波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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ヴィラン襲来

翌日も朝から大忙しだった。

私もついさっきまで対応していた迷子探しの事務処理をしていた。

宿直明けの爆豪くん以外は皆大忙しで休みなく働いていた。

今もひっきりなしに鳴りっぱなしになっている電話を三奈ちゃんが取っていたところだった。

 

「はい、雄英ヒーロー事務所です……旅行バッグの紛失ですね、わかりました。すぐ向かいます……商店街で観光客の荷物が無くなって……」

 

聞き取りが終わったらしい三奈ちゃんが事務所を見回す。

それに気が付いた透ちゃんがすぐに手をあげた。

 

「私、行く行く!青山くん、ご一緒しよ!」

 

「ウィ☆」

 

透ちゃんはちょうど手が空いていた青山くんを指名して、青山くんもすぐに承諾していた。

そんな様子を見ながら、隣で事務作業をしていた峰田くんが呆れた感じで呟いた。

 

「また忘れ物かよ。そのくらい自分で……」

 

「依頼者の声……すっごくかわいかったなぁ……」

 

ボヤく峰田くんに三奈ちゃんがうっとりしたような感じで言った。

今の三奈ちゃんの思考からして、声がかわいいのは嘘じゃないけど男の人と話している声が聞こえたみたいだし、多分カップルの旅行者だろう。

なかなかのトラップだ。

そんなことは露とも知らない峰田くんは簡単に引っかかった。

 

「うっひょーい!困ってる人はほっとけねーぜ!」

 

峰田くんはすごい勢いで走って行った。

透ちゃんと青山くんも苦笑いしながらそれに続いていく。

 

「三奈ちゃん……策士……なかなかのトラップ……」

 

「へへ、そうでしょ~」

 

「でも……カップルって分かった途端……迷惑かけないか心配……カップルじゃなくても迷惑かけそうだけど……」

 

「その辺は葉隠もいるし、何かあれば止めてくれるでしょ。大丈夫大丈夫!」

 

透ちゃん任せか。まあ透ちゃんなら行き過ぎた行為をしたら、問答無用で制裁してくれると思うから大丈夫だと思うけど。

そんなことを話していると、また応援要請の電話を受けていた百ちゃんが声をあげた。

 

「障子さんから、ビーチに応援が欲しいとのことですわ」

 

「なら俺が行くよ」

 

尾白くんがすぐに反応して出ていった。

 

「俺も定時パトロールに……」

 

「僕も、新島さん家の畑のお手伝いに行ってくるね」

 

尾白くんに続いて常闇くんと緑谷くんもそう言って出ていった。

ただ緑谷くんは出てすぐの塀の所で活真くんに遭遇したみたいで、話し込み始めた。

活真くんはどうやら昨日の件を謝りに来たらしい。

ちゃんと謝れるいい子だ。しかも怖い思いをさせられた爆豪くんに対しても、伝言ではあるけどちゃんと謝ろうとする意志を持っている。

その後はしばらく緑谷くんとお互いにヒーローを目指していることとかに関して話してから、活真くんは去って行った。

 

そんな緑谷くんが活真くんと話している姿を見た島の人が、真幌ちゃんたち姉弟の事情を説明してくれていた。

母親が死んで、父親は年中出稼ぎに出ていて家にいないという内容だ。

ベランダにいた爆豪くんも何気なくその話を聞いていた。

 

 

 

夕方になった。

今事務所にいるのは事務所を空にしないように残っていた飯田くんと当直明けの爆豪くん。あとはついさっき戻ってきた私とお茶子ちゃんだ。

ちょうど村長さんが様子を見に来てくれたこともあって、私たち3人は来客対応をしていた。

 

そのタイミングで、電話がなった。

私が取ろうと思って事務所の方に戻ると、うろうろしていた爆豪くんがちょうど電話を取ってくれていたところだった。

 

「なんだ?チンケな依頼だったら……」

 

『ヴィランが漁港に出たの!』

 

受話器からは、真幌ちゃんの声が聞こえた。

その声はすごく切羽詰まった感じで、明らかに様子が違っていた。

 

「その声……昨日のクソガキだな?おまえなぁ、そう何度も騙されると……」

 

『嘘じゃないって!本当なんだってバクゴー!昨日瑠璃さんに言われたんだもん!もう嘘なんて吐かないよ!』

 

明らかにまともに取り合うつもりのない爆豪くんから、受話器を奪い取った。

 

「てめぇなにすん「真幌ちゃん……!漁港だよね……!今すぐ向かうから……!!」

 

『瑠璃さん!うん、はやくき』

 

そこでブツっと通話が途切れた。

明らかに切羽詰まった様子の声が聞こえていた受話器を、私と同じように爆豪くんから奪い取ろうと考えていた緑谷くんもこっちを覗き込んできた。

 

「波動さん!真幌ちゃんなんて!?」

 

「漁港にヴィラン発生……!昨日真幌ちゃんと……もう嘘の通報はしないって約束してる……その約束に……嘘は一切なかった……!今の切羽詰まった感じ……本当だと思う……!」

 

「じゃあ今すぐに向かわないと……!」

 

緑谷くんは、すぐに漁港の方に走って行った。

爆豪くんも不満そうにしているけど、私が嘘はないというならと言う感じで動こうとしている。

私もすぐに走り出そうと思ったけど、範囲内の端っこに、バイクでこっちに向かってくる島の人の慌てふためいた感じの思考を感じ取った。

 

「爆豪くん……!ちょっと待って……!」

 

「あ?」

 

