話に入って来た。

 

「そんな通信してたの?個人通信?あの通信機そんな機能あったの?」

 

「え?……いや、そんな機能ないよね?葉隠さんの通信機、故障してたの?」

 

「ん……透ちゃんの方があってる……通信なんてしてない……」

 

「どういうこと……?」

 

緑谷くんがさらに困惑した様子で考え込み始めた。

もうさっさと種明かしして細かい感想を聞くべきだ。分析好きの緑谷くんなら絶対ためになる情報をくれる。

 

『これ……伝わってる……?』

 

「っ!?……テレパス!?そうだよね!?そういうことだよね!?どうやってるの!?波動さんの個性でそんなこと出来る方法あるの!?詳しく教えて!?」

 

緑谷くんがノートとペンを取り出して凄い剣幕で詰め寄って来た。

どうやら理解できない事象に、分析好きの血が騒いだらしい。

緑谷くんに聞いたのは間違いだったかな……?

その後は緑谷くんの声で興味を持った皆が集まってきた。

私が緑谷くんに捕まっている間に響香ちゃんたちが皆にも説明してくれたけど、それだけで納得してくれるはずもなくて私ももみくちゃにされながら質問攻めされた。

結局緑谷くんにはノイズとか騒音とか違和感とか、聞きたかったことは一切聞けなかった。

もう緑谷くんには聞かないで、透ちゃんに協力してもらって感想を聞いた方が早いか。

透ちゃんなら少なくとも暴走しないだろうし。うん、そうしよう。

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