オセオンには深夜のうちに到着した。
ヘリに乗っていた時間は大体3時間くらい。
私は揺れとかが酷くて寝るのなんて無理だったけど、ミルコさんは豪快に爆睡していた。
ミルコさんは一昨日からほぼ一睡もしてなかったからなのは間違いないんだけど。
とにもかくにも、オセオンに到着した私たちは、深夜だったのもあってエンデヴァーたちが泊まっているホテルに直行した。
そこに私たちの部屋も取ってくれているらしい。
ホテルの鍵は空港で私たちを待ってくれていた司令部直属のスタッフから渡された。
「……ミルコさん……エンデヴァー……まだ起きてます……」
「は?もう3時になるぞ。マジで言ってんのか」
ホテルが近づくにつれてエンデヴァーが色々と仕事をしているのが見えて、私はドン引きしていた。
ミルコさんにそのことを伝えると、ミルコさんも半信半疑で聞き返してくる。
こんな時間まで明日の動きとかサイドキックへの指示とかを考えている。
最大戦力のエンデヴァーが何してるんだ。
サイドキックの……バーニンとかもいるみたいだし、なんで協力してやってないのか。謎過ぎる。
本部の情報が司令部からもたらされてから、昨日の段階で最低限の現地調査をしていたらしいけど、深夜だし、結構な山脈の中を捜索しなきゃいけないのもあって、危険だからということで引き返したようだった。
「はい……明日の動きを考えているみたいで……挨拶だけでもしますか……?」
「あー……到着したことだけでも伝えとくか」
「分かりました……こっちの部屋です……」
エンデヴァーの部屋までミルコさんを誘導する。
その最中にホテルの中の波動を見ていったけど、緑谷くんだけじゃなくて轟くんと爆豪くんもいない。
エンデヴァーの思考は3人を心配する感じだから、捕まってはいないんだろうけど……流石に心配してしまう。
そんなことを考えながら、エンデヴァーの部屋に辿り着いてチャイムを押した。
「誰だ」
「ようエンデヴァー!」
「あの……ミルコさん……今深夜……」
ミルコさんがいつもの調子でエンデヴァーに声をかけるけど、流石にもうちょっと声をおさえた方がいいんじゃないだろうか。
そう思って注意を促すけど、完全に無視されてしまった。
エンデヴァーはミルコさんであると気付いてすぐにドアを開けてくれた。
「ミルコか。リオルも、よく来てくれた」
「到着したことを伝えに来ただけだ。明日から行動開始ってことでいいな」
「ああ。イギリスでのことは聞いている。今ミルコたちも含めた明日の連携を考えていたところだ。詳細は朝伝える。疲れているだろう。今は休んでおけ」
「……エンデヴァーは……休まないんですか……?」
「俺はもう少し詰めてから休む。お前たちは気にしないでいい」
エンデヴァーはそう言ってくるけど、これ、間違いなくさっき伝えられた本部の情報から、可能性がありそうなところを考えていた感じだ。
広大な山脈地帯を捜索しつつ、街でのトリガー・ボム捜索をするための割り振りや、山脈地帯をどう探すかといったようなルートの考察って感じか。
夜になってから重要な情報が伝えられたから、こんな時間まで色々考えていたんだろう。
もう少ししたらエンデヴァーも休むつもりっぽいし、私たちも明日に備えて休んだ方がいいか。
これ以上邪魔しちゃうのも申し訳ないし、ミルコさんももっと寝たそうだ。
エンデヴァーへの挨拶は早々に終わらせて、ホテルの部屋に移動した。
朝、寝坊しないように気をつけないと。
翌朝、またエンデヴァーの所に行って、指示を仰ぎにいった。
エンデヴァーはバーニンを含めたサイドキックや現地のヒーローたちと、ホテルの広間のような部屋に集まっていた。
私とミルコさんも、部屋の隅で立ったまま話を聞くことになった。
それにしても、エンデヴァーが話すのか。
他国のヒーローと連携を取らないといけない関係上、指示を出すのはオセオン組のトップランクか、全ての国を含めてランクが最も高い者とか、そういう基準で選んでるのかな。
「では、今日の方針を話し合おうと思う。トリガー・ボム捜索も、街の中はほとんど探したと言っていい。これでも見つからないことから、おそらく何らかの移動するものに載せているか、そもそも街の中に置いていないかだろう。それらを重点的に捜索する。こちらに関しては、俺のサイドキックの飛べないものと、土地勘のあるクレア・ボヤンスらオセオンのヒーローで捜索を行ってもらいたい」
「ええ、もちろん。もうサイズは分かっているんだもの。トレーラーとか、運べるであろうものを透視して探してみるわ」
「本部に関しては、夜のうちにいくつかの候補地を絞っておいた。これを見て欲しい」
エンデヴァーの合図を受けて、サイドキックが画面にいくつかの衛星写真を映しだした。
「司令部やオセオンのヒーローたちと協力して、本部と言える施設を隠せるであろう候補地を絞り込んだ。もちろん全てハズレで、施設全てが地下にあるなどという可能性もなくはないが……これらのポイントが、そこまでの山道と、施設を置くことが出来る土地、地盤が最低限確保されているエリアになる」
そこには、オセオンの地図とともに、山脈地帯にある渓谷や崖とその下に広がる荒地のようなところ、いくつかの大きな森とかが映っていた。
「トリガー・ボムのベースを本部で作っていて、その後に運搬も行ったと考えると、完全に未開のエリアというのは考えづらいからな。資材の運搬記録などを追えればよかったんだが、オセオンの公安からは、デクの指名手配の経緯から、おそらく難しいだろうという返答があった。そのため衛星写真で施設の有無を確認し、発見できなかったため、隠すことが出来るエリアを絞った形になる」
