波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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仕事終わり

事務所に戻ると、ちょうど依頼も落ち着いたところのようだった。

各自ジュースを片手に椅子に座って過ごしていた。

皆休憩もそこそこに働き続けていたからぐったりしてしまっている。爆豪くん以外。

 

「疲れたな……」

 

「労働基準法をプルスウルトラしてるし……飯田ー、ちょっと細かい仕事受けすぎじゃね?」

 

あまりの疲労に呟く砂藤くんに、上鳴くんが反応した上で飯田くんに声をかけた。

まあ昨日もこんな感じだったし、疲れるのも無理はないか。

 

「事件に細かいも大きいもないだろう」

 

「ヒーロー活動をしているとはいえ、私たちはまだ学生……着実にこなし、島の皆様からの信頼を得なければ」

 

きっぱりと言う飯田くんに、百ちゃんがフォローを入れた。

百ちゃんはさっきの嘘の通報のことを考えていた。

試さないとダメだと小さい子に思われたということは、まだ信頼を得られていないということとイコールであると考えたようだった。

ましてやこんなに平和な島でのヒーロー活動。島民からすれば私たちはよそ者以外の何者でもなかったから当然とも言えた。

皆もそんな百ちゃんと飯田くんの言葉に同調していたけど、峰田くんが手をあげて口を開いた。

 

「ここに来て一度もヒーロー活動してないヤツがいるんですけど……」

 

そんなことを言ってにやにやとしながら指差す峰田くんに対して、爆豪くんが威嚇するように声を上げた。

 

「わざと事務所に残ってんだよ!おまえらが出払ってるときヴィランが出たらどうすんだ!?あ!?」

 

「この島にヴィランはいねーだろ」

 

「別に爆豪くんが常駐する必要……ない……常駐するんだったら……百ちゃんか私の方がいいと思う……」

 

「あ!!?」

 

爆豪くんが私の言葉にキレながら振り返ってきた。

でも実際常駐するなら爆豪くんじゃない方がいい。1人でいる時に何かあったら、他の人に連絡取らないで1人で行っちゃうと思うし。

それだったら冷静で円滑に指示を出せる百ちゃんか、感知しながらテレパスで連携を取れる私を残した方がいいだろう。

そのことを説明しようと思ったところで、ドアが開く音がした。

 

「ちょっとお邪魔するよ」

 

「村長さん!」

 

そこには島民を引き連れてやってきた那歩島の村長さんがいた。

飯田くんが近寄って出迎えようとしたところで、ついてきていた島民の人達が口々にお礼を言い始めた。

 

「さっきはばあちゃんを病院にまで運んでくれてありがとね」

 

「バイクの修理助かったわ!」

 

「うちのバッテリーも!」

 

「ビーチの安全ありがとう!」

 

「獲れたての魚だぞ!」

 

「お礼というわけじゃないけど、よかったら食べとくれ」

 

島民の人達はお礼を言いながら、どんどん差し入れと思われる料理を机に置いていく。

からあげ、天ぷら、お刺身、煮物、サラダと、まだまだ他にもあるけどとにかくたくさんの料理が机に置かれていった。

疲れているところにこれから夕食を作らなきゃいけないと思っていたから、正直に言うとすごく助かった。

皆もその御馳走の数々に目を輝かせていた。喜びのあまり、飛び上がり始める始末だった。

 

「「「いっただっきまーす!!!」」」

 

「君たち!少しは遠慮したまえ!!」

 

飯田くんが必死に宥めようとするけど、皆どこ吹く風だった。

村長さんたちは興奮しきりの皆を見ながらニコニコと笑顔を浮かべて早々に帰って行こうとしている。

飯田くんと百ちゃんが事務所の外まで見送りに行った。

こういう時でも委員長と副委員長として色々やっているのを見ると大変だなと思ってしまう。

まあそういうの関係なく2人が真面目なだけかもしれないけど。

 

 

 

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

御馳走はあっという間に皆の胃袋に収まった。

透ちゃんも大満足だったようで、ご満悦といった様子でだらけていた。

 

「おいしかったね~」

 

「ん……お刺身……すごく新鮮だったし……どれもすごく美味しかった……」

 

どれも美味しかったけど、南国の島だけあってお刺身は新鮮で脂ものっていて特に美味しかった。

それにしても透ちゃんのとろけ具合が凄い。このまま寝てしまいそうな勢いだ。

流石にそれはまずいだろうと思って透ちゃんに声をかける。

 

「透ちゃん……このまま寝ちゃう前に……早くお風呂入っちゃお……寝るのはその後……」

 

「そうだね~。流石に私も汗でべとべとだからこのまま寝たくないかな~」

 

返答はそんな感じのくせにだらーんとしたまま動かない。

もう無理矢理行こうと思って透ちゃんの手を引いて無理矢理立ち上がらせた。

 

「あー、ごめんね。ありがとー。お風呂入ろっか」

 

「ん……行こ……」

 

私と透ちゃんが歩き出そうとすると、ちょうど切島くんたちもお風呂に向かおうとしていた。

 

「じゃあ爆豪、俺ら風呂入って寝るから」

 

「宿直よろしく!」

 

切島くんと上鳴くんはそう言って爆豪くんの前を通り過ぎようとした。

そんな2人に、爆豪くんは一瞬きょとんとした様子を見せたけどすぐに吠えるように声をあげた。

 

「……なんでだよ!」

 

「だってお前、今日何もしてねーじゃん」

 

「……クソがぁ!!」

 

上鳴くんの指摘に何も言い返せなかったらしい。

宿直は他の家事も含めて当番制で回すことにしていたけど、全く働いていない元気が有り余っている人がいるなら調整するのは当然の流れだった。

 

