あの後、3つ目のトリガー・ボム捜索に戻った。
1つ目、2つ目が南側、中央付近にあったことと、ヒューマライズの目的からすると、おそらく北側に近い位置に隠されているとは思う。
だけど、最初の信者がトラックでの運搬を考えていたから、一応ちゃんとしらみつぶしにロンドンを跳びまわった。
そして、辺りが暗くなってきた辺りで、ようやく最後のトリガー・ボムを見つけた。
確保も恙なく終わっている。
信者と雇われヴィランの合計4人っていう中々の人数だったけど、迂闊にも1人離れた位置にいた信者をミルコさんが上空から奇襲をかけて一撃で気絶させたのだ。
それに続く形で私も突入して、ミルコさんと協力して残りの3人を制圧した感じだった。
司令部への連絡も早々に済ませて、エレクプラントにも最後のトリガー・ボムを見つけたことを伝えて、トリガー・ボムの対応をお願いした。
その頃にはもうすっかり夜になっていて、司令部から依頼されていた尋問時の読心をすることになった。
信者が拘束されている施設に移動して、尋問を行う部屋のすぐ近くの部屋に通される。
波動の感知でも見えていたけど、その部屋の中にはモニターもついていて、取調室の様子を見ることが出来るようになっていた。
「……すごいですね……あれ……」
「1回自殺されてんだ。あれくらい当然の対応だな」
拘束されている信者が、本当にすごい状態になっていた。
タルタロスで使われているような拘束服で全身、指の一本一本に至るまで、すっぽりと覆われている。
その状態で腕や足をベルトで何重にも縛られていて、椅子に括り付けられている。
あれ、身じろぎ一つできないんじゃないだろうか。
その上でさらに猿轡のようなものまで噛まされている。
歯の中にこの前の信者と同じようなものは入っていないと思うし、毒物の検査は当然しただろうから、単純に舌を噛み切って自殺するのを防ぐためか。
でもこれで尋問ってどうするつもりだ。
喋らせないと尋問なんてできないと思うんだけど。
「あの状態で……どうやって尋問するんですかね……」
「まあ普通に猿轡外すんだろ。あれなら怪しい行動したら即気絶させられるだろうしな」
「なるほど……」
そういえば、タルタロスでも黒霧を意図的に覚醒させたりしていたし、そういう設備があれば可能なのかもしれない。
今信者は気絶しているし、おそらくそういうことなんだろう。
それから少しして、尋問が始まった。
信者は強制的に覚醒させられて、状況を理解して憎々し気に周囲を見渡していた。
凄まじい憎悪と個性持ちの人に対する嫌悪感、それに加えて狂信的な思考ばかりが伝わってきて、こっちも嫌悪感を覚えてしまう。
そんな信者にイギリスの警察が警告を促してから、猿轡が外された。
質問の内容は私が自殺した信者にした質問も含めて行われていた。
当然のように、信者は答えようとしない。
だけど、思考を読んで内容をどんどんメモしていった。
内容自体は最初の信者から読み取った内容と大きな相違はない。
だけど、さっき本部から言われた内容が少し気になっていた。
オセオンのヒューマライズ施設を隠し部屋とかも含めて慎重に捜索したけど、何も見つからなかったと言われたのだ。
でも、最初の信者から読み取った内容に、トリガー・ボムのベースは本部で作るというものがあった。
オセオンの本部と間違いなく読めていた。
そう考えると、オセオンには通常のヒューマライズの施設以外にも、本部がどこかに隠されている可能性が高いと思うのだ。
そしてこの信者はトリガー・ボムを任されていることから、この本部の所在地を知っている可能性が高いと思う。
そう思って質問が落ち着いたところで、尋問をしている警察に、用意されていた通信機でコンタクトを取った。
「警察の方……オセオンにある本部……どこにあるのか確認して欲しいです……恐らく……どこかに隠し施設があって……トリガー・ボムに関わっているこの信者は……その場所を知っている可能性が高いと思います……」
『分かりました。少し間を置いてから聞いてみます』
警察の人はすぐに了承してくれた。
それから少しして、聞きたかった質問もしてくれた。
少し驚いたような表情をした信者の様子やその思考からして、やっぱり知っているっぽい。
深く読み取ってみると、山脈地帯というところまでは読み取れた。
この信者は道を知っているだけで、おそらく座標とか正確な位置情報を知っているわけじゃない。
だけど道となってしまうと、読心で読み取るのは難しい。
道順を思い浮かべろなんて言っても、困惑が勝ってしまって道順なんていう膨大な情報は思考に過らない可能性が高いのだ。
一応警察の人に、どうやって本部に移動しているのか、その道はとかを聞いてもらったけど、やっぱり正確な道順とは思えないものしか読めなかった。
もう1人の信者の尋問も読心したけど、真新しい情報は皆無と言ってよかった。
尋問が終わって、私がオセオンの本部に関して考え込んでいると、ミルコさんに声を掛けられた。
「あの質問からして、最低限必要な情報は読めたな。1人で抱え込んで悩んでないで司令部に報告するぞ」
「はい……」
それを受けて、自分の中でまとめようとしていた考えを中断する。
私1人で考え込むよりも、司令部の長官や、オールマイトとかも交えて考えた方がいいというのは、確かにその通りだと思ったのだ。
司令部からの増員の人たちが用意してくれていた秘匿回線の映像通信の機械を使って、本部に映像通信をかけた。
向こう側が応答すると、画面には長官と通信手、オールマイトが映っていた。
『ミルコ、波動少女!何か進展があったのかい?』
「はい……今……警察による尋問が終わりました……内容の基本的な部分は……自殺した信者からの情報と……大きな差異はありません……ただ……」
『ただ?』
