しばらく救助の指示を出し続けていると、死柄木の方で動きがあった。
脳無が、瓦礫の山の下から、這い出してきていた。
あの崩壊を、免れていた?
違う。死柄木の思考が『脳無のカプセルに波及しないように調整してみたけど、全部は無理だった』なんてものになっている。
免れたんじゃない。死柄木がそこだけ崩壊しないようにしたんだ。
インカムも、少し前から使えなくなっている。
死柄木が電波を広範囲に照射した直後だから、間違いなく死柄木のせいだろう。
私のテレパスには影響はないけど、普通のヒーローたちは連携に影響が出てしまっていた。
思考を見る限り、避難をしている街の方は無事だから、マシと言えばマシなんだろう。
その直後くらいから相澤先生が死柄木を見てくれているおかげで、崩壊の心配はないけど、それでも、いつ抹消が解けてしまうか分からない。
油断はできなかった。
『スナイプ先生……!!右手前方の高さが残ってる建物……!!その中に生存者がいます……!!』
『分かった!すぐに向かう!』
私が指示すると、スナイプ先生はすぐに走ってその場所に向かってくれる。
本当に、ただこの作業の繰り返しだった。
少しずつではあるけど、それでも瓦礫に埋もれたり身動きが取れなくなっている人を救助できている。
たまに私の指示にすぐに従ってくれないやる気のないヒーローがいるけど、そういう人には再三行くようにテレパスをかけ続ければ一応向かってはくれる。
そんなことを繰り返している間に、死柄木の方でも戦闘は続いている。
エンデヴァー、ミルコさん、クラスト、リューキュウ、グラントリノ、相澤先生、マニュアル……とにかく多くのヒーローが死柄木に立ち向かっていた。
グラントリノが地面に叩きつけられた直後、ミルコさんとリューキュウが死柄木に襲い掛かっている。
そこに、緑谷くんまで飛び込んでいってしまった。
あんなに戦わないでって言ったのに、結局緑谷くんには響いていなかったらしい。
黒鞭で緑谷くんが死柄木を拘束して、そこにエンデヴァーが飛び掛かろうとした瞬間、死柄木の思考が、『消失弾』というものになった。
それを認識した瞬間、私は、死柄木と戦っているヒーローたち全員に、テレパスをかけていた。
『死柄木が消失弾を使う!!狙いは……イレイザーヘッド!!』
死柄木が指で弾いた弾丸は、凄まじい速さで相澤先生に迫っていた。
このまま進めば、先生の右足に当たる。
そう思った瞬間、先生と死柄木の間に、クラストが盾を投げ込んでいた。
『……確かにそうすりゃ防げるが、とはいえ流石に、一瞬綻ぶ』
死柄木の思考が、そうなった瞬間、ヤツは周囲に衝撃波を放った。
消失弾自体は、クラストの盾が弾いてくれた。
相澤先生の個性が消されるなんていう事態だけは防いでくれた。
だけど代わりに、相澤先生の視界を、盾が遮ってしまっていた。
その刹那の瞬間を見逃さなかった死柄木は、一瞬とはいえ個性を使うことが出来てしまっていた。
衝撃波でリューキュウの巨体すらも吹き飛ばした死柄木は、相澤先生の方に吹き飛んで、先生の顔に、指と爪をめり込ませた。
轟くんがすぐに死柄木に氷を放って、緑谷くんが追撃をかけたことで、先生からは引き離したけど、先生の右目が、抉れてしまっていた。
先生が傷つけられてしまったという事実に衝撃を受けていると、周囲の一般人の思考が、絶望に染まった。
『ちょっと何このニュース!?』
『どうなってんだよこの国!!』
『おわりだ……ここで死ぬんだっ!!』
『超大型ヴィランってなんだよ!?』
お茶子ちゃんたちすらも、思考が絶望に染まっている。
あまりにも広範囲で、濃すぎる負の感情に強い吐き気を覚えて、思わず口を押さえてしまう。
超大型ヴィランの接近。
