波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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メディア演習

仮免取得の翌日、爆豪くんと轟くんにテレビのインタビューが来ていた。

 

「仮免取得から僅か30分後にプロ顔負けの活躍!!普段から仲良く訓練されてるんでしょうか」

 

「そう見えんなら眼科か脳外科行った方がいいぜ」

 

「仲はいいです」

 

「ハァ!?テキトーこいてんじゃねーぞ!!いつ仲良くなったんだコラ!!」

 

「仮免補講で二人一緒にいること多かったろ」

 

「何だそのシステムは!!時間と親交は比例しねぇんだよ!!」

 

「システムってなんだ」

 

「知らねーよ!!てめーも脳外科行け!!」

 

なんなんだろうこの取材。

寮で行われている取材の邪魔にならないように皆遠巻きに見守っているけど、あまりにも酷いインタビューに絶句してしまう。

私もマスコミは醜い内心が透けて見えることが多くて基本的に嫌いだけど、それでもここまでの対応はしないと思う。

今もインタビュアーのお姉さんは苦笑いを浮かべているけど、内心では結構な文句で溢れている。

このインタビューほぼ使えないんじゃないだろうか。あまりにも酷すぎるし。

もしこのまま使われたら爆豪くんはヴィランっぽいヒーローランキング1位に固定されてしまいそうだ。

 

 

 

そんな取材の数日後。

ついにあのインタビューが放送された。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!一時間もインタビュー受けて!!爆豪丸々カット!!」

 

「……見切れっぱなし……完全に無視されてる……」

 

「ある意味守ってくれたんやね」

 

「使えやぁああ……!!」

 

上鳴くんが爆笑している通り、インタビューは轟くんだけアップで映され続けていた。

爆豪くんの発言は丸々カットされていたのだ。

まああんな返答しかしてなかったら当然としか思わないんだけど。

 

「オールマイトから遠ざかってない……?」

 

「イカレてんだ」

 

「聞こえてんぞクソデクと玉ぁ!!」

 

爆豪くんは遠くで呟くように言った緑谷くんの疑問やそれに対する峰田くんの返答にすら噛みついている。

あまりにもな映像に、皆の反応はほぼ呆れと爆笑という酷いものになってしまっていた。

 

「もう三本目の取材でしたのに……」

 

「"仮免事件"の高評価が台無し」

 

「……でも……ある意味……正しい評価に戻っただけとも言える……」

 

そんなA組的には面白いような何とも言えないニュースも終わって、泥花市で起こった事件に移っていった。

9日前に起こったその事件は、泥花市を短時間で壊滅に追い込んだものだった。

人口的な問題で神野よりも死傷者がマシだっただけで、被害自体は神野以上らしかった。

 

『以前ですとこういった"ヒーローがハメられた"事件に関しては、ヒーローへの非難一色だったわけですが、しかしまさに今時代の節目と言いましょうか……"非難"が"叱咤激励"へと変化してきているんですよね』

 

「"見ろや君"からなんか違うよね」

 

「エンデヴァーが頑張ったからかな!」

 

お茶子ちゃんと三奈ちゃんは目に指を当てて開くようなポーズをし始めた。

そのタイミングで、教室の扉が勢いよく開いた。

 

「楽観しないで!!いい風向きに思えるけれど、裏を返せばそこにあるのは"危機"に対する切迫感!勝利を約束された者への声援は、果たして勝利を願う祈りだったのでしょうか!?ショービズ色濃くなっていたヒーローに今、真の意味が問われている!」

 

教室に入ってきたのは、Mt.レディとミッドナイト先生とだった。

ミッドナイト先生はいつも通り胸を強調するようなポーズで入ってきたけど、一方でMt.レディはお尻を強調するようなポーズで入ってきた。

……ミッドナイト先生に対抗するためなんだろうけど、なんでこういうポーズをしたがるんだろうか。私にはまだよく分からなかった。

それにしても、いつものブドウ頭なら大騒ぎしそうな状況なのに、今は震えあがっていた。

職場体験でどれだけのトラウマを負ったんだ。

 

