波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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コピーチャレンジ

翌日。

放課後になって、私は緑谷くんと一緒に教師寮に呼ばれていた。

先生は心操くんの職員会議をしていたのもあって少し遅れてきそうな感じだ。

ついさっき会議が終わって先生たちも解散になったようだから、多分そろそろこっちに来ると思う。

オールマイトと校長先生だけ応接室に向かっているけど、他の先生たちは各々好きに動き出しているから間違いない。

オールマイトたちは応接室に来ている目良さんの対応に向かっているようだ。公安委員会がなんの用事だろうか。

まあいいか。

これからエリちゃんにとって大事な確認をしないといけないのだから。

 

 

 

相澤先生が教師寮に戻ってくるよりも先に、物間くんがやってきた。

物間くんを見た途端、エリちゃんが困惑と恐怖といった感じの思考になった。

……物間くん、エリちゃんと面識があったのか。というか一体何を言ったんだろうか。

エリちゃんがこんな反応になるなんてよっぽどだ。

 

「ゆうえいの……ふのめん……」

 

「アハハハ!何言ってんのかなこの子ぉ!何言ってんのこの子ぉ!?」

 

エリちゃんがあわわわわと慌てながら通形さんの後ろに隠れようとする。

物間くんは物間くんであまりの扱いに驚いているし、少なくとも何かをした自覚はないようだ。

 

「文化祭の時君のこと"雄英の負の面"と教えたんだ」

 

「僕こそ正道を征く男ですけどぉ!?」

 

「……少なくとも……その言葉を真に受けるだけの……何かがあったはずだけど……」

 

「あの……一体何が始まるんでしょうか」

 

緑谷くんが困惑している。

だけどエリちゃんと接点のない物間くんを呼ぶ理由なんて1つしかないと思うんだけど。

そう思っていたら先生が寮に帰ってきた。

 

「おう、緑谷、波動、通形。悪いな呼びつけて。物間に頼みたいことがあったんだが、如何せんエリちゃんの精神と物間の食い合わせが悪すぎるんでな。まぁ入れ」

 

「僕を何だと思ってるんですかぁ!?アハハハハ!?」

 

先生の全く遠慮しない物言いで物間くんがさらに驚愕している。

相澤先生的には、私の個性をコピーした時の物間くんを見ているから基本的に大丈夫だろうとは考えているようだけど、念には念を入れてエリちゃんのために私たち3人を呼んだようだった。

物間くんも物間くんで、そんなに色々言われるのが嫌なら煽らなきゃいいのに。まあ煽らない物間くんなんて全く想像できないわけだけど。

 

 

 

場所は変わって教師寮内。

エリちゃんと握手した物間くんは頭に角を生やした状態で、エリちゃんの個性を確認していた。

 

「うーん……"スカ"ですね。残念ながらご期待には添えられません。イレイザー」

 

「……そうか。残念だ」

 

ある程度予測できたことではあったけど、やっぱりスカだったらしい。

制御のコツを同じ個性を経験した人間から教えてもらえるならエリちゃんに取って有益だったけど、無理なら仕方ない。

 

「エリちゃんの"個性"をコピー……!?一体何を?それに物間くん"スカ"って……」

 

「君と同じタイプってこと。君も溜め込む系の"個性"なんだろ。僕は"個性"の性質そのものをコピーする。何かしらを蓄積してエネルギーに変えるような"個性"だった場合、その蓄積まではコピーできないんだよ。たまにいるんだよね。僕が君をコピーしたのに力を出せなかったのはこういう理屈」

 

物間くんの説明を受けて、緑谷くんもスカがどういうものかをようやく理解できたらしい。

『そういう理屈じゃなかったら爆散させてしまうところだった……』とか考えている。

爆散ってどういうことだ。OFAってそんなに危ないのか。

緑谷くんの腕が内側からはじけるかのように自傷していたアレを、もっと酷くした感じのが起きる可能性があったということか。

 

「なんでコピーを?」

 

「エリちゃんが再び"個性"を発動させられるようになったとしても、使い方が分からない以上またああなるかもしれない。だから物間がコピーして使い方を直に教えられたらと思ってな。そう上手くはいかないか」

 

相澤先生が頭を搔きながら物間くんを呼んだ理由を説明した。

そんな中、今まで黙ってされるがままになっていたエリちゃんが、泣きそうになりながら口を開いた。

 

「……ごめんなさい、私のせいで困らせちゃって……私の力……皆を困らせちゃう……こんな力……無ければよかったなぁ……」

 

「エリちゃん……」

 

エリちゃんの心の底からのその思いは、過去の私と少し原因は違うけど同じ結論に帰結していた。

私も、こんな個性があるからこんな目に遭う、こんな個性があるから他人に拒絶される、こんな個性無ければよかったなんて何回も考えたことがある。

エリちゃんの他人への迷惑を考える、他を考える優しい心と、他人から嫌われる理由を自分の個性に帰結させた、私の個を考えた醜い心の差は大きいけど、それでもその考えはスッと理解できてしまった。

 

