波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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雑な救援要請

公安への報告が終わった翌日。

あれからミルコさんの指導はさらに熱が入っていた。

前線に駆り出される可能性が高いこと、それを拒否することも難しい可能性が高いこともあって、言われた通りにするのは癪だけど私の為にも必要なことと割り切っている感じだった。

ミルコさんは技の繰り出し方や細かい身体の動かし方、どうすればさらにキレが良くなるかとかを教えてくれた。

職場体験の時に今みたいな指導をされていても、何もできなかった自信がある。

それだけ体力も、経験も、何もかも足りていなかった。

でも、半年以上基礎トレーニングをして、色んな実戦を経験してきて、最近では尾白くんに武術について軽く教わったりもした。

そのおかげか、なんとかちゃんと指導を受けることができていた。

 

そんな感じの指導兼パトロールを続けていると、ヴィランが暴れているところに出くわした。

暴れていると言っても、身体から大量に伸ばした木の枝みたいなのを張り巡らせて道を塞ぎつつ、強盗をしているといった感じなんだけど。

異形型じゃないけどシンリンカムイと似たような個性を持っているっぽい。

跳び越えようにも結構な高さがあって骨が折れそうだった。

 

「行くぞ」

 

「はい……!」

 

ミルコさんが跳び上がるのに合わせて、一緒に跳び上がる。

だけど、すぐにヒーローが近づいてきたのが分かったようで、そのヴィランは店の周りに木を張り巡らせて立てこもるみたいな感じのことをし出していた。

私とミルコさんがバリケードを跳び越えて店の前に着くころには、店が完全に木で覆われてしまっていた。

 

「チッ、めんどくせぇな」

 

「試しに壊せないか……やってみますか……?」

 

「いや、こうなると……見てろ」

 

ミルコさんが木を思いっきり蹴り飛ばして、表層の木を数本砕いた。

だけど次の瞬間、さらに木が追加されてまた塞がれてしまった。

私とミルコさんも流石にこうなってしまうとどうしようもない。

蹴ったそばから修復されるだけだ。埒が明かない。

周囲のヒーローの思考を見ても有効な個性を持っている人はいなさそうだ。

 

「ブーストか?その辺のヴィランが使える個性の強度じゃねぇな」

 

「……そうみたいです……思考……すごく短絡的な感じになってます……」

 

「正直いつ切れるか分かんねぇんだよなあれ」

 

ミルコさんが心底めんどくさそうにしながら頭を掻いている。

お店の人とかは早い段階で逃走していたみたいで、人質とかは特にいない。

短絡的な思考になっていたせいで、お店の人を追ったりしないで強盗に集中したみたいだ。

私が監視していれば逃走はできないけど、いつまで待てばいいか分からないとなると、正直面倒臭いというのは分かってしまった。

 

私がそんなことを考えていると、ミルコさんの思考が『むしろ好都合か』なんて感じになった。

何が好都合なのかと思って思考を深く読んでみると、エンデヴァーを呼ぶなんていう思考が読み取れた。

そういう意味で好都合なのか。

確かに今建物の中にはヴィランしかいないし、エンデヴァーがいれば一発だとは思うけど……

相手は忙しいナンバーワンヒーローだ。

チームアップの要請をしても即来てくれるとは思えない。

そんなことを考えていると、ミルコさんはスマホを取り出していた。

 

「ようエンデヴァー!」

 

『何の用だ、ミルコ』

 

「いやなに、私らじゃちょっと面倒なヴィランがいてな!ちょっと手ぇ貸してくれ!今いるの東京だし、そう遠くねえだろ!場所は送っとくから!」

 

『無理に決まっているだろう。チームアップは事務所を「いいから来い。んじゃ、急いでくれよ」

 

『おいミルコ!無理だと言って』

 

ミルコさんはそこでブツっと通話を切った。

えぇ……すごい強引……

これで来てくれるんだろうか。

凄い勢いで無理だって言ってたけど。

電話を切られたエンデヴァーが激怒しているであろうことは容易に予想できた。

 

「……強引ですね……これで本当に来ますかね……」

 

「来るだろ、エンデヴァーなら。人気で負けてるのに解決数でトップになった男だしな」

 

「ミルコさんがそういうなら……監視しながら……待ちますか……」

 

ミルコさんがそういうなら待つか。

そう思って監視を続けつつ待った。

 

……そういえば、ミルコさんさっき事務所じゃなくてエンデヴァーに直接電話かけてたな。

番号を交換しているんだろうか。

トップランク同士連携するために交換しておいたのかな。

お互いに手に負えないとなると下手なヒーローには救援要請なんか出せないから、効率的ではあるんだけど。

 

 

 

