「反省点を述べよ」
皆の所に戻るなり早々に、先生は私たちを並べてそう告げた。
「力押しに持ち込まれた際の手数の少なさです。今回は波動さんがいたのでどうにかなりましたが、他にブレーンを担える方がいなければチームが崩壊していました」
「緊急事態への対応。ダークシャドウを操られ、まんまと作戦以上に分断されてしまった」
「私今回は頑張ったよ!特に失敗もしなかったし!吹出くんも1対1でちゃんと確保できた!」
「……早口で言われたりするだけで……作戦の読み取りが間に合わない……要改善……」
私たちの反省点を聞いて、先生はさっきの1試合目の皆にしたのと同じように一人一人に助言をし始めた。
「八百万は自覚の通りだ。力押しに対抗できる手段を考えていけ。常闇はダークシャドウを利用してくる相手への対処。光以外の要因で十分な力を発揮できない可能性を考えろ。葉隠は決定打の欠如。あれだけの場を整えてもらったんだ。今回の動きは悪くなかったが、もっと確保までの時間を短縮できるはずだ。波動も自覚の通り。相手が読心の対策をして来たのはすぐに分かったはずだ。相手のブレーンは分かりきってたんだから、早々に会話の推測に見切りをつけて拳藤の読心に集中するべきだった。音を聞けないにしても、断片的な情報からの推測をもっと深くできるようにしろ」
完璧だと思っていたらしい透ちゃんが若干とはいえ改善点を示されてしょんぼりしているくらいで、私たち3人は自覚していた通りでしかなかったから素直に頷いていた。
拳藤さんたちの方もブラドキング先生に色々言われているみたいだった。
読心を予測して思考に嘘の判別がつかないブラフを混ぜるようにしたのは良かったけど、その後の対処が問題。私と百ちゃん、どっちを先に潰すか、もっと詰めておくべきだったといった感じだ。
でも読心で読まれるのを警戒するとそんなに作戦会議も出来ないし、結構難しい注文な気もするけど。
「被害えげつないですね。一戦目とうってかわって」
「ヒーロー科の訓練とはこういうもんだ」
心操くんが一部が崩壊したステージを見て率直な感想を言った。
私たちはもう慣れちゃったけど、やっぱりおかしいよねこれ。
吹出くんのオノマトペとか小森さんのキノコとか常闇くんのサバトとか、いろいろと周囲への被害が凄いことになっているし。
「しかしちょっと壊しすぎたな。吹出!拳藤!分かってるとは思うが被害は最小限に!」
「……うむ……ステージの移動も兼ねて、少しインターバルを挟むか」
ブラドキング先生が作戦立案した拳藤さん、実行犯の吹出くんに注意した。
小森さんもカエンタケとかの猛毒のものまで含めてキノコで辺りを埋め尽くすなんていうことをしているのに注意しないのは、おそらく2~3時間で消えるからということだろうか。
それでも毒キノコ、特に結構な量のカエンタケとかを数時間残るような状況にするのは絶対によくないから注意した方がいいと思うんだけど。
少しの間休憩になったこともあって、皆雑談をし始めていた。
まあ雑談と言っても個性に関することとかではあるけど。
「B組さぁ曲者多くない?」
「いやこっちのセリフ」
「本当に。今の試合も理解出来ない動きされること多かったし。波動の感知と八百万が作った通信機の合わせ技?でも耳とかには何もつけてなかったよね?どういう仕掛け?」
拳藤さんに話を振られた。相当気になっていたらしい。
隠すようなことでも無いし、教えても大丈夫かな。
『これで……私が通信機役してた……』
「は?……え?マジ?」
「ん……マジ……感知で位置確認……読心でやること確認……テレパスで指示……そんな感じ……」
「……こんなの勝てるかー!!!」
拳藤さんが吠えた。
どうやって都合よく色々出来たかを考えてたのに、こんな感じの落ちでやってられなくなったらしい。
「テレパスって前からできたの!?」
「先週くらいに……出来るようになった……まだ結構不安定……」
「分からん殺しは警戒してたけど、流石に系統が違いすぎるでしょ……どうやってそんな素振りもなかった最近身に付けた技を見破れって言うの。全部波動の読心で読まれてて偽装した通信機で八百万と一緒に指示でも出してるのかと思ってたんだけど……」