「特別講師として俺が招いたんだ。お前ら露出も増えてきたしな。ミッドナイトは付き添い」

 

寝袋スタイルで授業を完全に丸投げするスタイルの相澤先生も、説明しながら教室に入ってきていた。

そんな先生の説明を受けてMt.レディが"MEDIA"と書かれたプレートを持ちながら話を続けた。

 

「今日行うのは"メディア演習"!私がヒーローの立ち振る舞いを教授します!!」

 

「何するか分かんねぇが……みんなぁ!!プルスウルトラで乗り越えるぜ!!」

 

切島くんが皆に気合を入れた。

まあ気合を入れるのはいいんだけど、今移動するように指示された場所にはステージのようなものが設置されている。

多分そんなに頑張る必要がなさそうな訓練だ。

 

 

 

場所は変わってステージの前。

そのステージに立ったMt.レディが声を張り上げた。

 

「"ヒーローインタビュー"の練習よ!!」

 

あまりにも緊張感のなさそうな授業に、皆『緩い』なんて考えている。

先生たちはもう準備万端のようで、すぐにインタビューが始まった。

最初は轟くんが壇上に呼ばれた。

 

『凄いご活躍でしたねショートさん!』

 

「何の話ですか?」

 

『なんか一仕事終えた体で!はい!!』

 

「はい」

 

なんというか、皆が考えている通り本当にすごく緩い感じの授業だ。

 

『ショートさんはどのようなヒーローを目指しているのでしょう!?』

 

「俺が来て……皆が安心できるような……」

 

『素晴らしい!あなたみたいなイケメンが助けに来てくれたら、私逆に心臓バクバクよ!』

 

「心臓……悪いんですか……」

 

『やだなにこの子!?』

 

轟くん、すごいズレた答えを返すな。

結構な頻度で見られるやり取りではあるけど、インタビューでもそうなっちゃうのか。

そこはもう轟くんの性格だから仕方ないのかもしれない。

それにしても、ズレた答えばっかり返しているのに、Mt.レディは轟くんに対してべた褒めな感じだ。

そういう感じがいいんだろうか。

 

「ねえ……助けてくれる人が……イケメンかどうかって……そんなに重要……?助けてくれるなら……どうでもよくない……?」

 

「っ!?な、なに言ってるの瑠璃ちゃん!?すっごく重要なことだよ!?」

 

「そ、そっか……」

 

透ちゃんに純粋に気になったことを確認すると、凄まじい勢いで肩を掴まれて力説された。

そっか。そんなに重要なのか。

透ちゃんがそういうなら、世間一般もそう思う人が多いんだろう。

そんな話をしていると、急に目の前に氷が展開された。

 

「穿天氷壁。広域制圧や足止め・足場づくりなど、幅広く使えます。あとはもう少し手荒な膨冷熱波という技も……」

 

「あれ?B組との対抗戦で使ってたやつは?」

 

「エンデヴァーの」

 

「赫灼熱拳!」

 

「……は、親父の技だ。俺はまだあいつに及ばない」

 

皆が轟くんの必殺技に対して、皆が赫灼熱拳に関して言及する。

それはいいんだけど、なんで透ちゃんは発言すると同時に集光屈折ハイチーズを使ったんだろう。

急にカッて光ってびっくりした。

 

「……今……何で光ったの……?」

 

「そういう気分だったから!」

 

気分。気分か。

それなら仕方ないか。

 

「技も披露するのか?インタビューでは?」

 

「あらら!やだわ雄英生。皆があなた達のこと知ってるワケじゃありません!必殺技は己の象徴!何が出来るのかは技で知ってもらうの。即時チームアップ連携、ヴィラン犯罪への警鐘、命を委ねてもらう為の信頼。ヒーローが技を叫ぶのには、大きな意味がある」

 

「……そんな感じのこと……エクトプラズム先生も言ってた……」

 

「……ちょっと前までカメラ映りしか考えてなかったハズだぜ、あの女……」

 

