「波動少女。少しいいかな」
クラス対抗戦後に着替えて教室に戻り、ホームルームも恙なく終わってさぁ帰ろうと思って廊下に出たところでオールマイトに声をかけられた。
どうやら秘密を知るものを集めて、OFA関連の話をしたいようだった。
「……分かりました……」
「話が早いね。助かるよ」
「いえ……場所は分かるので……後で行きますね……」
「ああ。よろしく頼むよ」
要件を口に出す前に了承すると、オールマイトも笑顔で次の呼び出し対象である爆豪くんの方へ向かっていった。
一緒に帰ろうとしていた透ちゃんも急な呼びかけにきょとんとした表情をしていた。
「オールマイトって緑谷くんは頻繁に呼び出してるけど、他の子を呼び出しって珍しいね」
「今回の呼び出し……緑谷くんのためだから……」
「え?どういうこと?」
「あの暴走してた時の状況……可能な限り整理したいみたい……つまり事情聴取……緑谷くんも呼ぶみたいだよ……」
「あー、なるほど。つまり蜜月な関係の緑谷くんのためか。相変わらずだねぇ、オールマイト」
「ん……相変わらず……とりあえず……そういうことだから……先に帰ってて……」
ある程度本当のこと混ぜた事情を説明すると、透ちゃんはすぐに納得してくれた。
そのままお互いに手を振って別れて、私は緑谷くんたちがいつも密談している仮眠室へ向かった。
仮眠室には爆豪くんも来ていた。
爆豪くんが3人掛けのソファの入口側に座っている。
隣と正面は万が一爆豪くんの怒りが爆発したときに巻き添えを食う可能性があるかな。
そう思ってソファの正面に2つ椅子を並べて、爆豪くんとは対角線になる位置に座った。
特に会話もなく待っていると、少ししてから緑谷くんとオールマイトもやってきた。
緑谷くんは入るなり私と爆豪くんを見て驚いている。
どうやらオールマイトは誰を呼んだかを全く説明していなかったらしい。
「かっちゃんに、波動さん!?」
「ん……待ってた……」
「爆豪少年と波動少女も、秘密を共有するものとしてね」
「おっせぇよ、クソデク。はよしろや」
爆豪くんが苛立ちながら促すと、緑谷くんとオールマイトはアワアワと空いている席に着いた。
緑谷くんが爆豪くんの隣。オールマイトが私の隣だ。
その後は今回起きたことの共有が始まった。
「心操くんに洗脳をしてもらった後、面影……というよりも、明確な意思を持った過去の継承者と会ったんです。面影とかそういう感じじゃないし、夢とかでもないと思います。OFAの中に、生きているんじゃないかって思うくらい、ハッキリとしていたんです」
「……緑谷くん……洗脳された直後は……誰かと会話してる……というよりも……誰かに話しかけられてるみたいな思考をしてました……寝ている時に見た夢なら……朧げな思考しか読めないので……夢じゃないっていうのは間違いないです……」
「そうだ!波動さん、継承者の思考とか読めなかった!?OFAが成長してることとか、あの黒いの、スキンヘッドの継承者の個性、"黒鞭"のこととか、いろいろ話されたんだけど!」
緑谷くんはもっと多くの情報がもらえないかと私に結構な勢いで問いかけてくる。
だけど残念なことに私は緑谷くんの思考以外読めていない。
「……私は……継承者の思考は読めてない……私の読心……波動を読み取って読んでるだけだから……波動がないものは読み取れない……継承者って……OFAの中にいるんでしょ……ダークシャドウとかみたいなのじゃないと……個性に波動はないし……読み取れないよ……」
「そっか……」
緑谷くんはちょっとしょんぼりと気落ちしながら、続きを話した。
さっき簡単に言っていたOFAの成長に関することや、黒鞭のこと、スキンヘッドの継承者のこととかを、事細かに述べていった。
「先代の"個性"、OFAそのものの成長……か」
オールマイトがお茶を入れてくれながら緑谷くんの話に呟くように反応した。
「オールマイトは知ってたんか。今回のこと。黒い"個性"ん事」
「私も初めて目にした。スキンヘッドの継承者―――……お師匠の前の継承者は黒髪の青年と聞いている。歴代継承者の"個性"が備わっていた事、おそらくお師匠も知らなかったはずだ」
