波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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リンゴパーティー

オセオンから帰ってきて数日。

私を含めたインターンで長期間学校を離れていたメンバーは必死で補習に取り組んでいた。

平日の放課後をほぼそれだけで潰して、なんとか週末になったところだった。

私が部屋で寛いでいると、部屋にお姉ちゃんとエリちゃん、それに通形さんと天喰さんが近づいてきていた。

……思考からして、料理をお願いしたい感じか。

この感じだと、エリちゃんの部屋に山のように積まれているリンゴを使う感じかな。

少し待っていると、チャイムが鳴ると同時にお姉ちゃんの声が響いてきた。

 

「おーい!瑠璃ちゃーん!」

 

お姉ちゃんの声にちょっとわくわくしながらドアを開ける。

その瞬間に満面の笑みのお姉ちゃんの顔が実際に見えて私も大興奮だ。

 

「お姉ちゃん……!待ってた……!入って……!」

 

「いやー、突然ごめんね。頼みたいことがあってさ!」

 

私が部屋に招き入れると、4人が順番に部屋に入りながら通形さんがそんな感じで明るく声をかけてきた。

 

「ん……大体察してます……詳細を詰めましょう……」

 

4人が入ったのを確認してからドアを閉めてテーブルの周りに座った。

お姉ちゃんがコルクボードを見て笑顔を浮かべながら頷いているのがちょっと恥ずかしい。

 

イギリスに行く前は爆豪くんの写真を外さなきゃいけなくなるかと思っていたけど、結局爆豪くんが写っている写真もそのまま残してあるのだ。

轟くんに散々「友達じゃねぇ」って言ってたから、私もちょっと不安になって帰国した後に爆豪くんに聞いてみたのだ。

そしたら、案の定『友達なわけねーだろ』って感じの思考が読み取れてしまって、すごく寂しくはあったけど、仕方なく写真を外そうとしていた。

だけど、私が謝って、じゃあ部屋のコルクボードの写真は外すねって言ったら、爆豪くんはちょっと間を置きながらではあったけど、「んな小せぇことで文句言わねぇ。好きにしろ」って言ってくれたのだ。

発言と思考にずれは全くなかった。嘘じゃない。

友達じゃないとは言っているけど、写真を貼っておくことは許してくれるみたいだった。

爆豪くんはお部屋披露大会の時はいなかったけど、誰から聞いたのか私の部屋に皆の写真が飾られていることを知っていたらしい。

それを知っていたのと、今の会話から予測をつけて、私が受け入れてくれた人とか、友達の写真しか飾っていなかったことを察してくれたみたいだった。

そのうえで、私に気を遣って写真は飾っててもいいって言ってくれた。

友達じゃないって言われたのは寂しかったけど、その優しさは嬉しかった。

 

そんなこんなでコルクボードはそのままになった。

そろそろいっぱいになりそうなコルクボードをどうするかが最近の悩みだ。

 

まあそれはいいとして、今はお姉ちゃんたちの話だ。

 

「波動さん、っとと……ねじれさんとエリちゃんに聞いたんだよね、瑠璃ちゃんは料理がとっても上手だって」

 

「ルリさん、美味しいお料理作ってくれるから……」

 

「ん……リンゴを使った料理を……作ればいいですか……?」

 

「うん!あとはお菓子!」

 

「そうなると……砂藤くんにも……協力してもらった方がいいかも……」

 

ワクワクした表情を隠そうともしないエリちゃんとニコニコ笑顔のお姉ちゃんを見て、私も完全に乗り気になっていた。

その後はどんな感じのものが食べたいかをエリちゃんに聞いていった。

私が作れそうなのは、パイとかガトーショコラ、クッキー、コンポート辺りだろうか。

砂藤くんがいればタルトタタンとかもっと凝ったものを作ってくれると思うから、砂藤くんも巻き込むべきだな、やっぱり。

となると、問題はどのくらい作るかだろうか。

リンゴが数箱単位であるのは通形さんが持ってきた箱の山からして分かりきっているけど、お姉ちゃんたちの想定がよく分からないし。

 

「量とか……どうしましょうか……私たちの分があればいいですか……?」

 