まだ、範囲内にはいない。
それなのに、その存在を、認識できてしまった。
ビルよりも巨大なソレが、街を破壊しながら突き進んでくるのが、すごく遠くに、小さくではあったけど、視認出来てしまった。
「なに……あれ……あんなの……」
私まで絶望してしまいそうになるけど、首を横に振って気合を入れなおす。
こんなので絶望してたらダメだ。
今だって、勝ち目が欠片も見えないのに、ミルコさんたちが死柄木に抗い続けている。
私も、できることをしないと……
『フロッピー!!目の前のビル!!3階に人が取り残されてる!!』
『そこね!ありがとうリオル!』
『ウォッシュ!!次の十字路を左に曲がって5m先の民家!!お年寄りが動けなくなってる!!』
私が指示を続ける一方で、お姉ちゃんたち飛べるヒーローが病院側に伝令を頼まれて、飯田くんも勝手にそれについていく形で離脱していた。
私にテレパスするようにお姉ちゃんか飯田くんが思考を向けてくれたらそれでもよかったんだけど、あの巨人が既に目前まで迫っている状況もあって、進路に取り残されている人を救けるために1分1秒でも私の指示の時間を無駄にしたくなかったようだ。
確かに、あの巨人が病院に辿り着くよりも、お姉ちゃんたちが付く方が早い。
向かってくる巨人に対して、死柄木を押さえ込んでいるミルコさんたちができることなんてないから、最低限出現だけ知らせてくれればいいわけだし何も間違ってない。
そう思いながら指示を続けていたタイミングで、高速で動いているのに思考が全く読めない人間……トガヒミコが、範囲内に入ってきた。
相変わらずミスディレクションを使っているせいで思考が全く読めないのが困る。
私はトガの動向に注意を向けながら、指示を出し続ける。
そして、トガはお茶子ちゃんと梅雨ちゃんを視認した瞬間、老婆に変身した。
お茶子ちゃんに向けて、何かを叫んでいる。
必死の形相からして助けを呼んでいるのは間違いない。
だけど、違和感が凄まじかった。
トガから、凄まじい憎悪の感情を感じたのだ。
トガからは、悪意は散々感じたけど、ここまでの負の感情を背負っているのは、見たことがなかった。
『お茶子ちゃん!!その老婆はトガヒミコ!!ついていかないで!!!』
『えっ!!?……ごめん、瑠璃ちゃん時間がないの承知で聞く!あの変身元のおばあさん、生きてるか分かる!?』
『ごめん……それは、範囲外だから分からない……!』
『……なら、私が確認してくる。もしかしたら、生きてるかもしれないから……可能性があるなら、助けに行かないと……!!』
『……分かった……深追いはしないでね……』
お茶子ちゃんは、私に最低限のことを確認すると、トガを追いかけていった。
梅雨ちゃんにも最低限だけど情報を伝えておいた。
そして、巨人が私の感知範囲内に入ってきた。
その背中に、荼毘やMr.コンプレス、スピナーといったヴィラン連合の面々が、乗っていた。
あの巨人のヴィランは、AFOを盟友であると考えて忠誠を誓っている思考をしていて、正直参考にならない。
呼ばれたから向かっているだけ、命令を聞いているだけでしかなさそうな感じで、何をするつもりなのかも分からなかった。
まあこれはいい。暴虐の限りを尽くしている存在がいていいわけではないけど、こうなってしまったらもうどうしようもない。
だけど、問題は荼毘の思考だった。
なんだ、『お父さん』って。
凄まじい速さで街を蹂躙しながら行進していった巨人のヴィランが、病院のあたりに着いた瞬間、荼毘のその思考はさらに顕著になった。
荼毘がその思考を向けている対象は、エンデヴァーだった。
轟くんには、事故死している兄が、いたはず……まさか、そういうこと……?