爆豪くんが目の前に出されたお茶を飲みながらオールマイトに問いかけると、オールマイトが知らないなりにわかる範囲の情報を開示してくれた。
「じゃあ現状てめーが初ってことだなゴミ。オイ何かキッカケらしいキッカケはあったんか」
爆豪くんが今までの話をまとめつつ、次につながる感じで質問してくれた。
オールマイトも『すごい……話をまとめつつ進行してくれるすごい』とただただ感心している。
「ううん、全く……ただ時は満ちたとだけ言ってた……何か外的な因果関係があるのかも」
「AFOが関係してんじゃねえのか。OFAは元々あいつから派生して出来上がったんだろ。複数"個性"の所持―――……なるほど、あいつとおんなじじゃねぇか」
「……言いたくなかったことを……」
爆豪くんがこの場の誰もが思っていたけど口にはしなかったことをズバっと言い放った。
その通りではあるんだけど、もうちょっと言い方ってものがあるのではないだろうか。
まあそれはそれとして、聞いておかないといけないことがある。
個性発現時に暴走する可能性があるなら、とても重要なことを聞いておかないと。
「……黒鞭だけじゃなくて……他の継承者の個性もできるようになると考えるのが……自然ですね……」
「あ、う、うん!スキンヘッドの継承者にも、6つの"個性"が発現するって言われたよ!」
私が思うところを言うと、緑谷くんはすぐに同意してきた。
「ん……暴走したことを考えると……知っておいた方がいいと思うんですけど……他にわかる個性はありますか……?」
「……いや、お師匠の個性である"浮遊"以外は、分からないな。私の方で調べておく。分かり次第伝えるよ」
オールマイトはそう言って笑顔を浮かべた。
それはいいんだけど、"浮遊"の個性が暴走する可能性があるのってかなり危険ではないだろうか。
黒鞭は周囲の破壊っていう意味で危険だ。だけど浮遊はそれとは別の意味で危険だと言わざるを得ない。
浮遊が暴発した時に室内にいるならいいけど、屋根のない所にいた場合どこまでも浮かび続ける可能性がある。
たまにそういう系の個性の事故で聞くような、凄まじい高さまで飛び上がって、暴走が収まった瞬間一気に落下するなんていう大惨事になりかねない。
何か対策が必要な案件だろう。
だけどOFAのことや複数個性のことを話せない関係上、誰かにあらかじめ協力を頼んでおくことも難しい。
緑谷くん自身で対策しておくか、私たちが助けられる状況にいないといけないってことか。
「……浮遊が暴発したら……危ないんじゃないですか……?普通に抗える感じで出ればいいですけど……上に落ちるみたいな感じで……吹っ飛ぶ可能性もありますよね……」
「……!?た、確かに!?何か対策を考えておかないとダメか!?」
「ちっ……んなの、あの黒いのを使いこなせるようになれば一発だろうがよ」
私が懸念を口に出すと緑谷くんが焦って考え出したけど、爆豪くんがすぐに解決策を提示してくれた。
確かに黒鞭を使いこなせれば、吹き飛びそうになった時に黒鞭でどこかに掴まればいい。
使いこなせるまでが問題だけど、それが最適解でもあるか。
「対策をどうするにしても、またああならぬよう、もっとその力を知る必要がある」
オールマイトはそう話を締めくくった。
その後は力を知るということで体育館で確認してみることになった。
「オ゛ラ゛どうした!!びびってんのかゴラ!!!」
「待ってって!!待ってマジで出ないんだって!!」
「やめーーー!!そういうんじゃないから、落ち着きなさィブハッ!!」
「……荒療治……」
体育館に移動したはいいけど、緑谷くんが爆豪くんによる荒療治の憂き目に遭っていた。
跳び回る爆豪くんによる爆発の嵐に、緑谷くんも翻弄されっぱなしだった。
オールマイトが吐血しながら止めたことで、ようやく2人は降りてきた。
「ヤバくなりゃ出るもんだろうがこういうのは!」
「いや、これ出さない為の練習だから!制御の前に暴走をどうにかしないとだめだから!緑谷少年、どうなんだい?」
「……やっぱり、出ないです。気配が消えた……」
「……気配とか……分かるんだ……」
「うん、なんというか……言葉にはしづらいんだけど、出そうになると疼くような感じがするんだ」
気配。気配ってなんだろうか。
力の気配。暴走の気配?