「そんな、今回の勝利は私ではなく波動さんの力で……」
「……そんなことない……作戦を考えたのは百ちゃん……百ちゃんが果たした役割は大きい……」
「つまり、八百万の作戦と波動の万能サポートに負けたってことでしょ。こんなの、どうやって勝てばいいのか今でも分からないんだけど」
拳藤さんが自虐するかのように首を振った。
自信喪失とかそういう感じじゃなくて、素直に思ったことを口に出してるだけって感じか。
「別に……拳藤さんの対応……間違ってなかったよ……?音が分からないのは……正解だから……早口で作戦伝達されて……具体的なところまでは読みきれなかったし……」
「……そっか。じゃあまあ、次はテレパスも勘定に入れて対策立ててリベンジ目指すかな!」
「ん……楽しみにしてるね……」
拳藤さんは気を取り直したようにリベンジ宣言してくれた。
物間くんも話は聞いていたみたいでこっちをチラリと見ていたけど、話しかけるのは後にすることにしたみたいだった。
そんな感じで話していたら、緑谷くんがオールマイトに連れられて離れていった。
オールマイトは相変わらず贔屓を隠す素振りすら見せないな。
連れられていくときに三奈ちゃんに「蜜月~」なんて言われてるのがいい証拠だ。あれが皆の素直な感想だろう。
爆豪くんがバレるのを気にして忠告しに行ってくれてるし、私は特に何もしなくていいかな。
2人も爆豪くんに怒られてしょんぼりするくらいなら、最初から気を付けておいてほしい。
まあ結局密談の内容は暴走とその後の経過の確認でしかなかったみたいだし、特に目新しい情報もなかった。
「えー、ではステージちょっと移動させまして、次行くぞ!第3セット!準備を!!」
そんなこんなで第3試合が始まった。
試合は開始早々の鉄哲くんの大規模な破壊から始まった。
ブラドキング先生が「さっきの反省聞いとらんかったのか」とかぼやいている。
4人でしてたさっきの作戦会議とかもこんな行動話してなかったし、鉄哲くんのただの暴走な気がする。
ただ破壊したことで場所が割れたのもあって、轟くんがお得意の開幕ぶっぱをした。
「あれ見てると最初の戦闘訓練思い出しちゃうよねー」
「ん……確かに……ただ……轟くんの出し方も……正面に氷塊どーんって感じじゃ……なくなってる……」
「確かに!轟くん、ぶっぱもちゃんと改良してるってことだね!」
透ちゃんが懐かしむような感じで話しかけてくる。
この開幕ぶっぱは戦闘訓練も体育祭も結構苦しめられた印象が強い。
前までは正面にすごく大きな氷の柱みたいなのを出す感じだったのに、今回は視界を覆わないように工夫した出し方をしていた。
轟くんもどんどん技を改良しているんだろう。
その後は突撃した飯田くんが沼に沈められたり、角取さんの角が障子くんを捉えたり、鉄哲くんが氷を突き破って轟くんに突撃したり、回原くんが尾白くんを強襲したりして全体的に1対1の状況になった。
A組は皆それぞれ気になるところについてやんややんやと感想を言い合っている感じだ。
私たちの時もこんな感じだったんだろうか。
「見て!尾白が―――」
「普通に戦ってる!!」
「普通に押され気味だけど尾白くんも負けてないよ!」
「ん……尾白くんの武術……普通にすごい……回原くんの個性相手に……普通に戦えてる……」
やっぱり尾白くんは武術の技量が卓越しているのもあって、身体の使い方がうまい。
回原くんが四肢をドリルのように回転させているのに普通にいなしていた。
その後も順調に試合は進んで、飯田くんが尾白くんに加勢して回原くん確保。
骨抜くんが鉄哲くんや角取さんに加勢。
骨抜くんと鉄哲くんの連携で轟くんが気絶させられ、その轟くんを抱えて飯田くんが避難させようとした。
B組の2人ももう限界が近かったけど、執念で飯田くんに直撃させるコースで鉄塔を破壊した。
『これは……!!全員―――……ダウン!!!?一気に4名ダウン!!しかしまだ!"牢に入る"まではリタイヤにならないぞ!どうなる!!飯田、意識はあるが動けないかーーーーー!?俺は!!地味に回原のあばれが効いたと見ている!!投獄直前まで抵抗し、彼の足止めに尽力していた!いいぞ回原!おまえがMVPだ回原!!』
