波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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クリスマスパーティー(後)

「遅くなった……もう始まってるか?」

 

静かに扉が開いて、相澤先生とエリちゃんが入ってきた。

エリちゃんは子供用のワンピース風のサンタ服を着ている。

エリちゃんの帽子のポンポンはノーマルな白いやつが付いている感じだ。

すごく似合ってる。

 

「とりっくぉあ、とりとー……?」

 

「違う、混ざった」

 

「「「サンタのエリちゃん!」」」

 

エリちゃんが頬を赤く染めながらちょっとズレたことを言っている。

確認するように先生の方を向いている姿がかわいい。

私も含めたエリちゃんと面識のあるインターン組はエリちゃんの方に近寄って行った。

 

「かっ可愛~!」

 

「似合ってるねぇ!」

 

「通形先輩はいないんすか!?」

 

「今日はこっちでと伝えてある。クラスの皆と過ごしてるよ」

 

お茶子ちゃんだけヘッドスライディングで滑りながら近寄っている。

あれ、痛くないんだろうか。

 

「おにわそと、おにわうち」

 

「それも……ちょっと違うね……」

 

豆をまき始めるエリちゃんに苦笑しながら声をかける。

パーティーに誘った時点で、色んな行事について調べていたということだろう。

エリちゃんのポケットに卵が2つ入っているのも見えるから、イースターのことまで混ざってるみたいだし。

それだけ期待してくれていたようだ。

 

「卵に絵かいた」

 

「それはイースター!」

 

「ありがと……絵……上手だね……」

 

エリちゃんはそのままポケットから2個の絵が描かれた卵を取り出すと、私とお茶子ちゃんの手に1個ずつ乗せてくれた。

すごく凝ってる。時間をかけて作ったのがよく分かる出来だった。

 

「エリちゃん、ジュース飲む?」

 

「飲む!」

 

三奈ちゃんがコップを持ちながら声をかけてあげている。

ちゃんとリンゴジュースを選んであげていた。

エリちゃんがジュースを持ったのを確認して、皆もそのままの流れでジュースを手に持った。

 

「さて、それでは~―――」

 

「「「Merry Christmas!!!」」」

 

「め、めりー、くりすます!」

 

三奈ちゃんの音頭で皆で一斉にコップを掲げて乾杯をした。

エリちゃんも見様見真似でコップを掲げている。

そこからはもう大騒ぎだ。

お腹が空いていた皆が一斉に料理を手に取り始めた。

お茶子ちゃんなんて一目散にチキンを手に取っている。

透ちゃんもパエリアをお皿に取り分けていた。

 

「いっぱい作ったから……そんなに慌てなくてもいいのに……」

 

「ルリさんがつくったの?」

 

私が苦笑いしていると、エリちゃんが心なしかキラキラした目で見上げながら声をかけてきた。

しゃがんでエリちゃんに目線を合わせて答える。

 

「ん……そうだよ……お茶子ちゃんと梅雨ちゃん……砂藤くんとも協力したけど……並んでるご飯は全部私たちの手作り……いっぱい食べてね……」

 

「うん!」

 

エリちゃんも食べ物の方に駆けて行った。

目が輝いているし、涎も垂れそうになっている。

凄い量が並んでいる御馳走に心が奪われているようだった。

相澤先生と話していた緑谷くんがすかさずエリちゃんに近づいてサポートしてあげ始めた。

気が利いてるな緑谷くん。私がサポートしようかと思ったけど、緑谷くんがいるなら必要ないか。

 

「瑠璃ちゃんも食べなよー!」

 

「ん……そうだね……」

 

透ちゃんも呼んでくれたし、透ちゃんの隣に移動して私も食べ始めた。

 

 

 

そこからは結構カオスな感じだったけど、賑やかな楽しいパーティーが繰り広げられた。

ダークシャドウが宙を舞って食事を物色していたり、砂藤くんが渋々席についていた爆豪くんの口にチキンを放り込んでいたり、髭までつけたサンタ飯田くんの指揮で響香ちゃんが生演奏で歌い始めたり、その横で透ちゃんが踊り始めたり。

