波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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少女特訓

通常授業に戻ってから数日が過ぎた。

通常授業とはいっても、インターンに行っている人がいたりするから教室は空席が目立つ。

今日はエンデヴァーのところに行っている3人と、ヨロイムシャのところに行っている3人がインターンで公欠になっている。

透ちゃんがいないからちょっと寂しい。

まあ響香ちゃんや百ちゃん、お茶子ちゃんたちと話しているから問題はないんだけど。

今は授業も終わってホームルームをしているところだった。

 

「―――連絡事項は以上だ。補習がある者はいつもの教室で時間通り開始する。あとは……波動は残れ。手伝って欲しいことがある。以上。解散」

 

補習は昨日インターンに行っていた人とかに対する物だからそれはいいとして、私まで呼び出しがかかった。

思考を見る限り納得ではあるし、私も協力を惜しむつもりはない。

皆がパラパラと席を立ちだしたのを確認してから先生の方に歩いていく。

 

「エリちゃんのことですよね……?今日から訓練ですか……?」

 

「流石に不安が大きいみたいでな。できれば緑谷もいた方が良かったんだが、インターンは仕方ない。通形と波動に来てもらって、エリちゃんの不安を軽減したい」

 

「教師寮に行けばいいですか……?」

 

「ああ。急ですまんが大丈夫か?」

 

「はい……先に行ってますね……」

 

先生に会釈してから、教室を出た。

今日の補習は相澤先生の担当じゃないけど、それでも色々としないといけないことがあるみたいだから来るまでは少しかかるだろう。

それまではエリちゃんとお話してればいいかな。

……寮でビーズのブレスレットをつけてから行こう。

 

 

 

教師寮に着くと、通形さんとお喋りしているエリちゃんを眺めるオールマイトがいた。

 

「オールマイト……?」

 

「ん?ああ、波動少女か」

 

「はい……私もお手伝いに来ました……オールマイトもですか……?」

 

「うん。私にも手伝えることがないかと思ってね。ああ、そうだ。波動少女にも緑谷少年のことで協力して欲し『OFAのことは……ボカすんじゃなくて……思い浮かべてくれるだけで大丈夫です……』

 

あろうことか緑谷くんとの特訓のことを普通に話し始めようとしたオールマイトをテレパスで止める。

なんでこう、緑谷くんもオールマイトも、ついでに爆豪くんも簡単に話そうとするんだろう。

ボカせばいいって問題じゃないと思うんだけど。

 

『すまない……波動少女にも、浮遊と黒鞭の訓練を手伝ってほしくてね。波動少女も爆豪少年と同じように、空中での動作に関しては経験豊富だろう。詳細は伏せて麗日少女と蛙吹少女にも頼むつもりだけど、波動少女も緑谷少年に助言してあげて欲しい』

 

『協力するのは……吝かでもないですけど……浮遊でいいんですか……?私なら……危機感知の方が……詳しく教えられると思いますけど……』

 

『ああ。まずは黒鞭の習熟と、浮遊の習得に集中してもらいたいんだ。危機感知の訓練では波動少女を頼りにしたいけど、どの個性から習得していくかはまた考えて伝えるよ』

 

『……それでよければ……分かりました……』

 

確か、2代目と3代目は分からないって言ってたはずだから、4代目の危機感知、5代目の黒鞭、6代目の煙幕、7代目の浮遊が今のところ分かっている使える可能性のある個性だったはずだ。

この中で黒鞭と浮遊を優先するのは、暴発したら困るものから習得させようとしているとかそんな感じだろうか。

浮遊が暴発して困るのは緑谷くんだし、普段からふわふわ浮いているお茶子ちゃんや舌で黒鞭と似た挙動ができる梅雨ちゃん、空中で方向転換したりしまくってる私と爆豪くんに助言をしてもらいたいっていうのは理解できるからいいんだけど。

 

 

 

まあいいか。今はエリちゃんだ。

そう思って不安そうに通形さんと話しているエリちゃんの方に近づいてしまう。

 

「エリちゃん……」

 

「ぁ、ルリさん……」

 