「偏向実況に拍車がかかってるブラド先生!!」
ブラドキング先生の偏向実況が凄いことになっている。
A組のことは全く褒めずに事実を言うだけっていうあたりが徹底している。
そんな先生にはA組の皆は不満があるようで、三奈ちゃんが反抗するかのように声を上げた。
「でもでもぉ、このまま皆ダウンしてたら、1-0でA組リードのまま、B組の勝ちが無くなっちゃうよーーー!」
「いいえ、芦戸さん」
三奈ちゃんが腕を組みながら高らかに上げたその声に、百ちゃんが待ったをかけた。
そこでようやく変化に気が付いた三奈ちゃんを嘲笑うかのように、物間くんが煽りを入れてくる。
「アハハハハ!!派手な方に気を取られて見てないんだ!?鉄哲たちが熱戦繰り広げてる間に、形勢は変化しているのさ!!」
「障子とポニーちゃん!!尾白にグルグルされてそのままじゃなかったっけ!?尾白は!?」
「……尾白くんは……普通じゃない感じで……檻に放り込まれてた……」
「あの後―――……」
三奈ちゃんが尾白くん方のことに気がつくと、百ちゃんが補足説明を始めてくれた。
簡単に言うと、角取さんの角が尾白くんの尻尾を突き刺して、そのまま飛びながら尾白くんを牢屋に叩き込んだのだ。
『どんな状況でも投獄されるまではリタイアにはならない!だがどんな状況でも"投獄されればリタイア"だ!!拘束は解かねばならない!状況は1対1!』
その後は、4人がダウンしている状況を把握した角取さんは負けないようにするために、角で骨抜くんと鉄哲くんを浮かび上がらせた。
轟くんも持ち上げていたけど、速度の問題があって檻に連れていく余裕がないのと、4本しか角を飛ばせないのに、飛行のために3本は自分とB組2人を浮かせるために使う関係上、攻撃に回せなくて勝ち目がないことから、時間切れまで空中に逃走しておくことにしたらしい。
『20分経過!!第3セット終了!!投獄数!1-1!引き分けだ!!!』
「煮え切らねぇ~~~ずりぃ!!」
「本番をふまえれば、"逃げて救援待ち"は理に適った行動ですぞ」
「……ずるいかどうかは置いておいて……本番を踏まえたら基本的に取れない行動だけどね……"逃げて救援待ち"……角取さんは遠距離攻撃を持ってるから……うまくやってるけど……何かしらの対策をしないと……人質を取られたり……虐殺が起きる可能性がある……状況、悪化する……」
「ああ、確かに。九州でエンデヴァーとかが最初に重傷を負った段階で逃げてたら大惨事になってたもんな」
「ん……逃げるにしても……何も考えずに逃走はダメ……」
宍田くんが理に適った行動なんて言っているけど、あれは本当にヴィランを相手にしている時にはほぼ取れない作戦であるのは間違いない。
逃走が許容されるのは、ヴィランの襲撃があった地域の避難が完了している時だけ。
大部分のヒーローが戦闘不能になり、残った1人が何もせずに逃げの一手を打った場合、残ったヴィランがフリーになる。
ヴィランが好き勝手に暴れられるのだ。避難が完了していない地域だと、街を破壊されるだけならまだマシ。
大量の人質を取られる可能性もあるし、虐殺が起こる可能性すらある。
その状況になった時に再度対応に当たろうとしても、状況は悪化しているのだ。
オールマイトがAFOと戦った時しかり、エンデヴァーが脳無と戦った時しかり。
2人とも限界を超えて戦って、なんとかヴィランを撃破した。
だけどもしもあの状況で2人が逃走して救援待ちなんて手を取っていたらどうなっていたかという話だ。
今回は訓練で、お互いが自分をヒーローだと思ってヴィランである相手の確保に動いている形式だから何も起こらない。
角取さんも相手の攻撃が届かない所まで逃走してから角で牽制しているからいいんだろうけど。
でも近接攻撃しか持っていない人が同じ行動を取っていいかと言われたらノーだ。
というよりも、対策もせずに逃走なんて手段を取ったら世間から大バッシングされると思う。
『気絶者多数につき、反省会は後に回す!!よし、では第4セット、準備を―――……』
そんな感じで色々と思うところはあったけど、第3試合は終わって次の試合に移っていった。