そんなことを考えながら30分くらい待っていると、赤い炎を纏いながらエンデヴァーが飛んできた。

案の定エンデヴァーの表情が凄く怖い。

思考も普通に激怒してるよこれ。

 

「ミルコ!無理だと言っただろう!なんだあれは!」

 

「無理と言いつつ来てんじゃねぇか。ほら、早くやってくれ。中にはヴィランしかいねぇから。私らじゃ埒が明かねぇんだよ」

 

エンデヴァーが激怒しながら吠えているけど、ミルコさんは飄々としながら木で封鎖された建物を示していた。

なんというか、すごい温度差。

エンデヴァーは怒りが収まらないという様子でミルコさんに文句を言い続けている。

まあミルコさんが手に負えないとか言いつつごり押しで救援要請をしてきたから、相当やばいヴィランが出たと思って怒りながらも心配しつつ飛んできたみたいだし、仕方ないのかもしれない。

大急ぎで来てみたら木で囲まれたお店の前で手間取っているだけで拍子抜けして、さらに怒りに火が付いたって感じっぽいし。

 

そんな様子を眺めていると、エンデヴァーから少し遅れて緑谷くんと爆豪くんと轟くんがやってきた。

緑谷くんたちは着くなり疲れた様子で息を整えている。

 

「や、やっと追いついた……」

 

「お疲れ様……ごめんね……急な要請で……」

 

「は、波動さん、良かった、無事だったんだ。エンデヴァーがミルコの要請を聞いた後に大慌てで飛んでいったから、何かあったのかと……」

 

緑谷くんが笑顔を浮かべながら心配してくれた。

なんというか、やっぱりすごく人がいいな。

エンデヴァーへの伝言があったとはいっても、わざわざ忙しいナンバーワンを呼んだのが申し訳なくなってしまう。

 

「ん……なんともないんだけど……籠城されて攻めあぐねちゃって……本当にごめんね……」

 

「っとだよクソチビ!あんな籠城の仕方なら俺でもどうにかなるじゃねぇか!」

 

爆豪くんがキレている。

実際エンデヴァーじゃなくてもいい籠城の仕方をしているし、何も言い返せない。

爆豪くん的には、ミルコさんの手に負えないやばいヴィランと戦えると思ってわくわくしていたっぽい。

それでこれを見て怒りのボルテージが上がっちゃったみたいだ。

 

「でも……私とミルコさんじゃどうしようもないのも……事実……周囲にどうにかできるヒーローもいなかった……ミルコさんが連絡を取れる……どうにかできそうなヒーローが……エンデヴァーだった……仕方ない……」

 

「まあ確かにあれはあいつなら一瞬だろ。放置するわけにもいかねぇし、ミルコの要請を拒否しなかったのはあいつだ」

 

轟くんは静かに籠城現場を眺めていた。

なんというか、エンデヴァーの所でインターンをすると聞いて少し心配していたけど、思った以上に穏やかにやれているらしい。

轟くんがエンデヴァーに向ける感情も、嫌悪感とかはあるけど憎悪は感じなかった。

それに、意外だったのがエンデヴァーだ。

轟くんの思考とか、体育祭の時に見たエンデヴァーの印象とは180度違っていた。

責任感の強い、子煩悩なヒーローの思考をしている。

なんでこんなに変わってるんだこの人。

目の上のたんこぶだったオールマイトがいなくなって浄化されたのか。

今のエンデヴァーの思考は、ナンバーワンとしてもそんなにおかしくない感じになっている。

過去はなくならないけど、隠し通してさえくれればナンバーワンヒーローとしても頼りになりそうだと思った。

 

「ショート!このヴィランへの対処はおまえがやってみろ!課題として与えたことができれば容易いはずだ!」

 

エンデヴァーがあまりにも拍子抜けして轟くんに指示を出した。

まあこれなら轟くんの炎でも行けると思うから、全然いいんだけど。

それにしても、課題ってなんだろうか。

少し気になる。

 

「課題……?」

 

「かっちゃんと轟くんが同じ課題を出されてるんだよ。溜めて放つ、力の凝縮。波動さんは得意だよね」

 

「……まぁ……波動の圧縮噴出は……いつもしてるし……私の技……大体それだし……」

 

「てめーのそれも俺のパクリだけどな!!」

 

緑谷くんがスッと教えてくれた。

爆豪くんは爆豪くんで煽ってくるけど気にしない。二段ジャンプは確かに爆豪くんをパクったし。

それにしても、なるほど。そういうことか。

確かにブッパが基本だった轟くんが、大規模に扱える炎とかを圧縮できる技術を身に着けたら鬼に金棒だ。

 

