波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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VS B組(後)

「じゃあ透ちゃん……作戦通りに……」

 

「うん!任せて!」

 

オノマトペの強襲が落ち着いたのを確認してから透ちゃんに声をかける。

透ちゃんは手袋とブーツをぽいぽい脱ぎ捨てた。

私はそんな透ちゃんを見ながら波動を足から噴出して跳ね上がる。

それでパイプに乗ったりまた跳ね上がったりを繰り返して、鉄塔の頂上まで登った。

ここが一番安全なのだ。

湿気が少ないから小森さんのキノコはそうそう生えない。

黒色くんは私の影くらいしか入る場所がない。

拳藤さんはそもそも上がってくることが難しい。のんびり近づいてくればすぐに分かる。

吹出くんのオノマトペと私の影に忍び寄る可能性がある黒色くんに注意しておけばいいだけだ。

それだけで私は指示に集中できる。

百ちゃんと常闇くんはツーマンセルで動いて、私は分断された段階で早々に離脱。

指示に集中して救援が必要そうならそこへ救援に。

透ちゃんは相手に感知系の個性がいない以上、ブーツと手袋を脱いでしまえば居場所はそうそうバレない。

潜伏して奇襲するという作戦だった。

 

『透ちゃん……そのままオノマトペに沿って真っすぐ進んで……4つ目の分かれ道で左へ……そこの奥に吹出くんがいるから……』

 

『うん!了解!』

 

透ちゃんへのテレパスをして、透ちゃんがその返答を思い浮かべる。

これで疑似的な双方向のテレパスになる。

 

透ちゃんへの指示も出したし、皆の感知に集中する。

透ちゃんは吹出くんに向かって忍び寄っているところ。

小森さんは私にスエヒロタケというキノコ吸わせようとしているらしく、キョロキョロと探し回っている。

吹出くんは小森さんの少し後方にいて休憩中だ。大声を出して喉の調子がちょっと悪いらしい。

常闇くんは飛び立ったあたりで黒色くんの襲撃に合ったようだった。

黒色くんがダークシャドウに入り込んで百ちゃんを振り落としてから上空へ飛び立って、百ちゃんから離れた。事前に読んだ通り百ちゃんを孤立させたかったらしい。

百ちゃんはすぐに黒色くんがダークシャドウを操ったことに気が付いて、閃光弾を作り出した。それによって発生した光でダークシャドウは外套の中まで縮み上がっていた。

当然常闇くんは落下し始めるけど、ダークシャドウが縮み上がって小さくなった瞬間に、ダークシャドウに忍び込んでいた黒色くんがはじき出された。

想定している範囲より黒が小さくなるとはじき出されるんだろうか。

百ちゃん自身は何とか着地して、今は立て直しているところ。

拳藤さんはそんな百ちゃんに奇襲を仕掛けようとしていた。

 

『百ちゃん……後方10m……拳藤さんが近づいてきてる……奇襲に注意……』

 

『はい!』

 

もう姿は捉えられているから逃走はできない。百ちゃんもそんなことは分かっている。

奇襲に備えて迎え撃とうとしていた。

 

常闇くんは着地してから外套を一度振りほどいて、ダークシャドウを日光のもとに晒した。

常闇くんの空中での一連の様子を遠くから見ていたらしい小森さんは、見つからない私を探すのを早々に諦めて常闇くんの方に向かっていった。

どうやら私が見つからない時点で感知を元に逃げ回っているか隠れていると見て、早々に見切りをつけたようだった。

あとは透ちゃんは決定打に欠けるのが分かりきってるから、百ちゃんと常闇くんの方に加勢に行った方がマシと判断したらしい。

あらかじめこうなることを予測して、さっきの作戦会議の時に見つからないなら早い段階で見切りをつけろと拳藤さんに言われていたっぽい。

私単体で逃げ回っている分にはそこまで脅威じゃないという判断だろう。私が他のところに合流する前に速攻で片をつければいいと考えたっぽい。

だけどその作戦には、私のテレパスが一切勘定に入ってない。

 

拳藤さんは考える時間は与えないとか考えながら、百ちゃんを強襲した。

百ちゃんと1対1で対面して得意分野に持ち込めば、力で攻めきれると判断したようだ。

 

……どうすれば最良だろうか。

透ちゃんは今吹出くんを無言で殴っては離脱する一撃離脱戦法を取って奇襲し続けている。

吹出くんを完全に釘付けにしてくれていた。

常闇くんは態勢は立て直したけど、黒色くんが少し離れたところから奇襲の隙を伺っている。

小森さんがその常闇くんの方に向かって2対1にしようと企んでいる状況だ。

 

この状況で私が常闇くんの所に行っても、黒色くんに逃げられて小森さんに襲われるだけ。

しかも小森さんが考えているスエヒロタケ、確信は持てないけど吸わせるという思考から百ちゃんがさっき言っていた喘息のような症状を引き起こすキノコの可能性が高い。

常闇くんがさっき考えていた技。疾さ重視の技で奇襲を仕掛けてもらって黒色くんを確保。小森さんは私の誘導で回避しつつ、檻へ向かってもらうのが上策。

透ちゃんはこのまま吹出くんを釘付けにしてくれれば上々。

拳藤さんに押されている百ちゃんが一番まずい状況だ。そこに私が加勢に行くべきなのは間違いない。

 