「困らせてばかりじゃないよ。忘れないで。僕を助けてくれた。使い方だと思うんだ。ホラ……例えば包丁だってさ、危ないけどよく切れるもの程おいしい料理が作れるんだ。だから君の力は素晴らしい力だよ!」

 

「……私、やっぱりがんばる」

 

緑谷くんのその言葉は、良い所を示して全面的に受け入れていることを示すその言葉は、エリちゃんの心に強く響いていた。

エリちゃんも、志を新たにして笑顔を浮かべた。

そんなエリちゃんに、私も声をかける。

 

「……私も……手伝うよ……」

 

「ルリさん?」

 

「私も……昔は……個性の制御……全然できなかったから……何度も……個性が無かったらって……思ったことがあるから……気持ちはわかる……」

 

「ルリさんも……なの……?」

 

「ん……私の個性はね……他の人の考えてることが分かるの……分かっちゃうって言った方が……いいかもしれないけど……」

 

「考えてること?」

 

エリちゃんが不思議そうな顔をして聞いてくる。

子供がいきなりこんなことを言われても分からないよね。

 

「そう……例えば……今緑谷くんが……『僕も使いこなすんだ』って考えてたり……エリちゃんが……『これもわかるのかな』って考えてるのも……全部わかる……」

 

エリちゃんがそうなの?と確かめるように緑谷くんの方を向いた。

 

「うん。僕の個性も、力が強すぎて本気を出すと大怪我しちゃうから。自分の力で怪我しないように練習中なんだ。だから、エリちゃんががんばるみたいに、僕も頑張って使いこなすぞーって思ってた」

 

「あってる。すごい」

 

エリちゃんがキラキラした目をこちらに向けてくる。

子供の純粋な思考だと、やっぱりこういう感想になるんだなと思って微笑ましく思う。

 

「だけどね……考えてることを見られるのって……怖いって思う人が多いんだよ……だから……怖がられることが多くて……こんな個性無ければいいのにって思ってた……」

 

「そうなんだ……」

 

「ん……でもね……緑谷くんが言ってくれたみたいに……どんな個性でも使い方次第なんだよ……怖がられる私の個性も……ヒーローとして使うと……すごいって言ってもらえるの……エリちゃんのことを助けるために……この力を使って頑張った時もそうだったんだ……」

 

実際はヒーローとしていいことをしたとしても、読心なんて嫌われたままの可能性が高いんだけど、エリちゃんにはわざわざそこまで言わない。

いいことに、適切に使えば喜んでくれる人や受け入れてくれる人が増えるのも事実だし、A組みたいにほぼ無条件に受け入れてくれる人たちがいるのも事実だからだ。

 

「だから……エリちゃんの個性も……使い方次第……どんなに危ない個性でも……嫌われる個性でも……使い方次第で……迷惑なんて思われないから……」

 

「そっか」

 

エリちゃんが握り拳を作って気合を入れなおしている。

素直でかわいい。

 

「だけどね……頑張るのって1人だと大変だから……エリちゃん1人で頑張らなくても大丈夫……私もお手伝いするし……先生も……緑谷くんや通形さんだって……お手伝いしてくれるよ……迷惑なんて思わないんだから……そうだよね、緑谷くん……」

 

制御できない個性を1人で頑張って特訓するのって結構大変だ。

特にエリちゃんみたいに失敗したら大惨事になりかねないものなら猶更。

私だって読心を怖いとか思わずに負の感情を向けてこないお姉ちゃんがいて、協力してくれたから個性の練習ができて、特定の波動を深く読んで他の思考から気を逸らす、なんていうことができるようになったのだ。

協力者の存在は大事だし、精神的な負担も軽減してくれる。支えにもなってもらえる。

エリちゃんにもそういう人が必要だと思う。

そしてエリちゃんのそういう人は、相澤先生がここに呼んでくれた特に懐いている人がいいと思う。

そう思って緑谷くんに同意を求めるように話を振った。

 

「うん!もちろん!」

 

「もちろん俺も協力するよね!」

 

緑谷くんと通形さんはすぐに同意してくれた。

相澤先生も返事はしないまでも頷いてくれている。

 

「個性の系統は違っても……私も……緑谷くんも……通形さんだって……自分の個性に振り回されたけど……ある程度制御できるようになった……その大変さも皆知ってる……1人でするのが大変なことも分かってる……だから……全力で協力するよ……一緒に頑張ろうね……」

 

「……うん!私がんばる!」

 

エリちゃんが満面の笑みを浮かべて同意してくれた。

ふんすと鼻息荒く気合を入れるその姿は、決意を察せられる一方ですごくかわいらしいなと思ってしまった。

 

それからはエリちゃんと少しの間お話して過ごした。

物間くんが煽りを入れてくるたびにエリちゃんがちょっと怖がっていたけど、本当に損をしていると思う。

さっきだって私がエリちゃんに自分のことを話している時も、一番共感して同情してくれたくらいには優しいのに。

コピーという個性で私のデメリットを知っているからって、そう簡単なことじゃない。そういう素直な共感ができる時点で優しいのは明白だ。

エリちゃんも話しているうちに本質は怖い人じゃないというのを少しずつ理解してきたのか、最後の方には物間くんから隠れたりはしなくなっていた。

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