波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

162 / 268
島とお別れ

「いってええええ!!どうなってんだ、こりゃあ!?」

 

爆豪くんのその叫び声で目が覚めた。

活真くんやリカバリーガールから治療を受けている緑谷くんや爆豪くんの横で寝かされていたようだった。

ちょうど爆豪くんがリカバリーガールに個性を使われていたところだったらしく、その様子を真幌ちゃんが凄い表情で凝視していた。

 

身体は何とか動く。

起き上がると、部屋の中にいた皆の視線が集まったのを感じた。

 

「波動さん!よかった!」

 

「瑠璃さん!目が覚めたのね!」

 

「ん……動けそう……大丈夫……ありがと……」

 

緑谷くんと真幌ちゃんがすぐに笑顔で声をかけてくれた。

活真くんもこっちをちらちら気にしているけど、緑谷くんの治療中だったみたいで、そっちに集中しているようだった。

……緑谷くんが全く暗い雰囲気じゃない。

強がりとかやせ我慢でもない。

個性が無くなったはずなのに、どういうことだろうか。

そう思ってテレパスをかける。

 

『緑谷くん……大丈夫なの……?個性……』

 

『うん。なんでかは分からないけど、OFA、僕の中に残ったままだったんだ』

 

どういうことなんだろうか。

確かに爆豪くんがOFAを使っていたから、譲渡していたと思うんだけど。

爆豪くんは爆豪くんでナインとの闘いの最後の方を全く覚えていないみたいで、腕が赤黒く変色していることに疑問符を飛ばしながら悶えている。

意味が分からない。

あれで譲渡できてなかったならどうすれば譲渡完了という扱いになるんだ。

OFA、相変わらず謎過ぎて理解が追い付かない。

 

それにしても、爆豪くんの腕はリカバリーガールの治癒を受けたはずなのに赤黒いままだ。

体力が足りなくて治療しきれないんだろうか。

爆豪くん、すごく痛そうだし、ちゃんと治癒しきるためにも私が手伝った方がいいかな。

 

「……リカバリーガール……治癒……手伝います……」

 

私の提案を聞いた瞬間、リカバリーガールの表情が凄く険しいものに変わった。

 

「馬鹿言ってんじゃないよ!あんた波動の枯渇で死にかけてた自覚あるのかい!?まだ回復しきってないのに譲渡なんてさせるわけがないだろう!黙って寝てるんだよ!」

 

「ご……ごめんなさい……」

 

リカバリーガールがかつてないほどの剣幕で叱りつけてきた。

波動が回復しきっていないのも承知の上で、できる範囲で譲渡する提案のつもりだったんだけど。

……でもこれも言い訳か。

リスクがあるのは確かだ。安全を考えるならやらないに越したことはない。

リカバリーガールも認めてくれそうにないし、私は言われた通り寝ていることしかできなかった。

 

 

 

しばらく休息と睡眠を取って、ようやく普段の状態まで戻った。

緑谷くんと爆豪くんももうすっかり良くなっている。

真幌ちゃんと活真くんは私たちの回復を確認してから、ちょうどナインの襲撃で負った怪我による入院生活が終わって帰ってきた父親のお迎えをしていた。

2人ともナインに立ち向かった気丈な姿からは想像できないほど子供らしい満面の笑みを浮かべて、父親に抱き着いていた。

私たちも2人の子供らしいその姿を微笑ましい思いで見てから、再会を邪魔しないように静かに事務所に戻った。

A組の皆はボロボロに破壊された島の復興の手伝いに出ていて今は事務所にいない。

どこも人手が足りないのだ。

高校生とはいえ、ヒーロー候補生の手伝いは非常に重宝されていた。

私たち3人は重傷や長時間の気絶という状態だったこともあって、今日までは手伝いは免除。

明日から事務所に復帰して復興の手伝いをすることになっていた。

 

実務的ヒーロー活動推奨プロジェクト自体は公安からすぐに中止を指示されていた。

だけど、こんな状況になってしまった島を見捨てるなんてことが皆に出来るはずもなかった。

数日後に来るという後任のヒーローが来るまで続行させて欲しいと嘆願した結果、渋々ではあったものの了承してもらえたのだ。

こんな事態に陥った手前、公安としてはすぐにでも私たちを引き上げさせたかったみたいだけど、オールマイトや相澤先生の口添えでどうにか納得してもらえたという感じだった。

 

その後に、警察と公安が私に対して今回の件の事情聴取をしてきた。

警察の思考を見る限り、事情聴取自体はもう皆にしてあって、公安が私に聞こうとしているのはヴィラン連合のことのようだった。

ただ、尋問の内容は皆から伝わっているみたいだし、それ以上の情報はない。

個性の複製の可能性、普通の人間に他人の個性因子を適合させる実験とかの情報を教えたら、顔を青ざめさせて絶句するなんていう皆と同じ反応をしていた。

治療が終わったばかりということで、この場はそれでお開きになったけど、なんとも言えない感じだった。

 

 

 

翌日からは予定通り私たち3人も復興作業の手伝いを始めた。

あまりの惨状にちょっとくらい負の感情を抱いている人がいるのかと思ったらそうでもなくて、島の人たちは命が救かったんだからなんとでもなると考えているようだった。

ちょっと理解しがたいポジティブ思考だけど、それでもそんな思いで島の人たちは奮起していて、島がキレイになっていくにつれて笑顔が戻っていっていた。

私は基地局が無くなって連携に困っていた島の人たちの依頼を受けて、商店街とかの建物が多いエリアの中心で、テレパスを利用した電報や電話紛いのことをしていた。

私がテレパスができると島の人たちが理解してからは、こちらをメインにやっていた感じだ。

ヒーローへの協力要請から伝言、呼び出し、居場所の確認などなど、結構な人数が常に周囲にいて、お願いされる電報、伝言のメモが山のように形成されていた。

 