「Mt.レディだけじゃないよ。今ヒーローたち皆引っ張られてるんだ。No.1ヒーローに」

 

Mt.レディは以前エクトプラズム先生が必殺技の名前について話してくれた時に言っていた内容と似たようなことを話していた。

Mt.レディや相澤先生の説明を受けてやる気を出した皆は、順番にインタビューに臨んだ。

 

 

 

「兄、インゲニウムの意志を継ぎ、駆ける者であります!」

 

『誠実さが伝わるね!』

 

「博覧強記、一切合切お任せください!」

 

『自信は人を頼もしくするの!』

 

「私の前では全てが無重力なのです!」

 

『和らげるのも一つの才よ!』

 

「闇を知らぬ者に栄光は訪れぬ」

 

『いい~、雰囲気いいよー!』

 

「私の個性の範囲内で……見通せない悪事はない……」

 

『実力に裏打ちされた自信、いいわね!』

 

「俺の後ろに血は流れねぇ!」

 

『ああー兄貴ー!なにもうみんな!心配して損しちゃった!意外にちゃんとできるじゃない!』

 

ミッドナイト先生相手にヒーロー名を披露した時のような感じで、皆答えにスパスパと一言でコメントを返していく。

私はとりあえずOKが貰えそうな自信に溢れたコメントをしておいた。

案の定特に否定されることもなく、普通に褒められて流された。

……それにして、このまま行くとまた爆豪くんが酷いことになりそうだけど、大丈夫だろうか。

そんなことを考えていたら爆豪くんの番になった。

 

「俺ぁテキトーな事ぁ言わねぇ!黙ってついて来い!!」

 

『一人だとまだマシね……分かった。ソリが合わないのね、人類と』

 

「ワリィ。俺がいたから丸々カットに……」

 

「思い上がんな!てめーなんぞが俺に影響与えられるワケねぇだろが!!」

 

「そうか」

 

荒っぽいけど、いつものを考えると全然マシな受け答えをしていた。

誰かと一緒にするのがダメなのか。

でも爆豪くんもこの前のクラス対抗戦の時みたいに成長しているし、そのうち普通に対応できるようになるのかもしれない。

爆豪くんよりも、その後の緑谷くんの方が酷かった。

 

『デクくん、でしたっけ!?活躍見ました!』

 

「それは……良かった。良かったです……!」

 

『ご自身ではどのようにお考えでしょうか!?』

 

「それは……良かった……」

 

緑谷くんの姿は見ていられなかった。

これは初期の女子相手にしていた態度そのもの。つまり極度の緊張状態なんだろう。思考も焦ってるし。

ガチガチに固まっていてロボットのような動きをしている上に、声は小さくて聞き取りづらい。

なんでエリちゃんにはあんなにしっかりといいことを言ってあげられるのに、インタビューとなるとダメなんだろうか。

 

「あいつ、俺の"硬化"を!!」

 

「アガリすぎ。そういえばこういう機会には恵まれてないものね」

 

「でも……エリちゃんにはちゃんといいこと言えるのに……なんでこうなるかな……」

 

その後も緑谷くんのインタビューは酷いものだった。

オールマイトのことになると大声で反応する。

その後は自己分析をいつものブツブツで聞き取りづらい感じで言い連ねる。

正直ダメなインタビューのお手本と言っていいレベルだと思う。

ミッドナイト先生に黒鞭のことを指摘されて黒鞭も試していたけど、ピョロっとほんのちょっとだけ出て終わった。

当然のように皆の反応もしょっぱい感じだった。

 

その後は皆で順番に練習したりコツを教えられたり、緑谷くんは緊張しない方法を教えてもらったりとインタビューの訓練を積んでいった。

まあ緑谷くんはあまり成長してなかったけど。

女子と普通に話せるようになったみたいに、慣れればできるようになると思うし頑張ってもらうしかない。

オールマイトの後継者がまともにインタビューに答えられないなんて口が裂けても言えないだろうし。

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