波動使いのヒーローアカデミア   作:あじのふらい

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ヒーロー名

3日後、休みも明けて登校日になった。

今日も今日とてお姉ちゃんと登校だ。

お姉ちゃんの提案で、今日は少し早く家を出ている。

今日は雨だから微妙だけど、体育祭を見た人たちに囲まれる可能性があるらしい。

 

案の定お姉ちゃんが囲まれて時間がかかってしまった。

私もお姉ちゃんの人気が誇らしくてドヤ顔をしていたら、ぽつぽつと話しかけられた。

それだけ体育祭の注目度が高かったということだろう。

 

だけど中学生と思わしき少年たちに「本当に小さいな!」とか言われたのが気に食わない。

それもこれも爆豪くんが不名誉なあだ名で呼ぶせいだ。

何か仕返しを考えておこう……

 

 

 

教室に着いたら皆登校時の話で盛り上がっていた。

 

「超声かけられたよ来る途中!!」

 

「私もじろじろ見られてなんか恥ずかしかった!」

 

「私も……話しかけられた……」

 

「俺も!」

 

透ちゃんが見られて恥ずかしかったとか言ってるけど、もしかしなくてもそれはいつもではないだろうか。

浮かぶ制服は目を引くと思う。

言わぬが花か。

 

皆賑やかに話していたけど、予鈴が鳴ったら速やかに席に着いて相澤先生が入ってくる頃には静まり返っていた。

もう相澤先生の指導が身に染みついている。

 

「おはよう」

 

「「「おはようございます!!」」」

 

姿を現した相澤先生は包帯とギプスが取れていた。

そのことを梅雨ちゃんが指摘するけど、一言で受け流されてしまっていた。

 

「んなもんより、今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だぞ」

 

その言葉に、クラスに緊張が走る。

例のごとく『小テストか!?』とかいう思考がちらほら聞こえる。

まあそんなことではないわけだけど。

 

「"コードネーム"、ヒーロー名の考案だ」

 

「「「胸膨らむヤツきたああああ!!」」」

 

その一言でクラスが俄かにざわめき出したけど、先生が髪の毛をざわつかせた瞬間にピタリと静まり返った。

それを確認した先生が、続きを話し始める。

 

「というのも先日話した"プロからのドラフト指名"に関係してくる。指名を本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2、3年から……つまり今回来た"指名"は将来性に対する"興味"に近い。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」

 

「大人は勝手だ!」

 

峰田くんが何やら文句を言っている。

だけど1年生に指名を出しただけでそれ以降ずっと面倒を見続けないといけないなら、ヒーロー側にとって不利すぎる制度になってしまう。

そんな制度だったら指名を出すヒーローなんていなくなってしまうと思う。

 

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」

 

「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」

 

透ちゃんの質問を肯定しつつ、相澤先生が黒板に棒グラフ付きの集計結果を表示させた。

 

A組指名件数

轟 4123

爆豪 3556

常闇 360

飯田 301

波動 278

上鳴 272

八百万 108

切島 68

麗日 20

 

私にも結構な数の指名が入っていた。

ただ私の場合、感知能力を期待されての側面が大きい気がする。

まあどんな理由であっても指名してくれたのは嬉しい。

お姉ちゃんに箔をつけられるような事務所があるといいんだけど……

 

「例年はもっとばらけるんだが、二人に注目が偏った」

 

「だー--白黒ついた!」

 

「見る目ないよねプロ」

 

上鳴くんが嘆いてるけど、上2人が規格外なだけだと思う。

三奈ちゃんは呆然としているし、青山くんは憤慨していた。

緑谷くんも1件も指名が入っていないし、最終種目に出場するだけでは駄目ということなんだろう。

 

「波動すごいじゃん。クラス5位だよ」

 

「ん……ありがと……でも……分不相応な気がする……」

 

響香ちゃんが手放しに褒めてくれる。

嬉しいけど、その指名件数に見合うだけの活躍も出来ていなければ実力も足りていないと思う。

やっぱりまだ分不相応だ。

 

「これを踏まえ……指名の有無関係なく、いわゆる職場体験に行ってもらう。お前らは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練にしようってこった」

 

「それでヒーロー名か!」

 

「俄然楽しみになってきたぁ!」

 

