エンデヴァーたちが来るまでの間、私たちは各々できる確認をしていた。
ミルコさんは私がつくった内部の構造を書いたメモを、私は構造の再確認や内部の人の思考の感知に集中していた感じだ。
フレクト・ターンの個性は、多分反射で間違いないと思う。
思考の節々からそんな感じの内容や、自分の個性に対する恨みつらみが読み取れる。
……つまりこのテロ行為、自分の個性をコントロールできないことによる、個性への行き過ぎた憎悪が原因か。
ヒューマライズがなんでやたらと個性持ちを殺そうとするのかと思ったら、そういうことかとしか思えない。
自分の個性を憎む気持ちは、私にも理解はできる。
でも、それを他人に、世界に押し付けるその思想だけは理解できない。
なんでそうなる。
なんで、自分の個性を憎んだ結果、世界の個性持ちすべてを淘汰するなんていう結論に至る。
無個性に憧れるのはいいけど、その独りよがりな我儘を、世界に押し付けようとするその思想にだけは一切共感できない。
読心で読んだ個性の内容とかをミルコさんに伝えたりしながらしばらく待っていると、範囲内にエンデヴァーたちを乗せたヘリが3機飛んできた。
そのヘリが飛んできている映像を、フレクトは見ている。
監視カメラのようなものが正面のどこかについているらしい。
フレクトの指示に従って、信者たちが銃を持って準備しだしていた。
「ミルコさん……エンデヴァーたち……来ました……フレクトもそれを把握しています……信者たちも……銃を持って準備を始めています……」
「よし。飛び出す準備しとけ。ヘリから人が降下するのを確認すると同時に、私たちも突入する」
「はい……」
ミルコさんが不敵な笑みを浮かべて今にも飛び出そうとしている。
とりあえず、私は今の情報をエンデヴァーたちにも共有しないと……
『エンデヴァー……報告します……フレクト・ターンはヘリの接近を把握しています……信者たちは既に銃を持ち迎撃準備中……突入と同時に銃弾が飛んでくる可能性が高いです……』
『織り込み済みだ。リオル、お前とミルコは突入後は好きに動け。最深部までの正確なルートを1番把握しているのはお前たちだ。作戦をすり合わせる時間もない。こちらは露払いする掃討班と深部への突入班に分けて対応するが、お前たちは突入班と目的を同じくするだけで十分だ。突入班の目的は、最も疑わしい最深部までの制圧。それだけだ』
『分かりました……解除キーの方は大丈夫でしたか……?』
『デクの救出に赴いていたショートと連絡が取れた。解除キーも既に手中に収めていることも確認している。ショートたちも今、プロペラ機でこちらに向かっている。あと1時間もあればここに到着するだろう。俺たちは、それまでにここを制圧することを目指す。いいな』
『はい……!』
私たちは突入班と一緒に、遊撃として最深部を目指す。
緑谷くんたちの無事も確認できた。
トリガー・ボム爆破のリミットがあと1時間30分くらいだから、1時間で到着してくれるなら私たちが制圧を済ませておけば十分間に合う。
「ミルコさん……エンデヴァーからの指示です……私たちは遊撃として……目的のみ突入班と同じくして……あとは好きに動くようにと……目的は……最深部までの制圧……解除キーを持ったデクたちが約1時間後に到着するので……それまでに制圧を目指す……とのことです……」
「さっすがエンデヴァー。よく分かってんじゃねぇか。細かいこと言ってこねぇとこが特にいい」
案の定ミルコさんは、好みの運用をされて嬉しそうに目をぎらつかせていた。
そして、ついにヘリからの降下が開始された。
エンデヴァーたちが、雨が降り始めている灰色の空の中に飛び出す。
エンデヴァーの赤い炎が灰色の空を照らして盛大に目立っているのもあって、信者たちは上空に視線を釘付けにして、銃撃を開始していた。
「エンデヴァーたちの降下が開始されました……!!」
「私らも行くぞ!!」
そんなエンデヴァーたちの降下を察知した私たちも行動を開始する。
私たちはもう入口の真横に位置する場所までは移動してきていたから、信者たちが上空に気を取られている間に一気に突入するのがいいだろう。
ミルコさんもそう思っているようで、弾丸のように素早い跳躍で一気に入口近辺まで飛び跳ねていく。
私も一気に跳ね上がって、ミルコさんを追いかけた。
「赫灼熱拳っ!!」
上空から、エンデヴァーの大声と凄まじい熱量の暴風が伝わってくる。
大量に迫る銃弾を払うために、エンデヴァーが一気に周囲を焼き払っているようだった。
あれ、周囲のヒーローは大丈夫なのだろうか。
一応近くにいるのはバーニンとかの炎熱系個性持ちみたいだけど、上空でこれを受けるパンクラチオンとかはたまったものじゃないと思うんだけど。
そう思いながら、信者を薙ぎ払って無駄に荘厳な入口に突入していくミルコさんを追いかける。
そんな私たちの背後から、凄まじい速度の炎が迫っていた。