青山くんが僕のきらめきショーとか言って文化祭で提案していたことを皆の前でやり始めたり。

お茶子ちゃんなんてチキンを持って小躍りしていたし、普段からにぎやかな皆なのに、今日はいつにも増して賑やかな感じだった。

相澤先生はそんな大騒ぎも見ているだけと言った感じだったけど、障子くんが飲み物を持って行っていた。

流石にそれだけだと何ともって感じだし、食事も持って行こうかな。食べないとは言わないだろうし。

お皿にオードブルを色んな種類少しずつと、チキンを乗せて先生の方に持って行った。

 

「先生も……どうぞ……」

 

「ん?あぁ、俺のことは気にしなくていい。あくまで付き添いで来ただけだからな」

 

「いえ……腕に縒りをかけて作ったので……ぜひ食べてください……」

 

「……分かった、ありがたくいただこう。すまんな」

 

先生も渋々ではあったけど受け取ってくれた。

学生が主体的にやっている集まりにいること自体、先生的には思うところがあるみたいではあった。

楽しい催しに先生がいることで委縮することを嫌っているっぽい。

エリちゃんの為に来たとはいっても、なるべく邪魔しないように隅で気配を消そうとしていたのだ。

エリちゃんの保護者役として微笑ましく見守っているのは分かるけど、それだけだとこっちが気になってしまう。

ずっと見ていても食べづらいだろうし、早々に皆の方に戻った。

 

「このパエリアおいしいねー!」

 

「なら良かった……」

 

「これ作ったの瑠璃ちゃん!?」

 

「ん……パエリアは私……ドリアが梅雨ちゃん……唐揚げはお茶子ちゃん……他も分担して作ってる……」

 

「すっごく美味しいよ!」

 

透ちゃんはパエリアがお気に召したみたいで、すごい勢いでかき込んでいた。

ちょっと行儀が悪い気もしないでもないけど、率直に褒めてくれて私も嬉しくなってしまう。

透ちゃんもニコニコ笑顔で美味しそうに食べてくれているし、食べ方なんか気にしてても仕方ないか。

私もチョコフォンデュと砂藤くんお手製のケーキを食べないと。

何個くらいなら食べていいだろうか。

エリちゃんがリンゴのチョコフォンデュにはまっているみたいだし、一緒に横でチョコフォンデュを楽しもうかな。

 

 

 

「皆!そろそろプレゼント交換に移ろう!プレゼントを取り出したまえ!」

 

「おー!」

 

食事もだいぶ減ってきた頃、飯田くんが皆に声をかけた。

皆意気揚々とプレゼントを取り出していく。

障子くんも珍しくわくわくした感じでプレゼントを掲げていた。

それにしても……

 

「……常闇くん……?」

 

「なんだ?」

 

「正気……?」

 

「いたって正気だが」

 

「そっか……うん……ならいいんだ……」

 

常闇くんは大真面目に大剣のレプリカをプレゼントとして持ってきていた。

百ちゃんとかも大概だと思うけど、常闇くんのそれはどうなんだ。

本人が大真面目だからこれ以上ツッコむのも野暮……なのかな……?

とりあえず中身が分かり切っている常闇くんのもの以外に言及してしまうと皆の楽しみが減ってしまうし、余計なことは言わないでおこう。

 

「では中央にひとまとめにして、各々のプレゼントにリボンをつけよう!そのリボンを同時に引き、もらうプレゼントを決定する!」

 

飯田くんの号令で、皆が部屋の中央にプレゼントを積み上げ始めた。

爆豪くんも再三言われたのもあって一応プレゼントを準備していて、渋々積み上げている。

皆セットが終わって、箱の山から伸びるリボンも肉眼で見ているだけではどのプレゼントにつながっているか分からない状態になった。

それを確認した飯田くんがすぐに号令を発し、皆でわちゃわちゃとリボンを選び始めた。

 

「どれにしようかな~」

 

