波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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尋問

あの後、私たちは島民の人達と一緒に島で一番大きいサトウキビ工場に避難していた。

島の中心部は重要な施設も含めて半壊状態。

一応私たちが分散して速やかに到着できたのもあって、まだ襲撃されてなくて無事なところもある。

だけど、各々が自宅にいるなんて状況でヴィランから守りきるのは不可能。

さらにいうと、壊された施設は火災が起きていた。夜になって雨が降ってくれたおかげでなんとか鎮火できたというだけで、学校や港の倉庫といったような目立つ施設は壊されている。

事務所の方も島民の人達を避難させるスペースなんてない。

工場の他に避難できる場所がなかったのだ。

 

護衛も必要と言うことで、私たち全員でこっちに来て護衛をしつつ、設備を整えているところだった。

設備の整備は百ちゃんと上鳴くんが一手に担ってくれた。

百ちゃんが最低限の生活必需品や防災グッズを出し続け、上鳴くんが電気室で発電機を手に放電し続けてくれているのだ。

そのおかげで最低限ではあるけど明かりも使えるし、物にも困らないという状況が出来上がっていた。

 

広い作業場では炊き出しも行っていた。

尾白くんや切島くん、青山くん、透ちゃんが率先してやっていている感じだ。

料理を作るということで私も手伝おうかと思ったけど、透ちゃんや青山くんを筆頭に固辞された。

私は周囲への警戒に集中してほしいと言われてしまえば言い返すことなんてできるはずもなく、周囲の警戒をしつつではあったけど島民の人の様子を確認して回っていた。

島民の人達は、不安に支配されている。

平和な島だったのにいきなりこんなことになれば当然のことだし、プロのヒーローを呼ぶことができないというのもその不安を助長していた。

この不安をどうにか軽減できないかと考えていたのだ。

炊き出しの手伝いをしてくれていた村長さんも、不安そうな様子で飯田くんに声をかけていた。

 

「ヴィランはどうなったかの?」

 

「安心してください。みなさんは我々が必ずお守りします」

 

「……私の個性で……周囲の感知を続けています……半径1km周囲は……常に監視できるので……何も指示が無いままなら……ヴィランの接近はないと思ってくださって大丈夫です……」

 

「そうか……」

 

飯田くんが不安を払拭するために意識して力強い笑顔を浮かべているのに合わせて、私も自分の個性で監視していることを伝える。

少なくとも、今ここに危険はない。

ヴィランが引いた理由も、デメリットによって細胞が死滅した影響で負ったダメージを回復するため。

少しの間は大丈夫だ。

一応、ヴィランが逃げた場所は灯台の方だっていうのは、さっきの女ヴィランの思考から分かっている。

だけど、あの複数個性のヴィランがいつ復活するのか、どれほどの力を秘めているのかが分からない現状で、襲撃するのは悪手であると言わざるを得ない。

じゃあ灯台を監視していればいいのかと言うとそうでもない。

どんな個性を秘めているか分からない以上、どこにいても奇襲される可能性は拭えない。

常時監視するために索敵班4人から私を含めて何人か駆り出すにしても、リスクが高すぎる。

何かあればすぐに指示を出すという後手の対応になるしかなかった。

 

「飯田くん……私……ボイラー室に行ってくるから……何かあればテレパスする……」

 

「ああ、頼む。警戒から情報収集まで、負担をかけて済まない」

 

飯田くんに断って、ボイラー室に向かう。

できる限りの情報を抜かないと、安心もできないし、作戦も立てられない。

周囲を確認しつつ、ヴィランが意識を取り戻したらして欲しいと頼まれていたことがある。

意識を取り戻したヴィランは、すぐに状況を理解していた。

監視をしていた三奈ちゃんが簡単な質問をしていたけど、一切答えるつもりはないらしい。

それなら、私の出番だ。

 

 

 