「やあ波動さん!」

 

元気よく声をかけてくれる通形さんに会釈しつつ、ソファに座っているエリちゃんの隣に座る。

エリちゃんは不安で押しつぶされそうな感じになっている。

角がムズムズしているのもあるっぽいけど、それ以上に、この後うまくできなかった時が怖いみたいだ。

お父さんを巻き戻しで消していることがトラウマになっているみたいで、思考がほぼそれ一色になっている。

 

「……不安……だよね……」

 

「……うん……」

 

頑張るとは言ったけど、やっぱり不安なものは不安だろう。

それがトラウマに触れる可能性があるものなら猶更だ。

その思考が見てられなくて、エリちゃんを抱き上げて私の膝に乗せてしまう。

 

「わっ……ルリさん?」

 

びっくりしているエリちゃんをそのまま後ろからぎゅって抱きしめてあげる。

不安になっている時に、人のぬくもりを感じるのって安心するものだ。

昔お姉ちゃんが良く抱きしめてくれたから、私の経験則でそう感じている。

 

「ん……大丈夫……うまく調整できなくても……相澤先生が止めてくれる……」

 

「……うん」

 

「それに……いきなりうまくできる人なんていない……失敗して……失敗して……少しずつできるようになっていくんだよ……今日はその第一歩……」

 

「……うん」

 

最初からなんでもできる人は、いないわけではないけどそんなのレアケースだ。

実際そのレアケース筆頭がこの部屋にいるわけだけど。

今はそこには触れずに、抱きしめながら頭を撫でてあげる。

 

「あとね……今日は植物でやるって……考えてるみたいだから……失敗しても……そこまで怖くないよ……大丈夫……」

 

「……うん……あ、あの……ルリさん……」

 

「どうしたの……?」

 

エリちゃんが遠慮がちに話しかけてきた。

どうしたんだろうと思って一度撫でている手を止めて顔を覗き込む。

 

「あんまり私を……だきしめないほうが……もしかしたら……消しちゃうかも、しれないし……」

 

「なんだ……そんなこと……大丈夫だよ……私は気にしてないから……」

 

エリちゃんを一際強くぎゅーって抱きしめる。

それでも不安そうな顔は変わらない。

 

「……そっか……それだけだと不安だよね……私……個性が発動しそうなときは……波動の揺らぎとか……考えてることで分かるから……危なかったら離せる……だから大丈夫だよ……安心して……」

 

「……はどう?」

 

エリちゃんがきょとんとした顔で聞き返してくる。

そっか、そこから説明しないとダメか。

 

「波動さん……えーと、瑠璃さんと、ねじれさんがミスコンの時に出してたやつのことだよ!覚えてるかな?」

 

「うん。青いのと、黄色いの……すごく綺麗だった」

 

「ん……これのこと……」

 

通形さんがエリちゃんにパパっと説明してくれる。

私もそれに合わせて手に波動を纏わせて圧縮をかけて可視化すると、エリちゃんがそれを不思議そうにのぞき込んできた。

 

「みんな……見えないくらいだけど……この波動を身体から出してるんだよ……私はそれが見えるの……それで……個性を使っちゃいそうなときには分かるから……大丈夫……」

 

「そう、なんだ……ルリさん、これ、触っても大丈夫なの?」

 

「ん……これくらいなら大丈夫……触ってみる……?」

 

「……うん!」

 

そのままエリちゃんの前に波動を纏わせた手を持っていくと、恐る恐ると言った感じで触ってくる。

ちょっとくすぐったい。

でもこの濃度の波動を触っても特に何かを触ってる感じとかもしないだろうし、すぐに飽きるだろうなと思ってしまう。

しばらく不思議そうに私の手をにぎにぎして、満足したらしいエリちゃんが手を離した。

そんなエリちゃんに微笑みながら、手に纏わせた波動を消してしまう。

 

「あっ」

 

「どうしたの……?」

 

「ルリさん、これ!使ってくれてる!」

 

エリちゃんがビーズのブレスレットを見て嬉しそうに見上げてきた。

 

