第4試合は素早く終わった。
最近色々思うところがあったらしい爆豪くんが、昔ならもっと分かりづらい感じでしかしなかったことをしたのだ。
特に響香ちゃんを庇ったりとかの分かりやすい行動は今まで見たこともなかった。
今までは切島くんとか上鳴くんみたいに爆豪くんについていった人のフォローをしたり、自分が原因で切島くんにお金を使わせたときにその分のお金を返したりと言った不器用な感じだけだったし。
響香ちゃんも砂藤くんも青山くんも、それぞれがいい感じに活躍できていた。
響香ちゃんと砂藤くんは迅速な連携で泡瀬くんや凡戸くんの確保を成功させたし、青山くんはネビルビュッフェレーザーで取蔭さんのパーツの無差別破壊に尽力していた。
爆豪くん中心にチームで迅速に対応に当たって、迅速に行動できた成果だった。
「必要以上の損壊を出さず、捕捉から確保も迅速。機動力・戦闘力に優れた爆豪を軸に3人ともよく合わせた」
相澤先生も珍しくべた褒めだ。
まあ改善点なんてほぼなかったから当然ではあるんだけど。
爆豪くんはオールマイトに「震えたよ」なんて褒められて素っ気なく振舞っていたけど、内心では結構嬉しそうな感じだった。
そんな爆豪くんに緑谷くんが駆け寄っていった。
早々に罵倒していたけど、その後はちゃんと発破をかけるようなことを言っていた。
なんというか、最近の爆豪くんは緑谷くんに対してツンデレみたいな感じになっている。
そして第5戦。
B組の敗北が確定したけど、B組側は一矢報いると気合を入れていた。
A組側はA組側で、心操くんの洗脳を警戒していたり、個性がワンパターンで攻めれない、待てないというのを気に病んでいた。
結局お茶子ちゃんたちは緑谷くんを囮にした作戦にしたようだ。
『第5セット目!本日最後だ!準備はいいか!?最後まで気を抜かずに頑張れよーーー!!スタートだ!』
試合が始まった瞬間、緑谷くんが凄い速さで駆け出した。
それを見て飯田くんが気が付いたことを素直に口に出した。
「緑谷くんたちのフォーメーション、第4セットの爆豪くんたちと似てるな」
「確かに似てるけど……索敵できる人が……いない……囮をするにしても……慎重な動きが求められる……」
「そうだね……さっきみたいに誘い出して位置特定するんなら、緑谷が爆豪以上の働きをしなきゃだね」
私の指摘に、さっき索敵係をしていた響香ちゃんが同意してくれる。
実際緑谷くんを囮にして相手を誘い出そうとすると、緑谷くんがよほどの大暴れをしないといけない。
しかも他3人が索敵をできない関係上常に場所を把握してくれるわけでもないから、突出しすぎて囲まれたりしないように注意しないといけない。
結構難しいバランス感覚が求められる感じだった。
物間くんが緑谷くんの目の前に姿を現して、B組が本格的に動き出した。
……それにしても、今緑谷くんの気を引くために出してたお茶子ちゃんの悲鳴って、心操くんが出したんだろうか。
「今の悲鳴って、出したの心操くんだよね?声真似とかそういう感じじゃなさそうだったし」
「……多分そう……すごく自然に女の子の悲鳴……出せてたよね……」
「あの気怠い感じで"きゃあ"って言ったんだぁ。ちょっと言ってる瞬間見てみたいね!」
やっぱり透ちゃんもその辺が気になったらしい。
透ちゃんは冗談っぽい感じで言っているけど、あれだけ似せた女子の悲鳴まで出せるって相当な脅威だ。
悲鳴とか呻き声すら信用できなくなるから、仲間を心配することすらできなくなってしまう。
男子に関しては元からそんな感じだったけど、女子もそうだというのが今の悲鳴だけでよくわかった。
女っぽい話し方とか練習したんだろうか。したんだろうなぁ。
そんなことを考えていたら、お茶子ちゃんたち3人の方に庄田くん、小大さん、柳さんが襲い掛かっていた。
お茶子ちゃんたちが戦い始める裏で、緑谷くんが物間くんと戦っている最中に、緑谷くんの手から黒い何かがあふれ出した。