透ちゃんは鼻歌混じりにリボンを選んでいた。

その様子を眺めていたら、透ちゃんに声をかけられた。

 

「あれ、瑠璃ちゃんは選ばないの?」

 

「ん……私……プレゼントの中身も……つながってるリボンも……全部見えてるから……最後でいいよ……」

 

「そうなの?」

 

透ちゃんがちょっと寂しそうに確認してくるけど、私が再度頷くとそれ以上何も言わずにプレゼント選びに戻っていった。

それはそれとして……上鳴くんが選ぼうとしているリボンは止めてあげた方がいいか。

流石にかわいそうだ。

他の人には聞こえないように上鳴くんにこっそり声をかける。

 

「上鳴くん……」

 

「お?どうした波動?」

 

「それ……自分のプレゼントのリボンだよ……変えた方がいい……」

 

「うえ!?マジか!?」

 

「ん……マジ……」

 

「さ、さんきゅーな!」

 

上鳴くんは慌てて別のリボンを選びに行った。

今の会話が聞こえた人がいたら上鳴くんのプレゼントが分かっちゃうし、近くで選ばれてないやつと混ぜてしまおう。

 

それから少しして、皆リボンを選び終わった。

爆豪くんはプレゼントを置いて早々に立ち去ろうとしていたけど、上鳴くんが爆豪くんの足にリボンを巻き付けていた。

相変わらずな感じだ。

私はそれも終わった後に残ったリボンを手に取った。

 

「よし、では引くぞ!せーの!!」

 

掛け声とともに、プレゼントが宙を舞った。

私の所にも、不慣れではあるけど、一生懸命包んだのが分かる感じの箱が飛んできた。

誰のプレゼントかは分かっている。

中身はビーズのブレスレットだ。

 

「ん……綺麗……」

 

パパっと腕に着けてしまう。

うん。いい感じだ。

今はプレゼントに夢中になってるみたいだから、落ち着いたらつけているところを見せてあげよう。

まあ夢中になってるプレゼントがちょっとアレなんだけど。

 

「私は……おぉ!?手鏡だ!」

 

「かわいい手鏡だね……」

 

「ね!すっごくかわいい!梅雨ちゃんのプレゼントだってすぐ分かる!」

 

隣で箱を開けている透ちゃんは梅雨ちゃんが選んだ蛙型の手鏡を引いたらしい。

透ちゃんが手鏡を使うかって言われると微妙なところなんだけど、少なくとも服を整えたりするのに使っているところは見たことがあるし、本人は喜んでいるからきっと大丈夫だろう。

周囲を見渡すと皆プレゼントで一喜一憂していた。

切島くんのダンベルを持ってジャンプして喜んでいる三奈ちゃん。

百ちゃんの金塊を持って困惑している飯田くん。

飯田くんの眼鏡を一瞥して舌打ちしている爆豪くん。

青山くんの写真を持って絶望している峰田くん。

上鳴くんのバスケットボールを持って、結ちゃんの遊び道具にしようと考えている口田くん。

尾白くんのハンカチを持って『フツー!』って考えている上鳴くん。

透ちゃんのプレゼントの使ってるとシャチに食べられているように見えるブランケットは、尾白くんが貰って困惑していた。

 

お茶子ちゃんと緑谷くんなんかお互いのプレゼント交換になっていた。

お茶子ちゃんがもらったのはオールマイト人形だけど、まあそうなるよなぁって感じで高揚して『ほわぁ』って反応をしている。

恋する乙女的にはオールマイト人形でも好きな人からもらったものは嬉しいらしい。

緑谷くんも緑谷くんで顔を真っ赤にして喜んでいた。こっちは少し意外だった。

お茶子ちゃんのはお徳用の大袋のおもち1袋だし、思考的にも内容で喜んでいるわけではない。お茶子ちゃんからのプレゼントだって分かったから喜んでいる。

つまり、緑谷くんも好意とまではいかなくても気になってないとこんな感情にはならない。

お茶子ちゃん、だいぶ可能性がある感じみたいだ。じれったい。

お茶子ちゃんから告白したら……成功はしないだろうな。緑谷くんオーバーヒートしそうだし。

なら緑谷くんに気付かせるしかないのか。なかなか難しそうだ。

 