「あのリンゴ……とってもおいしいから、いろんなひとに食べてほしい……!」

 

「さっき俺たちでも話したんだけど、皆でパーティーするのはどうかなって話になったんだ!」

 

「そういうことなら……皆を巻き込みますか……エリちゃん、それで大丈夫……?」

 

「うん!」

 

そういうことで、皆でリンゴパーティーをすることになった。

それからは皆の部屋巡りだ。

順番に皆の部屋に訪問して、用件を伝えていく。

皆すぐに納得してくれて、すごく乗り気で準備を手伝うって言ってくれた。

砂藤くんも気合を入れていたし、美味しいリンゴスイーツができることだろう。

私自身も楽しみだし、お姉ちゃんに美味しいのを食べてもらえるように頑張らないと。

 

 

 

「リンゴここでいいか?」

 

「ちょっと峰田くん!つまみ食いはダメー!!」

 

「あれ、砂糖どこー?」

 

「お?呼んだか?」

 

「あ、ごめん!そっちじゃなくて甘い方の砂糖!」

 

砂藤くん監修のもと、皆で色んなリンゴ料理やスイーツを作っていく。

エリちゃんも緑谷くんに教わりながらリンゴ飴を作っている。

お姉ちゃんは皆の所を興味津々な様子で見て回っていた。

お姉ちゃん可愛い。

皆も料理しているところをお姉ちゃんに見てもらえてきっと大満足だろう。

私は私で、お姉ちゃんに味わってもらうためにこだわりまくった最高のアップルパイを作ろうとしていた。

パイは普通に料理として作ったこともあるから、もともとお姉ちゃんの好みに寄せて作ることはできる。

そのうえで、リンゴをメインにした場合のアレンジの方法を砂藤くんに教えてもらった。

それを踏まえて、さらにお姉ちゃんの好みの味になるように調整したのだ。

後は焼きあがるのを待つばかり。

そう思って達成感とともに皆の方に注意を向けると、リンゴを手で握りつぶしている切島くんがいた。

……どういう状況だ、これ。

思考を読む限りリンゴジュースを作ってるみたいだけど、なんで手で握りつぶして作ってるんだ。

ミキサーがあるだろうに。

エリちゃんも顔を真っ赤にして真似しちゃってるし。

 

「……エリちゃん……ジュース作りたいの……?」

 

「う、うん……だけど、硬くて、あの人みたいに出来ないの……!」

 

エリちゃんはそう言いながら切島くんの方を意識して、リンゴを潰そうとする作業に戻った。

この方法じゃ無理だし、一緒にミキサーで作ってあげようかな。

 

「そうだね……じゃあ……一緒にリンゴジュース作ろっか……」

 

「いいの?」

 

「ん……大丈夫……パイも後は待つだけだから……」

 

エリちゃんも納得してくれたみたいだし、そのままキッチンでミキサーを出した。

さっきまでエリちゃんと一緒にいた通形さんも、私がジュースをエリちゃんと作り出したのを確認してから、自作のリンゴスイーツを作り始めた。

エリちゃんに御馳走するつもりらしい。

それはいいとして、ミキサーにリンゴを入れるのはエリちゃんにしてもらうにしても、ある程度の大きさに切るのは流石に私がやらないとダメだ。

ササッといくつかのリンゴの皮を剝いて4等分に切ってしまう。

 

「はい……ミキサーの中に入れてみて……」

 

「うん!」

 

エリちゃんがワクワクしたような表情でミキサーの透明なカップの中にリンゴを移していく。

その様子を微笑ましく思いながら見守っていると、お姉ちゃんが近づいてきていた。

 

「ふふ、瑠璃ちゃんがお姉さんしてるの見るのは結構新鮮だなー」

 

「お、お姉ちゃん……あんまり見ないで欲しい……」

 

「なんで?いいことだよ。昔の瑠璃ちゃんだったら、私用のアップルパイ作るだけで周囲のことなんか一切気にしてなかっただろうし」

 

「それは……そうかもしれないけど……」

 

「成長してるってことだねー。私もお姉さんしてる瑠璃ちゃんの写真が取れて大満足だよ!」

 

……撮られていることに全く気付かなかった。

またお父さんとお母さんが私を辱める材料が増えてしまったのか。

 