「ヴィランが他にも来てる可能性がある……!漁港はもう緑谷くんが行った……確認して割り振るから待って……!」

 

短くそう告げると、爆豪くんは舌打ちしながらも止まってくれた。

逃げてきている島の人の思考からして、商店街は確定。

今の固定電話の切れ方も、真幌ちゃんが襲われたとかじゃなくて、電話自体をどうにかされた可能性が高い。つまり、通信基地の方にもいる可能性がある。

それに加えて真幌ちゃんの漁港にヴィランが出たという情報もある。

とにかく、皆にすぐに知らせないといけない。

 

『ヴィラン発生……!確定している場所は、商店街、漁港……!その他複数発生している可能性あり……!事務所の近くにいる人はすぐに戻ってきて……!!5分以上かかる人は私の指示を待って……!!』

 

最初に飯田くんにテレパスをして、その後範囲内にいる近い人から順にテレパスをしていく。

こういう時、複数に対してテレパスできないのがもどかしい。

複数人の波動に同時に干渉するのは難しくてまだできていないのだ。

やろうとすると精度が一気に落ちて、ほぼノイズになってしまう。

 

「波動くん!!今のテレパスは本当か!?」

 

テレパスを聞いて、玄関にいた飯田くんとお茶子ちゃんがすぐに飛び込んできた。

 

「ん……!商店街から逃げてきてる島民の人の思考を読んだ……!真幌ちゃんから漁港にヴィランが出たっていう通報も直前で入ってる……!そこはもう緑谷くんが向かった……!それに、ついさっき固定電話もダメになった……!通信基地付近にもいる可能性が高い……!」

 

私が飯田くんにそこまで伝えたところで、響香ちゃん、上鳴くん、百ちゃん、砂藤くん、切島くんが順番に駆け込んできた。

皆依頼が終わって戻ってくるところだったようだ。

範囲内には少し離れた位置に三奈ちゃん、轟くん、口田くんもいる。

その3人には少し遅れる形になっちゃったけど、テレパスで動かずに待っていて欲しいことを伝えた。

 

「あと範囲内にいるのは……三奈ちゃん、轟くん、口田くん……指示通り待機してくれてる……!」

 

「分かった……躊躇している時間はない!班を3班に割って対応にあたる!!」

 

飯田くんはすぐにでも対応を考え始めてくれた。

その考え自体はすぐにまとまって、この場にいる人を確かめるように見渡しながら話し始めた。

 

「爆豪くん、切島くん、上鳴くんは商店街にいるヴィランを迎撃!八百万くんは耳郎くん、芦戸くんとともに商店街の島民の救助を!轟くん、砂藤くんは俺と一緒に基地局の方へ!波動くんと麗日くん、口田くんは漁港の方へ!波動くん、この場にいないものへの指示を頼む!」

 

飯田くんがそこまで言い切ったタイミングで、感知範囲の端に常闇くんが飛び込んできた。

浜辺にヴィランが出て応援要請に来たらしい。

……浜辺となると、基地局が近いはず。同一か、それとも別か……まだ何とも言えないけど……

 

「ごめん飯田くん……!今常闇くんが浜辺にヴィラン発生の報告をもって……範囲内に入ってきた……!」

 

「浜辺まで!?……そうなると……」

 

私が追加で情報を伝えると、飯田くんが少し考え込み始めた。

その隙に、既に考えがまとまった百ちゃんが声を張り上げた。

 

「商店街のグループは変えずにそのままで!浜辺のヴィランが基地局を破壊したものと同一かは分かりませんが、浜辺の方に轟さん、常闇さん!飯田さんは砂藤さんと基地局近辺を確認し、そこにヴィランがいればその対応へ!いなければ浜辺に合流を!麗日さんと口田さんは浜辺にいる人々の救助と避難を!波動さんは緑谷さんと合流し、漁港の対応に当たってください!飯田さん、これでよろしいですね?」

 

「ああ!問題ない!」

 

飯田くんもすぐに了承した。

人が多い商店街の方の初動対応を多めに割り振ったまま、浜辺の方にはもともと人がいるから、火力のある轟くんを増援に。機動力のある飯田くんとパワーのある砂藤くんを基地局の確認に向かわせて、お茶子ちゃんと口田くんを浜辺の避難誘導に。すでに緑谷くんが向かっている漁港の方には合流しやすい私。理に適っていると思う。

そのタイミングで、常闇くんが駆け込んできた。

 

「報告!海岸にヴィランが出現!尾白たちが防戦中、応援を請う!」

 

「大丈夫……!把握してる……!常闇くんはこの地点にいる轟くんを拾ってそのヴィランの対応に当たって……!ヴィランが複数発生してる……!海岸すぐ近くの基地局近辺を確認次第……飯田くんと砂藤くんが合流する……!海岸の避難にはお茶子ちゃんと口田くんが向かう……!」

 

「なっ!?早いな!助かる!」

 

私がすぐに地図に轟くんがいる地点に印をつけて、常闇くんに渡す。

常闇くんはお礼を言いながら受け取って、地図を確認している。

そんな常闇くんを見ながら、飯田くんが全員に手短に声をかけた。

 

「よし!雄英高校ヒーロー科、1年A組!出動!」

 

皆がその掛け声に応えて、駆け出した。

私も駆け出しながら、三奈ちゃんと口田くんに作戦会議の結果をテレパスで伝えた。

この2人は避難誘導だから、現場にばらばらに向かっても大きな問題はない。その場から向かってもらった。

轟くんは常闇くんが問題なく回収してくれている。

私も漁港に向かって波動の噴出を繰り返して大急ぎで向かった。

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