『何で!!何だよ、これ、さっきまで、何ともなかったのに!!』
緑谷くんの思考が、必死の様相を呈して、凄まじい焦り具合になっている。
これは、暴走だ。
ダメだ。これは緑谷くんが制御できてない。緑谷くんが怪我をするだけならまだマシ。
制御できないOFAの力が暴れまわったら、最悪死人がでる。
でもそんなこと分からない皆は、新技かと思って眺めているだけ。
「緑谷また新技かぁ」
「違う……!!新技なんかじゃない……!!これ、暴走してる……!!」
私がそこまで言ったところで、緑谷くんからはさらに大規模な黒い何かが噴き出した。
もう肉眼でもこっちから観測できるほど膨大な量が噴き出している。
部屋をズタボロにした時でも、こんな規模じゃなかったはずだ。
この規模で出てたら緑谷くんの部屋だけじゃなくて、寮そのものがズタボロになっている。
今は、あの時以上に大規模な暴走をしているということだ。
あれが人に直撃したらどうなるかなんて考えたくもない。
「先生!!これはダメ!!放置したら、最悪死人が出る!!」
「相澤くん!ブラドくん!波動少女の言う通りだ!止めた方がいい!」
私とオールマイトが必死に呼びかけると、流石にまずいと思った先生も抹消を使うためにステージの方に駆け出した。
だけどその瞬間、お茶子ちゃんが暴れまわる黒い何かを掻い潜って、緑谷くんに飛びついた。
「麗日!?」
お茶子ちゃんは近くに心操くんがいることに気が付くと、すぐに心操くんに声をかけた。
『デクくん止めてあげて!!』という叫びが、ステージの方に響いていた。
確かに心操くんの個性なら、緑谷くんが受け答えすることさえできれば、強制的に止めることができる。
相澤先生がすぐに視界に入れることができない位置にいる以上、一番最適な個性を持っている人なのは間違いなかった。
心操くんもそれを受けて『緑谷に洗脳を!何か!!何を問う!?』と真剣に考えだした。
そのまま少し考えた心操くんは、マスクを外して「俺と戦おうぜ」と声をかけて、緑谷くんに応えさせた。
洗脳がかかったことで、緑谷くんから噴き出していた黒い何かは一気に引いていった。
その後は、緑谷くんは動かなくなった。
洗脳にかかっているから?でも、前の洗脳の時とは違う。
洗脳されていても、考えること自体はできていた。
今の緑谷くんは思考がおかしな感じになっている。話している相手がいないのに、誰かに話しかけられてそれに反応している感じと言うと分かりやすいだろうか。
『こんなにハッキリと―――……これはもう面影とかそういう類のものじゃない!夢でもない!この人は……この人たちは!―――……"
……緑谷くんの妄想じゃなければという前提ではあるけど、この思考はつまり、継承者たちと頭の中で話しているということだろうか。
でも緑谷くんが完全に外部の情報に反応しなくなっていて、継承者と話していることを考えると、個性の中に意識を取り込まれているということだろうか。
『この人の個性!?』とか考えているのを見るに、緑谷くんが使っていた黒い何かは継承者の誰かの個性ということか。
それを、継承者本人に使い方を教えられているとしか考えられない思考をしている。
多分話が一段落したあたりで、お茶子ちゃんが緑谷くんの洗脳を解こうとビンタした。
緑谷くんの意識は普通の状態に戻って、外部の情報に反応するようになった。
お茶子ちゃんは自分も黒い何かのせいで傷だらけなのに、それを一切気にせずに緑谷くんを心配して微笑んでいた。
……すごいな、お茶子ちゃん。たとえ好きな人が相手だったとしても、あの力が暴れまわる中に躊躇なく飛び込むのは普通の人にはできないことだ。
そう思って波動の感知で動きを見続けていたら、物間くんが襲い掛かった。
彼的にはまだ終わっていないのに何をしているんだってことなんだろう。