『常闇くん……正面を0時として……3時方向に約15m進んだところ……黒色くんがいる……さらに……小森さんが接近中……速攻で黒色くんを仕留められるなら仕留めて檻へ……無理なら11時方向に逃走して……そっちなら小森さんと鉢合わせにならない……』

 

『……ああ。仕留める。任せろ』

 

『ん……万が一移動したら教える……お願いね……』

 

私は常闇くんに指示を出し終えると、高所から飛び越えた勢いのままに波動の噴出で吹き飛んでオノマトペを乗り越える。

そのまま百ちゃんの戦闘を見下ろせる位置まで移動した。

移動が終わったころには狙いが変わったのか。

 

『ダークシャドウ!師曰く、疾さは力に勝るという……』

 

常闇くんが手を構えながらそんなことを考えている。

黒色くんも常闇くんが何をするつもりなのかは分かっていないけど、見つかっていないと思って油断している。

そんな黒色くんに対して、常闇くんは高速で詰め寄って周囲の建造物ごと黒色くんを切り裂いた。

 

深淵暗駆(ブラックアンク)"夜宴(サバト)"!!』

 

常闇くんが動き出すのを確認した私は、両足のつま先と攻撃として当てるつもりの方の踵に波動を圧縮しつつ百ちゃんにテレパスをかけた。

 

『百ちゃん……加勢する……』

 

百ちゃんはそれで大体察してくれたようで、抵抗していたのを防戦一方になったように装いつつ移動しなくなった。

拳藤さんもそんな百ちゃんをその場で攻撃して仕留めようとしている。

私はそんな拳藤さん目掛けて飛び降りた。

波動の噴出で加速をかけて、技の準備に入っていく。

拳藤さんの武術の腕はミスコンの時に少しとはいえ見ることが出来ている。

私が誰かのところに救援に来る可能性が高いことにも気付いてる。

あの武術の腕があるなら、音とか何かしらの要素で怪しいと思ったら咄嗟に防御したり、急所を外して反撃してくる可能性がゼロじゃない。

それなら、私の方に気を引いて百ちゃんと連携した上で畳み掛けるのがいいと思う。

奇襲だし、本来なら技名を叫んだりしない方がいいのは分かってるけど、むしろ私の襲撃を印象付けるために叫ぶべきだと思った。

 

「波動蹴!!」

 

「なっ!?このっ!?」

 

落下の勢いのままに波動蹴を放った。

拳藤さんは案の定気配とかで察していたのか、技名を叫ぶ前には既にギリギリで反応し始めていて、巨大化した手で直撃を防いできた。

その上で、私の方を睨みながら口を開いた。

 

「こっちに来るんだ。常闇の方に行くと思ってたんだけど。黒色との相性最悪だし」

 

「……常闇くんなら……問題ない……」

 

拳藤さんもこの状況になったら流石にまずいのは理解している。

拳藤さんの計画だと、私はA組側で唯一と言っていいアタッカーの常闇くんの方に救援に行くと思っていたらしい。

その間に百ちゃんをどうにかするつもりだったようだった。

でも常闇くんはもう黒色くんを攻略した。

後は拳藤さんさえどうにかしてしまえばどうとでもなる。

 

「発勁!!」

 

私が続けざまに発勁を繰り出すと、拳藤さんは鮮やかな動きで防いできた。

でも、そんな隙を百ちゃんが見逃すはずがなかった。

 

「余所見は禁物ですわ!」

 

百ちゃんは手早く鉄の棒を作り出すと、拳藤さんの脇腹を強打した。

 

「ぐぅっ!?……この、まだ!」

 

「もう終わり……発勁!!」

 

再び百ちゃんの方に意識を向けた拳藤さんの頭に若干手加減して発勁を当てると、流石に耐えられなかったのか拳藤さんは気絶した。

百ちゃんが速やかにロープを出して拳藤さんを縛り上げていく。

 

「ありがとうございます。助かりましたわ」

 

「ん……気にしないで……」

 

百ちゃんのお礼に答えつつ、常闇くんと透ちゃんの様子を伺う。

常闇くんは問題なく黒色くんをマントで包み込んで確保したようで、檻の方へ向かい始めていた。

 

『常闇くん……移動……急いで……小森さんがそろそろそこに着く……今向いてる方向から向かえば……遭遇しないから……』

 

『もうこの場に来るというなら、俺がこのまま対応してもいいが、いいのか?』

 

『ん……小森さんがさっきから考えてる……スエヒロタケっていうのが怖いから……いい……小森さんは私が対応する……』

 

『承知した』

 

常闇くんはそれで納得して檻への歩みを速めてくれた。

透ちゃんは未だに吹出くんを翻弄し続けている。

見えない存在が気配を消しながらあらゆる方向からヒット&アウェイで攻撃し続けてくるのだ。翻弄されるのも無理はない。

 