「自業自得……」

 

「あはは、相変わらず辛辣だね。その通りだけど」

 

透ちゃんも言葉には出さないけど、やはり思うところはあったらしい。

私たちが再び歩き出してお風呂に向かおうとすると、百ちゃんや響香ちゃん、三奈ちゃん……あとはなぜかブドウ頭もこっちに向かってきた。

 

「私たちもよろしいですか?明日も早いですし」

 

「もちろん。私もいいかしら。皆で裸の付き合いね」

 

百ちゃんはいいとして……何言ってるんだこのブドウ頭。

 

「……は?……寝言は……寝ていったら……?」

 

「峰田、気持ち悪い裏声使ってついてくんな」

 

「いい加減懲りたら?」

 

「今度お風呂覗こうとしたら、相澤先生に報告するからね!」

 

「やめろ葉隠!強制送還されちまうだろうがぁ!」

 

このブドウ頭、昨日では飽き足らず今日まで覗きを試みようとしてきた。

昨日は私が即座に発見して、柱に紐で縛り付けた上で男子に監視を依頼したけど、隠れて見れないならさり気なく交ざれないかってことか。

あからさますぎる裏声まで使って自然についてこようとした。

あり得ない。普通にドン引きだ。強制送還でもなんでもされればいいと思う。

 

「うるっせぇ!!さっさと風呂いっとけや!!」

 

爆豪くんのイライラが爆発して怒鳴りつけてきた。

ブドウ頭はそれにビクッと反応して、そのまま男湯の方に駆けていった。

とりあえず昨日と同じように監視しとけばいいか。

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんは今日は後片付けの当番で今は洗い物をしているから、2人に声をかけて5人で女湯に向かった。

 

 

 

お風呂も上がって女子の大部屋でぐでーっとだらける。

林間合宿の時も似たような状況はあったけど、あの時は3日目で台無しにされてしまった。

今観光地ともいえる島の旅館の大部屋で、女子で集まって雑談しながら過ごすだけでもすごく楽しい時間だった。

お茶子ちゃんと梅雨ちゃんは今お風呂に入っているから、部屋にいるのは5人だけだけど。

 

「お茶子ちゃんたち戻ってきたら恋バナしよ!恋バナ!」

 

「昨日もそんなこと言って話したじゃん」

 

「恋バナの話題は尽きないでしょ!お茶子ちゃんのこともあるし……瑠璃ちゃんも新しいネタがあるからね!」

 

透ちゃんが不穏なことを言い出した。

急になんだ。思考が青山くん関連だからそういうことか。

言い訳を考えるのが面倒だからやめてほしい。

案の定透ちゃんの言葉に表情が変わった三奈ちゃんが詰め寄ってきてしまった。

 

「なになに!?波動に新しいネタって何かあったの!?」

 

「ふふふ、お茶子ちゃんたちが戻ってきてから話すよ!」

 

言い逃れするのが大変そうな雰囲気に、ちょっとげんなりしてしまう。

そんなことを思いながらどう言い訳しようかと考えていると、外で自主トレしている緑谷くんの所に爆豪くんが歩み寄っていた。

しかも『ちったぁ成長したのかよOFA』とかド直球にもほどがあることを言い始めている。

爆豪くんもなのか。緑谷くんほど口は軽くないと思ってたんだけど。

一応今は周囲に人はいないけど、いつだれが来るか分からない。

監視しておかないと……

 

爆豪くんと緑谷くんの話はそんなに長くはなかった。

早く個性をものにして俺と戦えっていう宣戦布告をしていただけだったからだ。

まあそこはいい。口の軽さはよくないんだけど。

問題はその話が終わった直後に、活真くんが2人の所にやってきたことだった。

思考を見ると、ヴィランが出たと嘘を吐くつもりらしい。

あの姉、弟まで巻き込むのか。弟を守るためっていう目的だったから目を瞑ったのに、それは流石に許容できない。

守る対象の弟本人が申し訳なさ、後ろめたさを感じているのが分からないのか。

 

「はぁ……」

 

「どうかしましたか?」

 

「ごめん……百ちゃん……ちょっと出てくる……」

 

「ちょっ!?これからせっかく恋バナできるのに!?」

 

私の言葉に透ちゃんが驚愕したような表情を浮かべて愕然としている。

そんなに恋バナがしたかったのか。

だけど今は他にやらなきゃいけないことがあるんだから仕方ない。

百ちゃんは私の表情を見て何かがあったことが分かったのか、真剣な表情で見つめ返してきていた。

 

「……昼間……嘘の迷子の通報……あったでしょ……今……また同じ子たちが……嘘を吐いて……緑谷くんと爆豪くんを連れて行った……」

 

「また嘘、ですか……?」

 

「ん……今度は……ヴィランが出たって……嘘を吐いた……流石に限度がある……さっきの注意……全く響いてなかったみたい……」

 

「それは……」

 

私の言葉に、百ちゃんを始めとした大部屋にいる女子が驚愕の表情を浮かべた。

 

「場所は分かったから……ちょっと注意してくる……このまま繰り返してると……狼少年になっちゃうと思うし……」

 

「私たちも行きましょうか?」

 

「ううん……人が多いと……威圧するだけだから……ちゃんと諭してあげたい……嘘の主犯……あの子……お姉ちゃんとして弟を守ろうとしてるだけだから……そのためにこっちを試そうとしてただけだったから……」

 

「そういうことなら……分かりましたわ。何かあったらすぐに連絡してくださいね?」

 

「ん……約束……」

 

とりあえずあんまり離され過ぎても面倒だから、3人を追いかけるために早々に部屋を出る。

4人とも心配そうにはしてたけど、特に文句もなく見送ってくれた。

向かう先は、城跡だ。

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