「……お、お父さんと……お母さんには……見せないでもらえると……」

 

「それは無理かなー」

 

「ルリさん!全部入れたよ!」

 

お姉ちゃんをどうにか説得しようとしていると、エリちゃんが満面の笑みで声をかけてきた。

……仕方ないけど、お姉ちゃんの説得はとりあえず後にして、ジュースを仕上げちゃうか。

そう思って私は、エリちゃんの方に戻って、ミキサーの中に水とレモン汁と砂糖と氷を適量ずつ入れていった。

 

「後はこのボタンを押すだけだよ……」

 

「うん!」

 

エリちゃんがスタートのスイッチを押す。

それと同時に、結構大きな音を出しながら、ミキサーが起動した。

それから数分ミキサーをかけ続けて、リンゴジュースが完成した。

完成したリンゴジュースをストロー付きの子供が飲みやすいコップに入れてエリちゃんに渡してあげる。

 

「はい……出来上がり……ゆっくり飲んでね……」

 

「うん!」

 

エリちゃんが大事そうにコップを抱えるのを確認してから手を離す。

それからゆっくりとかわいらしくちゅうちゅうとジュースを飲み始めた。

その様子を眺めながら、私は私でそろそろ焼きあがるアップルパイの確認をしていた。

良い焼き具合だし、これくらいでよさそうかな。

そう思ってアップルパイをオーブンから出していると、少し離れたところから飯田くんの「足の速い者は集まってくれ!」という声が聞こえてきた。

……リンゴ、無くなっちゃったのか。

買い出しの為にこんなことを言っているっぽい。

 

「……リンゴ……無くなっちゃった……?」

 

エリちゃんも遠くの声が聞こえてきたのか、シュンと寂しそうな表情を浮かべて聞いてきた。

一応、その通りではあるんだけど……

 

「ん……そうみたい……一応……足りなそうな分は……買ってきてくれるみたいだけど……」

 

「……エリちゃんが皆に食べて欲しいのは、このリンゴ、なんだよね……」

 

通形さんが言ってくれている通りで、エリちゃんの思考は自分が美味しいと思ったリンゴが皆に行きわたらなくて、食べてもらえない可能性があるのを寂しがっている感じだった。

……解決策、一応あるにはあるけど、常闇くんの私物だからなぁ……

勝手に言うこともできないし……

そう思って緑谷くんたちが買い出しにいくのを見逃そうとしていたら、壁際で腕を組んで目を瞑ってかっこつけている常闇くんが口を開いた。

 

「買い出しに行く必要はない。これを使ってくれ」

 

そう言いながら、常闇くんはリンゴの箱を持ってきたダークシャドウを指し示した。

 

「そのリンゴ、ミリオとエリちゃんが当てたのと同じ……」

 

「うん、間違いないよ!」

 

天喰さんが通形さんに呟くように声を出すと、通形さんもいい笑顔で頷いた。

 

「好きに使ってくれ」

 

「エリちゃん!これだけあれば皆に食べてもらえるね!」

 

常闇くんの気前のいい提案に、通形さんが意気揚々とエリちゃんに話しかける。

エリちゃんはエリちゃんで、気合を入れて常闇くんに話しかけようとしていた。

 

「……あの……!わたしも、リンゴすき……!」

 

「……同志だな」

 

「どうし?」

 

「仲間ってことかな!」

 

「なかま……!」

 

エリちゃんが自分のリンゴ好きを常闇くんに暴露すると、相変わらずな小難しい言い回しで応えていたわけじゃない。

ただ、エリちゃんも通形さんの説明でしっかりと理解できたようだった。

凄く嬉しそうに呟いていた。

 

それから少しして、皆が作っていたリンゴ料理とスイーツが完成した。

エリちゃんも、リンゴを使った料理とかが所狭しと並べられた机を見て満足気にしていた。

私は私で大興奮で甘い系の食べ物を次々と食べていく。

やっぱり甘いものは美味しい。

私が作ったアップルパイもお姉ちゃんを筆頭に大好評だし、悪い気はしない。

エリちゃんもリンゴパーティーを楽しんでいるみたいだし、皆大満足のパーティーだった。

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