「……百ちゃん……スエヒロタケってわかる……?」

 

「……申し訳ありません。分かりません」

 

「そっか……スエヒロタケ……小森さんが……吸わせようとしてる……あくまで予想だけど……さっき百ちゃんが言ってたやつかなって……」

 

「確かに、吸わせるという表現はその可能性が高いですね……それならば」

 

百ちゃんはそういうと、素早くマスクのような何かを創造した。

それを自分に着けながら、私にも手渡してくる。

 

「防塵マスクです。これをつけていれば、おそらくは予防できるのではないかと」

 

「ありがと……」

 

受け取った防塵マスクをササッとつけてしまう。

ちょっと息がしづらいけど、これは仕方ない。

 

「百ちゃん……拳藤さん連れて行くの……お願いしていい……?私……小森さんの方に行くから……」

 

「かまいませんが、1人で大丈夫ですか?」

 

「ん……小森さん……キノコは脅威だけど……本人の戦闘能力は低いみたい……大丈夫だと思う……」

 

「……分かりましたわ。ならばそれはそれでいいとして……波動さん、常闇さんの方に葉隠さんの場所を伝えておいてもらってもよろしいですか?」

 

「ん……あれ……?……増援……いらないかも……」

 

私がそこまで言うと、百ちゃんも小森さんの個性の考察や現状4対2の状況であることなどを考えてから了承してくれた。

その後に透ちゃんの方への増援の指示を出してくるけど、たった今透ちゃんの方にも動きがあった。

さっきまでヒット&アウェイで静かに暴れまわっていた透ちゃんだったけど、それを印象付けた上で別の行動をとった。

吹出くんが見えない打撃を警戒して慎重に周囲を見渡しているところに、背後から静かに近づいて忍者スカーフで吹出くんの首を絞め始めたのだ。

 

「うわ……何あれ……エグイ……」

 

「ど、どうかしたのですか?」

 

「……ヒット&アウェイで……散々打撃を印象付けておいて……殴られまくって痛む身体で……慎重に警戒してる吹出くんの背後に忍び寄って……忍者スカーフで首……絞めた……これをしてる間……ずっと無言……」

 

それを聞いた百ちゃんも、思わずという感じでうわぁって感じのちょっと引いた感じの表情をした。

あれは凄まじい恐怖体験だ。

急に何かに殴られたと思って透ちゃんだと考察して話しかけても無視。手を振り回したりして近づけないようにしてもそれを搔い潜って殴り続けてくる。

殴られるのを警戒していたら、疲弊したところを音もなく忍び寄られて絞め落とすなんていうエグすぎるコンボ。

透ちゃんが必殺技訓練でエクトプラズム先生と武術の特訓しているのは知っていたけど、ここまでエグイことを考えているとは思っていなかった。

 

「じゃあ……行ってくる……」

 

「はい。一応、私たちも移送が終わり次第防塵マスクを装着して向かうようにしますね」

 

「ん……多分……必要ないとは思うけど……」

 

そこまで言ってから百ちゃんと別れて小森さんの方に向かった。

小森さんは誰とも遭遇できないことに焦って、私たちの方に向かい始めている。

好都合だった。

波動の噴出で吹き飛んで高速で移動して、小森さんの前に姿を現す。

そのまま一気に懐に飛び込む。

 

「なっ!?」

 

「発勁……!!」

 

「ぅっ!?―――マスクなんて……!?こんなの……可愛くないから考えるだけにしておいたのに、ここでやらないなんてダメキノコっ!」

 

小森さんは発勁をお腹に食らって、表情を歪めながら吹き飛んだ。

それでもなんとか動いて、カエンタケを大量に作って物理的に近づきにくくしようとしているようだ。

というよりも、肺攻めを封じられて、孤立無援の状態になって、滅菌処理で身体にキノコも生やせなくて、これ以外に打つ手がない感じか。

だけど、私にそれはあまり意味をなさない。

遠距離攻撃もあるし空中からの襲撃もできるから、カエンタケを全身に纏ったり周囲を囲む程度じゃ意味がないからだ。

実際に自分の周囲にカエンタケっぽい赤いのを育てているけど、そんなの無視だ。

上空に跳ね上がって、小森さんの真上に落下して踵落としを直撃させた。

 

「波動蹴!!」

 

これで小森さんも気絶した。

思考も全く読めなくなったから間違いない。

それを確認した私は小森さんを背負って、皆それぞれに小森さんを確保したことをテレパスで伝えてからカエンタケを跳び越えて檻へ向かった。

 

 

 

「あ!瑠璃ちゃーん!」

 

遠目に透ちゃんが手をぶんぶん振ってアピールしてくる。

その姿に笑顔で応えながら近づいていく。

 

「お疲れさまでした、波動さん」

 

「早く檻に入れよう。目を覚まされても面倒だ」

 

「ん……そうだね……」

 

常闇くんの言う通り、ササッと小森さんを檻に入れてしまう。

その瞬間、アナウンスが響き渡った。

 

『第2セット!!4ー0でA組勝利!!』

 

試合は無事、完全勝利となった。

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