エンデヴァーの言う候補地の条件が、一理も二理もあると思った。
あんな大きくて細心の注意を払う必要がある物、それぞれの国で最終的に組み上げるとしても、運搬にはどうやっても相当な労力がかかる。
それを山道すらも整備されていない獣道で行うなんて、どう考えても現実的ではなかった。
そして、トリガー・ボムを作れるだけの施設がある本部はある程度の規模があるはず。
そうなってくると、衛星写真で見つからないということは、どこかの地下や、崖を切り崩したところ、渓谷や深い森の中といったような、上空からの確認が困難なところにある可能性は高いだろう。
それらを総合して、これだけの広大な範囲の山脈地帯から、一夜にして怪しいポイントを絞り込んでいる。
エンデヴァーの苦労は、これだけで容易に想像できた。
「これらのポイントを、街の捜査に加わらない者たちで分散して確認していく。Mr.プラスティックはこの森林地帯を。パンクラチオンはこちらの森林地帯。―――……」
エンデヴァーは、一つの案として写真を示しながら担当を口に出していく。
他のヒーローたちも特に嫌がる様子もなく、了承していっていた。
「飛ぶことが出来る俺とサイドキックは渓谷地帯を。そして、一番本部がある可能性が高いと睨んでいる、この崖とその底に広がる荒地。ここは、トリガー・ボム3つを信者に気付かれずに発見した実績のあるミルコとリオルに担当してもらいたいと考えている」
「これは、本部がある確証が持てても突入するなっていう認識でいいんだよな」
「ああ。何の策もなく本部に突入すれば、トリガー・ボムを起爆される可能性がある。本部を把握して、何らかの策を立てたい。それぞれ統括司令部と連絡を取り合い、その都度指示を仰いでくれ」
名前が分からない外国のヒーローが、エンデヴァーに質問している。
それに対してエンデヴァーは、オールマイトが言っていたのと同じような答えを返していた。
案の定私が一番怪しいエリアに向かわされるらしい。
まあ私なら1km離れた位置からでも確認ができるからバレるリスクが他のヒーローに比べて低いし、なんだったら本部に向かう信者がいればそれだけで特定できる。
当然の判断か。
「異議や意見のある者はいるか。いればそれを踏まえてよりよい策や割り振りを考える」
エンデヴァーのその声に、異議を唱える人はいなかった。
皆時間が惜しいのは分かっているし、この割り振りが理に適っていることも理解している。
私も、今のところ拒否する必要性を感じない。
登山しないといけないから、大変そうではあるけど。
「いないようだな。ではこれより、トリガー・ボムと本部の捜索を開始する!!本部捜索に当たる者は山脈地帯や捜索担当区域を見ることが出来る端末と地図を持っていくことを忘れるな!」
エンデヴァーはそう言ってモニター近くに山積みされている端末と地図と、多分衛星通信ができる通信端末を指し示した。
ヒーローたちは、各自それを取って足早にホテルを出ていく。
私とミルコさんも、端末とかを手に取った。
私は大丈夫だけど、空も飛べない、感知もできないというヒーローが山脈地帯で遭難なんてことになったら笑えないから、必要な処置だと思う。
「ミルコ。お前たちの担当区域は島の端だ。流石に距離がある。気取られない位置までは車で移動しろ」
「あ?私らは車の運転なんかできねぇぞ」
「そんなことは分かっている。俺のサイドキックを1人回す。運転はそいつに任せろ」
エンデヴァーがわざわざ車とサイドキックを用意してくれるらしい。
確かにこの位置は島の端の端だし、100kmくらいはあるだろうか。
ヘリなんかで近づくと万が一があり得るから、車である程度の所まで近づいて、そこから徒歩で移動するしかない気もする。
そう考えると、エンデヴァーが車を用意してくれたのはすごく助かる。
必要なものは受け取ったし私たちも早く移動しないといけないんだけど、それはそれとして、聞いておきたいのは緑谷くんたちのことだ。
「あの……エンデヴァー……緑谷くん……デクと……ショートと……バクゴー……ずっと感知範囲内にいませんけど……大丈夫ですか……?」
「……デクの居場所は分からん。ショートとバクゴーはデクの捜索に赴いた。少なくとも、捕まっているという情報は入ってきていない。無事だと考えるしかないだろう」
「そう……ですか……ありがとうございます……」
それだけ端的に言うと、エンデヴァーはスタスタと歩いていった。
確かに、そう考えるしかない……心配ではあるけど……
エンデヴァーも、轟くんが心配なのを隠して捜索に向かっている。
私も、気にしすぎちゃダメか。
3人を信じて、今できることをしないと。
「行くぞ」
「はい……!」
ミルコさんが歩き出す後ろを、私も駆け足でついていく。
エンデヴァーが用意してくれていた車に乗り込んで、目的地に向かって出発した。
プロヒーロー注釈
・Mr.プラスティック
プラスティック変形の個性を持つプロヒーロー(国不明)
ワールドヒーローズミッションの最初の施設襲撃時にオセオンの施設に突入している、バイザーをつけて腕とかにごてごてしたアーマーをつけている人
・パンクラチオン
ギリシャのプロヒーロー
パワーの個性を持っていて、何倍にもパワーが膨れ上がって力もスピードもすごい!らしい
最初にオセオンの施設に突入しているギリシャっぽい緩めの服と髪の毛、髪飾りをつけてる人