包帯の個性のヴィランは、ボイラー室に拘束されていた。

カメラとセンサー、それに両手を封じる重厚な手枷をして何とか拘束しているという状態だった。

扉を開けて、センサーとかは起動したまま話しかける。

 

「……包帯のヴィラン……今からいくつか質問をする……正直に答えることをお勧めする……」

 

「また尋問か?何をされても、拙者は何も話すつもりはない」

 

「まず……あなたの名前は……?」

 

男は黙ったまま何も答えない。でも深く思考を読めば質問に反応して答えを思い浮かべているから容易に分かる。

巻原包傭。ヴィラン名マミー。

読んだ内容を記録していく。

 

「あなたたちの目的は……?」

 

「……何を聞かれても答えるつもりはない。拷問でもなんでも、好きにすればいい」

 

「そこまでする必要……ない……目的は個性……細胞活性の強奪……そうだよね……?」

 

マミーの思考が驚愕に染まった。だけど、表情は変えていない。

こっちが反応から伺おうとしていると考えている。

そして思考からして、目的は細胞活性の個性をヴィラン名、ナインが奪うことで、デメリットを克服することであることは分かった。

そして、それによってナインが強者に君臨する力を手に入れて、世界の王になろうとしていることも。

 

「個性の強奪……ラグドールさんのサーチの個性……あなたたちは……ヴィラン連合と関わりがある……その関係は……?」

 

「っ……!?」

 

「次……その個性で……どんな個性を奪ってきたの……?」

 

ナインはさっき読んだ通り、強者の頂点に立ち、世界の王になるために、ヴィラン連合に自分を売ったようだった。

実験体になることで、その利益を享受する。

それによって得た個性を奪う個性。

それを使って、今までプロヒーローを何人も襲撃してきた。

元々の個性はデメリットが非常に重い気象操作。そこにAFOの細胞を移植されることで個性を奪う個性を手に入れた。

実験でAFOの個性因子が適合したのはいいけど、一方でデメリットがさらに重くなってしまった。

そのせいで、デメリットは細胞の死滅という凄まじい重さにまで至ってしまった。

だけど、AFOの力を手に入れるという強化自体は成し遂げていた。

そうして得た衝撃波を放つ個性、バリアの個性、爪弾の個性、使い魔召喚の個性、それにラグドールさんのサーチ。

デメリットを克服するために活真くんのお父さんの細胞活性を手に入れた。

 

「……活真くんの細胞活性……なんで奪いたいの……?デメリットがあるにしても……こんな所まで来るほど……?」

 

「……」

 

マミーはこちらの様子を伺うように見てくる。

だけど、目的の大筋はつかめた。

活真くんのお父さんの個性だとA型細胞しか活性化させられず、足りなかったらしい。

そこで同じ個性を持っている可能性がある子供を探して、活真くんがB型細胞の活性化ができる細胞活性だったから狙っているということだった。

 

「なるほど……ナインの個性のストック上限は……いくつ……?」

 

「お前……まさか……!?」

 

「気付いたね……でも気付いてもどうすることもできないよ……ストックは8個……あと2つか……」

 

ここまでの答えを全く求めない質問に対する違和感。

そして私が言及したどう考えても知るはずのない情報。

それらから読心の可能性に気が付いた。

だけど、気が付かれたからどうなるのかという話だ。

特殊な訓練でも積んでいない限り、質問に対して欠片も思い浮かべないというのは不可能に近い。

トガのようなミスディレクションでも使えない限り不可能なのだ。

悪意を持つヴィランの不愉快な思考を深く読んでいるせいで、イライラしてきているのが自分でも分かる。

 

「あなたたちは4人で来てる……それ以上の仲間はいない……間違いない……?」

 

「っ……お前……!お前……!」

 

「文句を言っても何も変わらない……キメラ……スライス……その個性は……?」

 