そんなことを考えていたら、轟くんが木の前に移動した。

まだヴィランは息を荒げながら興奮状態のままだ。

多分少し削ったくらいじゃまた足される。一気にどうにかしないといけない。

轟くんは炎を圧縮し始めていた。

でも、なんというか相変わらず大規模な操り方は得意みたいだけど、圧縮と言う点では全然だ。

細かい調整がまだできないんだろう。

調整にてこずっている姿を見ると、なんというかムズムズしてくる。

 

「ね……轟くん……圧縮は……もうちょっとどう圧縮するのか考えた方が……やりやすいと思うよ……」

 

「波動……?」

 

「エンデヴァーのジェットバーンもそうでしょ……手元で圧縮して……噴出に指向性を持たせてる……私も似た感じ……私の場合……身体の一部に無理矢理押し込む感じで圧縮したり……丸いものの中に詰め込むイメージで……圧縮してる……このイメージでやると……指向性を持たせるの自体は簡単……入れ物に穴をあけるイメージで……圧縮のかけ方を変えるだけで……そっちに噴射できる……私の波動も……轟くんの炎も……どっちも揺らめく感じのものなのは変わらないし……同じ感じでできるんじゃないかな……」

 

「……なるほど。助かる、ありがとな」

 

「やっぱり波動さんの"発勁"とかもかっちゃんの"徹甲弾(APショット)"と同じ要領だよね!!」

 

「だから変な分析すんなクソデク!!本格的に距離を取れ!!」

 

外野がうるさいけど、とりあえず轟くんに伝えたいことは伝えた。

後はもう轟くんがどうにかするだろう。

量が少ないから圧縮しやすい私と、大規模な量を瞬時に出せる轟くんが完全に同じやり方でできるとは思わないけど、多少はイメージが付くだろうし。

緑谷くんが言っている通り、爆豪くんも既にその動きをやっているけど、爆豪くんは殊勝にアドバイスなんてしてくれないだろうし。

 

轟くんは少し時間がかかったけど、エンデヴァーのジェットバーン擬きみたいなのを出して木を焼き払った。

炎で木が燃える中、轟くんはすぐに突入してヴィランを確保してくれた。

うん、圧縮自体はできていたけど、まだ時間をかけすぎてると思う。

エンデヴァーも『これを無意識でできるようになれば……』って考えている辺り、同じ感想を抱いたんだろう。

 

 

 

「次からはこんな用件で呼びつけるな!!本当の緊急時に判断がつかなくなる!!」

 

エンデヴァーがミルコさんの前に仁王立ちしながらそう吐き捨てた。

怒りは少し鎮火してきてるけど、まだ言いたいことはたくさんあるようだった。

そろそろ言うか。ミルコさんもいい感じにエンデヴァーと会話してくれているし。

 

『エンデヴァー……ミルコさんと会話しながら聞いてください……』

 

私がテレパスでエンデヴァーに声をかける。

エンデヴァーは一瞬眉をひそめてチラリと私を見たけど、そのまま会話を続けてくれた。

 

『私の個性は……読心とテレパスができます……そのうえで報告します……先日、ホークスと接触しました……その際にエンデヴァーに確実に伝言するために……伝えて欲しいと依頼された内容を報告します……ヴィラン連合は……異能解放軍を取り込んで超常解放戦線になりました……その数は……末端の戦闘員まで含めると10万以上……死柄木やその裏にいる者の居場所や目的は依然不明……やつらは4か月後に決起する予定です……それまでに不意を突いて襲撃できるように合図を送る……とのことです……今回のミルコさんの強引な救援要請は……これを私から伝えるためのものです……』

 

私がそこまで伝えきると、エンデヴァーは目を閉じた。

ミルコさんが軽口を返したのにため息を吐いた体を装って、私に思考を向けてきた。

 

『やつの暗号からしっかりと伝わっている。安心しろ。しかし、俺はやつにそこまで信用されていなかったか……まあいい、情報、感謝する』

 

「用は済んだ。行くぞ!ショート、バクゴー、デク!」

 

「はい!じゃあ波動さん、お互い頑張ろうね!」

 

「波動、助かった。そっちも気をつけろよ」

 

「ん……緑谷くんたちも……頑張って……!」

 

エンデヴァーは、私に返答するとすぐに飛び立っていった。

緑谷くんたちも、私に声をかけてから大慌てでそれを追いかけ始めた。

爆豪くんだけは無言だったけど、それはもう彼の性格だから仕方ないだろう。

そして、これでようやくホークスに頼まれた伝言が終わった。

少しだけ肩の荷が下りた気分だけど、私は決戦の時に前線に出される可能性が高い。

これからミルコさんと特訓を頑張らないといけないと、気合を入れなおした。

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