「まあ仮ではあるが適当なもんは「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

相澤先生の話を遮って、ミッドナイト先生が教室に入ってきた。

相変わらずのコスチュームな上に、惜しげもなく披露されるセクシーポーズ。

18禁ヒーローの名に相応しい登場だ。

 

「この時の名が!世に認知されそのままプロ名になっている人多いからね!!」

 

「まぁそういうことだ。その辺のセンスはミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」

 

相澤先生は本当にそのままミッドナイト先生に丸投げするつもりみたいだった。

既にごそごそと寝袋の準備をし始めている。

 

「将来自分がどうなるのか。名をつけることでイメージが固まり、そこに近づいてく。それが"名は体を表す"ってことだ。"オールマイト"とかな」

 

それで説明は終了して、ヒーロー名を考案するための時間になった。

 

 

 

15分後―――

 

「じゃ、そろそろ出来た人から発表ね」

 

ミッドナイト先生のその言葉にクラスに動揺が走る。

やっぱり皆の前で発表となると恥ずかしい人が多いらしい。

 

青山くんがすかさず手を上げたけど、彼のさっきまでの思考から大分不安が残る。

そして、自信満々で見せられたフリップボードには、案の定な文言が書いてあった。

 

「行くよ……輝きヒーロー"I can not stop twinkling(キラキラが止められないよ⭐︎)"」

 

「「「短文!!!!」」」

 

あまりにも名前に適していない文章の登場に、皆度肝を抜かれている。

だけど、ミッドナイト先生だけは冷静にアドバイスを考えていた。

 

「そこはIを取ってcan'tに省略した方が呼びやすい」

 

「それね、マドモアゼル☆」

 

ミッドナイト先生のアドバイスは確かにその通りなんだろうけど、何か釈然としない。

皆も『これは……!!』とか考えている。

やっぱり皆同じような感想なんだろう。

 

次に前に出てきたのは三奈ちゃんだった。

 

「じゃあ次アタシね!エイリアンクイーン!!」

 

「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」

 

「ちぇー」

 

これに関しては先生の言う通りだと思う。

エイリアンクイーンはヒーロー名というよりもヴィラン名と言われた方がしっくり来てしまう。

大喜利のような雰囲気になってしまったのもあってか、『バカヤロー!!』なんて頭の中で罵っている人も多い。

 

「じゃあ次、私いいかしら」

 

その空気を打ち破って梅雨ちゃんが手を上げる。

 

「小学生の時から決めてたの。フロッピー」

 

そう言って梅雨ちゃんが出したフリップボードには"梅雨入りヒーローフロッピー"と書かれていた。

 

「カワイイ!!親しみやすくて良いわ!!皆から愛されるお手本のようなネーミングね」

 

ミッドナイト先生も大絶賛だ。

皆も嫌な空気を打ち破ってくれた梅雨ちゃんを称賛するようにフロッピーコールを繰り返している。

 

それに続いて出てきたのは切島くんだった。

 

「んじゃ俺!!烈怒頼雄斗(レッドライオット)!!」

 

「"赤の狂騒"!これはあれね!?漢気ヒーロー"紅頼雄斗(クリムゾンライオット)"リスペクトね!」

 

「そっス!だいぶ古いけど俺の目指すヒーロー像は"(クリムゾン)"そのものなんス」

 

「フフ……憧れの名を背負うってからには相応の重圧がついてまわるわよ」

 

「覚悟の上っス!!」

 

堂々と憧れの人の名前を背負っていくと宣言した切島くんは、当然合格だった。

 

そこで一度発表の流れが途切れた。

ここらへんで言っておこうかな。

 

「ん……じゃあ……はい……」

 

「はい!波動さん!」

 

手を上げてミッドナイト先生に指名される。

そのまま席を立って教壇まで歩き、フリップボードを皆に見えるように置く。

フリップボードにはこう書いておいた。

 

 

"波動ヒーローリオル"

 

 

「可愛いじゃない!これは自分の名前を捩った感じかしら?」

 

「ん……それもあります……だけど……それだけじゃないです……波動は……波みたいなもので……波紋って言われることもあるんです……その波紋を英語のリプルにして……全部を見通してやるぞっていう……意気込みを込めて……オールを掛けました……」

 

「意気込みを込めた名前、良いわねぇ青臭くて……好きよ!そういうの!」

 