「ん……エリちゃん手作りのブレスレット……大事に使ってるよ……」

 

「わっ!?これエリちゃんがつくったの!?すごいね!?上手!」

 

「うん!がんばってつくったの!」

 

クリスマスの時みたいなドヤ顔を披露するエリちゃんに、通形さんと一緒にほっこりする。

エリちゃんもこれで少し元気を取り戻したみたいだし、その後は抱っこしたまま3人でお話をして相澤先生を待った。

オールマイトも会話に入ればいいのに、エリちゃんに遠慮して遠目に見ているだけだった。

気にしなくても大丈夫だと思うんだけど。教師寮で見慣れてるだろうし。

 

 

 

「すまん、待たせた」

 

相澤先生が少し急いだ感じで入ってきた。

待たせたのを結構気にしていたらしい。

そんな相澤先生に、オールマイトがさっきまでのエリちゃんの様子を簡単に伝えてくれていた。

相澤先生はそれを聞きながら、枯れた植物を出して準備を進めている。

 

「……なるほど。ありがとうございます、オールマイト。波動と通形も、助かった」

 

「いえ……気にしないでください……」

 

先生に返事をしながら、エリちゃんを膝から降ろしてしまう。

エリちゃんも頑張りどころなのが分かっているのか、気合を入れなおしていた。

 

「エリちゃん……頑張って……」

 

「大丈夫だからね。落ち着いていこう」

 

「よし。じゃあエリちゃん。今からこの枯れたお花に個性を使って、元気にしてあげよう。やりすぎそうになったらすぐに止めるから、安心していいよ」

 

「……うん」

 

相澤先生がエリちゃんにすごく優しい感じで声をかける。

普段とのギャップが凄いけど、先生の子供に対する優しさが伝わってきた。

エリちゃんも、そんな先生の言葉に気合を入れなおして枯れた花と向き合った。

 

エリちゃんが枯れた花に触れて、集中し始める。

しばらく難しそうな顔をして、そのまま動かなかったけど、少ししたらエリちゃんの角が光り始めた。

そのまま少しずつ花が元の姿に戻っていった。

 

もう十分戻したけど、まだうまくコントロールできないのか、エリちゃんは冷や汗を垂らしながらどうにか個性を止めようとしている。

多分、離せば個性は止まるんだろうけど、どうにかコントロールしようと躍起になって茎を握り込んでしまっている。

 

「……ご、ごめん……なさい……」

 

相澤先生がエリちゃんを見て、強制的に止めた。

エリちゃんの手には、双葉まで戻ってしまった植物があった。

 

「大丈夫だよ。落ち着いて」

 

「ん……むしろ……1回目で個性をつかえた……上出来……調整は……これから頑張ろう……」

 

「……うん」

 

「少し休憩したら、もう1回やってみよう」

 

先生はそう言って、エリちゃんの頭を撫でてあげた。

エリちゃんもされるがままになっている。

先生が撫で終わったのを確認してから、私はポケットからハンカチを取り出して、エリちゃんの汗を拭ってあげた。

エリちゃん的にも今の訓練1回だけでもすごく疲れたのか、ソファに深く座り込んだ。

何か飲み物を入れてあげようかな。

そう思って、キッチンの方に入らせてもらった。

 

 

 

そんな感じで訓練を続けて、暗くなってくる頃になんとか花まで戻して止めることに成功した。

エリちゃんもすごく嬉しそうにしていた。

成功率で見ちゃうとあれなのかもしれないけど、初めての成功というのは大きな一歩だと思う。

訓練中、相澤先生とオールマイトが助言をして、私と通形さんが励ますという役割分担みたいな状況になっていた。

それはいいんだけど、エリちゃんがオールマイトを「骸骨の人」って呼んで噴き出しそうになってしまった。

これだけ一緒にいてまだちゃんと自己紹介してなかったのか、オールマイト。

怖がられるかもって思って遠巻きに見守っていただけだったらしい。

最後にはちゃんとオールマイトさんって呼ばれてたけど、それでもちょっと肩の力が抜けた一幕だった。

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