「お、写真立てじゃん。中の写真的に……波動のプレゼント?」

 

「ん……そう……」

 

私のプレゼントは響香ちゃんが引いていた。

私は男女どっちでも使えそうな感じのお洒落な写真立てに、選び抜いた写真を入れておいたのだ。

そんな話をしていると、私と響香ちゃんの会話を聞いていた透ちゃんが恐る恐ると言った感じで響香ちゃんが手に持っているプレゼントを覗き込もうとしていた。

 

「ふぅ……よかった」

 

「透ちゃん?」

 

写真を確認すると透ちゃんが盛大にため息を吐いた。

なんで安心しているんだ。

響香ちゃんまで困惑しているし。

 

「葉隠?」

 

「いやぁ、ちょっと瑠璃ちゃんがこれ選んでる時の感じからして、ねじれ先輩の写真入れそうだなぁって思ってたから。安心しただけ」

 

「さ、流石に波動でもそこまではしないでしょ」

 

響香ちゃんが冷や汗を流しているけど、何が流石になのか。

別におかしくないだろうに。

 

「お姉ちゃんに確認したら……ダメって言われたから……代替案の……皆で取った写真にした……」

 

「あー、やっぱり……」

 

『お姉さんありがとうございます!!』

 

透ちゃんが遠くを見るような目をして、響香ちゃんが心の中でお姉ちゃんにお礼を言っている。

どういうことだ。そんなに皆で取った写真が嬉しかったんだろうか。

一応文化祭の後や寮で皆でくつろいでるやつとかいろんな写真は入れておいたけど。

布教が足りなかったのかと思う一方で、皆で取った写真が嬉しい気持ちは私も分かるから対応に困る。

 

「ほ、ほらほら瑠璃ちゃん、そのブレスレットエリちゃんのでしょ?お礼言わないと!」

 

「まあ……言おうとは思ってたけど……誤魔化してない……?」

 

透ちゃんに背中を押されながらエリちゃんの方に連れていかれる。

エリちゃんは大剣をひとしきり喜んでようやく落ち着いたようだった。

さっきまであの大きな剣を担いでいたようで結構疲れている。

 

「あ!ルリさん!」

 

私がブレスレットをつけているのを見て駆け寄ってきた。

 

「エリちゃん……これ……ありがとね……」

 

「……うん!ミッドナイトさんと一緒に作ったの!」

 

ちょっと興奮気味に話すエリちゃんがかわいい。

それにしても、ミッドナイト先生と作ったのか。

面倒見のいい先生だから嬉々として手伝っている姿が目に浮かぶ。

 

「上手にできてる……お休みの時とか……使わせてもらうね……」

 

「うん!」

 

自信満々にふんすと鼻息荒く胸を張る姿にほっこりしながら頭を撫でてあげる。

エリちゃんも満足そうににっこりと笑顔を浮かべていた。

 

 

 

それからしばらく皆で飲み食いしながら騒いでいたけど、9時くらいになったところでお開きになった。

これから片付けだと気合を入れていたら、皆から私たち料理班4人は休んでいるように言われてしまった。

明らかに料理班だけ仕事量が多いことを気に病んでいたらしい。

皆に押し切られて、結局私たちは端っこで休んでいた。

なんだかんだで準備は大変だったけど、すごく楽しいクリスマスパーティーだった。

エリちゃんも大満足だったようで、今も笑顔で大剣を担ぎながら帰っているところだ。

最初は大剣はどうなんだろうとは思ったけど、エリちゃんにはたくさんのサンタさんが教師寮に控えている。

大きなクマの人形に絵本、かわいい櫛と髪飾りと手鏡のセットにDJセット、童謡のCDと多種多様なプレゼントが山となってエリちゃんの枕元に置かれることだろう。

明日の朝のエリちゃんの反応が楽しみだなんて思いながら、パーティーの余韻に浸っていた。

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