「正確な位置情報ではないですけど……本部に関しての情報が得られました……」
『本当か!?』
画面に映っている3人の表情が驚愕に染まった。
この感じからして、オセオンの方の捜査は手づまりだった感じか。
「はい……先程トリガー・ボムの報告をした際にいただいた……オセオンの施設で何も見つからなかったという情報と……自殺した信者の……オセオンの本部でトリガー・ボムのベースを作ったという情報に……差異があったので……警察に……オセオンの隠し施設について質問してもらいました……」
『そ、それで!どうだった!』
「正確な位置や……道順は分かりません……ただ……山脈地帯にあるという情報は……読み取れました……」
『素晴らしい情報だ!!ありがとう!!すぐにでもエンデヴァーに伝えて捜索を開始してもらうよ!!他に伝えておくべき情報はあるかい!?』
「いえ……指示は仰ぎたいですけど……伝えることはそれだけです……」
『よし!ちょっと待っていてくれ!』
オールマイトがそういうと、長官と一緒にバタバタと周囲に指示を出し始めた。
もしかしなくても通信手を通してエンデヴァーに指示を出しているんだろう。
その指示が一段落したあたりで、オールマイトがまた画面の方に戻ってきた。
『すまない、待たせたね。それで、指示だったね』
「ああ。イギリスのトリガー・ボムは全て見つけた。そうだな?」
「はい……さっきの信者の思考も……イギリスのトリガー・ボムは3つということで……変わりはなかったです……」
『それなんだが……ミルコ、波動少女。2人にはオセオンに向かって欲しいんだ』
私たちが指示を仰ぐと、オールマイトがそう切り出してきた。
「オセオン……本部探しの手伝いですか……?」
『それもある。あとは、まだオセオンのトリガー・ボムが見つかっていないんだ。それも含めて、捜索に協力してほしい』
「……逆に……トリガー・ボムが見つかったところって……他にあるんですか……?」
『あるさ。波動少女からの情報提供で、日本を含めた4か国でトリガー・ボムを1つずつ発見した。日本ではギャングオルカとともに障子少年、耳郎少女が尽力してくれたよ』
障子くんと響香ちゃんも頑張っていたらしい。
ただ、この感じだと感知系の個性がいるところしか発見できていない感じだろうか。
『ただ、察しただろうけど、これだけしか発見できていない。ロンドンに3つもトリガー・ボムがあったことを考えると、他の国からオセオンに増援を送るということ自体が難しいんだ』
「ま、そうだろうな。捜索の効率が異常なこいつですら3つ見つけるのに丸1日かかってんだ。他のところは1個見つけてりゃ上出来な方だろ」
『……その通りではあるんだ。皆、捜索に全力を尽くしてくれている。ただ、トリガー・ボムは遠隔起動、起動後の停止は困難という情報は変わらずということになってしまうと……トリガー・ボムの回収に気付かれた時に、全て一斉に起動される可能性すらある。時間があるわけではないんだ。だから、本部を割り出して情報を得るべきだと、私たちは考えている。本部を襲撃すればその時点で自棄になって起動されてしまう可能性が高いから、安易な襲撃はできないけどね』
「つまり、本部の近くまで行ってこいつに読心させろって言ってんのか?」
『そこまで言っているつもりはないよ。ただ、一つの手として本部の位置を知っておくべきだと思っている。それに、波動少女以外にも、オセオンには透視ができるクレア・ボヤンスもいる。起動装置が存在するとして、その位置の割り出しが出来れば、起動前に破壊することも可能かもしれないからね』
私の感知が手っ取り早いと感じてはいるんだろうけど、オールマイトは私に極力配慮しようとしてくれているのが、表情からしっかりと伝わってきていた。
どちらかというとオールマイトよりも、長官とかの意見が私に協力してもらいたいって感じなんじゃないだろうか。
私の個性のデメリットを知っているオールマイトと、知らない長官では判断に差が出るのも仕方がないことだろう。
そのためにオールマイトが、クレア・ボヤンスっていうプロヒーローでも効率は悪くなるけど可能であることを念押ししているわけだし。
「……私は拒否する理由がない。お前はどうするんだ」
「……私も行きます……」
『ありがとう、2人とも。2人のことはエンデヴァーに伝えておく。最初の突入作戦に使用した軍用輸送ヘリが空港にある。操縦とかは前回と同じ人員を用意するから、そのヘリを使ってオセオンに向かって欲しい。波動少女も1日動き回っていただろうし、ミルコは夜を徹して行動してくれていただろう。無理をさせるつもりはないから、休憩を挟んでもらって構わない。準備ができ次第、ロンドンの空港に向かってくれ』
「つまり、オセオンに行ってエンデヴァーの指揮下に入れってことだな」
『ああ。現地でどう動くかはエンデヴァーと相談して決めてくれ』
ミルコさんは好きに動きたそうにしていたけど、エンデヴァーならまあいいかとか考えていた。
ミルコさんの中で、エンデヴァーの評価は結構高いんだろうか。
エンデヴァーのギラついてヴィランに容赦ない感じは、ミルコさんは好きそうではあるんだけど……
それから少し詳細を詰めて、通信は終わった。
私たちはシャワーを浴びて夕食を食べてから、エレクプラントたちに挨拶をしに行った。
ミルコさんは声をかけずに行こうとしていたけど、流石にどうかと思って私が挨拶したいと言って行かせてもらった。
仮眠は取らない。
仮眠はヘリの中で取るってミルコさんは言っていたし、それがいいと私も思ったからだ。
エレクプラントたちイギリスのヒーローにはすごい勢いでお礼を言われて、ちょっと照れ臭かった。
そんな感じで私たちは空港に向かって、オセオンに行くためのヘリに乗り込んだ。