エンデヴァーに対する凄まじい憎悪と、好意と、認められたいっていう承認欲求と……プラスとマイナスの感情が、ごちゃまぜになっていた。
……これ、エンデヴァーに言うことも悪手だけど、どうせ自分から明かしそうな思考もしている。
でも、知った直後にエンデヴァーが冷静でいられなくなるどころか、隙だらけになるリスクがある以上、何ができるってわけでもなかった。
むしろ、荼毘が動かずに説明をしている状況の方が、攻撃を仕掛けられているところで棒立ちになるよりもマシまである。
救助の指示を止めてまでいうほどのことではない、と思う。
私が救助の指示を続けている裏で、病院の方ではあの巨人、ギガントマキアが暴れ出していた。
死柄木の攻撃とギガントマキアの攻撃を、お姉ちゃんはうまい具合にいなしながら、死柄木に攻撃を加えていた。
病院の方の被害は、甚大だった。
相澤先生、緑谷くん、爆豪くん、グラントリノは重傷。
中軽傷はほとんど全員が負っている。
一方で超常解放戦線側は、死柄木が不完全な改造で終わっているせいで、強すぎる力に耐えられていないのか、身体が再生しなくなっていて重傷。今ようやく気絶したところ。
だけど、他の人員は無傷。
最悪な状況だった。
あの巨人を相手にしなければいけない状況で、どうやって捌けばいいのか。
それを考え出したところで、荼毘が歓喜に満たされながら、話し出していた。
楽しそうにくるくる踊りながら自分が轟燈矢であることを明かしていく。
エンデヴァーは、絶望に包まれていた。
この思考の感じは、もう戦えそうにない。
最悪の地雷が相手の中にいたとしか言えない。
ミルコさんたちも、あまりの事実にすぐに動けなくなってしまっていた。
荼毘が、『赫灼熱拳』って言いながら飛び降りたのは分かった。
使えるのか、その技。洒落になってない。
轟くんはエンデヴァーに緑谷くんたちを守るように、必死で話しかけ続けているけど、エンデヴァーは呆然として動く気配すらなかった。
そんなタイミングで、今上空に飛んできた飛行機から、ベストジーニストが降ってきた。
ベストジーニストは、大量のワイヤーでギガントマキアと超常解放戦線の面々を、一気に拘束していった。
その合間を縫って、お姉ちゃんが死柄木に攻撃を仕掛けに、行って―――……
「お姉ちゃん!!?」
それを認識した瞬間、私は救助の指示なんてすべて放棄して、跳び上がっていた。
荼毘の炎に焼かれて落下したお姉ちゃんを、飯田くんがすぐに抱きとめてくれている。
だけど……
全力で移動し続けて、そんなに時間もかからずにお姉ちゃんの所まで辿り着いた。
「あぁ……ぁぁっ……」
「波動くん!?―――」
飯田くんが何かを言ってくれているのは分かるけど、もう、何も聞こえていなかった。
駆け寄ってお姉ちゃんの手を取るけど、目を開けるどころか、手を握り返してすらくれない。
お姉ちゃんは、苦悶の表情を浮かべて、動けなくなってしまっていた。
広範囲の火傷を負ってしまっていて、綺麗だったお姉ちゃんの長い髪も、焼けて、焦げちゃって……
『瑠璃ちゃんまだ1年生なんだから!気にしすぎても良くないよ!一歩一歩じっくり進んでいこ!ね?』
『成長してるってことだねー。私もお姉さんしてる瑠璃ちゃんの写真が取れて大満足だよ!』
『頑張ってね。できれば、無理もしないでくれると嬉しいけど』
頭の中で、ブツリと何かが切れた音がした気がした。
リオル 図鑑説明
体から 発する 波動は 怖いとき 悲しいときに 強まり ピンチを 仲間に 伝える。
ルカリオ スマブラ特性
波導の力
波導により、自身がピンチになるほど攻撃力が上がる
メガルカリオ 図鑑説明
爆発的な エネルギーを 浴びて 闘争本能が 目覚めた。 敵に 対して 一切 容赦しない。