エンデヴァー、私たちまで焼かないよねこれ。
信じてるけど、ちょっと怖い。
信者に無個性が多いことを承知で加減しているのは分かるけど、それでもこっちからしたらすごい熱量なのだ。流石に怖い。
「ミルコさん!!そこを右です!!」
「おう!」
本部内部に入った私たち目掛けて、信者たちがどんどん向かってくる。
信者たちは、フレンドリィファイアが怖くないのかと思うくらい容赦なく、建物の中でもマシンガンを撃ち込んでくる。
ミルコさんがどうやってるのか分からない感じで銃弾を回避しながら、すぐに距離を詰めて気絶させてくれるから、後ろを走る私は早々狙われていない。
私は、奇襲を目論んで死角から狙ってくる信者たちや、壁についているレーザーを照射してくる機械に真空波や発勁を叩き込みながら進んでいく。
どんどん走っていってはいるんだけど、私たちはどうしても迎撃しながらの突入になる。
そのせいもあって、今まさに、後ろからマシンガンをもった10人を超える信者の集団が迫ってきていた。
「後ろから10人くらい来てます!!」
「分かってるよ!!」
ミルコさんは前方の信者を蹴り飛ばしながら、後ろにも注意を払い始めてくれている。
ミルコさん自身も音で後ろから信者が近づいてきているのは分かっているとは思うけど、一応警告した感じだった。
私も真空波で牽制しようとするけど、マシンガン持ち10人に対してとなると多勢に無勢だ。
そう思っていたら、さっきまで入口の方にいたはずのエンデヴァーとバーニンが凄い勢いで飛んできた。
「ミルコ!!リオル!!足を止めるな!!」
エンデヴァーが、多分バニシングフィストと思われる技で信者たちを焼き払った。
炎に巻かれた信者たちが悶えながらバタバタと倒れていく。
一応、息はある。殺さない程度には加減はしてるみたいだ。
そんな中、エンデヴァーたちのさらに後ろから、炎を全く気にした様子もない常軌を逸した感じのヴィランが迫ってきていた。
エンデヴァーたちもすぐに気づいて、迎撃の姿勢を取り始めている。
ミルコさんはそれを確認して、すぐに深部へ向かって走り出していた。
私も追いかけようとするけど、最低限あの信者の情報だけ伝えた方がよさそうだ。
「エンデヴァー!!その信者!!ブーストを使ってます!!使用前の思考からして、個性は水流に関する何か!!注意してください!!」
「情報、感謝する!!ここは任せて先に行け!!」
エンデヴァーとバーニンのあの信者との個性の相性は気になるけど、それでも立ち止まっている余裕はない。
2人に背を向けてミルコさんを追いかけた。
奥に進むにつれて、どんどん信者の数も少なくなって、通路の装飾もなくなってくる。
今や通路は完全な洞窟の岩肌が露出しているものになっていた。
ミルコさんが壁を反射するように跳躍を続けてマシンガンをいなして信者を蹴り飛ばしていく。
「波動蹴!!」
私も自分に可能な範囲でミルコさんの動きを真似して、2段ジャンプと跳躍を駆使して信者たちに波動蹴を叩き込む。
ミルコさん程鮮やかにとはいかないけど、それでも、信者を気絶させることはできていた。
それを繰り返して、フレクト・ターンが待ち構えている部屋の前の扉まで辿り着いた。
「この先だな」
「はい……この先で……フレクト・ターンが待ち構えています……室内の柱の中……レーザー照射装置があります……入ってすぐに照射してくると思います……」
フレクトの思考的に、おそらく侵入と同時にレーザーが照射されると思う。
さらにいうと、フレクトの個性は反射。
レーザーを反射させて、射線通りの軌道をしない可能性すらある。ここにも注意が必要だ。
「あの装置か。あれならどうとでもなるな」
「……フレクトの個性は……反射です……フレクトの周囲に……どういう仕組みか分からない鏡が……浮いたりもしているので……射線通りの軌道をしない可能性もあります……最大限の注意が必要です……」
「反射?となると蹴りは……」
「効かない可能性が高いと思います……」
「……まあどうにかするしかねぇな。とりあえず蹴っ飛ばして、そっから判断する」
ミルコさんは相変わらずな感じだった。
一瞬考え込んではいたけど、とりあえず蹴ってみて判断することにしたらしい。
まあ私もまだフレクトの個性を掴み切れていないし、それで正解なのかもしれない。
そこまで話して、ミルコさんは大きな扉を思いっきり蹴っ飛ばした。
ミルコさんのキック力に耐えきれずに、扉はいとも簡単に吹き飛んでいく。
扉が無くなった先には、神殿の大聖堂もかくやという感じの、豪華な広間が広がっていた。
私とミルコさんが部屋の中に足を踏み入れた瞬間、周囲の柱から今までの通路にもあったレーザーを照射する機械がせり出してきた。
それを察知したミルコさんと、ある程度予測できていた私は、左右に分かれて飛び退いて、レーザーを避ける。
そんな私たちの姿を見ながら、壇上にフレクト・ターンが現れた。