「ありがとう……ございます……」

 

合格を貰えて一安心だ。

席に戻ると響香ちゃんが「いいヒーロー名だね」なんて笑顔で褒めてくれた。

褒めてもらえて私も嬉しくなってしまう。

 

そんな感じのやり取りをしていたら、響香ちゃんのさらに隣の上鳴くんが渋い顔をし始めた。

 

「うあ~考えてねんだよなまだ俺」

 

そういって考え込む上鳴くんの肩を響香ちゃんがつつく。

 

「つけたげよっか、"ジャミングウェイ"なんてどう?」

 

「武器よさらばとかのヘミングウェイ捩りか!インテリっぽい!カッケェ!!」

 

響香ちゃんに提案されたヒーロー名に、上鳴くんが嬉しそうに反応する。

だけど、多分響香ちゃんはウェイをいつものショートした上鳴くんにかけているだけだと思う。

それでもいい感じの名前に仕上げている辺り、流石響香ちゃんだとは思うけど。

 

「~~~~いやっ、せっかく強いのにプフッ!すぐ……ウェイってなるじゃん……!?」

 

響香ちゃんは笑いながらすぐに種明かしした。

仲いいなぁと思っていたら、響香ちゃんがスッと立ち上がって前に出る。

 

「耳郎おまえさぁふざけんなよ!」

 

「ヒアヒーローイヤホンジャック!」

 

「良いわね!次!」

 

響香ちゃんは聞く耳を持たずに、ささっといい感じのヒーロー名を発表して終わった。

その後は皆流れを掴んだのかどんどん発表していった。

 

「テンタコル!」

 

「触手のテンタクルとタコの捩りね!」

 

「テ……テイルマン」

 

「名が体を表してる!」

 

「かぶった……シュガーマン!」

 

「あま~~い!!」

 

「ピンキー!!」

 

「桃色!桃肌!」

 

「チャージと稲妻でチャージズマ!」

 

「たはは~!痺れるぅ!」

 

「ステルスヒーロー!インビジブルガール!」

 

「良いじゃん良いよ!さぁどんどん行きましょー!!」

 

先生は次々と発表されるヒーロー名を一言ずつ褒めて、どんどん次に回している。

その後も続々と発表していって、爆豪くんが席を立った。

 

「爆殺王」

 

「そういうのはやめた方が良いわね」

 

今まで一言で称賛しまくっていたミッドナイト先生が、冷静に否定した。

正直思考停止で褒めてるのかなとか思ってたけど、そうでもなかったらしい。

だけど私もそう思う。少なくともヒーローなのに"殺"の字を入れるのはよろしくないだろう。

 

続いてお茶子ちゃんが前に出ててきた。

 

「考えてありました……ウラビティ」

 

「洒落てる!」

 

そこまでは順調に進んで、残りは飯田くんと緑谷くん、爆豪くんの3人になった。

 

飯田くんは一度フリップボードにインゲニウムと書こうとしたみたいだったけど、『僕はまだ―――』なんて考えて消してしまった。

やっぱりインゲニウムのことを気にしているんだろう。

もしお姉ちゃんに何かあったら私も似たような状態になるだろうなと思うと、さらに心配になってしまう。

どこかで励ましてあげることとかできないかな……でも私が同じ状況で励まされても絶対に受け入れないだろうし……

 

そんなことを考えていたら緑谷くんが前に出てきていた。

フリップボードには"デク"と大きく書かれていた。

 

「緑谷、いいのかそれ!?」

 

「うん、今まで好きじゃなかった。けど、ある人に"意味"を変えられて……僕には結構な衝撃で……嬉しかったんだ」

 

『いつまでも雑魚で出来損ないの"デク"じゃないぞ……"「頑張れ!!」って感じのデク"だ!!』

 

「これが僕のヒーロー名です」

 

ある人なんて濁しているけど、これお茶子ちゃんのことだよね。

もしかしなくてもそういうことなんだろうか。

ちょっと気になる。

爆豪くんが凶悪な顔で緑谷くんを睨みつけている気するけど、爆豪くんは早く自分の名前を考えた方が良いと思う。

今書いている"爆殺卿"が通ることは絶対にないと思うし。

とりあえず"殺"の字を入れるのをやめた方がいいってことを教えてあげた方がいいんだろうか。

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