地を這うような低い声とともに憎悪を向けてくるヴィランに、吐き気を覚える。

でもこんなの気にしてたら情報なんて得られない。

こいつらは4人組で間違いない。増援はない。

ヴィラン名キメラの個性、"キメラ"。名前そのまま、キメラのように多くの動物の特徴を持つ。火を吹いたりもできる。

ヴィラン名スライスの個性、"スライス"。自らの髪を刃物に変化させることができる。

2つともあまり弱点という弱点がなさそうな個性か。

 

「ナインのあの背中の装置……あれは何……?」

 

マミーはついにこっちの言葉になるべく反応しないように、無心を意識し始めた。

でも、全然無心になんてなれてない。トガのミスディレクションの足元にも及ばない。

あれは個性の制御装置。あれが無くなればナインは暴走状態になり、個性の出力が大幅に上がる。

デメリットも相応に大きくなるけど、何かあれば使ってくる可能性がある諸刃の剣か。

 

そんな感じで、しばらく尋問を続けて必要な情報を抜き取った。

マミーは意気消沈と言った様子で、こちらを恨みがましく睨んでいた。

 

 

 

尋問を終えた私は、得た情報をまとめた後に仮設医務室に向かっていた。

情報の共有はこの後、炊き出しとか諸々が落ち着いてから行う予定になっている。

得た情報をすぐに伝えたところで何かが変わるわけでもないし、皆忙しそうに出来ることをしている。

こちらからナインを襲撃するのは、既に回復していたり別行動をしてこっちに向かっているヴィランがいたりした場合に困る。

万全の状態のナインに対して、こちらから襲撃して勝てるとも思えない。

戦力を分散したら尚更だし、キメラとかの実力を聞いたかぎり防衛側が島民を守り切れるかも怪しい。

私が1人で偵察に行っても、その分ここの警戒は手薄になる。

島民の人たちに被害が出るかもしれない賭けなんて、出来るわけがなかった。

正直、市民を背負うことによる制約というものを甘く見ていたと痛感させられた。

 

だからひとまずは現状維持として、私も警戒しながらでもできる作業をしようと考えたのだ。

それが、波動の譲渡による活力の回復だった。

一応、少し前にこれには必殺技名を付けた。リカバリーガールにも十分技として成立しているとお墨付きをもらったのだ。

名前は"癒しの波動"にすることにした。体力を回復するし、悪くはないと思っている。

とにかく、癒しの波動で怪我人とかの体力の回復を促す。

後はまだ目を覚まさない緑谷くんと爆豪くん。

今活真くんが治療をしてくれているけど、時間がかかりそうだ。

細胞の活性化で治癒を促している形なら、活力の回復を併用すれば多少効果は上がるだろう。

 

「活真くん……」

 

「瑠璃ちゃん?」

 

医務室で手伝いをしていたお茶子ちゃんが、すぐに私に反応する。

そのお茶子ちゃんに事情を説明する。

 

「尋問終わったから……手伝う……」

 

「そっか……うん、助かるよ」

 

「ん……」

 

お茶子ちゃんも納得はしてくれた。

すぐに活真くんの前に移動する。

 

「活真くんの細胞活性……細胞を活性化して……傷の治りを早くしてるんだよね……」

 

「え、えっと……多分……?」

 

多分難しいことは何も分かっていない活真くんの正面で、緑谷くんと爆豪くんに手をかざす。

 

「手伝うよ……私……体力の回復ができる技がある……私の技だけだと……なんの治療にもならないけど……一緒にやれば……治りも早くなるはず……一緒に頑張ろう……」

 

「う、うん!」

 

活真くんが気合を入れなおして治療を始めた。

私も癒しの波動を使い始めて、少しずつ波動を譲渡していく。

それから作戦会議の時間になるまで、医務室で治療を続けた。

一度緑谷くんたちの方への譲渡を中断して、他の治療が落ち着いた人たちや危険な状態の人達への波動の譲渡もした。

流石に疲れてくるけど、それでも必要なことだと思って診療所の先生や活真くんと一緒に治療を続けた。

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