「ばあちゃんがまたぎっくり腰になっちまってねぇ。飯田くんとか、どなたかヒーローの手を借りたいんだけど……」

 

「分かりました……少々お待ちを……」

 

『飯田くん……その地点から西に150m……南に400mの地点で……佐藤さんがぎっくり腰になってる……救助要請……』

 

『分かった!すぐに向かう!』

 

「飯田くんに伝えました……今から向かってくれます……」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「新島さんに伝えてほしいことがあってね、これなんだけど。急ぎじゃないから頼めるかい?」

 

「分かりました……今は範囲内にいないので……入り次第伝えておきます……」

 

「田中さんを港に呼び出せるか?いい加減保存食だけじゃ飽きが来る頃だし、漁に出るから一緒にどうかって感じで」

 

「田中さん……はい……すぐに伝えます……」

 

「瑠璃さん!活真が迷子になっちゃったの!」

 

「落ち着いて真幌ちゃん……活真くんは……―――」

 

範囲内にいれば即テレパス、いなければ入ってきたらテレパスという作業を繰り返していたせいか、島の人たちの波動を大体覚えてしまった。

それもあってか、最終的には名前を言われてその人が範囲内にいれば即特定してテレパスできる程度には熟練度が上がってきていた。

 

 

 

そんなこんなで数日後。

後任のヒーローが島にやってきた。

私たちA組は最低限の引き継ぎを行って、晴れて任期満了となった。

 

その翌日。私たちは誰もいない朝靄のかかる漁港で、公安委員会が用意した特別輸送船に乗り込んでいた。

 

「何も黙って帰ることなくね?」

 

「ねぇ」

 

荷物を積み終えた皆は、デッキに上がって名残惜しそうに島を見つめていた。

そんな中で発された上鳴くんのそんな声に、三奈ちゃんが同意を示していた。

 

「復興の邪魔をするわけにはいかない」

 

「ん……最低限……大まかな修繕はしたし……通信基地の再建も確認した……出来ることはしたはず……」

 

言った通り、大まかで最低限の修復はしたし、通信基地も急ピッチで再建されて電話が通じるようになった。

まだ住む家が無くて日常生活に戻ったと言えないような状態の人もいるけど、それでも最初の状態よりはマシになっていた。

だけどまだそんな状態だから、見送りなんかで時間を取らせるのは良くないってことで、島の人たちには内緒で帰ることにしたのだ。

 

「ま、黙って立ち去るのも……」

 

「ヒーローっぽいか」

 

「ええ」

 

上鳴くんに続く形で切島くんが納得する。

そんなかっこつけとも取れるようなセリフには、百ちゃんも同意していた。

 

そんな風に和気藹々とこっそり立ち去ることに関して話していると、活真くんと真幌ちゃんが手を振りながら船に向かって走ってきた。

 

「おーい!おーい!みんなー!!」

 

その元気な声に皆もすぐに気が付いて、笑顔で手を振り始める。

活真くんたちはそんな私たちを確認してから、大きく息を吸い込んだ。

 

「島の人たちを!」

 

「守ってくれて!」

 

「「ありがとう!」」

 

まるで島民を代表するかのように感謝の気持ちを伝えてくれる2人に、皆の笑顔がさらに深くなった。

船に向かって走り続ける真幌ちゃんは、私を見つけると声を大きく張り上げた。

 

「瑠璃さん!私!ちゃんと活真を守れるように頑張るから!もうやり方を間違えたりしないから!」

 

「ん……やっぱり真幌ちゃん……いいお姉ちゃん……」

 

真幌ちゃんの活真くんを想う心は相変わらず純粋でキラキラしていて、私も思わず笑顔を浮かべてしまった。

真幌ちゃんに向けて、しっかりと頷いて手を振り返しておく。

そんな中、活真くんは緑谷くんが一番上のデッキにいるのを発見すると、一際大きく声を張り上げた。

 

「デク兄ちゃん!僕、強くなるからね!お父さんと姉ちゃんを守れるくらい強くなるから!そして、デク兄ちゃんやバクゴーみたいな、かっこいいヒーローに絶対なってみせる!」

 

「……その言葉ぁ忘れんな、クソガキ」

 

「活真くーん!!君は……!!君は、ヒーローになれる!!雄英で待ってる!!」

 

緑谷くんは泣きそうになりながら笑顔を浮かべて大きく手を振って叫んでいた。

爆豪くんですら満更でもなさそうな笑みを浮かべている。

それにしても緑谷くん、雄英で待ってるなんて言って、活真くんが雄英に入れるようになるくらいの頃に雄英にいるつもりなんだろうか。

留年?教師?

多分緑谷くんはそこまで考えたりしていないんだろうけど、活真くんが本気になればヒーローになるのはそう難しいことじゃない。

彼の治癒系統として見ても上位に当たるであろう、リカバリーガールに匹敵するとすら見ることができる個性。どこへだって引く手数多だ。

そんな個性があって、あれだけ純粋で温かい、期待と希望を抱いている少年なら、きっとヒーローになれる。

後は彼の頑張り次第。雄英を目指すのは中々難しいと思うけど、そのあたりは真幌ちゃんがいる。

今の真幌ちゃんなら、活真くんがヒーローを目指すのを否定しないで、全面的に協力してあげるだろう。

2人の力が合わされば、きっと雄英にも入ることができる。

そうすれば、いつか本当に雄英高校で会えるかもしれない。

そう思うと、胸がポカポカしてくる気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。