その後は全員入り乱れて乱戦が始まった。
相澤先生は、緑谷くんの様子や心操くんのやる気、全員が勝ちに行こうとしている今の状況を見て、少し様子見を決めていた。
『またああなった場合は即止めて、緑谷を退かせる』という思考が見える。
つまりそういうことなんだろう。
先生が緑谷くんをすぐに視界に収められる位置にいるのは分かる。
だからこその判断なんだろうとは思うけど、ブラドキング先生が考えている通り、相澤先生は意外と甘いと思う。
その後は2組に分かれて戦っていた。
三奈ちゃんと峰田くんが庄田くん、小大さん、柳さんを相手にして、緑谷くんとお茶子ちゃんが物間くんと心操くんを相手にする感じだ。
……それにしてもあのブドウ頭、なんでこんな乱戦の中でもセクハラできるんだろうか。
三奈ちゃんを庇ったまでは良かったけど、吹き飛ばされたタイミングで『こうなることもな!!』とか考えて顔を三奈ちゃんの胸に押し付けているのが本当に理解できない。何してるんだ。
「峰田たち人数不利の中善戦してるな!」
「懐に入れれば芦戸の間合いだぜ!スゲんだあいつ!」
「ていうか先生たち、止めに行ったんじゃないの!?緑谷と麗日は……」
「先生たち……緑谷くんの暴走が収まったのと……まだ全員が勝ちを目指してるのを見て……様子見することにしたみたい……」
「え!?大丈夫なの!?」
「ん……相澤先生が……緑谷くんをすぐに見れる位置に……待機してる……暴走したら抹消で止めるみたい……」
私が説明すると響香ちゃんや透ちゃんは納得したようだった。
話している裏でも戦闘は続いている。
今も物間くんがコピーしたOFAで殴りかかろうとしたけど、スカだったみたいだ。
まあオールマイトとかの話から考えると、OFAは継承しながら力を蓄えていった個性だ。
コピーしても積み重ねとか溜め込むものはコピーできない物間くんだから、もともとのOFAは超パワーなんて全く存在しないただの継承できるだけの個性だったということか。
物間くんをお茶子ちゃんに任せて、緑谷くんが心操くんに突撃していく。
それに対して心操くんは、捕縛布で周囲の巨大なパイプを壊して緑谷くんの頭上に落とした。
緑谷くんは避けられないことを悟ると、明確な意思をもって手から黒い紐のような何かを出して、落下してきたパイプを受け止めた。
「ちょっ!?また黒いの出たよ!?先生なんで止めないの!?」
「……今度は……暴走してない……オールマイトがそれに気付いて……相澤先生を止めた……」
「そうなの?」
「ん……明確な意思をもって……黒いのを出した……制御できてる……」
黒い紐状の何かはすぐに引っ込んだ。
緑谷くん痛がってるし、相当負担がかかるらしい。
その後はしばらく順当に進んでいって、物間くんはそのまま檻へ、フリーになったお茶子ちゃんが三奈ちゃんたちに加勢して3人で協力して小大さんたち3人まとめて確保。
緑谷くんも物間くんのツインインパクトで一瞬隙はできたけど、力押しで心操くんを確保した。
『第5セット!なんだか危険な場面もあったけど、4-0でA組の勝利よ!これにて5セット全て終了です!全セット皆敵を知り、己を知り、よく健闘しました!第1セットA、第2セットA、第3セットドロー、第4セットA、第5セットA、よって今回の対抗戦!A組の勝利です!』
ブラドキング先生から実況を引き継いでいたミッドナイト先生のその宣言で、対抗戦は終わった。
響香ちゃんと透ちゃんはその公正な実況にすごく嬉しそうにしていた。
それにしてもそのプラカード、どこから持って来たんだろうか。"公正実況に努めるミッナイ 偏向実況のブラキンはただちに更迭すべし"なんて強調したりとか色々しながらしっかり書いてあるプラカードだし。
まさか百ちゃん作?抗議には参加してなかったけど、百ちゃんもだいぶ不満に思っていたようだった。