暴走の兆候が分かるなら、それはそれで対策が出来るから助かる。
でもさっきの試合の最後は制御出来てたんだし、普通に力の気配の方だろうか。
「危機感が足んねんだよ!!もっとボコしゃあひょっこり発現すんだよ!!んで、その状態のテメーを完膚なきまでにブチのめして俺が一番「モチベーション抑えて」
「爆豪くん……短絡的……」
「あぁ!?」
「……僕の気持ちに呼応するのならあの時僕は、今扱える力じゃない、そう判断した……ーーー」
爆豪くんの煽りで再び考え込み出した緑谷くんは、いつものブツブツをし始めて自分の世界に入ってしまった。
それを聞いた瞬間に爆豪くんの怒りのボルテージがドンドン上がっていく。
どれだけ苦手なんだ。
「つまんねぇなクソが!扱えねーなら意味がねぇ!帰る!てめーのブツクサ聞くと俺ぁサブイボ立つんだ!」
爆豪くんはそう言って体育館から出て行ってしまった。
オールマイトも「今日はこの辺にしとくか」なんて言っているし、私も挨拶して早々に寮に帰った。
寮に帰って早々に目に入ったのは、三奈ちゃんとブドウ頭だった。
ブドウ頭は拘束服を着せられて椅子に固定されていた。
頭にヘッドギアみたいなものを付けられていて、それから伸びるクリップのようなもので瞼を強制的に開かれている。
目の前にはテレビが置かれていて、なんというかブドウ頭が好みそうなグラビアの映像が流されていた。
それなのに、ブドウ頭は悲鳴を上げている。
……思考を見る限り、吐き気、頭痛に襲われている。
なんだこれ、拷問?というか、条件付けみたいなことをしてる?
まさか、エロを吐き気とかに直結するようにさせようとしてるのか。
三奈ちゃんの内心は怒ったままな感じで、ブドウ頭の後ろで憮然とした表情で仁王立ちしていた。
……これ、どう考えても触れるべきではないよね。
三奈ちゃんには触れず、反省会兼交流会を兼ねてきていたB組メンバーもとりあえず置いておいて、ソファの方に座っている透ちゃん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃんの方に直行した。
「ただいま……」
「あ、おかえりー!」
「おかえりなさい」
「おかえり!」
3人ともニコニコしながら返事をしてくれた。
とりあえず気になったことを聞いてしまう。
「三奈ちゃん……どうしたの……?怒ってるのは分かるんだけど……あそこまでの制裁……というか拷問するの……珍しいね……」
「あー、あれね」
「最初はいつもみたいに制裁しとっただけやったんやけど、いらんこと言うてさらに怒らしたんやんな」
「……なるほど……つまり自業自得……」
すぐに納得してしまった。
セクハラで怒ってるところに、さらに油を注いだのか。自業自得だな、放っておこう。
「今日のご飯はビーフシチューだよ!私もまだデザート食べてないから一緒に食べよー!」
「ん……食べる……お腹空いた……」
透ちゃんはわざわざデザートを食べずに待っていてくれたらしい。
ご厚意に甘えて、透ちゃんと一緒に話しながらご飯を食べた。
やっぱりランチラッシュ先生のご飯は美味しい。
その後は百ちゃんが淹れてくれた紅茶を飲みながら、B組の人たちも交えてお話しした。
小森さん、拳藤さん、百ちゃん、透ちゃんと一緒に試合の反省会をしたり、梅雨ちゃんやお茶子ちゃんを交えて一緒にアイスを食べたりして過ごした。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、10時くらいになってお開きになってB組も寮の方へ帰っていった。
今までは物間くんとか拳藤さんとかのごく一部としか交流してなかったけど、今回の交流戦を機にもっと深く交流してみてもいいかと思った。
私の読心を知った後も誰も嫌悪感とかの悪感情を抱いてなかったのだ。
それどころかどこまで読めるのかなんて確認する為なのか自分の内心を深く読ませてくる人までいたくらいだ。
わざわざバラしても大丈夫なレベルの失敗談を思い浮かべたりして笑わせてくる人もいて、読まれることなんて一切気にしていなかった。
B組も皆いい人だ。
嬉しくてこっそり皆でワイワイ騒いでる写真を撮ってしまった。
印刷したらコルクボードに張っておこう。
とりあえず色々あって入れてなかったからシャワー浴びないとと思って、私も着替えを取りに自室へ急いだ。
一応書いておきますが、峰田に行われている拷問は原作通りです
どういうものなのか気になる方はルドヴィコ療法で調べてください
(読んで気分のいいものではないので、自己責任でお願いします)